upppiは縦読みコミック(タテコミ)・イラスト・小説が無料で楽しめるサービスです!

ようこそ!ゲストさん
シリーズ:僕の悩み
閲覧数の合計:208

作品を編集する

  • シリーズタイトル・ジャンルの修正
  • この章を改訂する
  • この章を削除する
  • シリーズに作品を追加する
  • 表紙画像の変更

僕の悩み

作者:宮保ちゃちゃ

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    僕は悩めるお年頃。
    でもこんな悩み、一体誰に打ち明けたらいいんだろう…?


    登録ユーザー星:0 だれでも星:0 閲覧数:208

    僕の悩み 2477文字

     

    「おーい、さとしー」
     これで五度目。
     僕はその声に無視を決め込んでいた。
     おーい、おーいと何度も声を投げかけてくる。僕の両目の上からだ。
    「おーい。いい加減無視やめろよなーさとしー」
     その言葉に深くため息をつくと、僕は視線を上げた。
     視界には入らない、彼(ら?)の姿。僕の意思とは関係なく、上がったり下がったりして遊んでいる。
     僕の「眉毛」だ。
    「さとしー何だよ、悩みごとかー?」
     一体どこでそんな言葉づかいを覚えたのか。
     僕は机に広げていた算数の教科書を閉じると、頬杖をついた。
     正面の壁には小さな窓がある。もう空は夜の景色に変わり、高台に建てられた僕の家からは、星くずをばらまいたような夜景を見渡すことができる。
     イライラした時や、泣きたくなる時。寂しい時。僕はひとりでその景色を眺めることで心を癒していた。だから、今日も宿題をしつつ心を癒していたのに――
    「さとしー! さとしってばよー!」
    「うるさいっ!」
     ばんっと力任せに机を両手で叩く。その反動で、部屋の中は静寂に満たされた。
     耳に残るしんとした空気。
    「……よぉ、何怒ってんだよ」
     窓に映った自分の眉毛は、眉間にしわを寄せて見事な八の字になっていた。情けない顔だ。
     僕は口を尖らして窓越しに眉毛をにらみつける。
    「別に。怒ってなんかないよ」
    「だったら何だよ、その態度はよー」
    「………」
    「ちっ。冷てーなぁおい。さとしとはそれこそ十年来の付き合いだってのによ」
     ふんっと鼻息(?)荒く、今度は眉尻を吊り上げた。怒りの表れなのだろう。
     僕は実際のところ、本当に怒ってなんかいなかった。ただ、ずっとずっと、長い間悩んでいることがある。
    「おまえには言ってもわからないよ」
     俯いて、声を小さくして訴える。
    「僕のこと、何にも知らないくせに」
     泣き言のようにとられるのが悔しくて、声に怒気を込めて言った。でもそれとは裏腹に、自分の瞳が涙に濡れているのがわかる。
     そんな僕の様子に気づいたのか。ふぅと大げさなため息が降ってきた。
    「さとし、ごめんな」
     眉毛の態度が一変した。
     顔を上げると、窓に映った自分の眉毛が一文字に真っ直ぐと伸びていた。姿勢を正して僕を見つめているのだ。
    「俺が……あれだろ? 眉毛のくせにベラベラと喋ったりするから、さとしも迷惑してるんだよな。ごめんな」
     そう言って、また眉尻を下げた。今度は悲しみを表しているのかもしれない。
     僕は頬を伝った涙を拭って、窓越しに眉毛を見上げた。
    「……さとしのことは、何でも知ってるつもりなんだけどなー」
     え? と僕が首をかしげると、眉毛はうねうねと毛虫が這うような形になった。
    「悩みがあっても絶対誰にも相談しないよな。独りでうじうじ悩んでよ。変わらないっていうか」

     眉毛が僕に初めて声をかけてきたのは、二年生に上がったばかりの頃だった。
     学校の友達と喧嘩をしたことや、テストの点数が悪かったことや、授業中先生に怒られたことなんかは、お母さんにもお父さんにも話し辛かった。
     家の一部を床屋として開放している為に、二人とも夜遅くまで共働き。僕のことで心配をかけたくなかった。だから黙っていた。
     黙って、こうしてひとり部屋から外の景色を眺めていた。
     気が付いたら、涙で頬が濡れていることが多かった。我慢していると、自分でも気づいていた。でも、それでも迷惑はかけたくない。
     そんな時、「眉毛」が声をかけてきたのだ。
     最初は幻聴だと思った。思いたかった。寂しくて、悲しさに打ちひしがれて、僕は聞こえもしない声を聞いているんだと。
     でも、鏡越しに見た自分の眉毛が、自分の意思とは全く異なる動きをしていたのだ。
    「毎日毎日、辛気臭ぇなーさとしはよー」
     ぽっかりと口を開けて驚いていた僕に、初めてかけてきた言葉だった。

