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シリーズ:fleur de…(1)
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fleur de…(1)

作者:梟 由香里

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    「自殺名所」巡りが趣味である千田珊瑚を恋人に持つ九川真翔。
    彼女に付き合って撮影旅行に出かけた『花芽岬』で2人は海に転落してしまうという事故に遭ってしまう。
    そして珊瑚はそのまま帰らぬ人となり、真翔一人だけが生き残ってしまう。
    しかしその後『ある不可解な現象』が真翔を待ち受けている……。


    登録ユーザー星:0 だれでも星:0 閲覧数:37

    fleur de…(1) 1759文字

     

     人気の無い電車に1人の男が揺られていた。
     彼は右目に大きなガーゼの眼帯を付け、左腕を厳重に包帯で覆っていた。
     見るからに異様なこの男には、行かねばならぬ場所があった。
     この電車はその場所へ向って走っている。
     男は窓から見える眩しい海景色を眺めて溜息を吐く。
     ほんの1年前は、もう1人の連れと一緒にこの景色を眺めていたのを思い出して。
     だがその人物は――もう会う事が出来無い。
     喧嘩別れならまだ良いが、いや……今となっては時折交わしていた他愛のない喧嘩すら懐かしいが、今はしようにもその人物はもう、この世には存在しない人間になっていた。
     その人物は女性で、男の恋人だった。
     目的地に近づくにつれ、突然の別れになってしまった出来事が否が応にも脳裏に蘇る。
     あの日からずっと、男の脳裏には『あの光景』が鮮明に焼きついて消える事は無い。
     そして覆らない悲劇を回避するための分岐点をひたすら探し続けているのだ。
     そう、今この瞬間も……。

    「ねえねえこのぐらい? 青空と海のバランスはどう?」
     一眼レフを構えた、俺――九川 真翔(くがわ まなと)に彼女である千田 珊瑚(ちだ さんご)は自分の立つ危うい崖の上からアングルの具合を訪ねてくる。
    「うん。今いる場所、すごく良い感じ。地面の岩肌もちゃんと入ってるし、看板もばっちりだよ。でも、その手摺り、だいぶ老朽化してるみたいだから触れないようにね」
     俺達は多分傍から見れば一見普通の記念写真を撮っているように見えるだろう。
     だが実は少し違う。
     俺が写真を撮っているが、実のところ珊瑚に付き合っているだけで、本来の主催は彼女だったりする。
     彼女には少し変わった趣味があった。
     その趣味のせいで、俺に出会うまで悲しい別れを何度もしたようでもあった。
     彼女には……いわゆる“自殺名所”と呼ばれる場所に行く趣味があり、そこで自分が被写体になるのが好きだった。
     場所が場所だけに誘ってきても着いてきてくれる友達もおらず、困っていたところで出会ったのが俺だった。
     俺は特にそういう事に偏見がなかったので、彼女の自己満足ツアーのおねだりを快諾した。
     まあ、自分から告白した手前もあったのだが。
     そして今彼女立っている場所も知ってる人の間では有名な“名所”の一つである。
     こういう場所は、彼女に誘われるがままもう何ヶ所も行っている。
     ちなみに今居る場所は通称『花芽岬』と呼ばれる場所。『鼻目岬』とも書くらしい。
     言い伝えによると、昔美人と醜女の姉妹がいて、妹である醜女の妹に村一番の伊達男がなぜか惚れ込んでしまい、それに嫉妬した美人の姉が策に策を重ねて略奪してしまったらしい。
     それに怒り狂った醜女の妹はこの岬から姉を突き落として殺してしまい、姉の死体が見つかった時は狙いすましたかのように彼女自慢の美しい目鼻を鋭い岩が貫いていたそうだ。
     それ以降何故かこの岬では自殺者が絶えず、殺された姉が誘っているのでは?
    と、言われている。
    「ねえまだ? 風が強くて帽子飛ばされちゃう」
     そう言って彼女は風にはためく薄黄色のワンピースとつばの広い同じ色の帽子を抑えた。
     残暑の強い日差しに彼女の白い肌が映える。
     同時に彼女の左手の薬指にはまる指輪に付いた赤い石がキラリと光った。
    「今押すから待って」
     そう言って俺は一回シャッターを押す。
    「あっ……髪の毛が顔にかかっちゃった。もう一回撮って」
    「良いよ」
     俺はこわれるがままもう一回シャッターを押すが……。
     カッ。そんな小さな音と共に突然視界が揺らいで視界から彼女が消えた。
     いや、揺らいだのは俺の視界じゃなくて――……。
     俺はすぐに異変に気がついて錆びた柵が消えた崖を覗き込むと、物凄い勢いで海に吸い込まれて小さくなって行く珊瑚の姿があった。
    「珊瑚ーーーーー!!!」
     気が付けば俺も彼女を追って崖を飛び降りていた。

     そして次に俺が気が付く時。
     海でも何でもない。白い天井を見つめていて、さっきまで聞いていたはずのさざなみの代わりに騒がしい人の声がざわめいていた。
    「先生、患者さんが目を覚ましました!」
     聞きなれない女性の声がそう叫ぶと、甲高い金属がぶつかり合う音やら車輪音が雑音に加えられた。
    (俺は……一体……ここは……?)

    ――珊瑚は?!
     海に落ちて行く彼女の姿を思い出して飛び起きようとするが、何故か丸で自由が利かず、身体は僅かに身じろいだだけに過ぎなかった。

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    コメント

    作者紹介

    • 梟 由香里
    • 作品投稿数:59  累計獲得星数:10
    • はじめまして梟 由香里です。
      とりあえず登録してみました。

      色々雑食で、ギャグから痛そうなのまでムシャムシャしちゃう性質です。
      自分の事を語るのは得意じゃありませんが、投下する作品はシリアスな傾向にあるように自分では感じています。
      自分ではオチャメやってるつもりの時もあるのですが。
      色々読んでいただけると嬉しいです。

      基本的にはピクシブの方がメイン倉庫です。
      こっちにはある程度体裁の整っているのを選んで持ってきたり、整えて公開したりしてみています。
    • 関連URL
      fleur de…(オリジナル/連載中/完結近し):http://upppi.com/ug/sc/item/9620/
      エルフの日暮れ(オリジナル/完結話):http://upppi.com/ug/sc/item/9636/
      ピクシブ:http://www.pixiv.net/member.php?id=12389193
      参加イベント情報:http://upppi.com/ug/sc/item/9673/

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