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シリーズ:気高い朝食
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気高い朝食

作者:風呂助

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    お題:気高い朝飯


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    気高い朝食 4773文字

     

     朝6時、起床。

     体調の変化、状態を確認する。
    問題点が無い。(あった事は特に無い)
     リュカーオーンの一族の末裔として
    現当主になって以来、1度も確認は怠らない。
    まだ262年間しか過ぎていないが。

     洗顔や歯磨き等を済ませた頃に
    執事の者が、扉をノックする。

     普段通りに入室を促すと
    彼は移動式キャスターの付いたダブルハンガーを
    室内へ運び込む。

    「おはようございます。お嬢様。
    本日はいかが致しましょう。」

     この男の名前を知らないが
    執事である以上、着替え程度で
    我が身に羞恥心などは無い。
    使用人とは道具でしかない為だ。

    「本日は曇天であったのですが、
    先ほどから少しばかりの雨がありまして、
    傘を用いる者が多い様子です。
    上空からでも、建造物を背になさって頂ければ、
    お好みの食材を吟味できるかと思う所存です。」

     自分で摂取する食料は自身で選択して確保する。
    これは代々、この家の慣わしでもある。
    獲物を捕獲した時、生死を別にして
    多くの返り血でドレスを汚す事は珍しくない。

     代わり等、幾らでもあるとはいえど
    私にも「お気に入り」というのはあるのだ。
    最も好んでいるのは、素肌と毛皮の二種なのだが。

     無論、毛皮のままに外へ狩りへ出るのも
    一興だとは、よく思うのだが
    血筋か性格かは興味がないものの
    仕留めた直後に全裸に戻るのは、聊か恥である。

     人間の常識や感情には、共感しないだろう。
    素肌を見せることではなく、それをこそ
    本能というのか、虚飾というのか。
    ここ数百年程、それは考えている。

     分厚い雲に染めて、グレーのドレスを選ぶ。
    ドレスは当然として、革の靴も執事の男が履かせる。
    私は男の跪いた太ももに足をのせるだけだ。
    手入れと髪のセットが終る頃。


     朝7時、屋敷内を一瞥して歩く。

     下女が深く礼をして、仕事へ戻っていく。
    執事の男は「狩り」に同行するかどうかを
    毎日確認してくる。
    つまり、後始末と獲物の運搬を示している。
    普段ならば当然、無駄なく有用に仕事を任せるが

     良くない日

     というクリーンな気持ちになる事があるのだ。
    そういう日には犬歯が欠けたり、耳慣れない音楽が聴こえる気がしたり、
    血塗れのドレス姿を路地裏で目撃された事もある。

     その日は被害者、目撃者を装って、病院から脱出した。
    こういう時、執事の男は常に自家用車を待機させている。
    すなわち何が最善なのかは、私にもワカラナイのだ。
    獲物になる被害者の抵抗こそが、最善でないとは限らない。

     ともあれ朝食まで、あと一時間しかない。
    解体以外の調理が必要ないからといって
    時間を無駄にするのは好きじゃないし
    家風でもない。

     我々には別の種族としての本質がある。
    身に纏うのは隠蔽ではなく、利便性でしかない。
    故に時間による自己拘束を厭わない。

     シキタリ。

     曇り空や雨の日は体調がズレている事がある。
    具合が悪いとかではなく、眠ったまま動いてるような
    そういう気持ちが、陽が高くなるにつれて憂鬱を押し付ける。
    実際の天候は無関係で、実際の星の方が身近なのだろう。

     1度だけだが、狩りの真っ最中に眠ってしまった事さえある。
    執事の男が同行していなかったら、危険という体験を
    したのかもしれないが、いまとなっては不明である。

     門をでる。

     以前、吸血鬼という架空の怪物が登場する本を読んだ。
    私は人間が演じる映像では観れない。
    全てのキャストが餌にしか見えないから。
    従って挿絵すら無い本を選んだ。

     随分と不自由な存在らしい。
    ユニークだったし、滑稽だった。
    地域や時代でも変化してるようだが
    開発途上国が先進国になったり、また貧困に身を窶すのと
    大差は無いような気がした。

     この雨だとか、雲っていても然り晴天なら尚更に
    苦手とするとも書いてあった。

     こういう安全策を記しておきたがる、
    人間の臆病は、狩る時に有用な事も偶にはあるが
    一部の人間による勝手な、ゲームルールでは
    ニンニクやら十字架なんかにも弱い場合もある。

     最終的には心臓に杭を打たれ、遺体は残すという物を読んだ。
    興味深かったのは、唯一、私達の一族との共通点、
    「銀の弾丸」への記述のあった事だ。


     さて、誰が確かめたのだろうか?


