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シリーズ:トリップ先にお酒と果実がいっぱいあったもんで
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トリップ先にお酒と果実がいっぱいあったもんで

作者:相坂桃花

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    双子の兄と共に祖父母の家に遊びにいった二十歳の夏休み……。
    突如和風チックな異世界へとトリップしてしまった、あたし飯島早苗(いいじまさなえ)
    とある事情から超絶美形の虎男、永久(とわ)とうさぎ美少年因幡(いなば)さんと一緒に住むことになったんだけど……
    え? 村おこし? 女の子がいっぱい来るような企画を考えろ?
    よっしゃ任せろ!スマホに保存されている情報を頼りに、村おこしだー!!!
    御山(おやま)で採れる豊富な酒と果実を元手に、あたしの奮闘する日々が始まった……!


    登録ユーザー星:23 だれでも星:20 閲覧数:5359

    トリップ先にお酒と果実がいっぱいあったもんで 59208文字

     

    「なんで知ってるかぁああああああああ!」
     気づいた時には、叫ぶと同時に兄の鳩尾(みぞおち)に裏拳(うらけん)を打ち込んでいた。
    「はうん」
     力の抜けそうな声で兄はうめき、その場に膝を折る。
     インドアだが、護身のために空手を習っていた時期のある兄の腹部は、ちょっと固い。
     三次元よりも二次元の世界の住人に近いクセに生意気な……!
     体重が三キロ弱も増えたことは、あたしだけの秘密だったのに!
     なぜに知っている!? 体重計を計るのは、お風呂上りの脱衣所だけなのに!
     見たのか!? 覗いたのか!? 千里眼か!?
     頭の中が永遠に中学二年生なら、使えるのか千里眼!?
     いや、いくらなんでも使えないかそれは。
    「どこで知った!? どこからリークされた情報だ!? ま、まさか年頃の妹のお風呂上りを、こっそりと覗いていたとでも……!?」
     もしそうだったら、兄妹(けいまい)といえども問題がある。
     双子の中にも礼儀あり。
     ここは徹底的に事実を追求し、しかるべき対処と厳罰を与えなければ……!
    「本気であたしにドン引きされる前に、真実をその口から言ってごらんなさい」
     九の字に身体を曲げている兄の前に仁王立ちし、ビシリとその頭に人差し指を突きつける。
    「何を言っているんだい、妹よ。目に入れても痛くはないかわいい妹のことだよ? 毎日穴が開くほどに見ていれば、ちょっとした些細(ささい)な変化だってわかるさ」
     一ミリ前髪が短くなってもわかるよ!
     堂々と、恥も外聞もなく言ってくる兄に、今度はあたしが崩れ落ちた。
     ……もう、ダメだこいつ。



    「おじいちゃん、おばあちゃん!!」
     戸に鍵をかける――という習慣すらない大きな玄関を横に滑らせて開く。
     返事も待たずに、乱暴に靴を脱ぎ捨てて部屋に上がり込む。
    「あらあら、早苗ちゃん。久しぶりねぇ」
    「待っていたよ。おや、お兄ちゃんの方はどうしたのかな? もしかして、迷子かな? だったら、じーじが迎えに行ってあげないとね。迷子で泣いていたら、大変だ。あの子はまだ、棒飴は好きかな? 見つけたら買ってあげないとね」
     障子をバン! と開けると、その向こうにいた二人が表情を綻ばせて立っていた。
     小柄で柔和な顔立ちをしたおばあちゃんと、背の高い、若いころは絶対に美形だっただろうと想像のつくおじいちゃんに、勢いのまま抱きつく。
     二人も、あたしの声を聞いて奥の方から出てきてくれたのだろう。
     少し遅れて、兄もあたしの後ろからやってくる。
    「おじいさん、おばあさん、お久しぶりです。お元気にしていましたか? ところで、妹。靴はちゃんと揃(そろ)えてあがらないとダメだよ。ぼくが、きちんと揃えてあげているけれどね」
    「あ、ごめん」
     軽く叱られて、謝る。
     昔から、意外とこういう家庭のしつけ的な事に関しては、うちの兄は厳しい方だった。
     兄いわく、礼儀作法をきちんとできていないと外で恥をかくのは、早苗(あたし)自身だからね、とのことだ。
    「外は暑かったでしょう。冷たいものを用意しましょうね」
    「そうだね。スイカも冷やしてあるから、一緒に食べよう」
     あたしたちはそろって移動を始める。
     おじいちゃんたちの家は、合掌造(がっしょうづく)りと呼ばれる茅葺(かやぶき)が立派な、とても大きな家だ。
     合掌造りとは名前の通り、両手を合わせた形に似ている屋根である。
     おじいちゃんたちの家は、古くはあるけれども掃除が行き届いているので、いつも清潔だ。
     ここの村では珍しくはないことなのだけれども、広い庭もついていて、古い土蔵や井戸まである。
     井戸は江戸時代からあるものだといい、今でも現役の活躍を見せている優れものだ。
     他の家では、大正時代にポンプ式になったらしいが、おじいちゃんたちの家では、今でもつるべ式と呼ばれるものである。
     現役ではあるけれども、日常生活では普通に水道を利用しているので、庭先に水を撒く程度にしか活躍はしないのだと、以前におじいちゃんが笑っていた。
     井戸はあたしも何度か使ったことはある。
     水汲みは楽しいけれども、割と大変な作業だった。年々、おじいちゃんたちが井戸を使う頻度(ひんど)は少なくなるんだろうな……と、少し寂しくも思う。
     おじいちゃんもおばあちゃんも、ずっと元気で長生きしてほしいなぁ。
     家の隣には畑があって、四季に合わせていろいろなものを植えている。
     夏場には、真っ赤に熟したトマトが実り、それを井戸の水で冷やして食べるのが、毎年のお約束だった。
     おじいちゃんは畑に植えている農作物のことを。
     おばあちゃんは料理とかお掃除のことを。
     二人して、昔ながらの知恵とかを、たくさん教えてくれた。
     あたしは、おじいちゃんもおばあちゃんも、大好きだった。







