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シリーズ:小さなうさぎの物語
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小さなうさぎの物語

作者:相坂桃花

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    あるところに、小さなうさぎがいました。
    小さなうさぎは、ずっとずっと、自分だけの家族がほしいと願っていました――。


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    小さなうさぎの物語 5508文字

     




     昔々、あるところに小さなうさぎがいました。
     小さなうさぎは、まっしろい毛と、真っ赤なおめめを持つ、本当に小さなうさぎでした。
     うさぎは、やさしいお母さんとたくさんのきょうだいと幸せに暮らしていました。
     ある日のことです。
     小さなうさぎは、お母さんと兄弟たちと森でごはんを探しているうちに、大きな黒いあなに落っこちてしまいました。
     真っ黒いあなに落ちた小さなうさぎは、森の中で目が覚めました。
     おかあさん、おかあさん。
     おにいちゃん、おねえちゃん。
     小さなうさぎは鳴きました。
     お母さんを呼んでも、きょうだいたちを呼んでも、誰も返事をしてくれません。
     小さなうさぎは、優しいお母さんも、かわいがってくれたきょうだいたちもいない、まったく知らない世界へといたのです。
     けれども、小さなうさぎには、そんなことはわかりません。
     おかあさん、おかあさん。
     おにいちゃん、おねえちゃん。
     小さなうさぎは、大好きな家族を探して回りましたが、見つかりません。
     何度も呼びました。
     何度も、鳴きました。
     でも、小さなうさぎが優しいお母さんにも、大好きなきょうだいたちにも、会うことは二度となかったのです。
     そのうち、ちいさなうさぎはお腹が空いてきました。
     喉が渇いてきました。
     けれども、おかあさんのお乳から離れたばかりの小さなうさぎは、まだ自分だけで餌を探す方法を知りませんでした。
     食べられる草と、食べてはいけない草があるから、絶対に自分だけで勝手に口にしてはいけないよと、優しいお母さんに言いつけられていた小さなうさぎは、周りに草が生えていても、口にすることができなかったのです。
     小さなうさぎは、大きな木の根元で、お母さんたちを待ちました。
     きっと、探しにきてくれると信じていました。
     二度と会えないことを知らない小さなうさぎは、ずっとずっと、待ち続けました。
     しかし。
     お日様が何度も空に昇り、月が闇夜を何度も照らし出しても、お母さんたちは来てくれません。
     小さなうさぎは、もっともっと、小さなうさぎへとなっていました。
     お母さんが大事に舐めてくれた、白いふわふわの毛は、もうふわふわではなく、ぺっとりと身体にはりつき、色もくすんだ色へとかわっていました。
     そのころになると、小さなうさぎは、動くことができなくなっていました。
     目を開けることもできず、ただ身体を横たえるだけです。
     お腹が空きました。
     喉が渇きました。
     身体中が、からからと、乾いていました。
     小さなうさぎは、乾いた身体の全身からかき集めたような涙を流しました。
     おかあさん。
     おにいちゃん。
     おねえちゃん。
     どうして、さがしにきてくれないの?
     小さなうさぎは、家族に会いたくて泣きました。




     ふと、身体に何か冷たいものが触れました。
     ぴくりと、小さな身体はかすかに反応を示しました。
     目も開けることのできない小さなうさぎには、それが何かわかりませんでした。
     冷たいけれども、雨とは違う何かだったのは、確かです。


     ――探すのに、ずいぶんと時間がかかった。さりとて、こんなに小さくては、仕方はあるまい。
     “道”に墜ちてきた、ヨソモノは久しぶりじゃ。
     小さなヨソモノよ。
     “理”から外れし、憐れなヨソモノよ。
     我のもとへ、来るがよい――


