upppiは縦読みコミック(タテコミ)・イラスト・小説が無料で楽しめるサービスです!

ようこそ!ゲストさん
シリーズ:ドメスティック傷ダラケ黒キャット
閲覧数の合計:128

作品を編集する

  • シリーズタイトル・ジャンルの修正
  • この章を改訂する
  • この章を削除する
  • シリーズに作品を追加する
  • 表紙画像の変更

ドメスティック傷ダラケ黒キャット

作者:かぼちゃ

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

     喋るタイプのヒーローのお面を巡る、誰でも持ってる自分のヒーロー像と、成りたいものと成れないものと、青春とこの社会の理不尽と戦う人の何処にでもある武勇伝。
     お面を拾って、捨てて終わる話。


    登録ユーザー星:0 だれでも星:0 閲覧数:128

    ドメスティック傷ダラケ黒キャット 9228文字

     



     プロローグ

     夏休み前。俺の高校は、夏休みの間も講習があるが、そんなものは休んでしまっても問題は無いので、今日帰ったら、明日から一ヶ月の間は学校に来なくていい。
     俺は変わる。
     メルアドも変えた、しかもメルアドを変えたというメールは誰にも送っていない。今思えば、俺をパシリやサンドバック、陰口のネタにしてやがって。
     さらに自身の電話帳も初期化する。
     俺をパシリにする奴、陰口を聞こえるところで言う奴、暴力を振るう奴、全員の出席番号は網羅した。手には大量の靴。にっくきあいつらはどうせ今頃教室でカラオケに行く計画でも立てているんだろう。
     下駄箱で、お前らの靴をランダムに入れ替えた。
     しかし、ここで誰にも言わずに逃げるから、俺はいつまでたっても変われないんだろう。
     
     ※


     俺は高校生だ。高校生ってのは意外と暇。いや、そうじゃない奴の方が多いんだが、この立川瞬はとりあえず暇をもてあましている。
    「お試し?」
     そう呟いてみるが、誰も応える奴はいない。
     家のポストに入っていたのは、超能力者、勇者、総理大臣、ヒーロー、スパイのお試し広告? だった。
     広告には、一寸自分が解らない。このままじゃ自分探しのたびに出ちゃうよという其処の貴方! という歌い出しで始まっている。これを書いた奴とは友達になりたくない文面だ。
     色々と文字が並んでいるが、要はさっき言った五つの職業にお試しでなって見ませんかというものだった。
     連絡先は電話番号で、求人広告みたいなものだろう。一度くらいなら俺もヒーローショーのヒーローの中の人をやってみたいと思っていたんだ。なぜなら着ぐるみを着れる仕事なんて最高だ。
     なぜなら、顔を見られないし、会話しなくてもいいし、相手の顔色も伺わなくても良い。
    「もしもし」
    「誰ですか?」
     電話を掛けると、ともすれば間違ったのかと思うような、なんだか子供相手に電話を掛けてしまったような返事が返ってきた。
    「ヒーローになりたいんですけど」
    「へぇ、そうなんですか。がんばってください」
     これは百パーセント間違った電話番号に掛けたに違いない。
     というか、何を頑張ればいいんだよ、くそっ。 

     受話器を置いて、広告の番号と、さっき掛けた番号が間違ってないかを確認し、合っていると言うことで、多分広告を書いた人が間違ったんだろうと、諦めることにする。
     それでも俺はこういうダメージは引きずる方なのだ。
     電話が鳴ったが、その番号が、さっき掛けたものだったので、赤い受話器のボタンを押して、さらに押し続けて電源を切った。
     そう、俺はダメージを引きずる人間なので、さっきの失態を思い出しては家の床を無意味に転がり、悶え続けた。  
    「こんにちわ」
     周りを見渡す。テーブルの上に見慣れないものがあった。皆は縁日とかでお面を買ったことがあるだろうか、あの三百円くらいで、安っぽい、縁日が終われば捨ててしまうようなあれだ。俺は無い。あんなものは友達も彼女もいない、つまり縁日に行く事自体無い俺には、縁日のものだけに縁が無い。
     その突然現れたお面に顔を近づける。馬鹿らしい話だが、このお面から声が聞こえたような気がしたからだ。
    「どうも」
     あぁ、解ったよ。今俺は縁日のお面に話しかけられている。これは紛れも無い事実だ。
     今は人形にだって、体を押すと喋るものがあるという。それならばお面が喋っても不思議は無い。逆に言えば、うさぎの人形がこんにちはと日本語を語るよりお面が喋った方が自然かもしれない。
    「お腹すきましたね。あれ、どうしたんですか。何でゴミ箱に入れるんですか、何か不愉快なことしました?」
     ゴミ袋は高い。ゴミ袋を買っていると、コンビニに生活ごみを捨てる人にの気持ちが良く解る。この近くにコンビニがあったら、俺は並べくそこでゴミを捨てるようにはなるだろうと、日々思うくらいに高い。
     しかし今回はそのゴミ袋を贅沢に使うことにした。 
    「――――――」
     ゴミ袋の口を縛ると、俺を苦しめていた幻聴も聞こえなくなった。
      
