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シリーズ:僕の母親がラノベ作家なワケがない!
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僕の母親がラノベ作家なワケがない!

作者:河東 ちか

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    アルバイト中の僕、御岳登(みたけのぼる)に会いに、中学時代の同級生、白川璃子がやってきた。とっても可愛くなった彼女は、僕の顔を見るなりキラキラした笑顔でこう言った。「ライトノベル作家の御岳ハルカさんに会わせて欲しいんだけど!」……一体なんの話ですか?
     
    2014/07/14 完結 
    ★第一回upppiライトノベルコンテスト 審査員特別賞を受賞しました! 応援ありがとうございます。お礼の用語集をUPしてありますので、上の「僕の母親がラノベ作家なワケがない!」タグよりご覧ください。


    登録ユーザー星:26 だれでも星:20 閲覧数:5075

    僕の母親がラノベ作家なワケがない! 29125文字

     

     言いながら、母さんはケーブルテレビのホームページを閉じ、渋々といった様子で立ち上がった。

     全速力で自転車をこいできた反動がきたらしい。夕飯までの間、僕はぐったりした気分で自分の部屋に引っ込んだ。
     テーブルの上のノートパソコンの電源を入れる。部屋着に着替え終わる頃には、OSが起動を知らせる電子音を鳴らしている。
     そういえば、このパソコンを選んだのも母さんだ。
     ついこの前まで僕は、母さんから古いノートパソコンを借りていた。それが熱暴走を繰り返すようになり、修理してくれと訴えたら、買った方が安いからと、あっというまにリフレッシュパソコンというものをネットで調達してきた。お金を出したのは僕だけど、それは当たり前か。
     新しいパソコンは、確かに快適だった。メモリが、ハードディスクが、CPUがとかいろいろ説明されたけど、その辺は僕にはさっぱり判らない。
     あの人は昔から、こういう電子機器がやたら好きだった。
     ミンテンドーのゲーム機も初代から買ってるとかで、家にある家庭用ゲーム機の本体は、僕が自分で買ったES3とミンテンドー3DS以外、全部母さんが所有権を持っている。
     そういえば僕が小学校の時には、ミンテンドー64のパーティーゲームで高得点を出すために、コントローラーを左手に持ち、センターにあるスティックに右手のひらを押しつけてぐりぐり回して高速回転させていたら、最後には皮がずるむけて悲鳴を上げていた。
     もちろん正規の使用法ではないから文句は言えない。全国的に同じ被害が多発したため、そのシリーズの次作からは、スティックを回転させるゲームはなくなった。
     考えても考えても、変な記憶しか思い出せない。
     着替え終わって、僕はヤホーのホームページで、「御岳ハルカ」を検索してみた。
     すぐに呟きサイトのトーカーIDとか、自称オフィシャルブログだとかが出てきて、思わず検索結果を二度見してしまった。
     名前の漢字がカタカナになってるだけで、まるっきり本名なのに、大丈夫なのかこれ。
     少しスクロールさせると、軽天ブックスやkarazon 書籍ストアの著作者紹介ページまで出てきた。
    『ハルカのスーパーレジタイム!』
     というのが、御岳ハルカのデビュー作のようだ。
     というか、これ一冊しか今のところなかった。
     アニメ絵の女の子が大きく描かれた、本当にラノベらしい表紙だ。
     正直、好みの絵柄だった。
     でもこれ、名前が同じと言うことは、主人公は母さん……?
     確かに僕が中学生になるまで、母さんは家の近くのスーパーで働いていた。スーパーといっても、コンビニと八百屋が同居してるような小さな店だったけど。
    『ハルカさんに会わせて欲しい』と、テンションMAXだった白川璃子を、「なんだかよく判らないし確認してみるからちょっと待って」となだめて逃げてきたのだけど、あの母さんにこの絵のイメージを抱いているなら、会わせない方が親切なんじゃないだろうか。あ、でも動画で顔を見てるのか。
     電子書籍は値段は安いけど、スマートフォンで読むためには専用のアプリを入れなきゃいけないらしい。それに、クレジットカードを使えない僕は、karazon のプリペイドカードを買わなければならないようだ。
     いつもkarazon での買い物は、母さんに取り寄せてもらって、僕はお金だけ払っていたから、アカウントも持っていなかった。
     どうしようか。あの勢いなら頼めば喜んで買ってくれそうだけど、『母さんの本が読みたいから買って欲しい』などと頼むのもなんだか癪に障る。そもそも電子書籍って、人に買ってもらうことはできるのだろうか。
     そう思っていたら、スマートフォンがメールの着信音を響かせた。
     さっきアドレスを交換したばかりの、白川璃子からだった。

