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シリーズ:トリック 2
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トリック 2

作者:風呂助

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    お題:疲れた牢屋/必須要素:1000字以内


    登録ユーザー星:5 だれでも星:0 閲覧数:679

    トリック 2 3127文字

     

     前に歩くより、後ろへ歩く方が技術が必要であるように
    墜落することは、飛び立つことよりも遥かに自然。
    自然というのは、自由とは真逆である事が多い。

     左右上下のバランスを安定させたいなら、むしろ当然。

     宇宙の全てが人工であれば、素直に人間基準になるとしても
    実際、自然は全く人間基準ではない。
    どちらかっていうと、太陽系は論外として母なる地球でも
    大体は無理設定。確かにチートクラスの天才はいる。
    でも自然制限から逸脱する事は無い。

     そう思いながら、ステファンスがニコロデ大学の
    一般講義すらも聴講に行ってないくせに
    必ず、これは成功できると主張する根拠が
    さっぱり解らない。

     この不恰好なガラクタは、空を飛ぶのだという。
    しかも昼の雁のように、夜の蝙蝠の如く自在に。

     馬鹿馬鹿しい。
    狂気のように熱中している。

     私はそんなにヒマではないし、
    午前の仕事が済んだら、急いで昼食を取って
    夕方まではヴァイオリンを練習しなくてはいけない。
     趣味ではなく、もっと仕事でありたい。
    私にとっては大切な時間でもある。

     とはいえ、ステファンスもまた真剣であり
    彼には、この街で唯一頼りになる男だったし
     私達、兄妹は住居や仕事の斡旋など感謝が多い。
    何よりも、故郷を失う以前からの旧友でもある。

    「パレット!」

     ステファンスは、私を必ず呼び間違える。
    これは故郷の南部の訛りに由来しているのだが
    私は荷役台でもないし、調色板でもない。

    「パケットと発音してくれないなら、手は貸さないよ。」

     そう言い返すが、ステファンスは全く無頓着に
    ラチェットレンチを寄越してくれと言っている。
    仕方が無く、レンチを彼に持っていきながら

    「パ・ケ・ッ・ト!」

    と言いながら、ガラクタの下で
    潜り込んでるのか下敷きになってるのか
    よく判別できないステファンスが、動いていそうな辺りへ
    レンチを押し込むと、ステファンスは

    「ああ、ラ・チェ・ッ・ト!な、判るようになったじゃないか。」

    呆れてしまう。まったく会話にならないから困る。
    こんな作業に付き合っていたら、日が暮れてしまう。

     妹のアリアナが食堂で給仕の仕事を得たのも
    ステファンスのお陰なのは判ってるし
    その妹のコネでヴァイオリンで、なんとか日銭を賄っているのは
    私の甲斐性の無いせいだとも、重々理解している。

     ****************

     この国で市民権を得るのはとても大変なのだ。

     ステファンスの出身が、この国だった事で
    故郷が焼け野原になった時も、まだ大学生だったが
    別荘のある湖は、私達の家と反対側にあった。

     そこに住んでいたステファンスは、
    自分の住まいよりも、真っ先に私達の所へ来た。

    「ヴァイオリンを守ってくれたアリーに感謝して
    腹が空いているなら、俺と行こう。」

     妹のアリアナをステファンスは、アリーと呼ぶ。
    アリアナは、潰れた私達の実家を見つめながら
    私のヴァイオリンだけを握り締めていた。

     つまるところ。

     襲撃にあった時、私は家を留守にしていたので
    学校から戻ったアリアナは、随分とガレキになった
    我が家を漁ったらしい。血塗れの手を覚えている。

     無差別襲撃の知らせで、私が仕事から家に大急ぎに
    戻った時、アリアナは血塗れの手で、私の手を握った。

    「良かった。アニキの手が無事で。」

     ****************

     この国へ来てからは、奇妙な事ばかりだ。
    馬4頭を操る戦車の巨大な車輪の音も
    家や穀倉が焼ける匂いもしない。

     機械的な産業文明というものなのか。 

     ステファンスが居なかったら、おそらく
    私は疲れた牢屋生活だったかもしれない。

     もう生まれ育った国がどうなったのかわからない。

     素晴らしい音楽が、自然を求めるように人工的に録音。
    そう、録音されていたりする。
    熱湯を入れて数分待つだけで、出来上がる簡易食品もある。
    インスタント食品と呼ぶものだ。

     ステファンスに、これでは私のヴァイオリンは無用では?
    そのように訊いたが、ステファンスは軽々と言った。

    「空が俺達を必要としているなんて、ありえない。
    俺が空を欲しがってるんだ。簡単で自然な事だ。」
    と、笑って続けた。

     なるほど。一理あるかもしれない。

    「但し、市民権を獲得するまでには信頼は必要だ。
    まぁ、失うよりは難しいってだけ。」

     事実、録音された音楽を購入出来るのは裕福な家庭で
    アリアナの持ち前のバイタリティに、信頼を寄せてくれた
    食堂兼酒場の”CATBAR”のマスターは
    今夜からすぐに弾いて貰えるか?と訊いてきた。
    即答して、私はヴァイオリンを毎晩、弾いている。


