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シリーズ:おじろく・おばさ
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おじろく・おばさ

作者:thule

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    かって日本は耕地面積が少ない村では、家長となる長男より下の子供を養う余裕がない。そのため、家に残った下の子供は「おじろく(男)・おばさ(女)」と呼ばれ、長男のために死ぬまで無償で働かされた。


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    おじろく・おばさ 6635文字

     

                『おじろく、おばさ』



     私の名前は、結城一郎。職業は大学講師で国立C大学で近代考古学を専門に教えている。この近代考古学は他の考古学と違い口伝や伝承を中心に調査をするフイールドワ−クが主体となる学問である。
     私が『おじろく、おばさ』という言葉に興味をもったのは1か月前に、我が大学の名誉教授にして近代考古学の大家である大垣先生がフィールド調査に向かった長野県で行方不明になってからだ。

     大垣先生は、几帳面な方で事前に下準備をしてから現地に調査に行かれる。しかし、今回の場合には何を思ったのか大垣先生のご家族にも話さず、ただ長野県神原村に行くと言われ、そのまま消息不明となった。

     私は30代前半の血気盛ため、大垣先生の調査に大変興味があったというより、大垣先生の調査の秘密に触れ、若くして教授のポストに就きたいという野心から大垣先生の調査を引き継ぐこととなった。
     

     早速、私は大垣先生の消息を追うべく長野県神原村に向かったが最新型のカーナビにはそのような地名は存在しなかった。しかし大垣先生の資料に挟まっていた古地図のコピーを頼りに何とか神原村に向かうことが何とかできた。

     岩手県をフィルドワークとしていた柳田邦夫先生の著書「遠野物語」を読めば理解できることだが、 国土の7割が山である日本。山林によって隔絶された村では、独自の文化が発生する場合が多い。昔の長野県神原村(現・下伊那郡天龍村神原)もその一つのようだ。

     大垣先生の調査対象としていたのは『おじろく、おばさ』という意味は長男以外の人間は、結婚もできず、世間との交流すら許されず、死ぬまで家のために奴隷のごとく働かされる......。
    いったい、いつの時代の、どこの国の話だと思われるかもしれない。しかしこれは、日本に20世紀まで実在した『おじろく・おばさ』という風習なのである。

      耕地面積が少ないこの村では、家長となる長男より下の子供を養う余裕がない。そのため、家に残った下の子供は「おじろく(男)・おばさ(女)」と呼ばれ、長男のために死ぬまで無償で働かされた。

     家庭内での地位は家主の妻子よりも下で、自分の甥っ子や姪っ子からも下男として扱われる。戸籍には「厄介」とだけ記され、他家に嫁ぐか婿養子に出ない限り結婚も禁じられた。村祭りにも参加できず、他の村人と交際することも無かったため、そのほとんどが一生童貞・処女のままだったと推測される。将来の夢どころか趣味すらも持たず、ただただ家の仕事をして一生を終えるのである。

     そんな奴隷的な状況が、ある種の精神障害をもたらすのだろう。『おじろく・おばさ』は無感動のロボットのような人格となり、言いつけられたこと以外の行動は出来なくなってしまう。いつも無表情で、他人が話しかけても挨拶すら出来ない。将来の夢どころか趣味すらも持たず、ただただ家の仕事をして一生を終えるのである。

     
    この辺りの状況を報告しているのが、『精神医学』1964年6月号に掲載された近藤廉治のレポートに記載がある。近藤は現存していた男2人、女1人のおじろく・おばさを取材し、彼らの精神状態を診断している。普段の彼らにいくら話しかけても無視されるため、催眠鎮静剤であるアミタールを投与して面接を行ったそうだ。

     すると固く無表情だった顔が徐々に柔らかくなり、ぽつりぽつりと質問に答えるようになったという。以下、その答えを抜粋してみよう。

     「他家へ行くのは嫌いであった。親しくもならなかった。話も別にしなかった。面白いこと、楽しい思い出もなかった」

     「人に会うのは嫌だ、話しかけられるのも嫌だ、私はばかだから」

     「自分の家が一番よい。よそへ行っても何もできない。働いてばかりいてばからしいとは思わないし不平もない」

    (『精神医学』1964年6月号・近藤廉治「未分化社会のアウトサイダー」より抜粋)