    「これはずっと、さとしには黙っていよーかと思ってたんだけどさ」
     眉毛が神妙にかしこまって続けた。
    「さとしが寝入った後に、夜毎さとしの父ちゃんと母ちゃん、寝顔を見に来てんだよ」
     そう言われて、僕はその光景を思い描いた。すると、次第に胸の内側から熱いものが込み上げてきた。
    「今日も一日大きな怪我もなく、大きな病気にかかることもなく、元気でいてくれてありがとう。笑顔をありがとう。そう言って、さとしの布団を掛け直して部屋を出ていってんだ。あの時の優しい声と顔を見たら、そりゃあ俺も黙っていられねーんだよ。親は子どものことをいつも一番に考えているってのにさ」
     そして、また眉毛は僕の意思とは関係なく八の字になった。
     僕はその話を聞いて、いつの間にかぼろぼろと涙をこぼしていた。そんなことがあったんだ。そんなことが、毎日行われていたんだ。知らなかった……
    「さとしは愛されてるなぁ」
     ぽつりと呟いた眉毛の言葉で、僕は流した涙を手の甲で拭った。
     目を細めて、眉毛を窓越しに見つめた。
    「ありがとう、教えてくれて」
    「な、なんだよ。礼なんていいよ、照れ臭ぇなー」
    「僕、もっとお父さんとお母さんに甘えてもいいんだよね?」
    「当たり前だろー。さとしはまだまだ子どもなんだしな、じゃんじゃん頼って甘えていいんだよ」
     眉毛はそう言って高らかに笑った。
    「俺にももっと甘えろよー」
     そう言って、また笑った。

     ちょっと変わった僕の友達。
     時には口うるさく、時には慰めてくれる僕の眉毛。
     悩み多き年頃の僕を、一心同体となって支えてくれる彼に心から感謝をしている。

     だけど、一つだけ。
     ずっとずっと、長い間悩んでいることがあるんだ。

     十年来の付き合いだっていうのに、僕のことを何でも知っていると言い張るのに。
     いつまで経っても間違えてる。

     僕の名前は「さとる」なんだってば。



    ←前のページ 現在 1/1 ページ 次のページ→

    1ページ目に戻る
    ▤ 目次ページに戻る


    お気に入りリストに追加 この作品を応援する

    応援ボタンを押す事で作品の★が増え、作者に「イイね!」を伝える事ができます。

    コメント

    • 不思議な設定なのにすんなり受け入れて読んでしまいました。
      文章の上手さがうらやましいです。

      感動的な展開から一転笑いにつなげるオチが素晴らしいですね。
      皆さんとのコメントを読んだ後だったのですが、それでも笑ってしまいました(笑)
      • 1 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • ありがとうございます^^
      ぶっとんだ設定でしょう?意外と自分ではこの眉毛さん気に入ってるんですけれど。笑

      どうやったら最後のオチで笑ってくれるかな…と、先にオチを思いついたばかりに頭を悩ませましたが、成功したようで安心しました^^
      ありがとうございました♪うぷぷ☆
      • 0 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • ほのぼのタグ理解しました。だれかこれ、絵本にしてくれないかなあ
      • 1 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • ありがとうございます~!^^
      ほのぼの、でしょう?笑
      絵本!私も読んでみたいのです~♪
      誰かいないかなぁ…キョロキョロ←
      • 0 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • 眉毛が話しかけてくるって、素晴らしい設定ですね!笑いました!
      童話の賞に向いている作品だと思いました!
      • 1 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • ありがとうございます^^
      そうなんです。はちゃめちゃな設定で書いてみたくて…
      そしてオチをどうしても書きたくて…笑

      確かに、児童書系かもしれません。
      主人公の年齢も低いですし、話し相手が眉毛ですもんね。笑
      感想、嬉しいかぎりです♪
      • 0 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • オチで笑いました!
      そうきたか~、と。

      眉毛に名前を教えてあげればいいのに、というツッコミは無しですねw

      最初、なんでコアラのマーチ?と思ったんですが、「眉毛があるやつ」ってことですね!
      謎が解けました★
      • 1 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • オチでの笑い、嬉しいのです~^^
      本当、名前を教えてあげればいいのでしょうが…眉毛の性格を考えるとなかなか受け入れてくれそうにない…かも…?(笑)

      そうなんです♪表紙の画像、ちょっとした遊びゴコロです(笑)
      読むとわかる、画像選びでした^^
      ありがとうございました♪
      • 0 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • 設定が面白いので、もうちょっと長い話を読んでみたいですね~。あからさまにコメディなのに、ちゃんと書くと真面目な話にならざるを得ない感じがします。そういうのが好きなので。

      ちなみに、JUNEノベルズの『あいつ』という名作を思い出しました。あっちは眉毛じゃなくてち○こでしたがw
      • 1 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • ありがとうございます^^
      コメディって書いてる側も結構面白いものですね(笑)
      もっと長く、ですか?眉毛がつけ上がりますよ!?←

      こういった設定の小説って、色々と出回っている気がします^^
      伏字をしなくてもいいところで、他の箇所でも書いてみたいものです(笑)
      • 0 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • 意外なオチでした。おもしろいです。
      • 1 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • ありがとうございました☆
      オチだけのために作られた作品、と言っても過言ではありません(笑)
      • 0 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    作者紹介

    • 宮保ちゃちゃ
    • 作品投稿数:3  累計獲得星数:20
    • 書くことよりも読むことの方がスキです。

      気ままに漂ってますが、どうぞよろしくお願いします♪
    • 関連URL
      :

    この作者の人気作品

    • 風鈴
      風鈴

      └あの風鈴は、俺たちの友情の証。そうだろ? インターネット電話で、いつもと同じように会話を楽

    • 靄

      └それは、たわいもない会話から始まった。 「俺、この前さ……」

    小説 の人気作品

    続きを見る