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シリーズ:イギリスにて
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イギリスにて

作者:ナツミカン

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    イギリスを舞台にした話です。
    怖い話というより不思議な話です。


    登録ユーザー星:3 だれでも星:0 閲覧数:149

    イギリスにて 2116文字

     

     親父が留学した時の話。親父の実家は裕福で、広い世界を見せるべきだという親の方針のもとイギリスに遊学に行ったらしい。英語はまるで出来なかったが、そこはそこ、同じ語学学校の英語が出来ない奴らとつるんで、連日パブで夜遊びをしていた。帰る際には同じ方面の友達とタクシーをシェアして、割り勘で下宿先に帰っていた。
     ある日、いつもタクシーを同乗する友達が誰もおらず、一人でタクシー代を払うのも嫌だと歩いて帰宅したそうだ。父の留学していた街は海沿いで、大変強い海風が吹き付ける街だったが、その夜は不思議なくらい風がなく、季節の変わり目だったためか鼻をつままれてもわからないような濃い霧が立ちこめていた。雨ではないからと高をくくっていたが、霧に体が冷えて寒かったそうだ。足早に海沿いの道を歩いていると、少ない街灯に照らされて、前方に人影が見た。相手は二人連れらしく、道の真ん中を歩いている。酔った頭でも、現地の酔っぱらいかもしれない、近づかないようにしようと思ったらしい。
     今度は車のライトに照らされて人影が見えた。さっきよりも父に近づいていることから道をすれ違うだろうと端に寄る。しかしすぐに最初見た時はだいぶ離れていたのにこんなに近づいているなんて、もしかしたら素面の人かもしれない、というよりこんな夜更けに酔っぱらいじゃないとしたら暴漢かもしれないと思い直し近くの街灯に寄って少し身を潜めた。
     しばらくすると足音も気配もなく突然ライトの中に二人組が現れたそうだ。父は突然の出来事に驚いたが、二人組の格好を見てもっと驚いた。一人は髪をあげた美しい白人の女性だったが、襟ぐりの大きく開いた古い時代の薄緑色のドレスを着て、片手に日傘をさしていた。歴史に詳しくはないがどう見ても現代的ではない、どちらかというと近代っぽい格好をしていたらしい。そして隣の黒い飾り帽子をかぶった白人男性と楽しそうに話していた。その男の人の格好もそれに似合った赤い上質な生地のモーニングコートで見事に着こなしていた。
     あまりの出来事に呆然としているうちに、二人の姿はライトから外れて霧の中へ消えてしまったそうだ。父はなんとかそのまま下宿に帰り、一晩震えた。翌日、学校の友人に話してもお前は飲み過ぎなんだよと逆に窘められて終わった。父は頭をひねりながらもまあ良い思い出として胸に刻んだ。それからは酒が入ると思い出すらしく、何遍も俺はその話を聞かされた。
     ここまでが親父の話。
     そしてここからが俺の話。
     俺は去年、イギリスに一人旅に行った。不思議体験以外にも親父のイギリスでの体験談は面白く興味があったからだ。フラフラと北のスコットランドから、南のブライトン方面へと南下した。その際途中で、親父の留学した件の街に泊まった。その街は親父の話通り小さかったが、中世からの趣が残った綺麗な街だった。街を散策していると、あるガラクタ屋が目にとまった。アンティークショップと看板は出ているが店の中の物は雑然と置かれていて、今にも崩れそうになっているところもあった。窓もすすけている。しかし、俺の目はショーウインドウの中のある皿を目にして釘付けになった。
     その皿は金縁の絵付け皿だった。道の真ん中で、日傘をさした薄緑色の胸の開いたドレスを着た女性が黒い帽子をかぶった赤い色の上着の男性と見つめ合って微笑んでいる絵皿だった。直ぐに店に入って皿のことを店主に尋ねた。
     店主曰く、この街は近代に入ってから夏になると海水浴で都市部の裕福な階層の客が多く来たそうだ。また、ロンドンの環境に体を悪くした人たちの保養地でもあったそうだ。この皿は、そんな街が栄えた時の観光客の様子をスケッチして食器に絵付けてお土産にしたものではないかと話した。俺は何となくその皿を買った。
     思わぬお土産が出来たものだと、宿に帰って、丁寧に皿を包み鞄にしまった。そして夕方から俺は父の忠告通りパブに行って騒いだ。店を出る際気分よく酔った俺は別のパブに行こうと海沿いをちょっと歩くことにした。目に入った店に入ろうと思っていたため、タクシーを使わなかった。しかしその日の夜は海風が強く小雨まで降っていて寒かった。俺は直ぐに後悔をした。マフラーを巻きしっかり手袋をはめ、ややうつむき加減で風に煽られながらも足早に歩いていると、車道から車のライトに照らされて前方から二人の人が歩いてくるのに気づいた。小雨にぬれて眼鏡があまり使い物にならないが、街は週末の入り口、金曜日だったため多くの酔っぱらいが歩いている。俺は二人組に当たらないよう道の端によけた。また車のライトに照らされて、今度ははっきりと二人組が見えた。あの皿の二人組だった。優雅に日傘をさしながら女は楽しそうに隣の男と話している。何を言っているのか聞き取れないが、仲睦まじい二人の様子を見ながら俺は立ち尽くした。すれ違って行った二人の方へ振り向けなかった。しばらく呆然としていると風に煽られて、体が押された。俺はそのまま宿に帰り皿があるのを包み紙の上から確認したが、中は見れなかった。
     帰国した今でも包み紙はほどけないでいる。

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