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シリーズ:春が笑う 4
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春が笑う 4

作者:なつき

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    春が笑う 第4話です。


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    春が笑う 4 0文字

     

     春日は携帯を閉じ、ため息をついた。勇気を振り絞って昼食に誘ってみたが、断られてしまった。
    仕方ない。お弁当でも買いに行こう・・・。
     春日が会社のロビーに出ると、丁度、広末がロビーに入ってきているところだった。
    「春日ちゃん!今からお昼?」
     春日の姿を見つけて、広末は駆けて来る。
    「そうです。広末さんはどうして本社に?」
    「ちょっと用があってね、お昼一緒してもいい?」
    「え、でも用が・・・、」
    「いいから、いいから。」
     広末は半ば強引に春日を外に連れ出した。レストランに入り注文を終えると煙草に火をつけた。
    「あ、煙草いい?」
     火をつけた煙草を指差し、申し訳なさそうに春日に聞いた。
    「どうぞ、」
     春日は笑いながら許した。
    「先に聞けばよかったかな・・・。あ、そうだ、このまえ、大丈夫だった?列車が事故で止まったとき、」
    「あ、・・・。はい、大丈夫、でした・・・・。」
     また、菱也の顔が頭に浮かんできて春日はうつむいてしまう。
    「岩本、間に合った?駅に迎えに行ったんだけど、」
    「え?」
     春日は顔を上げた。
    「だから、岩本。血相変えて飛んで行ったけど、会わなかった?」
     広末がなぜ岩本のことを知ってるのか、春日はわけがわからず、言葉が出てこなかった。
    「春日ちゃん?」
     春日の反応に、広末は怪訝な顔をする。
    「あ、あの、広末さん、岩本さんと、お知り合いなんですか?」
    「え、知り合いっていうか・・・。一応、親友ってことになってるけど、」
     広末は、春日が何を言いたいのかわからない。
    「会社まできちんと送ってもらった?何かあった?」
    「いえ、ご迷惑なので、地下鉄の駅で降ろしていただきました。あの日、岩本さんとご一緒だったんですか?」
     迷惑って・・・、同じ会社に戻るのに・・・。
    「うん、一緒だったよ。ニュースで事故を知って、岩本、春日ちゃんを迎えに行ったんだ。」
    「え、じゃあ、駅で会ったのは偶然じゃなくて・・・、」
     わたしを迎えに来てくれた・・・?春日の指先が震えた。
    「お待たせしました。おまかせランチお二つです。」
     ウエイトレスが春日と広末の前に料理を置いている間、広末は春日を見つめた。
    ほんのり顔を染めて菱也のことを考えている。なんだか妬けた。
    「さ、食べよう。」
     広末に促され、春日は箸を持つが、それ以上手が動かない。
    「冷めちゃうよ?」
    「あ、あの、わたし、岩本さんにきちんとお礼がしたいんですけど、お忙しそうで・・・。
    広末さんからご連絡していただいてもいいですか?なんだか電話はしづらくて・・・、」
     春日の一生懸命さに少しいたずら心を動かされた広末はにんまりとした。
    「同じ会社なんだから、内線で呼び出せばいいじゃない。丁寧に秘書が応対してくれるよ?」
    「え?」
    「岩本菱也。現社長の長男。来月に社長就任予定。」
     春日の目が点になる。
    「もしかしなくても、知らなかった?」
     本当に天然でかわいいな。広末はおかしさをこらえていた。
    「最近まで北京支社勤務だったし、若い子は岩本のこと知らなかっただろうけど、
    この前、社内報にでかでかと顔写真が載ってからけっこう騒がれてるみたいだよ。」
     ・・・社内報。あっ、だからあのとき、笑われたんだ!春日は富山に笑われたのを思い出した。
    穴があったら入りたいって、まさにこのことだ!
    「わたし・・・、もしかしてものすごく失礼なことしてしまったのかも、」
    「失礼って?」
    「だって、わたし、岩本さんが新社長だなんて知らなくて、せっかく送ってくれるっていうのに、
    途中で降りたりして、」
     そりゃあ、知らないのに、ほいほいどこまでも送ってもらうような子じゃないよな。広末は納得する。
    「いやぁ、岩本も富山も面白がってたんじゃない?自分が何者か隠してる方がわるいよ。
    気にしなくていいって。」
    「うん・・・。でも・・・。」
     春日はすっかり落ち込んでしまって、延々とスープをぐるぐるかき混ぜている。
    「さ、食べよう。心配ないって。僕から岩本に連絡するから。」
     広末の言葉を聞いて、春日はゆっくりとスープを口に運んだ。味も何も感じなかった。
    いくら広末に慰められようと、自分が新社長の好意を無下にしたことには変わりはないのだと、
    どんどん気持ちは落ち込んでいった。

