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シリーズ:■コボルト王の不敗神話(第1章)
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■コボルト王の不敗神話(第1章)

作者:Hiro

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    突如、異世界へと召喚されたごう慢高校生、夜蓑凰(やみのおう)。
    世界制服を企む彼がその地で遭遇した相手とはいったい!?

    ■イラスト:kotomi 様
    気が向いたときに、地道に更新予定です。
    ※『犬養餡子の「異世界営業なんて楽勝です!」』と一部設定を使いまわしていますが、パラレルワールドなため、完全一致はしておりません。


    登録ユーザー星:2 だれでも星:0 閲覧数:154

    ■コボルト王の不敗神話(第1章) 12266文字

     

       ◆ 1 ◆

     その瞬間、それまで身体を包んでいた暖かいものが消えた。
     薄暗い空間に放り出されたかと思うと、とたんに重力にとらわれ落下する。
     顔をどこかにぶつけるが、あたたかなクッションに受け止められ痛い思いをせずにすんだ。
     それは独特の弾力を有し、おだやかな温もりとともに俺を包んでくれる。わずかに香る甘い匂いが、未知の体験に疲労した身体に心地よい。
     このままなにも考えず、寝ていたい誘惑にかられる。こんな安らいだ気持ちはどれほどぶりだろうか。
    「おーさま大丈夫ですか?」
     聞き覚えのある声がしたのは、すぐ近くでだった。
     声は耳に心地良い響きを持っていたが、滑舌が悪く、間の抜けたしゃべりかただ。
     俺の勘が告げている、こいつは絶対に頭が悪いと。
    「おーさま…だと? 俺は夜蓑凰だ。バカっぽく伸ばすんじゃ……ない」
     顔をあげると間近に見知った顔があった。
    「犬養餡子!」
     思わず大きな声をあげる。
     そして自らが顔を埋めていたやわらかなものの正体を知る。
     まさか犬養の奴、俺が軍門に下らぬからといって、色仕掛けを仕掛けてくるとは。
    「ひっ、卑怯だぞ。いったい何のマネだ」
     あわてて離れるが、意表を突かれ乱れた心音はなかなかに整わない。古来より、この手の罠にかかった猛者がどれだけいることか。
     だが、制服姿ではわからなかったが、こいつガキっぽい顔のクセにけっこうなボリュームがありやがるな。小娘だとあなどっていた。
    「しかも、なんだその恰好は!」
     眼前にいる犬養餡子の姿はまさにコスプレとしかいいようのない恰好だった。
     上下に分れたセパレートの水着をベースに、白く透けた薄衣を羽織り、下には赤いパレオのようなものを巻いている。色合いだけ見るならば、巫女服のようであるが露出があまりにも高い。
     そして頭上には犬を模した耳を載せ、尻には同じように尻尾までつけている。
    「貴様それでも生徒会長か! いや、俺はおまえが会長などと認めてはいないがな!」
     こんなヤツを選んだ連中はヘンタイに違いない。こいつを蹴落として生徒会長に就任した暁には、校則で学校の内外を問わずコスプレを禁止してやる。まったくもって破廉恥極まりない。
    ――そうだ。
     俺は上着にしまっておいたスマホを取り出すと、犬養の姿をそこに収めた。
    「きゃ」
     不意に焚かれたフラッシュに犬養が驚きの声をあげる。
    「フラッシュくらいでわめくな」
    「フラッシュ? いまのはおーさまのまほーですか?」
    「おーさまじゃない、凰様だ。何度もいわせるな。だが、これで貴様のあられもない姿は収めさせてもらった。露出趣味全快のこの写真をバラまかれたくなければ、今すぐ生徒会長の座を明け渡せ」
     撮ったばかりのデータを液晶に映しだす。偶然ながらに犬養の弱みを握ることに成功した。これでリコールなどせずとも、解任においこめる。
     だが犬養は自らの写真を覗き込むと、楽しそうにはしゃいだ。
    「おー、これワン子ですか、ワン子がこのちっちゃい中に閉じ込められたですか? でもだとしたら、今外にいるワン子は誰ですか!?」
    「なんだ、その写真を知らない江戸時代の人間みたいな反応は。だいたいおまえはワン子ではなく餡子だろ……」
    ――まさか?
     ここにきて、ようやく、すれ違う会話の理由に思い当たる。
    「おまえ、まさか犬養餡子ではないというつもりか?」
    「ワン子はワン子なので、その人ではないですか?」
     小首をかしげ尋ね返される。
     クセが強く量の多い長い髪。高校二年生でありながら、中学生と間違えそうな小柄な身体(胸だけは人並み以上のようだがな)。目尻の下がった大きな瞳。そして話し方こそ違うが、この耳にすべりこんでくるような声は犬養餡子でしかありえない。