    2落ちてしまったもんで

     ただ今、あたしは押入(おしい)れの中に潜入している。おーばー。
     息をひそめて、暗闇の中で膝を抱えてジッと動かない。
     ふふふふ。
     兄も、まさかあたしがこんなところに隠れているとは思うまい……!
     外には聞こえないように声を潜めて、小さく笑う。
     ことの始まりは、兄が唐突にかくれんぼをしようじゃないか! とか言い出したことが発端である。
     おじいちゃんたちの家に遊びに来て、はや五日。
     適度に、あたしたちは時間を持て余していた。
     大学で出されているレポートをすればいいじゃないかという案もあるかもしれないが、あたしたちはそろって夏休み最後に追い込みで片付けてしまうタイプなのだ。
     もう、この性分に関しては修正不可能である。
     追い込まれないとやらないダメ人間ですが、何か問題でも。
     お互いに勝手知ったる身内の家。
     小さいころからかくれんぼやら鬼ごっこやらを繰り返し行っているので、どこに逃げたり隠れたりするかは、だいたい見当がつく。
     ――が。
     実は、この押入れという場所にはあたしは身を隠したことがなかった。
     けれども、この押入れに限らず、押入れいう場所自体に、あたしは小さいころ苦手意識があった。
     兄が――あの馬鹿兄が、小さいころの健気でか弱いあたしに、散々と押入れに関する怖い話を聞かせやがったからだ。
     いわく。
     いいかい。押入れというのは、異次元に続いているんだよ。
     真っ暗い闇が、早苗を飲みこんでしまうから近づいてはいけないよ。
     闇に落ちてしまったら、お兄ちゃんとお別れしなければならなくなるからね。
     そう、兄はあたしに言い含めた。
     今思い返してみれば、大した話じゃないのだけれども、当時のあたしにとってはすんげえぇ怖い脅しだった。
     だがしかし。
     あたしもすっかり大きくなりましたよ。
     成長しましたよ。もう、あんな与太話を信じて怖がるような年齢でもないわけですよ。
     ふっふっふっふ。
     膝を抱えて、低く哄笑する。
     それにしても、真っ暗だ。予想以上に、暗い。
     背中に感じる壁の感触は、洋服越しでも冷たい。
     外に出たら、眩しさに目がヤられる気がする。
     ふと。
     本当に、ふと。
     背中にあった冷たい感覚が、急になくなった。
    「え?」
     間抜けな声が漏れる。急激な速度で、身体が後ろへ傾いていく。
     だって、背中の壁がいきなりなくなって――?
     階段を後ろ向きに落ちていくかのように、あたしは落ちて、いく。
    「なんでぇえええええええええええええええええ!?」
     闇の中、絶叫だけが響き渡った。