     春日と広末が肩を並べて歩いていると、そのすぐそばを高級車が追い越していった。
    その車は岩本製薬本社前に堂々と停車し、運転席から岩本が降りてきた。
    「あっ、」
     岩本の姿を見つけ、春日は思わず声を上げてしまった。その声に菱也はちらりと二人を見たが、
    すぐに視線を戻し助手席のドアを開け、由布子をエスコートする。
    「由布子さん、ひさしぶり!」
     広末が気さくに由布子に声をかけた。
    「あら、珍しい人がいるわ。おひさしぶりね、映一さん。」
     由布子も笑いながら答える。
    「相変わらずきれいだけど、婚約が決まったから、特に輝いて見えるよ。」
    「ふふ、あいかわらずお上手だこと。もうご存知なの?」
     由布子は頬を染めた。そんな由布子を春日は羨望の眼差しで見ていた。
    近くで見ても、なんてきれいな人なんだろう・・・。菱也の隣にピッタリだと思った。
    「映一さんもかわいらしい方とご一緒なのね。」
     春日は由布子が自分を見たので動揺してしまい、思わず広末の袖をぎゅっと握ってしまった。
    その様子を菱也は冷ややかな目で見ていた。
    「そう、かわいいだろ?」
     広末は春日の肩を抱きしめた。
    「由布子、父が待ってるから行こう。広末、またな。」
     菱也が広末と由布子の会話をさえぎるように言葉を発し、由布子の腰に手を回した。
    「ああ、じゃあ、また。」
     広末は春日の肩を抱いたまま菱也と由布子に手を振った。
    春日は颯爽に去っていく二人を、ただただ、見つめていた。
    「春日ちゃん、いい加減抵抗しないと、誤解しちゃうよ?」
    「え?」
     そのとき始めて、春日は広末に肩を抱かれているのに気がついた。
    「わ、ご、ごめんなさい、」
    「いや?僕が引き寄せたんだし。役得だよ。さ、僕らも行こう。」
    「はい。」
     春日は広末の後をとぼとぼとついて歩いた。
     婚約したって言ってた・・・。きれいな人。とてもお似合いな二人。
    もともと別世界の人だとわかっていた。わかっていたのに、なんでこんなに胸が痛むんだろう・・・。
    あの人が自分のためにあの日、迎えにきてくれた。それを知ってしまったから、余計に痛かった・・・。

    「では、失礼します、お父さま。」
    「ああ、今度、家の方にも顔をだしてやってくれ。」
    「はい、近いうちに。」
     菱也と由布子は父と挨拶を交わし、社長室を出た。
    「帰りは一人で帰るわ。忙しいんでしょう?」
     自然と気を遣ってくれる由布子は、もう妻の気品が漂っている。
    「いや、君の店まで送るよ。」
    「ううん、いいの。寄るところもあるし。」
    「つれないな、」
     本気の言葉なのかどうか、菱也は自分でもよくわからない。
    「ふふ、何言ってるの。じゃあ、ここで。今夜電話するわ。」
    「ああ、気をつけて、」
     ロビーで由布子を見送った後、菱也は小さなため息をつき、自分のオフィスに戻った。
    なぜだか、とても疲れる。
    「はい、え?僕もですか?はい、喜んで。ではまた、スケジュールと本人に確認してから連絡します。
    はい、では。」
     ドアを開けると、富山の明るい声が聞こえてきた。どうやら電話を切ったところらしい。
    「何の電話だ?」
    「尾山春日さんからでした。都合のいいときにお礼がしたいと。」
     菱也は怪訝な顔をする。
    「なぜ、おまえの携帯なんだ?」
    「あ、広末さんからの電話だったんですが、途中から尾山さんに代わったんです。
    理事は由布子さんと一緒だから電話するの遠慮したって。」
    「・・・そうか。」
     菱也は自分の携帯を机の上に無造作に投げた。
    「明日の昼は何の予定もありませんけど、どうしますか?由布子さんとお約束でも?」
     冨山はいかにも不機嫌な菱也におそるおそる聞く。が、菱也からの返事はない。
    「僕と広末さんも同席しますが、・・・いいですよね?」
     広末と聞いて菱也の眉が上がった。
    「・・・好きにしろ。」
     春日が広末の袖を握り、広末が春日の肩を抱く。あの光景を思い出して菱也は心の中で舌打ちをした。
    なぜ、自分の携帯に連絡しないのか、なぜあんなにも広末と親しいのか。

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