     だが犬養のヤツが俺相手に理由もなく、こんな無駄な会話を繰り返すだろうか?
     そもそも、さっきみたものはなんだったんだ。どんな手段を用いたんだ。いつの間トイレにあんな仕掛けを施したのだ。
    「おーさま、どうしました?」
    「凰様だ、伸ばすなっ」
    「はい、王さま」
     俺が反射的に訂正すると、びくりと身体を震わせようやく訂正した。
     まだ呼び名がちがっている気がするが、細かいことはあとまわしだ。
    「ちょっとまって、六秒ほど考える」
     犬養ではなくワン子と名乗った少女は、指示に従いちょこんとその場に座り込んだ。
     鼻からゆっくりと息を吸い込み、脳に新鮮たな酸素をおくりこむ。それからゆっくりとあたりをみわたす。
     薄暗い広い部屋に窓はなく、木製の扉が一つだけ。
     足下はコンクリートでもタイルでもなく、石を磨いたような床。さらにはファンタジーアニメにでも出てきそうな六芒星の陣が描かれている。
     部屋の片隅には、部屋には二匹の狛犬の像とミニチュアの神社が飾られている。それと分厚い本が並べられた本棚。招き猫の置物までありやがる。
     灯りは油を使っているようだが、二酸化炭素中毒とか大丈夫なのだろうか。
    「……まず、ひとつ質問をしよう」
    「はいです」
     こめかみに手をあて、この場にいる自分以外のただ一人に尋ねる。
    「おまえは犬養杏子ではないというのだな?」
    「はい、ワン子はワン子なのでイヌカイアンコではありませんです」
     他人のそら似というには似すぎているが、いまそこを追求しても意味はないだろう。
    「それでここは何処だ?」
    「魔界七番地の隅にあるコボルトの集落です。それでここは神様の部屋です」
     コボルトといえば、西洋の伝承にでてくる大地の妖精か。たしか銀を腐らせるとしてドワーフに嫌われているんだったか。もっとも日本では有名RPGのおかげで、犬型の雑魚敵として知名度の方が強いようだが。
     こいつの犬耳と尻尾はそれを模しているのか。
     しかし、魔界……魔界か。
    「神の間ということは、おまえは巫女の類か?」
     神本人にはとうていみえんし、恰好からしてもそうなのだろう。
    「そうです王さま。ワン子は巫女です」
     すぐに肯定の言葉が返し、自らの恰好を強調する。
    「その王さまってのは、『王』つまりキングということか?」
     こいつが犬養餡子のなら、俺の名を知っている理由がない。だとすればやはり、さっきから言っている『おうさま』というのは、凰様ではなく王さまということになる。
    「そうです王さまです。でもキングってなんですか?」
     ボケを無視しつつ、上着にしまっておいたスマホをとりだす。アプリを起動させ、現在位置を確認する。だが衛星からの情報を得られないのであろう、場所は特定できなかった。そもそも電波状況が悪いのかアンテナも立っていない。
    「俺はどうしてここにいる?」
    「さっきもいいましたが、ワン子はコボルトの巫女なのです。なので毎日お祈りしてました。神様助けてくださいって」
    「そこで現れたのが俺だと。では、なぜ神本人ではなく王なんだ?」
    「前の巫女さまから伝承を聞いてるです。いつかコボルトをまとめあげ、みんなを幸せにみちびいてくれる王さまを神様が呼んでくれるって」
     まったく他力本願な伝承だな。
    「伝承だと『その者、黒き衣をまといし、邪眼をもちし者』って伝わってますです。はい」
    「そこで学ランを着て、目つきの悪い俺が現れたのでそうだろうと」
    「よくわかりませんが、はいなのです」
     良い笑顔で応える。
    「だ〜れが邪眼だ。少々目つきが鋭いからといって人を悪魔のように言うんじゃない」
     犬養餡子あらためワン子の小さな頭を、両手で作った拳でグリグリと圧迫する。
    「あう、痛いです、王さま痛いです」
    「だいたい、露出過多な巫女に異世界召喚されて、世界を救えだなんて、どこのパクりゲームだ。パクるにしてももうちょっとマシな設定を組め」
    「あう、パクりじゃないです、パクりがなんだかわかりませんが、パクりじゃないです。信じてください。それに世界を救えとか頼んでないです」
    「そんな言葉が信じられるか。おおかた俺を生徒会に入れるために練った策なのだろうが、なにもかもが馬鹿すぎる」
     両手に込めた力を更に強める。
    「それ以上強くしちゃダメです。ダメです。ダメなんです……あっ、でもちょっと気持ちよくなってきました。こんな気持ちワン子初めてです」
     目の焦点があやふやになり、口からよだれを垂らす。

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