     ドウ。
     ヨソモノ。
     コトワリ。


     どれも、小さなうさぎには知らない言葉でした。
     お母さんでも、きょうだいたちでもない声でした。
     小さなうさぎは、聞こえる言葉の意味をよく理解することはできませんでしたが、自分のからからに乾いた身体を撫でる冷たいものが心地よくて、静かに眠りにつきました。
     次に目が覚めると、誰かの腕の中でした。
     小さなうさぎを拾ってくれたのは、白い神様でした。
     白い神様が撫でてくれた毛は、白くふわふわに戻り、乾いていた身体にも、元気を取り戻していました。
     お腹も空いていません。
     喉も乾いていません。
     おかあさんときょうだいたちに会えなくて寂しくはありましたが、白い神様がそばにいてくれるようになったので、鳴かなくてすむようになりました。
     小さなうさぎに、白い神様は言いました。
     お前はもう、ただのうさぎではない。そのうち、ヒトの姿をかたどれるようになるだろう。
     小さなうさぎはヒトを知りませんでした。
     白い神様に尋ねると、神様とおなじような姿をしている生き物だと教えてくれました。
     小さなうさぎは、白い神様みたいになれるのは、悪くないなと思いました。
     また、白い神様は言いました。
     お前はもう、年を重ねることはない。これ以上、“死ぬ”こともない。
     小さなうさぎには、その言葉の意味がよくわかりませんでしたが、白い神様のそばにずっと一緒にいられるという意味だと思って、嬉しくなりました。
     小さなうさぎは、自分を助けてくれた白い神様が大好きになっていました。





     百年が経ったころ。
     ヒトの形にもなれるようになりました。
     知らないことよりも、知っていることの方が増えました。
     小さなうさぎは、少しだけ大きくなりました。
     けれども、これ以上大きくなることはないだろうとも、白い神様に言われました。
     小さなうさぎは、おとなになったのだという意味で納得をしました。
     小さなうさぎは、もう小さなうさぎではありません。
     身体は小さいままでしたが、中身は立派なおとなへと成長していたのです。
     白い神様は言いました。
     これからは、人間たちの村で暮らせ。お前に、村を任せる。
     お前には、我の知識を授けている。
     村で、人間たちの助けをしてやりなさい、と。
     胸の奥が、ちくんと痛んだ気がしましたが、うさぎは知らないふりをしました。
     うさぎは、白い神様の言うことを聞きました。
     うさぎは、村で人間たちの生活が豊かになるようにと、いろいろ教え、面倒を見てあげました。
     人間たちも、うさぎを慕い、大事にしました。
     うさぎが、村の“おさ”と呼ばれるようになるのには、そう時間がかかりませんでした。
     それからいくつもの年月が通り過ぎました。
     村人たちは、幸せそうに暮らしています。
     うさぎも、そんな彼らの生活を支えられることを誇りに思っていました。
     けれども、いつも胸の奥底には、どこか物寂しいおもいが渦巻いていました。
     村人は、うさぎをのぞき、みんな家族がいました。
     たとえ、血のつながりがなくとも、“家族”と呼べる存在がありました。
     けれども、うさぎには、“家族”がありませんでした。
     うさぎは、ヒトの姿にはなれましたが、ヒトではありません。
     うさぎは、うさぎのままです。
     どんなに寂しく思っていても、もううさぎの家族は生きていないことを、うさぎは知っていました。
     二度と、会えないことを知っていました。
     うさぎは、自分がただのうさぎではないことも、もう知っていました。
     これ以上“死ぬ”ことがないという白い神様の言葉の意味も、もうわかっていました。
     うさぎは、自分だけの家族がほしいと願い続けました。
     けれども、普通のうさぎではない自分には、家族などできないと諦めてもいました。
     うさぎは、叶わない夢を見続けました。



     さらに百年が経ち、二百年が経ち、三百年が経ち。
     うさぎは白い神様に任された村を守り続けていました。
     たまに白い神様がふらりと姿をあらわしましたが、うさぎは白い神様がくることを嫌がるそぶりを見せるようになりました。
     うさぎはおとなになってから、ずいぶんと長く存在し続けていました。
     今まで感じなかった不満を、言わなかったわがままを、ほんの少しだけ外に出すようなっていたのです。
     うさぎは白い神様から任された村が、大好きでした。
     村に住んでいるヒトたちも、大事に思っていました。
     けれども、二百年ほど前に自分をそばから離れさせ、村へとやった白い神様のことを、不満に思っていたのです。 
     うさぎは、白い神様に捨てられてしまったのだと思っていたのです。
     胸のちくんとした痛みが、蘇ってきました。
     ずっとずっと、秘密にしていた不満でした。
     その秘密を閉じ込める心の蓋が、長く存在し続けるにあたって、少しずつ壊れていたのです。

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