     きっと疲れているんだろう。散歩に出かけようと思う。
     何の変哲も無い、住宅街の道。
     其処を歩くことにも意味は見出せなかったが、思ったより涼しくて幸せだ。
    「こんにちわー」
    「こんにちわ」
     おばちゃんが挨拶をしてくる。ちゃんと返せて気分がいい。
    「あ、立川君じゃない」
     おばちゃんの後ろから現れたのは、誰だか知らないが、俺の名前を知っている女の子だった。
    「こんにちわー」
    「ちょっと、少しは足を止めようとしてよ。友達外が無いなー、あ、それとも急いでる? どっかに行くの? ついてってあげるよ」
     凄いぐいぐいくるな。
     此処はまず名前を思い出さないと始まらない。というか、本当に顔を見ても何も思い出せないのに、友達なんて事があるんだろうか。なんだか、記憶喪失にでもなった気分になるから冗談でもそういう事は言わないで欲しい。
    「ねぇ、何処に行くの?」 
    「……別に」
     本当は、公園で野良猫にでも会いに行こうとしていたが、この人がついてくると多分猫は寄ってこないだろう。
     猫は孤独な人を好むのだ。  
    「へぇ、じゃあ、散歩か。そんなことより、宿題もう終わった?」
     そんな事よりお前誰なん? と聞く勇気が俺には足りない。
    「……終わったけど」
    「へぇ、私全然やってないよー」
     夏休みもあと一週間無いが、それでいいのか。
    「そういえばさー、酷いんだよ。クラスの桃園さんがね、私のこのポニーテールはツインテールだって馬鹿にするの」
     君の髪型は、ポニーテールでもツインテールでも無く、ショートカットとか言うものではないのか。今は縛ってないなんて言い訳が通じないほどに、こぎれいにカットされているんだが。
    「……酷いね」
     しかしそれを指摘する勇気は無かった。
    「うんうん。解ってるー。こんどさー、えっとー、なんだっけ?」
     此処で走って逃げたら、多分追ってくるんだろうな。そしてこの人は運動が得意そうだ。
    「ああ、そうだ! 君、誰?」
    「……立川瞬」
    「へぇ、それは知ってる。この前猫にも自己紹介してたよね。私の名前は佐藤クレア。漢字は難しいから覚えなくていいよ」
     反射的に俺は駆け出していた。もうこの人、全然友達じゃなかったとか、良かった記憶喪失じゃなくてとか、色々いいたい事はあったけど、何より逃げ出したかった。
    「はぁはぁはぁ、此処までくれば。……こんにちわクレアさんー」
    「うん。足遅いね」
     いつの間にか公園まで走って逃げてきていたが、俺の足は世間一般的にはかなり遅く、逃げ切れるはずなど無かった。何よりも、猫の話題は避けたい、もうその傷を穿り返してほしく無いと願う俺だったが、運も昔から完全に俺の敵だったので、もしくは夏休み中餌付けしたのが悪かったのか、猫が寄ってきてしまった。
    「ニャー」
    「わー、猫ちゃんだニャー」
     立川瞬、特技は気配を消すこと。
     
     何とか家までたどり着く事が出来た。この技は教室で、一人で過ごしていると哀れに思ってくれる人が居るので、その人に気付かれないようにするために息を殺していたら、こういうふうにやっていると見つかりにくいという風に発見した立川流護身術といっていい。門下生を募ってもいい。
    「お帰り」
     喋るタイプのお面が、話しかけてくる。なぜか捨てる前同様に、机に鎮座していた。
     そういうのは駄目だと思う。言うなれば家とは自分が最も安らぐところだ。家族に嫌われたら、そのサラリーマンの家は漫画喫茶やビジネスホテルになるし、渋谷が好きな人は渋谷は俺のホームっすよと言うので間違いないだろう。
    「お前、なんなの?」
    「ゴミ袋は食い破りました。酷いですよ、体が凄く生臭いです」
     疑問は多い。このお面の口が可動式なのか、そうだとすればどういった原理で動いているのか、あと喋るな頼むから。
    「何でそんなに不服な顔してるんですか、好きな人間に振られたりしました」
    「……別に」
     明後日が燃えるゴミの日だ。それまで待とう。
    「ああ、でも好きな人間は居るんでしょう? カミングアウトカモン!」
     冷蔵庫を開ける。鶏肉があるから焼いて食おう。
     料理をすると、気分が落ち着く。お面が喋ってても気にならない。

    ←前のページ 現在 1/3 ページ 次のページ→

    1ページ目に戻る
    ▤ 目次ページに戻る


    お気に入りリストに追加 この作品を応援する

    応援ボタンを押す事で作品の★が増え、作者に「イイね!」を伝える事ができます。

    コメント

    作者紹介

    • かぼちゃ
    • 作品投稿数:4  累計獲得星数:3
    • 海苔が好きです。
      なろうも見てね。



    • 関連URL
      :

    この作者の人気作品

    小説 の人気作品

    続きを見る