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シリーズ:みゆきの愛娘
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みゆきの愛娘

作者:相坂桃花

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    かわいい女の子に、育ってね。


    登録ユーザー星:10 だれでも星:2 閲覧数:626

    みゆきの愛娘 7919文字

     


     美幸は昔から自分の容姿が大嫌いだった。
     女の子らしくない顔立ちに、両親の遺伝子を色濃く受け継いだ骨太な身体つき。
     身長なんて、こんなに欲しくないのに。
     眉毛がこんなに濃ゆいのも、嫌。肌荒れもひどくて、唇は色が薄いのに分厚い。
     女の子なのに、どうして体毛が生えてくるの?
     大嫌いな自身の容姿を鏡で見るたびに、美幸は心を打ち砕かれ、惨めな思いを噛みしめていた。
     せめて、両親がもう少し美しく、もう少し小柄で華奢だったら……。
     肉体が成長する毎に、美幸は両親への不満を募らせていった。
     大人になり、化粧や洋服で自分の容姿をごまかしても、それは結局まがい物なので、美幸が求めるような「綺麗な女の子」や「かわいらしい女の子」とはほど遠い姿にしかならなかった。
     整形という手段が、頭によぎらなかったわけではない。
     けれども、美幸には自分の身体にメスを入れるような勇気は出なかった。
     美幸は自分の容姿をこれ以上にないほど毛嫌いしてはいたが、自分自身のことを嫌いだというわけではなかった。
     学力で他人に劣ることもなければ、運動で負けることもなかった。
     お料理だって裁縫だって、おおよそ“女の子らしい”と言われているものは、なんだってできる。
     容姿さえ理想的であれば、美幸は自分の能力的なものに、不満は一切ないのだ。
     そう。
     容姿さえ、女の子らしく華奢で美しければ……
     どうしても美幸は理想の女の子になりたかった。
     綺麗な顔に、愛らしい華奢な身体つき。シミ一つない、滑らかな白い肌。
     綺麗な女の子なら、きっと汗の匂いだって、甘い香水みたいなはずだ。
     美幸は人一倍、“女らしい美”というものに憧れが強く、その強さは年齢を重ねる毎に、執着へと変わっていった。
     己の容姿をひどく嫌い、相反するように“美しいもの”に異常なほど心を寄せる美幸にも、素敵な男性との出会いがあった。
     彼とは理由があり、真っ当な結婚はできなかったけれども、二人で幸せな生活を始めることはできた。結婚式なんて、挙げられなくてもいい。両親が、結婚に賛成してくれなくてもいい。
     彼がいれば、それでいいと、美幸は思った。
     そもそも、両親が美しい人間であれば、美幸は自身の容姿でこんなにも苦しまなくてよかったのだという思いがちらついていた美幸は、彼との新生活を機に、両親と縁を切ってもいいとすら、考えていた。
    「私、赤ちゃんが欲しい」
     美幸のおねだりに、優しい彼は少しだけ困った顔をして笑った。
     仕事が忙しい彼のことだ。
     きっと、子供を作った後の育児のことなどを考えて、躊躇しているのだろう。
     美幸はそう考えて、少しでも彼の負担にならないようにするには、どうすればいいかと思案した。
    「大丈夫よ。育児では、あなたに迷惑なんかかけないから」
     美幸はそう言って、愛する彼を説得した。
     それからしばらくして、美幸と彼の二人だけの新居に、小さなベビーベッドが増えた。
     ベビーベッドには、綺麗なレースのベビードレスを身にまとった小さな影が一つ。
     美幸は滑々の頬を、優しく撫でる。
     かわいい赤ちゃんに相応しい、綺麗なお洋服。
     こんなにもかわいい子が、私たちの元へ来てくれるなんて……
     幸せを噛みしめて、美幸は痘痕(あばた)の浮かんだ頬を薔薇色に染める。
     高価な美容クリームのおかげで、昔に比べたらだいぶよくはなっているけれども。
     両親は自分の育て方を間違えたのだと、思う。
     生まれつきの容姿に関しては仕方がないのかもしれないけれども、もしも、両親が自分のことを物心がつく前から、“綺麗”になるように育ててくれたら、少しは違っていたのではないか。
     そう思えば思うほど、あのずぼらな両親が自分の親であったこと自体が、不幸の始まりであり、間違いだったのだという確信を強める。
     美幸は自分を美しく産んでくれなかった両親を、とりあけ母親を侮蔑していた。
     遺伝子がどうにもできないのならば、少しでも子供を綺麗にしようと努力くらいすればよかったのだ。それが、同じ女としての母親の責務ではないのか、と。
    「神様は不公平だわ。親を自由に選べるのならば、絶対にあんな人たち選ばないのに」
     大雑把ではあるが、両親は美幸に確かな愛情を示し続けてくれた。
     小さい頃、両親そろって運動会に応援しに来てくれていたり、美幸が熱を出したら母親はずっと付き添って看病をしてくれた。
     悪いことをしたら、怒ることもあったが、それ以上に褒めてくれることが多かったようにも思える。
     傍から見れば、愛情深いよい両親だったのだろう。
     だけど――
    「それでも、あんな親は嫌」
     確かな愛情を示されていながらも。
     自分を美しくしてくれなかった――その一点にこだわり、美幸は両親のことを蔑んでいた。
    「でも、私は違うわ。私はこうやって、あなたが綺麗な女の子になれるように、いっぱいがんばってあげる。白く輝くような肌、艶のある綺麗な髪、澄んだ瞳、赤く色艶のよい唇……。汚いものなんて、あなたには必要がないの。綺麗な、綺麗な女の子にならなくちゃいけないんだから」
     それが、女にとっての幸せだと疑わず。
    「あなたは、私が大事に育てるわ。私の親みたいに手を抜いたりしない」
     自分がどうしようもできないのならば。
     叶えられなかった願いを、子供に託す。
     この子だって、かわいらしく美しい女の子に育てられる方が絶対に幸せに決まっている。
     小さなその身体を抱きしめて、美幸は優しくあやす。
    「かわいいかわいい、私の子」
     彼の仕事が急激に忙しくなったこともあり、美幸は子育てに没頭した。
     実家とは絶縁状態に近く、仕事もやめてしまった美幸には、特に時間を割いて楽しめることがなかったせいもある。
     テレビは暇つぶし程度でしか見ないし、外もあまり行きたくはない。
     美幸は自分の容姿に対する強いコンプレックスから、他人の目にさらされることに耐えがたい苦痛を覚えていたのだ。
     外に出ないのは、この子のため。
     生まれたばかりだもの。外の汚い空気なんて、身体に悪い。
     紫外線で綺麗な肌が荒れてしまうなんて、考えられない。
     買い物なんて、ウェブサービスを使えばどうにでもなる。
     だから、出ない。
    「お外は汚いわ。自動車の排気ガスも身体に悪いし。お部屋の中が一番、綺麗」
     抱っこした小さな身体を、幸せそうに見つめる。
     小さな身体。私が欲しかった、小さな身体。
    「かわいい、女の子に育ててあげる。誰よりも、かわいくて綺麗で素敵な」
     誰もがかわいいと認めてくれる。
     綺麗で、愛らしい女の子に育てることこそ、きっと自分にとって大事な使命に違いないと、美幸は微笑んだ。
     美幸は彼に宣言していた通り、すべての子育てを担った。
     無論、その間彼の生活をサポートすることも忘れない。
     食事の用意に、掃除に洗濯。彼の身に着ける衣服にはすべて、綺麗にアイロンもかける。
     家事と子育て。
     女の幸せって、こういうことなのね……と美幸は充実した日々を送った。