     ただ、あの日、アリアナが友人だと紹介してくれた
    素晴らしいピアノパートナーに再会出来ない。
     アリアナに訊いてもピアノのお嬢さんディルは、
    裕福な家庭らしく、中々、夜に外出するのは難しいらしい。
    もしも、もう一度でいいから彼女のピアノに合わせて

     スコーン。

     小さなボルトが頭に当たった。痛くは無いが虚はつかれた。
    ステファンがガラクタから、這い出してきて私に投げた。
    そして逆の手で工具箱を指している。

    「何をボケッとしてんだ。又、ピアノのお嬢さんか?
    無理無理。やめとけやめとけ。」

     私は咄嗟にムキになって工具箱と言葉を突っ返した。

    「身分か?市民権か?音楽を合奏するのに関係あるのか?
    この気持ちを表現するなら、1000字以内でも治まらない!
    1000曲弾いても落ち着かない!」

     工具箱から何やら取り出して、またステファンスは
    ガラクタの中に入ってしまった。
    まるでネズミかコウモリだ。巣穴から声がする。

    「そうじゃねえさ。ボケッとしてるから
    タラのフライを、ウィズに横取りされてるって言ったんだ。」

     そう言われてベンチの横の、弁当から
    ポテトだけ残したまま、白身魚が消えている。
    あの灰色のイタズラ猫も、姿が全くみえない。

     早業だな。

     この辺の猫は、どいつもこいつも犬でさえ
    ”CATBAR”の『おかみさん』こと灰色猫のウィズに
    頭が上がらない。私が昼飯を盗られるのも四回目だ。
    ウィズを怒って追っかければ、結局はアリアナが怒る。

    「アリアナにしか懐かないって、マスターも言ってたぜ。」

     笑いながら、ステファンスはゴソゴソやってる。

     でも、たった1度だけ。それは数分の出来事。
    まるで、あのピアノのお嬢さんのように1度だけ。
     ヴァイオリンを終えて、閉店を手伝ってゴミを
    裏口へ持っていった時に、細い黒猫がウィズと
    親しげにしてるように感じて、見てしまった。
     二匹ともそのまま、草むらへ消えた。
    あの黒猫も、あの時しか見た事が無い。

     だがアリアナやマスターに訊いたら
    毛並みの良い細い黒猫は、時々くるのだそうだ。
    野良なのか飼い猫なのかも、よく判らないらしい。

     しかも、ミルクをだそうと手を鳴らそうと
    人間には全く興味が無い素振りで
    逆に脅かしても、びくともしない。

     自然に自由な黒猫なのか。

     何か私は期待しているのだろうか。
    いま充分に満ちているじゃないか。
    足りないのは白身魚のオカズくらいだ。

     いままで現実を見た。
    これからはもっと見るのだろう。
    夢を見てどうする。練習しよう。

     ガラクタをノックして、ステファンスに言った。

     ヴァイオリンを弾くから、用があればそこらのネジでも
    投げてくれと。ステファンスは「ん。」と言ったままだ。
    私は弁当を片付けて、ヴァイオリンの弦を合わせながら

    「これ、本当に飛ぶのかい?」

     と、ステファンスに訊いた。
    彼は、軽々と言った。

    「飛ぶよ。墜落より難しいってだけだ。」

     空か。

     そう思って空を見上げた。
    黒い鳥のようなモノが飛んでる。
    コウモリのような気がした。
    昼も夜も全て、ガラクタが飛ぶようなモノだ。

     飛ぶのかねえコイツは。
    ステファンスは高所恐怖症なので、屋根の修理も出来ない。
    嫌な予感がする。

     振り払って私は、ヴァイオリンを弾き始めた。
    今夜の為に。

     コウモリは食堂の方へ飛んでいって見えなくなった。
    悪くも無い予感も何故かする。

     今夜の為に。

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    コメント

    • 風邪ですかっ!?レスなんかいいですから、まずは治してくださいっ!Σ(゚Д゚)

      洋書っぽいの、別に悪くないと思いますよ?
      これはこれで手法でしょうw
      • 4 fav
      • Re 返信

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    • ありがとうございます!
      お陰様で風邪の方も順調で、
      ぶり返さないように気をつけます!><
      アドバイス頂けて嬉しいです!ありがとうございます!ヽ(´・ヮ・`)
      • 2 fav

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    • 書き方が洋書の翻訳版ぽいですねーw
      「自然は人間基準ではない」の一言には奥が深いと唸らされました。
      ただ1小節だけわかりにくいところが・・・。

      「ステファンスの出身が、この国だった事で
      故郷が焼け野原になった時も、まだ大学生だったが
      別荘のある湖は、私達の家と反対側にあった。」

      最初と最後を繋いでも、ステファンスの出身と湖が反対側にあったことの意味が繋がらないです。多分この1小節の中に文言が3~4つ入ってるんだと思いますが、それが一緒くたになっちゃってます。きっとこのとき、筆が進んでいたんでしょうねw
      分けたらわかりやすくなると思いますw
      • 4 fav
      • Re 返信

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    • カール(絵ノ森 亨) さん>風邪にて遅レス御容赦です!m(_)m
      アドバイスありがとうございます!勉強になります!
      本当にこういうキャラクターが生きてる気持ちを大事にしたいです!
      洋書臭は海外キャラがでると相棒や友人からも結構指摘され、お恥かしい限りです。ありがとうございます!
      • 2 fav

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