    「――はっ!?」
     パチリと目を開ける。
     サワサワと風に草木が揺れていた。
     呆然とあたしは周囲を視線だけで見回した。
     背の高い大きな木々に、草。一面は緑と茶色と……花はない。
     自然だ。森の中だ。
     排気ガスなんて、一切感じない、澄み切った空気。
     錆びついたロボットみたいに、ぎこちない動きで首を回す。
     もう一度改めて周囲を見回したけど、感想はかわらなかった。
     キラキラとした眩しさを感じて、上を見る。
     木漏れ日が、あたしの頭上から注がれていた。
     暖かくて、眩しい。
     ここは、どこなんだろう。
     おじいちゃんたちの家があった、田舎じゃ……ない。
     なんとなくだけど、わかる。だって、匂いが違う。
    「夢?」
     そうであればいいと、あたしは思った。
     自分の頬をギュッと強く摘まんでみる。痛い。普通に、痛い。

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    コメント

    • カールさん、受賞のお祝いコメントありがとうございます(*´ω`*)
      楽しんでいただけたようで、安堵しております。これからも、日々勉強し、精進してまいります(●´∀`●)
      • 1 fav
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    • ねこまんまさんのイラストで初めて気がついて探しましたよ!w
      いやいやいやいや~~~、安心の一作!
      ワタクシ、ライトノベルにはちょっと抵抗があったんですが、見事に払拭されましたね!
      というか、最初に読んだライトノベルがことごとく素人の作品だったのがいけなかったのか・・・とにかくどれもこれも、すべて読みながら想像ができないものだったんですよ~。
      必ず、ん?どういうこと??ってなっちゃうんで、今の人はこれでも通じるんだなぁ・・・とか思ってました( ̄▽ ̄;
      でもやっぱり違いましたね!w 作家目指したり意識してる人はちゃんと書いてますよね!
      走ってるシーンに 「タッタッタッタ・・・」なんて表現、
      • 3 fav
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    • 使いませんよね!ww
      あーそうか!わかりました!
      昔で言うところの「新井素子」だ!
      今更ながらに、ライトノベルってのがどういうものかわかりました・・・w(遅
      あっ!それなら自分の作品にも、それっぽいのがあるかも!

      しかし、これを読んで「お礼に鯛焼きを・・・」の掛け合いがよくわかりましたよww 読み直すと二度おいしいですねw
      黄色いもふ尻野郎、( ゚д゚)ホスィ…ww
      • 1 fav

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    • コメントありがとうございます(●´艸`)ヾ
      少しでも楽しんでいただけていればいいのですが…。ライトノベルはとてもふり幅の広いジャンルだと思いますので、きっとカールさんのお好みに合う作品もいっぱいあると思います。効果音等は作品の雰囲気に合うか合わないかで、使い分けをしておりますので、次の作品では「タッタッタ!」とか出てくるかもしれません。その時は笑って突っ込んでやってください(笑)
      「お礼に鯛焼き」では、できあがているキャストなので使い勝手がよ……げふげふ。奴らが出たがったので、やつらが出たがったので、手前味噌ですが、失礼させていただきました。
      どうぞ黄色いもふ尻野郎をよろしくお願いします。
      • 3 fav

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    • いやぁ、言葉にはしませんでしたが、面白かったですよ!ずっとニヨニヨしながら読みましたですよ!
      まぁ、面白くなかったらコメント書きませんがww

      言葉が足りなくて申し訳なかったですが、「 タッタッタ!」でもいいんですよ、ちゃんと統一されてるのならw それは未熟なんではなく、手法になりますもんねw

      あと一番大事なことを忘れておりました!
      相当遅いですが、
      *:..。o☆★o。..:*受賞おめでとうございます!*:..。o☆★o。..:*
      • 1 fav

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    • この度、拙作にてありがたくも受賞をさせていただくことになりました。
      正直、うれしいという気持ち以上に、おっかなびっくりでオロオロしておりますヽ(д`ヽ)
      身に余る光栄に色んなとこが、キュッとなっています。
      これから、この作品がどうなるか未知の領域ですが、少しでもよいものになるよう精進いたします。
      閲覧ならびに応援してくださった方、これから興味を示してくださる方。
      本当に、本当にありがとうございます(つд;*)

      相坂桃花拝
      • 3 fav
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    • コメントありがとうございます。読んでいただけて、とても嬉しいです。少しでも楽しんでいただければ、幸いです。どのこにも愛情を注いでおりますが、特定で好きだと言っていただけると、また格別におもはゆくなります。うちの因幡うあーにも、伝えておきますね。
      つーか、思いっきり気恥ずかしいわねこたん!!
      • 2 fav
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