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シリーズ:つきよのばんに
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つきよのばんに

作者:能上成之

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    にくきゅう友の会参加作品(能上route)


    登録ユーザー星:9 だれでも星:1 閲覧数:149

    つきよのばんに 2982文字

     



     まん丸いお月様が山のてっぺんに浮かんで、あたりをこうこうと照らしていました。
     雑木林を抜けた先の広いすすき野原にもお月様の光が降り注いでいます。
     白く浮かび上がった穂ががさがさと揺れていました。その揺れがすすき野原に一本の道筋を作っていました。
    「もうすぐだぞ。もうすぐたどり着くからな」
     穂の揺れる道の先頭には白猫の男の子が茶色い猫の男の子をおんぶして歩いていました。白猫の腰には重そうな麻袋もぶら下がっています。
    「シロ君、もういいよ。君まで歩けなくなっちゃうよ」
    「オレは大丈夫さ、マロン」
     でも、マロンと呼ばれた男の子は、シロの足に限界が来ていることを知っていました。もう何時間もマロンを背負い荷物も腰につけてこうやって歩いているからです。スピードがだんだんと落ちてきているし、がくがくとシロの脚の震えが背中を伝わって感じていました。
    「ほんとにもういいんだ」
    「何言ってんだ。飼い猫ならいざ知らず、オレたち野良はな誰も面倒見てくれないんだよ。歩けなくなったらのたれ死ぬしかないんだぞ」
    「だから、君もそういうことになっちゃうから……」
     マロンはどうやったらシロを巻き添えにしないで済むか、さっきから一生懸命考え、説得していました。でも、シロが歩くのをやめてくれないので涙が浮かんできました。
     シロは捨てられて野良になったマロンの面倒を見ていました。はじめは泣いてばかりのマロンを叱り、慰め、そして、野良として生きるための術を教えたのです。
    「オレは大丈夫だって。生まれた時から野良やってんだ、へへ、なめんじゃねえよ。でも、お前ラッキーだったな。車だったらもう死んでたぜ」
     マロンは自転車に当てられて腰を打つという怪我をしました。ご主人に似た人を見かけて道を飛び出したのが原因です。腰の痛みははじめひどかったのですが、次第に治まってきました。でも、痛みが取れても立つことができなくなっていました。シロは何とかしてマロンを立たせようと試みましたが、足に力が入らず、どの方法も無理でした。
     ある時、シロはうわさを聞きました。心も体も癒してくれるお店のうわさです。
    『にくきゅう指圧店』
     でも、誰に訊いても行先はわかりませんでした。うわさだけで本当にあるかどうかもわからないという人もいました。
     それでもシロはあちこち走ってお店の在処を訊きまわりました。結果は同じでした。
     そんなお店はないんだ。もう諦めようと思っていた時、路地裏で三毛のおばさんに出会いました。この猫(ひと)で最後にしよう。そう思いシロは『にくきゅう指圧店』のことを訊いてみました。
    「さあ知らないねえ」
     三毛のおばさんは他の猫たちと同様そう言いましたが、一つだけ違ったのは、なぜシロがその店を探しているのか訊いたことでした。
     シロはマロンのことを話しました。
     三毛のおばさんはしばらく考えてから「仕方ないねえ」と言って、『にくきゅう指圧店』のことを教えてくれました。
     そのお店は、お山の向こうのすすき野原に行くとあるらしいということ。らしいというのは、おばさんは行ったことないからで、だからはっきりとした場所はわからないということ。とにかくそこに行けば見つかる人には見つかり、見つからない人には見つからないのであきらめること。
    「もし、見つかる場合はお店の看板があるらしいから」
     三毛のおばさんはにっこり笑って言い足しました。「見つかるといいねえ」
    「ありがとう。行ってみるよ」
     シロが踵を返して行こうとするとおばさんが呼び止めました。
    「あっ、お代がいるよ。魚が一匹」
    「えっえー。そんな」
     シロは思わず情けない声を出してしまいました。野良で仔猫のシロには魚は切り身でも調達するのが難しいのです。
     おばさんはしばらく考えてから「ちょっとお待ちよ」と言ってどこかに行ってしまいました。
     シロはたまに小さな切り身をくれる近所の魚屋さんで丸々一匹盗ろうかと考えてみました。でも、優しい魚屋のおじいさんを裏切ることになるのがすごくつらく思いました。
     いやいや、オレは野良だ。そんな甘っちょろいこと言ってられっか。
     シロは決心して、その場から立ち去りかけました。
    「ちょいとお待ちったら。ほらよ」
     三毛のおばさんが戻ってきて、シロの前に麻袋を放り投げました。麻袋はびくびくと動いていました。「それやるから。友達を連れて行ってやんな」
     そう言うとおばさんは、もうシロに興味をなくしたとでもいうように知らん顔して寝そべってしまいました。
    「三毛おばさんありがとう」
     シロは大きな声でお礼を言うと、麻袋を持ってマロンのところに戻っていきました。
     すすきの穂が鼻をくすぐり、シロは我に返りました。マロンを背負い直すと一歩一歩、歩き始めました。
     三毛おばさんの親切に応えるためにもぜってー見つけてやる。「もういい」なんて、マロンの言うことなんかぜってー聞かないからな。
     でも、シロの脚はもうとうに限界を超えていました。
    「シロ君、あれ」
    「だから、オレは大じょーぶだっ……えっ?」
     マロンが指さす方を見ると『にくきゅう指圧店』と書いた木の看板が揺れるすすきの間から見えています。
     シロは安堵のあまり腰を落としそうになりました。でも、今座り込んでしまってはもう歩けなくなりそうです。あるだけの力を振り絞って、看板に示されている矢印のほうに向かって歩き出しました。
     扉を開くと待合のイスに座っている鹿さんと白クマさんが二人を見ました。
     シロは二人に会釈すると、白クマさんの横のイスにマロンを下ろし、自分もその隣に腰掛けました。
     待合には『料金 魚一匹(尾)』という立札が置いてありました。三毛おばさんの言う通りだったとシロは思いました。
     お店はふわりといい匂いがしてとても居心地のいい場所でした。
     パーテーションの隙間から優しそうなねこさんがコグマくんを指圧しているのが見えました。コグマくんはとても気持ちよさそうな顔をしています。
     これできっとマロンは歩けるようになる。
     シロはそう思いながら、麻袋を膝の上に置きました。
    「ねえ、シロ君。ぼくはいいから、君がやってもらいなよ」
     マロンがシロの耳元でひそひそしました。
    「何言ってんだ。お前のために来たんだぞ。オレは休んでれば大丈夫だから」
     シロもひそひそと返し、何気なく袋の中を覗きました。が、すぐ閉じ、マロンの顔を見て、それからまた袋を覗きました。
    「?」
     くびを傾げているマロンにシロは袋の中を見せました。
     袋の中には魚が二匹入っていました。

