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シリーズ:星久喧噪記 ー賞金稼ぎのミコー 2
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星久喧噪記 ー賞金稼ぎのミコー 2

作者:唐竹十矢

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    第一章 白騎士達


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    星久喧噪記 ー賞金稼ぎのミコー 2 12017文字

     

    第一章 白騎士たち

     星久市、第三地区西部。別名、騎士団領。
     第三地区の中でも外周に位置するその一画は、比較的人口が少なく、チンピラ達のスラムと化している場所であった。
     そこにリュウイという男が目を付け、白騎士と名付けられた部下達を使い、制圧したのは、一年以上前のことである。
     彼らは、オフィスビルの廃墟を“城”とし、そこを拠点にその勢力範囲を急激に拡張。すでに第三地区の三分の一近くを制圧していた。
     彼らの版図と化した地区は“騎士団領”と呼ばれ、今やリュウイを王とした独立国の様相を呈している。
     白騎士団。そう名乗る結社は、正義の象徴とされる白い騎士を冠してはいるが、団員のほとんどは白騎士などとはほど遠い、私利私欲に満ちたチンピラ連中であった。
     彼らは気まぐれに人を殺し、強盗を繰り返す。金や食料を搾取する。家を焼く。人を掠う。
     騎士団領に半ば閉じ込められる形で生活している住民達は、彼らに搾取され続けるだけの、家畜のような存在に成り下がっているという。
     白騎士団の長であるリュウイは、第一級の賞金首とされていた。幾人もの賞金稼ぎが騎士団領へと乗り込まれたが、帰って来た者は皆無。
     ここ一年、リュウイの首にかかった賞金は日を追うごとに値上がりし、ついには第三地区における最大の賞金首となった。
     その首にかかる賞金は三百万ギャロ。十万から百万が相場とされる賞金首の中にあって、その額は飛び抜けて高額であった。
     その額を聞いて、ミコは躊躇せずにリュウイをターゲットに選んだ。賞金稼ぎとしての箔を付けるには、最適の賞金首だ。
     ミコは極めて質素に灰色のチュニックとズボンを身に纏い、背中には大きめのリュックを背負って、騎士団領の入り口へと向かった。
     星久の一から五まで区分けされた地区のうち、第三地区は元々ビジネス街として成り立っていた地区である。
     人の住まなくなった廃ビルが、林立している。人通りもほとんど無い閑散としたビルの合間を外周に向かって歩いていくと、廃品や廃車によってバリケートが作られた一画にたどり着く。
     外部と、騎士団領を隔てる壁である。
     周辺には白騎士達が右へ左へ、巡回している。上半身裸の痩せた男。シャツにジーパン、腰のベルトにさび付いた剣をぶら下げた小柄な男。コートを羽織った太った男――
     そこにいる者達の装いは、皆バラバラだ。ただ一つ、頭に巻く白いバンダナだけが共通している。
     白いバンダナは、白騎士であることの証しである。
    (あんなんで、騎士を名乗ってんだからねぇ)
     騎士を名乗ってはいるが、それはあくまでも名乗っているだけである。
     実際の白騎士達は、その名称のイメージからはほど遠く、歴史の本に載っているようなプレートメイルを纏い、馬に乗っている者など当然いない。
     かつての白騎士団はプレートメイルとまではいかないものの、もう少し身なりは整っていたそうだが、今では身も心も薄汚れたチンピラの群れに成り下がっている。
    「止まれ」
     バリケードの中央に設けられた入り口の前着くと、白騎士の一人が声をかけてきた。
    「何のようだ」
    「はい」
     ミコは、軽く頭を下げて、言った。
    「私は、食料品を売り歩いて商売をしています。この騎士団領の中は食糧が不足してるって聞きましたので。住民の方々に売れば、いい商売になるかな、って思いまして」
    「商売!?」
     男は素っ頓狂な声を上げて、笑い出した。ぎゃははは。周りにいた騎士達も釣られて笑い出す。ヤジが飛ぶ。
    「あいつら、金なんて持ってねぇよ」
    「はぁ……」
     ミコも愛想を取り繕って、一緒に引きつった笑みを浮かべる。
    「おまえ、一人で来たのか?」
    「あ、はい」
    「……」
     不審な視線が、ミコの上から下までを行き来する。ヴァンクと同じく、男ばかりで物騒なこのような場所に女一人で足を踏み入れれば、怪しまれるのは当然だ。ミコもそんなことは承知していた。
    「あ、あの、通していただけませんか?」
    「ああ、いいぜ。大歓迎だよ」
     含みのある笑みを浮かべながら、男は相変わらずミコの全身を見回している。
    「だけどな、その前にちょっとそのリュックの中身を見せてもらおうか」
