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シリーズ:この恋すいーつ【小児科医周防武の手遅れの恋】
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この恋すいーつ【小児科医周防武の手遅れの恋】

作者:尚史

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    高校生×小児科医のCP。
    ○オマケに、彼らのSSを掲載しております(・∀・)


    登録ユーザー星:5 だれでも星:7 閲覧数:1092

    この恋すいーつ【小児科医周防武の手遅れの恋】 48899文字

     

     いつものように学校帰りに、病院に顔を出した太郎。

     犬の着ぐるみを着て、待合室にいる子どもの患者と戯れつつ、
     絵を描いたり相手をしてくれていた。

     楽しそうな子どもたちの声が、診察室まで聞こえてくる。

     最近それが当たり前の日常になっていて、
     俺も一緒に働いている看護師たちも、
     笑顔で仕事をすることが出来ていた。

     病院を閉める10分前の午後4時50分頃、
     今日は患者さんが少なかったので、
     延長することもなく、終えることが出来そうだ。

     診察室の椅子の上で、うーんと伸びをしていると――


    「太郎ちゃん、危ないから脱いでから上ってくれない?」

    「大丈夫ですって。中身脱脂綿でしょ、
     大きくても軽いから、バランス崩すこともないだろうし。ほらね」


     ベテラン看護師の村上さんと、太郎のやり取りが耳に入ってきた。
     何やら太郎が、危なげなことをしているみたいだな。


    「年長者の言うことを、どうして素直に聞かないのかね、
     あのバカ犬は……」


     若者特有の無鉄砲ぶりというべきか、怖いもの知らずというか。
     俺が心配するキモチも、少しは考えてほしいよ。

     よいしょっと掛け声をかけて、椅子から立ち上がり、
     声のする物置へと歩いていくと、着ぐるみを着たままの太郎が、
     脚立の上で大きな箱を、元に戻そうとしているところだった。

     中身が脱脂綿だからって、バランスがとり難い、
     その大きな箱を持ってるのにも関わらず、
     足元がぶかぶかの着ぐるみ状態じゃ、危ないじゃないのさ!

     内心憤慨しながら、声をかけずに行方を見守っていた。
     降りてきたら、注意をしてやるぞと思っていたら、
     箱を定位置にしっかりと置いて、突然こっちを向いた太郎。


    「は……?」


     口をぽかんと開けたまま、何故か体勢を崩して倒れてきた。


    「バッ!?」


     ――バカ犬っ!

     落ちてくるであろう身体を受け止めるべく、抱きかかえたのだが、
     耳元でごつんという、イヤな音が聞こえてきた。
     運悪く着ぐるみの頭の部分を外していたため、
     床に強打させてしまったらしい。


    「くそっ! おい太郎、大丈夫か? しっかりしろ」


     守ってやれなかったことに胸を痛めながら、外傷がないか、
     手早くチェックしていく。

     俺がクッションになったとはいえ、頭を強打したせいだろうか。
     意識がなかった。


    「目立った外傷はないようだな。む、後頭部にコブが出来てる……」


     頭をサワサワまさぐってみると、血は出ていないが、
     大きなコブがひとつ出来ていた。


    「太郎! 大丈夫か?」

    「太郎ちゃん、私が分かる!?」


     頭を打った後なので、頭に刺激を与えるわけにもいかず、
     故に揺することが出来ない。
     村上さんと一緒に声をかけて、頬をぱしぱし叩いて、
     意識をチェックしてみる。