    『今karazon で新規入会キャンペーンしてるよ! 専用ページから登録すれば、五百円分のポイントプレゼントだって!』

     きみはどこの回し者なんだ。
     とにかく、教えられたホームページアドレスから新規登録をしたら、完了と同時にちゃんとポイントも付与されていた。これで、プリペイドカードを買わなくても買い物ができる。
     ただ、情報入力に手間取ってしまって、やっと自分のアカウントとスマートフォンを紐づけたところで、
    「ごはんだよー」
     居間から母さんが声をかけてきた。
     この可愛いアニメ絵の女の子の正体が、あんなおばさんでいいんだろうか。なんだか各方面に申し訳ない気分でいっぱいだ。

     母さんは料理があまり好きではない。下手ではないんだけど、やる気がないらしい。それでいて、一度なにかにはまると、連日おなじものを試行錯誤しながら作り続ける。
     今日はカレーとポテトサラダがメインだった。新じゃがを皮ごと塩ゆですると皮がむきやすいと学習してから、母さんはやたら頻繁にポテトサラダを作るようになった。ただキュウリの薄切りが下手なので、少し厚めの半月状キュウリがごろごろ入って、見た目はあんまり良くない。
     母さんは僕とあんな話をした後なのに、全く変わりない。
     父さんもいつも通り、勝手に自分の好きなバラエティ番組を見て、あまり喋らない。母さんはもっと喋らない。
     僕は具の少ないカレーを口に運びながら、それとなく、居間の隅に目を向けた。
     母さんは自分の部屋がないけど、居間の片隅に一畳ほどの自分のスペースを確保している。家にいるときは、デスクトップパソコンは常に電源をいれたままだ。パソコンデスクの周りの、動かなくても手が届く位置に、コミック用の背の低い本棚が並べてあって、そこにぎっしりと色々な本が入っている。
     昔から本が好きな人だったから全く気にしなかったけど、今見たら並んでいるものに全く統一性がなかった。マンガと文庫本に混じって、いろいろな雑学の本も並んでいる。
    「空想ネーミング辞典」に「錬金術の基礎と応用」、「現実・異世界武器防具大百科」「よくわかる相対性理論と宇宙の謎」「魔法と魔術を学ぶ」。いったいこのひとは、この知識を使ってどこでなにをしようというのか。
     いろいろ突っ込みきれなくて、僕はうわの空で食事を済ませ、また部屋に引っ込んだ。サラダはわりと美味しかった。
     スリープ状態になっていたノートパソコンを起こして、今度はkarazon の販売ページから、『ハルカのスーパーレジタイム!』を購入した。一度アカウントをスマートフォンと紐づけて、アプリを落としてしまえば、あとは勝手に、PC画面で買った電子書籍をダウンロードしてくれるようだ。
     ダウンロードが完了するまでの間、僕は『ハルカのスーパーレジタイム!』の販売ページを眺めていた。
    『御岳ハルカ』が参加していたライトノベルのコンテストは、開催期間中にブログに応募作品を連載していく形で行われたらしい。ということは、僕が気付かなかっただけで、あの居間でこつこつ作業して参加していたのだ。
     その間、母さんは常にいつも通りだった。
     母さんは、思いついたらあまり相談をしないで、勝手にいろいろなことをやる。
     僕が中学生の時、なにを思ったのか、母さんは突然バイクの免許を取りに教習所に通い始めた。
     仕事の合間に、二ヶ月かけて普通二輪の免許を取った後は、200cc のオフロードバイクを買って乗り回していた。
     でも買って三年も経たないうちに事故にあって、バイクは廃車。母さんは二ヶ月、病院から帰ってこなかった。
     それで懲りたかと思えば、退院した翌年に今度は大型二輪免許を取ってしまった。
     なにを考えているのかさっぱり判らない。
     というか、母さんがなにを考えてるのかを、僕はあまり知ろうと思わなかった。
     僕は僕で、自分のしたいことに一生懸命だった。中学の時は、毎日朝晩好きなテニスができて、友達と楽しくやれれば、それでよかった。
     テーブルの上のスマートフォンが、不意に耳慣れない電子音をたてた。karazon の電子書籍アプリが、ダウンロード完了を知らせる音らしい。
     アプリを立ち上げると、仮想の本棚に一冊だけ本が並んでいた。タップすると、アニメ絵の可愛い表紙が画面いっぱいに表示された。
     もくじを見ると、やっぱりこれは主人公『ハルカちゃん』の、スーパーでの体験談らしい。ただ、現実とは違い、『ハルカちゃん』は、十代の女の子として描かれているようだ。

