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シリーズ:黒キャット傷だらけバイオレンス
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黒キャット傷だらけバイオレンス

作者:かぼちゃの骸

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    お面捨てるシリーズ完結。
    ここまで読んでくれた人、一行くらいしか読んでない人、とにかくありがとうございました。


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    黒キャット傷だらけバイオレンス 4344文字

     


     楽しい楽しい楽しい。
     ドーパミンが脳を支配して、もはや私は考えることをとっくの昔にやめていた。私を貶め、嵌めた奴らは今、私の前に自らの無力をさらけ出す。
    「ひっ」
     オールバックの若い男が足をもつれさせ、恐怖に顔をゆがめる。
     もう誰だか思い出せない。ただ、すごく憎い相手だったはずだ。彼は私のスーツを見て何かを思い出したのか、誰かの名前を呟き、許しを請うように頭を下げたが、私はその頭をつかんで放り投げた。
     キャーだのわーだの、ジリリリリだの、BGMが盛り上がり、私は高笑いでそれに答える。
    「実にいい気分だ」
     どこか懐かしい制服を着た人々が逃げ惑うこのオフィスの惨状を、私一人が起こしているんだと思うと、実に充実した気分に包まれるじゃないか。
    「それは良かったです」
     私が被っているのはおもちゃのお面。プラスチックで出来ているような安っぽいそれは、そう私に同調し、同時に私に力をくれる。
    「あぁー、付いて来なければ良かったな」 
     会社のオフィスを破壊することに熱中しすぎて、気が付かなかったが、いつの間にか私と同じようなお面を被った少年が立っていた。うだつのあがらないような声でそういうのと同時に、オールバックの男を外に持ち出そうとする。
    「あれは私の姉です、危険です、排除するべき、排除するべき、排除する――」
     狂ったように排除するべきと繰り返す私のお面。だが、そんなことは言われなくても解っている。悪役には悪役に自覚というものがあって、それがどんなに正しいことであっても世間の目というものは平等じゃない。おそらくあれが正義の味方という奴だろう。そして俺は悪の怪人って奴か……。
     最高だ。
    「おい、そこのお面野郎! 名前は何だ!」
     お面を被った少年は、肩をびくっとさせてこちらを向いた。
    「……誰だよ、こっちには絶対気が付かないから大丈夫とか、嘘ついたやつ」
     何か独り言のようなことを呟いているが、関係ない。俺の力と同等の力を持つであろうこいつに勝ってこそ真の悪役だ。勝てなきゃ引き立て役になってしまう、そんな役はもうこりごりだった。 
    「うおぉぉぉぉぉ」
     自分でも驚くほどのスピードで、その少年を殴り飛ばす。少年は音も出さずに吹き飛び、正面の窓ガラスを突き破って外に放りだされた。
     もう俺は当初の目的すら忘れて、ひたすらそいつに更なるダメージを与えるために飛び降りる。ここは高層ビルの三十階、常人なら間違いなく死ぬ。しかし俺とあいつは常人じゃないんだろう?
    「そうですね。どちらもスーパーヒーローです」
     その言葉に苦笑しながらも否定はしない。
     少年は地面にクレーターを作りながら着地した。その上から殴りかかるが、さすがにそれは避けられる。しかしお面の装着時間がまだ短いのか、動きが鈍く、痛みもあるようだった。
    「雑魚が!!!」
     そう叫び、押し出すようにその少年を吹き飛ばす。
    「止めを刺しましょう」
     お面に言われるまでも無い。吹き飛んだ少年を追いかける。
     ――――私は何をやっているんだ?
     お面を被った少年は、両の足で着地して俺から逃げるように駆け出した。
    「逃がすな、追え!」
     私のお面が叫ぶ。その声に従って、俺は思いっきり地面を蹴った。
     このお面は着けている時間が長ければ長いほど強くなれる。あの少年はやはり着けている時間が短いのだろう。すぐに追いつき、俺に殴り飛ばされる。
     地面に半分埋まった少年に満足し、俺はきびすを返した。   

    「調子に乗るなよ、おっさん」
     少年がふらふらと立ち上がり、俺に暴言を吐く。
     ――――立ち上がらなければ見逃せたのに。
     しかしもう遅い。拳を叩きつけるようにして、少年に放つ。少年はその拳を受け止めてその腕から血を流した。
    「俺死ぬじゃねぇか、マジでなんだよ、生臭いんだよ!」
     自棄になったように少年は喚いて、もう一方の手でも俺の拳を受け止める。今度はいやな音がしっかりと聞こえた、しかし少年は手を離さない。生きることへの執着か、それとも単に心が強いのかは解らなかったが、それもどうでもいい事だった。
     蹴り上げる。蹴り上げる。蹴り上げる。
    「……おっさん、舐めんな」
     腹の辺りが真っ赤に染まっても、少年はその手を離さなかった。
     俺が気味悪い少年に嫌悪感を抱き始めたその時。
     