     
     16〜17世紀頃から始まったとされる『おじろく・おばさ』制度だが、もちろん現在の神原では、このような制度は存在しないだろう。ただ明治5年でも190人、昭和40年代に入っても63人のおじろく・おばさが生きていたという。更に驚きなことに平成の世になって1人だけ現在も存命の『おじろく』がいたことだ。



                        『おじろく・おばさ』
     
     なにごとにも無関心で感情が鈍く
    自発性が無い子供のようになった様子がうかがえる
     

     この『おじろく・おばさ』の取材に先立ち、近藤先生は二つの推論を持っていたようだ。
    一つは、もともと遺伝による精神障害が多い集落であり、そのような人々がおじろく・おばさになるのではという説。もう一つは、気概のある若者は村の外に出てしまい、結果、無気力な者だけが残ったという説。

     しかしこの二つともが間違いであり、長年の慣習に縛られた環境要因によって、人格が変化してしまったのではというのが近藤の結論だ。彼らの多くが子供時代には普通で、20代に入ってから性格が変わってしまうというのも、その裏づけとなるだろう。

     だが、大垣先生の説では、遺伝精神障害説や無気力在留説とは異なりバナナ型神話説を提唱していた点である。

     バナナ型神話とは神が人間に対して石とバナナを示し、どちらかを一つを選ぶように命ずる。人間は食べられない石よりも、食べることのできるバナナを選ぶ。硬く変質しない石は不老不死の象徴であり、ここで石を選んでいれば人間は不死(または長命)になることができたが、バナナを選んでしまったために、バナナが子ができると親が枯れて(死んで)しまうように、またはバナナのように脆く腐りやすい体になって、人間は死ぬように(または短命に)なった。

     旧約聖書の創世記に出てくる生命の樹と知恵の樹の説話も、このバナナ型神話の変形であると考えられる。生命の樹と知恵の樹は互いに相反する性質を持つ双対であり、一方の選択肢(バナナ・知恵の樹・必然の死)を選ぶと、もう一方の選択肢(石・生命の樹・永遠の命)を失うというバナナ型神話の構造に由来するのである。そして神ヤハウェは人を追放して、生命の樹への道を守るために、エデンの園の東に、智天使ケルビムと輪を描いて回る炎の剣を置かれた。

     大垣先生の提唱では、他の村の『おじろく・おばさ』とは異なり、何かこの村には特有の遺伝的なものがあり、『おじろく・おばさ』になったものは子供のように無邪気になり長命であるという点である。また、ある一定の年齢になると多くは神隠しに合い行方不明になることが多いということである。そして警察での調べでは、山での遭難で遺体は不明ということで捜査は終了している。


     私は大垣先生がたびたび訪れる麻木(まぎ)さんの屋敷に向かった。痲木さんはここでは豪農として名高く、分家が2家あり、主家は旧村長をしていたことから昔の話や出来事に詳しいとされていた。
     私が痲木さんの家に訪れたら、丁度痲木さんらしき人物が広い庭の手入れをしていた。
    私は会釈をして、痲木さんに挨拶をして暫く他愛のない話をして相手の警戒心を解いていった。
    そして、本題である大垣教授の行方について質問をした
    「1か月程前に大学の大垣教授が訪れたのですが大垣木陽樹の行方等ご存じないでしょうか?」

     するとさっきまで温和だった痲木さんの顔が真っ赤になり拳を上げて大垣教授の行方は知らない
    とさかんに言いまくっていた。私は何とか痲木さんを落ち着かせ大垣教授の行きそうな場所について再度質問をしたが‘知らん‘と一言言い放つと本宅の方に引き込んでしまった。

     私は途方に暮れていると庭園の石垣から生気のない目でこちらを見ている中年男性がいた。
    「あんだ、一向衆でないね?」

     漢は私に近いてきた。風呂に入ったのがいつか分からない位悪臭を漂わせていた。
     村の外れにある古びたお堂を指し、眠そうな目でいきなり語りだした男は胸の名札に『重太』と書かれ ていた。少し痴呆のような感じで自分の者であるかのように衣服に名前が書かれていた一見おじろくかと思ったがそれにしては自我があり同じことを繰り返して話す点を除けば会話は可能であった。

     「今夜はおじろくでムクロク様になったので一向衆講が行われるだ。あんたも山の祠でやる一向衆講を見たらあの学校の先生のように石になっちまうだよ」 

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