     いずれにせよ生死の境で、起こる出来事も
    その時の脳裏をよぎる感覚も、何が世に読み戻すかも
    私たちは知りえる術が無い。
    狩りをして、食べ、人間より少し長い時間を過ごして死ぬか
    単に私自身が獲物として、先に消えるかそれだけだ。

     わたしは纏ったグレーのドレスを、翼のように翻す。
    返り血は生身により近い温度で受けよう。
    全身に狼の毛を鋭い針のように伸ばす。
    牙が巨大化し、私は「銀の犬」となる。

     食う為に従う犬。

     世の人間は私のような一族を
    「狼男、狼女?(魔女かも知れぬ)」などと呼ぶらしい。
    知ったことではないし、我々の責任でもない。
    但し、人間どもは我が種族は吠えたけない事を知らぬ。

     獲物は素早く確保する、手間暇はかけない。
    爪で裂き、牙で仕留める。
    ドレスの内側に生暖かく湿った生血が
    私に確認する事を要求してくる。
    262年間は怠っていない。

     帰宅すると執事の男は出迎えながら、バスルームで血を洗うか、
    血が冷えて固まるの確かめながら、別のドレスに着替えを致しますか?
    それとも朝食を取りやめて、休息をなさてから昼食の素材としますか。
    この場合の血抜きは滞り無く。


     朝8時、普段なら既に食卓に座っている時間。

     そこで私は執事の男に三つの質問をしてみた。
    執事の男は如何なるご質問にも忠実のままにと言う。

    「まず一つ目、あなたは誰?」

     この質問には何の躊躇もなく、丁寧で落ち着き払って即答してきた。

    「私は名は御座いません、その代わりに神の加護によってお嬢様をお守り出来ます。」

     予想はしていたが、やはり自分と近くとも同種族ではないようだ。
    少なくとも私は神に無縁だ。その為の結節点のようなものかもしれない。
    実は興味が無かった。

    「では二つ目、名前か他者から呼ばれたことがあるなら、その答を。」

     この質問では執事の男は、少し血の気が引いたような素振りだったが
    それさえも嘘に感じていた。

    「私は”ウールヴヘジン”と呼ばれていた時期がありました。
    個人的な固有名詞は持っておりません。またその呼び名も数百年程前から
    どなたをお使いになっていません。お嬢様を含めて当家の
    全ての御当主、御一族の方々も同じに御座います。」

     古い話に興味が無いという訳じゃない。
    きっと私に関与しないと思う。

    「それでは、最期の質問なのだけれど。」

    「はい、お嬢様、何なりと。」

    「本日の遅めの朝食は、ウールヴヘジン、貴方を食する事にする。」

    「畏まりました。では、食堂にてお待ち下さいませ。」

    「ご苦労。」


     朝9時、朝食と葬儀。
    仕留めた直後に全裸に戻るのは、聊か恥である。

    人間の常識や感情には、共感しないだろう。
    素肌を見せることではなく、それをこそ
    本能というのか、虚飾というのか。
    ここ数百年程、それは考えている。

    分厚い雲に染めて、グレーのドレスを選ぶ。
    ドレスは当然として、革の靴も執事の男が履かせる。
    私は男の跪いた太ももに足をのせるだけだ。
    手入れと髪のセットが終る頃。


    朝7時、屋敷内を一瞥して歩く。

    下女が深く礼をして、仕事へ戻っていく。
    執事の男は「狩り」に同行するかどうかを
    毎日確認してくる。
    つまり、後始末と獲物の運搬を示している。
    普段ならば当然、無駄なく有用に仕事を任せるが

    良くない日

    というクリーンな気持ちになる事があるのだ。
    そういう日には犬歯が欠けたり、耳慣れない音楽が聴こえる気がしたり、
    血塗れのドレス姿を路地裏で目撃された事もある。

    その日は被害者、目撃者を装って、病院から脱出した。
    こういう時、執事の男は常に自家用車を待機させている。
    すなわち何が最善なのかは、私にもワカラナイのだ。
    獲物になる被害者の抵抗こそが、最善でないとは限らない。

    ともあれ朝食まで、あと一時間しかない。
    解体以外の調理が必要ないからといって
    時間を無駄にするのは好きじゃないし
    家風でもない。

    我々には別の種族としての本質がある。
    身に纏うのは隠蔽ではなく、利便性でしかない。
    故に時間による自己拘束を厭わない。

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