     私にとっての黒い天使が俺を救う。


     
     私がまだ若かったとき、コカコーラに毒を入れるのが流行った事がある。流行るといっても、それが一般の娯楽として一時の間定着するということはもちろん無いのだが、今でいうオレオレ詐欺のようなもので話題に良く上がった。公園などに飲みかけの缶ジュースが置いてあって、それを飲んだら中に毒が入っているという悪趣味な事件として、恐れられたが、私には何のためにそんなことをするのかわからなかった。
     犯人は一体何がしたかったんだろうと今でも考える。
     人を殺すにも理由が必要だ。それがどんなにくだらないことであっても、一時の快楽を得るためであってもそれは理由になりえるとしても、私にはその理由がわからなかった。人殺しの考えなんてわからなくて当然と言われてしまえばそれまでなのだが、どうもそういうのは私の性に合わない。
     相手を確実に殺せるのかも解らず、相手が誰かも解らず、ただただ無駄にリスクを犯し、自分は何の得もしない。
     つまり意味が無いのだ。やられたほうはたまったもんじゃないが、犯人には何の利益もない。
     そこが納得できない一番の理由だろう。
     黒猫が私のお面を奪い去って、どこかへそのまま持ち去ったとき、私は自分が一番初めにコーラを飲んだ人間だということを自覚した。


     ※
     立川俊
     
     ちょっと時間を遡ろう。俺がなんで口から血を吐いて、両腕が使い物にならなくなっているのかを整理したい。

     俺は昨日、隣の家のポストにお面を入れたはずだった。
     お面は喋るタイプのもので、うっとうしくてしょうがない上に、捨てても捨てても戻って来る。まるで呪われているようだ。しかし俺は、いくら捨てても自力で家に戻ってくる、この摩訶不思議自力移動可能お面をとうとう処分する方法を思いついた。絶対に戻ってくれないところにおけばいい、問題はその場所なのだが、海にでも流してしまえばいいのではないか。いくらこいつが原理不明のまま歩くにしても、さすがにこんな形では泳げまい。
     それだけでは少し不安なので、隣の県の海に流そうと思う。電車に乗るときにこいつを布にでもくるめば、もし海から上がってきても広い日本、もう俺のところへたどり着くことは不可能だろう。
    「何かいいことでもあったんですか?」
    「旅行に行こうと思ってな」
    「いいですね、私温泉とか好きなんですよ」
     いや、嘘だろ。
     というか、お前が温泉に入ってどんな効能を得ることが出来るって言うんだ、もはや解けてしまうんじゃないのか。そうでなくともショートするだろう。
     
     戯言に付き合っている暇は無い。とにかく準備は整った。
     俺はお面を手提げかばんの中に入れて、駅まで歩いていくことにした。
    「あ」
     お面がどうやったのか、手提げかばんから顔、といっても顔しかないのだから体を半分出していた。そして何かに気が付いたように短く声を上げる。
    「うわ」
     その目線の先には俺の持っているお面と同じようなお面があった。それ自体は別にいい、こいつも見た目だけは普通のお面だからだ。よく縁日で見かけることが出来るし、ドンキで二百円程度で買うことが出来る。問題はそれを持っていたのが、背格好から大の大人で、しかも被っていたということだ。
     お祭りのときでさえ、正面に被る人は少ないというのに、この人ごみの中、周囲の視線を省みずに、逆に胸を張って歩いている姿は見ているこっちが恥ずかしくなってくる。
    「付いていってください。あれは私の同類です」
    「嫌です」
    「人が、死ぬかもしれないんですよ」 

     

     それで、少し見に行くかと付いていったら、このざまだ。
     殴り飛ばされ、蹴られ、もう何で自分が生きているのか皆目見当も付かない。
     死を覚悟、というかもうこれはほっといても死ぬので、なんとかこのお面をつけたおっさんに一撃入れてやりたかった。おっさんが会社に入ったとき、顔を見られたくないからってこんなお面を被ったのが運の付き、おっさんに目の敵にされボコボコにされた俺にそんな力は残っていないのだが、なんとかこの理不尽な暴力に打ち勝って、俺はこのお面を海に捨てに行くのだ。     

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    コメント

    作者紹介

    • かぼちゃの骸
    • 作品投稿数:4  累計獲得星数:3
    • 海苔が好きです。
      なろうも見てね。



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