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シリーズ:【BL】なりきれない
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【BL】なりきれない

作者:瀬根てい

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    先代ボスの息子×ボス
    二十代×四十路の歳の差、年下攻めの、海外裏社会っぽいお話です。
    陽の当たる道を歩んで欲しいと願う受けと、反発する攻めです。

    ※2014年3月9日のJ庭で配布したお話です。


    登録ユーザー星:5 だれでも星:7 閲覧数:937

    【BL】なりきれない 16685文字

     

     引き出しからシガレットケースを取り出し、細い煙草に火を着け軽く吸い込む。香ばしさと、苦みが口に広がり、細く白い煙が視界で揺れる。アランは着けたばかりの煙草を灰皿に押し付け、目を細めた。
     乾いたノック音が聞こえ、アランは悩みの種を頭の隅に追いやった。



     アランには分かりやすく敵がいる。その筆頭とも言えるのがアポなしでやって来て、当然のように社長室のソファでふんぞり返るオルソ―アンダーボスだ。
     招かれざる客だが相手はファミリーのナンバーツ。
     オルソの前で香ばしい香りを立てるエスプレッソは、上客にふるまう豆を使っている。味には疎いアランに代わってティント自らが選び抽出した、プロ顔負けの一杯はなかなか評判がいい。
     だがオルソはそれを一瞥すると鼻で笑い、酒を持ってくるよう吐き捨てた。おそらく先に酒を出していたら、別の物を要求していただろう。つまるところ、何をしてもケチをつけてくるのである。ファミリー全体で見ればよくできた男だが、アラン個人相手となると勝手が違ってくる。
     救いなのは、ケチをつけられようとティントが手を抜かないことだろう。わかっていながら最高のものを提供する。それがティントにできる抵抗で、矜持だ。
     できのいい部下に胸中で感謝の念を贈り、アランはオルソに向き直った。幸いオルソは自分の力を過信していて、部下は廊下で待機させている。侮られているが、面倒は少しでも少ない方がいい。
    「今日はどうされましたか」
    「来たばかりでもう追い出す算段か? 新しいボスは少しも余裕がないと見えるな」
     小馬鹿にした言いように、アランは目を眇める。先代の側近だった頃の名残で敬語を崩さないからか、オルソの態度はいつになっても横柄なままだ。
     脂肪がたっぷりと蓄えられた腹はベルトの上に乗り、オーダーメイドのスーツを見事に変形させている。シャツの襟元からはゴールドが光り、指には統一性のない宝石の指輪。まるで歩く宝石箱だ、とは誰が言っただろうか。もちろん皮肉である。宝石を飾るための台座にもならないという意味の。
     オルソはティントが用意した酒を一気に煽ると、すぐに新しいものを要求した。味の善し悪しがわかっているかは不明である。
     遠慮のない飲みっぷりに、視界の端でティントが顔を険しくするのが見えた。何かにつけて言いがかりをつけてくるオルソに、いい思いを抱けないのは仕方がない。口に出さないだけマシだと心中で宥め、アランは底で乾いたコーヒーを形だけ飲み干した。
    「で、用件だったか」
     オルソは空にしたグラスを指で遊び、氷をぶつけ音を立てる。勿体ぶって、アランの関心を煽っているつもりらしい。全く興味がないと言えば嘘になるが、できればこのままお帰り願いたいところだ。
     この男が突然やってきて、良かった試しがない。面倒だとわかっていながら聞くのもボスの役目なのだろうかと、自虐的に考えたくもなる。
     感情を内に隠し、アランは穏やかに表情を緩めた。
    「そうですよ。あなた自ら足を運んで下さったのですから、聞かないわけにはいかないでしょう」
    「そりゃそうだ。俺が来てやったんだからな。聞きたいだろ」
     自分のいいように解釈したオルソは、金色に光る歯を見せにやり、と笑った。
    「坊ちゃんが、売人のガキを締め上げたらしいな」
     時間にして一秒もなかっただろう。アランは頬と眉間が引き攣るのを感じた。誤摩化すように瞼を伏せ、まばたきするように開く。
    「さすが先代の息子だ。そうだろう? 先代も若い頃から力のある方だった」
    「そうですね」
     あっさりとした答えの真意を探るべく、オルソがじっとりとした視線を向ける。
     この程度で感情を悟られるほど未熟ではないが、見られるのは不快だった。タイミングを見てティントが運んでくれたコーヒーに口を付け、思考の起動を修正する。
    「危険なことに首を突っ込んで、学習能力は足りないようですが」
    「おいおい。そんな言い方はないだろう。あれはあれなりに考えて、ファミリーのために動いたんだ。褒めてやるのが当然だ」