    「本当に馬鹿な女たちよね。子育てが辛いなんて、何を言っているのかしら?」
     暇つぶし程度につけていたテレビから流れる映像をソファに腰掛けながら視聴しながら、美幸は蔑むように言葉を落とした。美幸の腕の中には、小さな身体が収まっている。
     彼は出張に出て、帰ってこない。
     テレビでは、女性の社会復帰と子育てについて語られていた。
     働く女性の大半が、子供を産んでも職場に復帰したい……
     そんなアンケート結果だっただろうか。
     旦那が育児に非協力的で、それが辛いというコメントも多い。
    「女にとって一番の幸せは子育てでしょ。そんなこともわからないようで、よく子供なんて産めたものね。こんな女たちに育てられるなんて、本当に子供たちがかわいそう」
     外に、一切外出しなくなった美幸は、こうやってテレビに対して返答することが多くなったが、美幸自身はその変化を特に何も思わなかった。
     テレビの内容が、子育て問題から、子供の躾に移る。
     投稿者の相談内容に沿って、コメンテーター達がディスカッションをするというものだったが、相談は多岐に渡った。
     それだけ、どこの家庭でも子育てには悩みが尽きないということなのだろう。

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    コメント

    • おめでとうございます\(≧◇≦)/💖💖💖
      遅くなって済みません。
      心に留めていた作品の一つだったのですごく嬉しいです。
      またぜひ、ホラー書いてくださいね。
      • 2 fav
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    • あ、ありがとうございます!
      え、ほら?ほらー((((;゚Д゚))))???
      い、いつか……(;・д・ = ・д・;)
      個人的に、猫村超応援してました……ε≡ヘ( ゚Д゚)ノイイニゲダヨ
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    • おめでとうございます!!!!!しかも大好きなみゆきの愛娘の受賞!!!自分のことのように嬉しいです!!!ヽ(;▽;)ノ
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    • ありがとうございます(о´∀`о)
      ふへへ、おもはゆいです(((UωU` *)(* ´UωU)))
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    • おお!!!改めておめでとうございます!!
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    • うわーうわー!
      ありがとうございます!
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    • おめでとうございます! 相坂さんはやっぱり凄いですね。尊敬します。
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    • ありがとうございます!
      実はこのコメントを見て、結果を知りました(笑)
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    • おめでとうございます!!!
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    • ぴゃっ(o゚Д゚ノ)ノ!!
      あ、ありがとうございます(人´3`*)~♪
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