     昇りたての金色の朝日に照らされて、すすきが風に揺れています。
     そのすすき野原を、白と茶色の二匹の猫が元気に飛び跳ねながら帰っていきました。


    +あとがき+
     ねこまんまさん。イラストありがとうございました。思っていた以上にかわいくてとても嬉しかったです。
     私は頭の中が不器用なので、こんなありきたりな物語でしかお返しできませんが、一応お礼のつもりです(――;)。
     もう、ほとんど『にくきゅう指圧店』を使用した別ものになってしまってる? と思われるでしょうが、あくまでねこまんまさんをリスペクトして書いた作品です。
     本当は、魚一匹でねこまんまちゃんが二人を癒してくれるということにしたかったのですが、そうすると、ねこまんまさんのキャラを私が勝手に動かすことになり、それはたぶんいけないことなのだろうなと思って、こういう形になりました。
     未熟な私をお許しください。





















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    コメント

    • ちなみに、第2弾は能上さんの作品をねらっていたんですが、
      漫画にしても、長くなりすぎるかなとか、絵本にするにはけっこう台詞を変えるかなーとか、構図がなかなか思いつかなくてどうしようかなと悩んでいる次第
      私がこの作品を読みながら感じた驚きやわくわくをうまく表現できる構図、校正が・・
      • 5 fav
      • Re 返信

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    • えへへ。考えてくれただけで嬉しいです。
      でも、これはねこまんまちゃんの登場が最後のほうで、他の方たちもただ出てきただけなので、カールさんの作品を絵本等のねこまんまシリーズの基本としたら、私のはまた違うかなと(笑)
      なので、どうでもいいです。(なんて投げやりな言い方(^▽^;)
      これは捧げた作品なので好きなようにやっちゃってください。
      • 4 fav

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    • Σ(゜д゜;)

      にくきゅう指圧店の文字を見て来てみれば・・・!
      みんな、考えることは一緒なのですねぇ~≧∇≦ブハハハハハ
      って、コメント読むと他にも作品が!?
      こ、これは急いで探さねば・・・!

