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シリーズ:いい人は正義で自分を裏切る
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いい人は正義で自分を裏切る

作者:かぼちゃの骸

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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     三作目、お面を拾って、捨てる話。
     


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    いい人は正義で自分を裏切る 5792文字

     





     俺が捨てたはずのお面は、よく知らない女の子に投げつけられて戻ってきた。
     もう夜も遅く、この前の小火騒ぎでゴミの日は遥か彼方だ。
    「なんなんだよ」
    「喃喃? あぁ、難しい言葉知ってますね」
     知らないよ。
     その喃喃じゃ無いんだよ。小言で何かを喋っているようだよって、不自然だろ。そもそもこのくだりが解りづらい。
    「あ、そんな事よりもなんで私を捨てたんですか!」  
    「逆にさ、喋るお面が捨てられない道理って何」
    「私を被ればものすごい力が付くんですよ? 世界征服も夢じゃないんですよ?」 
     このお面を被って、国会議事堂に乗り込むわけか……そんなシュールな悪役にはなりたくない。
     そもそも、本当にヒーローになれても、戦うべき敵が居なければ意味など無い。
    「あ、世界征服したいんですね! いいでしょう、私も乗り気では無いんですけど、言うなれば私は拳銃、どんな使い方をされようと文句は言えません。哀しい道具の定めです」
     俺が世界征服をすることについて考えをめぐらせていると勘違いした尾万が調子付く。
     しかし、乗り気では無いといいながらぐいぐい来過ぎではないだろうか。
    「したくない」
    「……私考えたんです。貴方は私のことを知らないからそんなことが言えるんです。私のことをちょっと生ゴミの匂いがついた、縁日で良く売ってるお面だと思ってるでしょう?」
     まぁ、喋るお面日本広しどころか、日本がアメリカほどの国土があっても、絶対に無い。
     もっと言えば屋台で威勢のいい兄ちゃんがいらっしゃいと、喋るお面を売っていたら、お面も買ってとか言うんだろう。喧しい事この上ない。
     しかし、まぁ、喋るという点を除いて大体合っていたので、頷いて見せた。
    「まずは私を被ると、どんないい事があるかを紹介します! まず友達が沢山出来ます」
     胡散臭い! これなら、手からビームが出るとか言われた方が信じられた。百歩譲ってお前は誰かを洗脳するつもりか。
    「次にですね、手からビームが出ます」
     いや、信じないけどな。
    「最後に、誰かを守れます」
     



     ――誰かを守れる?
     俺はいつの間にか、お面を手に取っていた。
     お面を裏側にして、両手で顔の前に持ってくる。そして手首を内側に捻る。
    「痛い痛い痛い! 折れる! 割れちゃいます!」
    「なんかムカつく」
    「ごめんなさい! 自分で自分の言葉を気に入って一寸どや顔になってごめんなさい!」
     このお面硬い。
     全力でやってみたんだが、曲がりもしない。
    「トンカチとかあったかな」
    「あれれ、私の話聞いてました? あれ?」
     玄関に、少し大きめのが在ったので、まな板の上にお面を置いて思いっきり叩きつける。
    「いだぁぁぁぁぁ」
     ひびすら入らないだと。いや、所詮こいつはプラスチック、俺が非力なだけだ。もう一度、今度はまな板後と砕く勢いで叩きつける。
    「ぎゃぁぁぁぁぁ」
    「おかしい」
    「貴方は悪魔か、悪魔なのか。私じゃなかったらばらばらですよ」
     元気じゃん。
    「こんな人だと思ってなかった! 隣の家のポストに投函してください!」
     もちろんすぐに投函した。ごめんなさい隣の人。俺はスキップしながら帰ります。



     ※
     
     私は大宮鷹(たか)。苦節三十年。同じ会社に骨身を惜しまず謙譲してきた。
     妻のお帰りなさいといってらっしゃいだけが、家族を感じる時間であったし、正直、六十万の浄水器を買ってきたときと、百万の絵画を買われた時にはお帰りなさいとい着歌をケータイに登録して、代わりに妻と離婚しようとも思ったことも在った。
     しかし、やはり肉声はいい。これで一日頑張れる。
     と昨日までは思っていた。
     一日の中で、もっとも幸せな時間はただ私の気を重くするばかりで、公園のブランコを漕ぐ力にもなりはしなかった。
     