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    コメント

    • 表紙コンペに伴い、作品を読みにきました。・・・と、気づけば友の会(仮)の同志でしたか!Σ(゜□゜;)
      全然気づかずスイマセン(汗 そういえば、私がチェックしてるのってホラーだけでした・・・(Д`;

      この作品は・・・どうもデジャヴというか・・・あれ?このやり取りやったことがあるぞ??みたいな・・・趣味嗜好ややってることなど、お母さんが他人とは思えませんww 無口なところは違いますが( ̄▽ ̄;
      息子には「私がボケーッとしてるときは、頭の中だけはすごく働いてるから話しかけないで」と言ってありますw

      でも、コメディとはありますが、芯はしっかりシリアスですよね。タイトルからして、(続
      • 4 fav
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    • もっと軽いノリの話かと思っていました。失礼しました(汗

      「一次通過も最終選考落ちも同じ」ってセリフに「三位も最下位も同じ」と主人公が思う場面では、息子よ、それは意味合いが違うのだよ~なんて思っていましたが、あとからそういう受け取り方もあるんだな、と勉強になりました。
      いやぁ、面白かったですw

      しかし・・・私は家族には買わせなかったなww てゆーか、そういや私も言ってなかった!!!と、今更気づきました・・・( ̄▽ ̄;
      • 3 fav

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    • わざわざお越しくださってありがとうございます。
      母の行動を自分と重ね合わせる方が割といるらしくて(笑 ラノベだから年頃の子供を出しておこうと思ってたのに、やはりネットでは少し対象年齢が高めでもよいのでしょうか。

      電子書籍は端末を持ってない人に説明が難しくて、PRにとても苦慮しました。電子書籍というものになじみのない層にも判りやすく説明したつもりなので、そういう方にも触れてもらう機会があればいいなぁ・・・
      • 1 fav

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    • ぐはっ!!!
      どうやらこの作品でも、気持ちが先にコメント欄に来てしまったようで、☆付け忘れていました・・・( ̄▽ ̄;
       ↑何事にも気づくのが遅いです(Д`;

      電子書籍は確かに面倒でしたね・・・。PCでも、そのサイトの無料アプリをまずDLしなきゃならないってのは、今も同じですか?

      でもやはり、紙書籍で販売したいものですねー。印税の入り方も違・・・ゲフンゲフンww

      あっ 大事なことを忘れていました!
      受賞、おめでとうございます!w
      あぁ~・・・他の受賞者にも言い忘れてるし・・・OTLガクッ
      • 1 fav

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    • コミカルで読みやすかったです。ところどころ、ミンテンドー、能面ライダーなど某国でありそうなところでも笑わせて頂きました。
      テンポ良くストーリーが流れるのも読んでて面白かったです!
      応援してます!
      • 1 fav
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    • 現実世界のお話は、商品名や企業名をそのままの名前を拝借すると問題が出てくるので、実在のものに近い名前にしてイメージを掴みやすく、でも明らかにそのものではない、と示す必要でてきます。それを逆手にとってパロディ風に仕立ててみましたが、おもしろがってくださる方が多くてよかったです。
      ねこまんまさまありがとうございます。続編の用意もあるので、公開したらまた見に来てやってください。
      ねこまんまさまも、イラストコンペの参加おつかれさまでした。
      • 1 fav