     あえて興味のないふりをすれば、オルソは勝手に“よくできた”考察を披露する。
     フレッドがファミリーのために動いたと断言できるのは、そう仕向けたからに他ならない。フレッドを知る者であれば、フレッドが動く理由が“ファミリーのため”とは思わないだろう。彼は自分の思うままに動く。結果、ファミリーのためになることはあっても、第一に考えるような男ではない。
     オルソもわかっているからこそ、あえて勘違いを押し付けるためにわざわざここへ来た。
     手元の端末がメッセージの受信を知らせ、こっそりと覗き見る。
     ―売人の情報を教えたのはこの人か。
     よくできた部下は、滅多によりつかないオルソの来訪理由をしっかりと探っていてくれた。そして同時に、面倒臭い奴だとオルソの評価を下げる。
     先代亡き後ボスがアランになり、側近にティントが付いた程度で構成にさほど大きな変化はない。顧問も、アンダーボスも同じ者を置いている。
     オルソは当然自分が次のボスになると信じていたから、アランの就任は晴天の霹靂だっただろう。アラン本人だって、顧問から後押しされなければ何かの間違いだと辞退していたかもしれない。
     そのアンダーボスがアランを目の敵にし、先代ボスの息子であるフレッドを担ぎ上げようとしてもおかしくはない。ここで自分こそが相応しいと名乗り上げないところが狡猾だ。
     先代は所謂カリスマ性があり、指導者としても立派な人だった。自ら戦場に赴き、敵を一掃する様は多くのソルジャーを震え上がらせた。恐怖と、憧憬の念。その二つを一身に受け、彼はファミリーを導いてきた。
     フレッドはまだ若く未熟だが、人を惹き付けるものを持っている。
     腕っ節が強く、歳の近い若者たちから慕われているのは、誰に聞かずとも承知している。先日の、売人の真似事をしていた者たちを潰したのも、実に手際良く解決したと評価できる。
     どうせ自分がボスになれないのなら別に相応しい者を、と思ったのか、経験の浅いフレッドの後見人として地位を得るつもりだったのか。
    「あの子も大人ですから、やんちゃも控えてほしいものです。学校へはきちんと通っているようですから、今のところは目を瞑りますが」
     あくまで保護者代理の立場で答えれば、オルソが上機嫌だった顔を消し、乱暴にグラスをテーブルに叩き付けた。
    「どうやっても、ファミリーには近づけないつもりか?」
    「そのつもりです。先代もそう望まれ、顧問も異論はないと」
     二人の名を出せばオルソは悔しげに顔を歪めた。
    「ボスの座を狙われるのが怖いからか?」
    「ですから……いえ、そうですね。万が一にも暴走したら、ファミリーは壊滅するでしょう」
     利かん坊の手綱を握れるのがアランだけというのも周知の事実だ。
     簡単に卸せないとわかると、オルソは「後悔するなよ」と乱暴に床を踏み鳴らして出て行った。外で待機していたオルソの部下たちが慌てて動き出すのが見えた気がした。八つ当たりのごとく蹴られた扉が、閉まる寸前で勢いが吸収され、ゆっくりとボルトが噛み合った。
     まるで嵐を引き連れていたかのように、室内へ静寂が訪れる。
    「悪党の、小物の台詞でしたね」
     隣の部屋で様子を伺っていたティントが呆れ顔でオルソが出て行った扉を眺め鼻白む。口には出さずアランも同意すると、減らなかったコーヒーで喉を潤した。
    「酒の価値もわからなかったようですから、その程度なのでしょう」
     ちらりと見たグラスは、テーブルの上に鎮座している。まさかティントに出された酒が、スーパーマーケットで買った安物だとは思うまい。最初に上等なもてなしをして後は格を下げるとは、ティントもなかなか人が悪い。
    「念のためあの人の動向を―」
    「既に手配は済ませています。ボスも今日はお疲れでしょう、早めに帰ったらいかがでしょうか」
     つくづくよくできた部下に頭が上がらない。
     自分には勿体ないくらいの部下たちに感謝をしながら、アランは重い腰を上げた。



     フレッドを担ぎ上げたいのは、なにもオルソだけではない。フレッドを次期ボスにと推す勢力が他にもいくつかあり、どれも先代の頃から力のある連中ばかりだ。

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    作者紹介

    • 瀬根てい
    • 作品投稿数:14  累計獲得星数:171
    • web、同人、電子書籍でBL小説を書いています。
      精神面でも喧嘩でも強い受けが好き。少年からおやじまでこよなく愛する節操なしです。
      少しでも楽しんでいただけたら光栄です。
    • 関連URL
      サイト:http://moxic.net/

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