    「あ、はい」
     ミコはいわれたとおりにリュックを開けた。青臭い香りが、ぷうんとあふれてくる。
     男は眉をひそめた。中に入っていたのは、パンやハム、いくつかの野菜であった。
     男は隅々まで捜したが、ほかにはなにも出てこない。
    「なんだよ。食いもんだけじゃねぇか」
    「え、まあ、食料売りに行くわけですから……」
     他に、武器か何かが入っていると期待していたのだろう。あまりにも拍子抜けな中身に、男は唇をとがらすが、その目は野菜から離れない。
    「しかしうまそうだな。こんな食材、どこで手に入れたんだよ」
     あまり食べたことがないのだろう。食糧事情の悪いこの町の中では、新鮮な食材は高級品となる。それをあえて用意してきた。出費は痛かったが、あまり粗末な代物では説得力がない。
    「ええ、列強とちょっとしたコネがありましてね。それなりに、いい物を仕入れられるんですよ」
    「列強とコネだと?」
     男の目元に、しわが寄る。
     列強。星久の住民にとって、その言葉にはある種の畏怖がある。
     かつて星久を侵略した、複数の国々の連合体を示す言葉だが、戦時中、町の外の情報は市庁舎によって徹底的に統制されていたため、列強についての正確な情報を知る者は少ない。
     具体的にどことどこの国の連合なのかを言える者も多くはなく、中には“列強”という名の国が存在していると思っている者もいる。
     だがそれだけに、列強と言う響きには、“町の外にある何か得体の知れない存在”という印象があり、その言葉を聞いた者は、大抵が薄気味悪い気持ちになる。
     ミコはそれを十分に心得ていた。ミコ自身、列強のことなど全然知らないし、もちろんコネなど無いが、うまくいけば相手が勝手に萎縮してくれる。
    「列強ねぇ……一つ、もらっていいか」
    「ええ、それはかまいませんが」
     男はトマトを取り出すと、そのままかじりつく。その後も勝手に食料を取り出し、あたりにいた連中に放り投げている。
     一つって言ったじゃないか。そんな抗議は無意味だろうから、あえて口をつぐむ。連中をいい気分にするのは、悪いことではない。元々これも、そういう意図で持ってきた。
    「うまいな」
     男は指に付いたトマトの汁をなめながら、言った。
    「だけどこんなもん、すぐになくなっちまうな。儲からねぇだろ」
    「まあ、地道に行きます。無くなったら、また仕入れてきますので」
    「列強からか?」
     男は嘲るように言った。この男には、列強という言葉は効果がない様子だった。
    「ええ、そうですね。何度も行き来することになると思いますが、よろしくお願いします」
    「俺が、買ってやるよ」
     男はミコの顔をまじまじと見ながら言う。
    「まあ、それはありがたいですけど……」
    (一体なにを買うつもりなんだか)
     ミコは小さくため息をついた。だんだんと交渉が面倒くさくなってきた。こういうやりとりは、あまり得意ではないのだ。
     ポケットから一枚の紙を取り出した。
     ――こいつを見せれば、たぶん通してもらえるんじゃないかな。
     そう言ってミコにこれを渡してくれたのは、あのユガだった。どこかの商人の紹介状らしい。
    「そろそろ、中に入れてくれませんか? これで、身分の証明になると思いますけど」
    「身分証明だって?」
     そんなもの。男はぶつぶつ言いながら、それに目を通した。が、
    「お……」
     その目の色が変わる。
    「おまえ、あいつの知り合いか」
    「ええ、まあ」
     ミコは当たり前のように答えた。あいつが誰だかなんてもちろん知らない。
    「仕方ねぇな」
     男は本当に名残惜しそうにミコの顔を眺めつつ、バリケードの門を開けた。
    「え? 通してくれるんですか!?」
    「あ?」
    「あ、いや、なんでもないです」
     意外だった。あんな紙切れ一つがここまで効果があるとは。ダメ元で見せてみただけなのだ。いちおう買収のための資金も用意しておいたし。一戦交えること覚悟していた。
    「ほら、早く行けよ」
     とはいえ、通してもらえるに越したことはない。素直に門を通ることにした。

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    コメント

    作者紹介

    • 唐竹十矢
    • 作品投稿数:9  累計獲得星数:29
    • 以前パピレスの人気投票に参加させていただいておりました。
      まずはそこに上げていた作品をUPしていこうと思います。
      よろしくお願いいたします。

      以下は自著となります。
      「フライレン大陸物語 青き光の王子」
      http://www.papy.co.jp/act/books/1-53527/
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