      あ、感想書いてないww 読みやすく、ほんわかしててとってもよかったです~~~!三毛おばさんがニクイねぇww
      いや~、マロンちゃんよくなってよかったニャーw ←
      • 6 fav
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    • 感想ありがとうございますー。
      許可とらなくてよかったのなら、三毛おばさんはほんとはカールさんの黒猫だったんです。でも、これこれこういう話書くので許可をという過程がめんどくさくて。
      鹿さんと白クマさんはしゃべらせなかったので、登場だけしてもらいました。鹿さん、白クマさん、今頃ですが、すみません。
      • 4 fav

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    • 「めんどくさくて」って、ごめんなさい。変な意味じゃないですよ。
      どっか抜けてる&ずぼらで、そこんとこもうちょっとちゃんとできたらなあといつも思ってます。
      • 4 fav

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    • あっ このレス読み損ねてた・・・!

      (´▽`*)アハハ わかりますww
      いちいち許可とってると、話がなかなか進まないですからねww
      でも、それでイヤと思う人はいないかなぁとw

      じゃ、次はねこまんまちゃんホラーに挑戦ですかねww 
      • 3 fav

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    • みんなで肝試しツアーなんてどうでしょうか?
      現在描かれてある皆さん勝手にセリフ付けしていいですか?
      • 3 fav

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    • いいですな!w
      私は全然OKですよ~w
      • 3 fav

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    • 勢いでば~って言っちゃったけど、あれから考えてみると、私カールさんみたいにそれぞれのキャラよう考えんですわ。たはは。ちゃんと個性ある面々にできそうもない。でも肝試し行ってるとこ見たい。ああ、何とかならんですか?
      カールさん、暇になったらでいいんで書いてくれないですか?
      言い出しっぺの法則破ってすみません。
      • 1 fav

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    • ぶはっww

      ダメですよぉ~~~w
      肝試しツアーは能上さんが書いてくださいww
      楽しみにしてるんですからw
      私は違うホラーを書きますよw
      まだちゃんと構想固まってないけど・・・( ̄▽ ̄;

      あっ
      「ニ゛ャーーーーーー!!!」
      を入れてくれると盆踊りして喜びますww
      • 1 fav

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    • 読み始めてまさか、にくきゅう指圧店が出てくるとは思いませんでした!
      まじめに引き込まれていた所に急にでてきたのでびっくりして爆笑してしまいました。・・が、その後も、わくわくしながら読ませて頂きました!凄く面白かったです!
      それから、どんな風に描いて頂いても大丈夫ですよ♪
      確かにラスト難しいですね・・私も迷うと思いますが、仮に魚が一尾でも『ちょうどいいニャ、今はお魚一杯あるから今度もってきてくれればいいニャ!』と言ってその後すっかり忘れてそう・・
      すごく嬉しかったです!!!!!
      でも能上さんもご自分の創作もあることですのでご無理なさらずにお願いしますね
      これからもイラスト描かせて頂きます♪
      • 5 fav
      • Re 返信

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    • 寛大なご理解ありがとうございます。
      自分勝手な世界観で書いたことを反省しつつ、二次創作のタグを付けました。また何か浮かんだら、書いてみようと思います。その時はねこまんまちゃんも動かしてみようと思います。(>▽・)b
      ねこまんまちゃんだけでなく、鹿さん、白クマさんたちもいいかな?もちろん二次創作のタグ付けます。
      • 5 fav

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    • 秋月さんのrouteという言葉使わせていただきました。
      秋月routeを手本に情景を描写しようと思ったのですが、険しい山に仔猫は無理かと思い、自分のrouteにしました。
      • 5 fav
      • Re 返信

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    • じんわりとキました!ウマイ
      なるほどそこに『指圧店』を持って来たかぁ、と手を打つ思いでこの文体、世界観大好きです♪
      能上さんrouteこっそり期待していたので嬉しいです(^O^)
      みんなで絵と文字でやり取るできるのってすごく楽しいですよね☆
      それと能上さんのホラー以外の作品を読めたのは初めてでしょうか。ヒューマンじゃないからニャーマニズム系ファンタジーもすごいいける口だったんですね~☆
      三毛おばさんのツンデレな計らいがニクイ♪
      能上さんrouteの『指圧店』に行けば、そこにいるねこまんま先生は『神のにくきゅう』を持っていると暗に物語っているという(*^^)キラリ、イキタイゼ
      • 5 fav

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    • ですね!皆さん独特の世界があり、刺激になりますね!
      • 5 fav

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    作者紹介

    • 能上成之
    • 作品投稿数:42  累計獲得星数:464
    • 読むのも書くのも、年がら年中、ホラーです。ホラー馬鹿です。
      脳みそがすぐ忘却の彼方に行ってしまうので、いつでも読めるように気になる作家さんをすぐフォローしてしまいますが、フォロー返しに気を遣わないでくださいね。なぜなら、ホラーしか読まないから。
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