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    • はいー!楽しみにまってますー
      にゃお!?ご存知でした?実はあれはコンペ用に描いたものではなく(コンペが終わってると思ってた)賞おめでとーイラストとして描いたんです。が、どうも締切りじゃないみたい・・と思ってそのまま・・
      • 1 fav

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    • 今、ちかさんの僕の母親がラノベ作家なワケがない!も挑戦中です。
      にくきゅう友の会に勧誘しようと実は前々から狙っていたのでWW
      • 1 fav

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    • 猫ちゃんだけ描かれるのかなと思っていたら、ほかにもいろいろ描かれてて感心してました。

      おお! ねこまんまさんにタゲられていたなんて! 光栄です! 楽しみにしてていいのかな、嬉しいです。
      にくきゅう友の会って、にくきゅうをつついて幸せになる会ですか? なんだか盛り上がってるようなので、ぜひ拝見させていただきますね。
      • 2 fav

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    • はじめまして。

      面白く拝読しました。
      テンポの良いコメディから起伏ある展開、読みやすいけれども読み流されることなく、きっちり心に残る作品だと思います。

      • 2 fav
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    • 辰波さま、励みになるコメントありがとうございます。
      うっかりすると説明くさくなってしまうので、読みやすさは特に気をつけていました。
      楽しめていただけたならなによりです。
      • 1 fav

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    • 拝読させていただきましたー☆
      いろいろと背景が見え隠れして、面白かったですv
      お話の展開と流れが流石だと思いました。
      あと、スラスラと読めました☆
      • 3 fav
      • Re 返信

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    • >パセリさん 
      ありがとうございます。実は私が一番得意なの、男性一人称なんですよね(笑
      主人公と一緒に ?? っておもってもらう話だったので今回は具合が良かったです。
      読みやすく楽しんでもらえたならよかったです。
      • 1 fav

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    • こんばんは、ハルカ先生と同じく最終選考落選組のHiroです(笑
      拝読しましたので、感想らしきものを残させていただこうと思います。

      面白かったです。
      しーなちゃんはしーなちゃんで独特な言い回しと共感度の高いネタで面白かったのですが、こちらはきっちりと構成作りをされた小説としての面白さがありました。

      女の子からの告白(?)から明かされる真実。そしてそれによって動き出す日常。
      「実はうちの母親が~」というコメディな展開で読者の心を掴みながら、しっかりきっちりシリアスもこなす手腕はすばらしかったです。
      また、作中に含まれるネタが、あまりにもリアルに想像できすぎて棒腹絶倒してしまいました。
      • 3 fav
      • Re 返信

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    • 身近なネタをしっかりと消化し、作品としてアウトプットできるのはハルカ先生の強みですね。うらやましく思います。

      文章の方は、会話のリアルさを出しすぎたせいで、若干読みにくくなっているところがありました。
      気にするほどのことではないと思いますが、いちおう目に付いたのでご報告です。
      例:『でも三年も乗らないうちに事故にあって』は初見では、三年間乗ってなかったので~という意味と誤認しました。

      感想は『偏った生き物』の基準で書かれておりますので、内容の取捨選択は作者様で行ってください。
      ではノシ
      • 3 fav

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    • >Hiroさま ご意見とご指摘ありがとうございます。
      Hiroさんにほほめて頂けるのは嬉しいですねー。
      文字数が限られているので、どんな人にもイメージがはっきり認識できるメジャーなものを、若干名前を変えただけで登場させましたが、それが結果的にパロディ的なものと受け取ってもらえたなら想定外の効果といえます。
      いつも的確で温かい指摘ありがとうございます。参考にさせていただきます。
      • 2 fav

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    • とても素敵なお話を読ませていただきました。ありがとうございます。
      短い文字数の中で、こんなにたくさんの感情を伝えられる言葉と、展開の運びに、思わず手を叩いてしまいました。
      自分も見習いたいな、と思います。
      これからも、ご活躍を応援しております。
      • 3 fav
      • Re 返信

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    • >七実さま
      励みになるコメントありがとうございます。
      なるべく説明調にならないよう、伝わりやすい言葉で書くように心がけています。
      まだまだ勉強中ですが、そのときそのときのベストを尽くすよう頑張ってます。どうぞこれからもよろしくお願いします。
      • 1 fav

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