     そう、父さんは倒産。
     いや、単に首になった。フャイヤー、リストラ、解雇、なんと言い換えてもいい。事実は変わらない。
     私はこの辛さを誰かに聞いて欲しかった、誰にもいえない悩みではあったが、そう言う願望はあったのだ。そこで郵便ポストから出てきた喋るお面。最初は私の頭がストレスでいかれたのかと思ったが、どうやら本当に喋るお面らしい。中国語も話せるし、信憑性は高い。
    「私はね、何も悪いことはしていないんだ。確かに多くの成功をしてきたわけではないが、丁寧に仕事をしてよくお得意先からも褒められていたんだ。それなのに、上司の失敗を押し付けられてね……よくある話なのかもしれないが、もう完全に上司のミスで立ち行かなくなった事業の責任者にされて、其処で起きていた損害を責められて首さ」
    「う゛ぁ、そんな、酷すぎますよぉ。鷹さんは何も悪くないのに、会社のために頑張ってきたのにぃ」
     泣いてくれる人が居る。例えそれが、お面であっても慰められた。
    「さ、今日も頑張るか」
    「何処に、いぐんです?」
    「就職活動さ、家族を路頭に迷わせるわけには行かないからな」
    「う゛あああああああ」
     ハローワークで年齢を言うと、顔をしかめられた。
    「いやぁ、その年で? むりですねぇ、それにリストラされたおっさんを雇ってくれるところもないですよ」
    「ふざけないでください! 貴方の仕事でしょ! お前が首になればいいんだ!」
    「何かいいましたか?」
     お面を入れていたバックの中で、叫ばれたので、必死に抑える。怪訝な顔をする受付の人に苦笑いを浮かべる。
    「まぁ、仕事なんでね。やりますよっと」
     其処から数分待っていると、三件の会社を紹介された。
     一つはゴミ処理場の清掃員、牛乳配達、新聞配達。これはバイトではないのか。
    「いや、なかなかいい資格持ってるんで、ありましたよ。よかったですね」
     何処に簿記上級と伝統工芸士(竹工品)を何処で生かせというのか。
    「おい、兄ちゃん! 何で上から目線なんですか? 体力学力経験全てにおいてお前は鷹さんに劣ってるんだよぉ!」
    「ん? ケータイ鳴ってますよ」
     これはケータイじゃなくて、お面なんですというわけにもいかず、苦笑いをしながら、そそくさとハローワークを出た。

     公園に戻って、またブランコの上。
    「私悔しいです。鷹さんは事務の鷹と言われていたんでしょう? 剣道もやってらっしゃるのに……心技体! ですよね? こんなにいい人なのになぁ」
     ちょっと話に色を付けすぎただろうか。確かに鷹とは言われていたが、多分あれは私の名前を馬鹿にする色合いが強いだろう。それよか、そのまま呼んでいるだけに過ぎない。それに剣道もたしなむ程度だ。最近は特に忙しかったので、鍛錬も怠っている。
    「はぁ、確かにこんなおっさん。誰も欲しくなんてないよなぁ」
     なんだか、自分のもってるものが全て空虚なものに思えて、前がよく見えなくなった。 
     こちらを見ている子供がいるのに気付いて、お面を被って、声無く泣いた。そういえば子供の頃、父にもこんなお面を買ってもらった。 
    (……鷹さん)
     今思えば、ただ、明日になれば何かいいことあるはずだと耐え忍んできただけの日々だった。人のミスは全て明日があるさと許してきた。こんなことを言うのはなんだが、会社の役員全員、俺への借りがあるはずだ。そのくらい小さい会社だったはずだ。それが一部上場した頃から、私は窓際に席を置くようになった。
    「私もさ、こうなると、もっと感謝されるような人助けがしたかったよ。会社で、人助けをしてもな、誰にも褒められないんだ。よくあのミスを取り返したなんて誰も言わない。ほっといても何も言われない」
    (なんで褒められないんですか?) 
    「ミスした本人に気を使うんだろうなぁ。それに私がそれをするとね、不思議な事に責任が私にあることにされたり、なにより人には言えないミスが多いんだよ」 
     だから、私はヒーローみたいに颯爽と怪獣から人を守って、ありがとうと言われたいと思う。
     自分でもばかげた妄想だと思う。
     こんな子供っぽいことを思うのは、こんなお面を被っているからだろうか。きっとそうだ。
    (なりましょうよ、ヒーローに)
     私は本当にどうかしていたんかもしれない。そんな言葉にただ頷いて、立ち上がった。ブランコを漕ぐ力もなかったその足は、驚くほど力に満ちていた。

     私はコンビニの前にやってきた。

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    作者紹介

    • かぼちゃの骸
    • 作品投稿数:4  累計獲得星数:3
    • 海苔が好きです。
      なろうも見てね。



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