    「うぅん……あ……?」


     ぼんやりしながら目を開き、俺たちの顔を見てくれた。


    「良かったわ。太郎ちゃん、頭は痛くない?」


     無事に意識を取り戻した姿に、ほっと胸を撫で下ろしたときだった。


    「……アンタたち、誰? 太郎って誰のことだよ」

    「え――!?」

    「俺には、立派な名前があるっていうのに、
     何でそんな名前で呼ぶんだ?」


     太郎の言葉に、村上さんと顔を見合わせてしまう。


    「お前の名前は何だ?」


     俺が訊ねると何故か、へらっと笑いながら答えてくれた。


    「おにーさん、そんなに知りたいの? 俺のこと」

    「……村上さん救急車の手配ヨロシク。
     頭部のCTとMRIの準備するようにって」


     らしくない太郎の様子に異変を感じた俺は、
     迷うことなく救急車を呼んだ。

     村上さんが電話をしている間、太郎に話しかけてみる。


    「俺のことを、お前は覚えていないのか?」

    「何、言ってんの。新手のナンパとか?」

    「ナンパならお前からされてるよ。残念ながら恋人同士なんだ」


     事実を突きつけてやると、ビックリした顔をして、
     穴が開きそうなくらい俺の顔を見てくれた。


    「マジかよ……こんなキレイなお医者さんが俺の恋人って。
     俺のどこが良くて、付き合ってんだ?」

    「っ……バカなところと、面倒くさい……とこ」


     忘れられてる自分の存在がショックで、
     思わず、泣きだしそうになってしまう。

     口元を押さえ、必死に堪えていると、
     俺の右目尻に、そっと手を伸ばした太郎。


    「泣くなよ……まるで俺が泣かせたみたいじゃん」


     そういえばコイツに、初めて逢ったときも言われたっけ。


    『そんな寂しそうな顔して、泣かないで?』


     ホント、手のかかる恋人だ――なのに無性に優しくて。
     その優しさが胸に沁みてしまう。

     横たわってる歩の身体に、ぎゅっと抱きついてしまった。
     俺のせいで、一部の記憶が失われてしまって。
     どうしていいか、分からなかった。






    ***

     きれーなおにーさんに付き添われ、
     救急車で、大学病院まで連れて行かれた俺。

     病院に着くとさっそく、頭の中の写真を何枚も撮られ、
     疲れきったトコに、母親と妹が到着した。

     病室で横たわる俺の傍にいた、きれーなおにーさんが立ち上がり、
     病室に入ってきた親たちに、きっちりと頭を下げる。


    「このたびは息子さんにケガをさせてしまい、
     大変、申し訳ありませんでした」

    「頭を上げて下さい、周防先生。いつも息子がお世話になって、
     お礼を言いたかったんですよ」


     きれーなおにーさんは、すおー先生というのか。
     頭を上げて切なげな瞳をした横顔を、じっと見てしまった。

     ――未だに信じられねぇ、こんな人が俺の恋人なんて……


    「周防先生のところに、通うようになってから、
     学校の呼び出しがなくなりましてね。成績のほうも以前に比べると、
     すごく良くなっているんですよ。
     きっと先生がうちの息子の面倒、見てくれているんですよね?」

    「いえ……きっと彼が命に関わる病で、考えることが、
     あったからだと思いますよ。私はただ、ちょっとだけ手を添えて、
     お手伝いをしているまでです。
     しかし今回、ケガをさせてしまったのはこちら側のミスですので」


     あまりにも自分が悪いと連呼し、ミスを引っかぶる姿に、
     胸が痛くなってしまった。


    「アンタが悪いワケじゃねぇだろ。俺があんな恰好して、
     高いトコに上がったのが原因なんだから、そんな風に謝んなって」


     気がついたときに、着ていた犬の着ぐるみ……
     どうして自分がそんな格好をしているか、ワケ分からなかったけど、
     傍に倒れていた脚立が、すべてを物語っていた。


    「こらっ、歩。周防先生に何て口の聞き方してるの」

    「いいんですよ、普段はきちんとしてますから。
     今は私に関する記憶がないせいで、
     こんな喋り方になっているだけですから」

    「お兄ちゃんっ、本当にすおー先生の記憶、なくなっちゃったの?」


     妹の茜がベッドに近づいて、顔を覗き込むように訊ねてきた。
     その視線をやり過ごすべく、プイッと横を向いてやる。


    「歩くんが検査中、画像を見せてもらったのですが、
     異常は見られませんでした。後頭部に出来たタンコブも血腫に、 
     なってませんでしたし、大丈夫そうですよ。
     頭を強打したために見られる、一時的な健忘症でしょうね。
     私以外のことは、しっかりと覚えているので、
     生活には支障がないと思います」


     詳しくは脳外の先生からも、お話があるかと……と静かに言って、
     俺の顔を見てくれるすおー先生。
     
     目が合った瞬間、胸の奥がぎゅっと絞られる感覚がした。


    「そうですか。有り難うございます」

    「頭を打っているので、念のため1日だけ入院になると思いますが、
     完全看護なので」

    「分かりました、先生のお話を聞いて帰ります。
     歩、何か必要なものはない?」


     和やかに話し合う親たち、何でか分からないけど、
     イライラするしかない自分。

     ――どうして大事なことを、忘れてしまったんだろう?


    「別に何もないし。検査で疲れたから早く寝たい」


     俺の言った言葉を聞き、みんなで出て行こうとする細い背中に、
     慌てて声をかけた。


    「すおー先生はちょっと待て! 話があるから」

    「分かったよ。それではここで失礼します」


     扉の前でしっかりと頭を下げ、親たちを見送ってから、

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    コメント

    • 紅碧さま
      いつもありがとうございます。今月末までの締め切りに現在全力投球しております(・∀・)来月落ち着いたら作品読みに行きますね。あたたかいコメント感謝!
      • 1 fav
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