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シリーズ:春が笑う 2
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春が笑う 2

作者:なつき

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    春が笑う 第2話です。


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    春が笑う 2 0文字

     

     翌日。

     春日は昨日のカフェに一人で来ていた。もしかしたらあの人がここに来るかもしれない。
    そう思ったから。
    「っていうか、偶然会えるのを待つしかないし・・・。」
     春日は五千円札を入れた封筒と、お礼のハンカチを見つめながらつぶやいた。
    そして店のドアが開くたび、彼かどうか、確かめた。もうそろそろ昼休みが終わってしまう・・・。
    「ねえ、だれを待ってるの?」
     急に肩をつかまれた。
    「その制服、岩本製薬だよね?かわいいってこの辺りで有名だよ、」
    「え、あの、」
     安っぽいホストのような男が無理やり隣に座る。
    「君が着てるからかわいいのかな?」
     肩を掴んだまま、間合いを詰められる。
    春日は逃げようと体を動かすが、それは自分の身を窓際に追い詰めるだけだった。
    「あ、あの、離してください、」
     春日の抵抗にはびくともしない。
    「ねえ、今度合コンしようよ、君の友達だったらかわいい子いっぱいいるでしょ?」
    「あの、ほんとに離して・・・、」
    「ナンパならよそでやってくれないか。」
     突然上からふってきた低い声に男は春日の肩から手を離した。
    「俺の女に何か用か?」
    「ち、男が来るならそう言えよ。」
     男はバツが悪そうに急いで店を出て行った。
     春日は信じられなかった。昨日も、今日も・・・。助けてくれたのは昨日の人だったのだ。
    その人は呆然とする春日を見て、
    「余計なことをしたかな?」
     と、はにかんだ。その笑顔がまぶしくて、まともに見ることができない。
    「あ、あの、ありがとうございました、あの、こ、これ・・・!」
    「菱也、何してるの?」
     春日が封筒とハンカチを手にしようとした瞬間、きれいな女の人が入ってきた。
    「ああ、由布子。いや、何でもない。出よう。」
     春日の待ち人は春日の目の前で美女の腰になんともエレガントに手を回した。
    そして春日を振り返りこう言った。
    「もう、昼休み終わるんじゃないのか?急いだほうがいい。」

    「あなたが人助けしてるところなんて初めて見たわ。わたしの知らないうちに性格かわったのかしら。」
    「おまえも富山も俺をどんな人間だと思ってるんだ。」
     食事をしている手を止めて、菱也は由布子を苦笑交じりに睨んだ。
    「だって、歩いていたら急にあのお店に入っていって、俺の女に何か用か、ですもの。
    大地震の前触れかしら。」
    「もうからかうな、食べろ、」
     菱也につれなく言われても、由布子はクスクス笑いながら続ける。
    「あの子、ポーッとしちゃって、かわいかったわね。」
    「いいかげんにしてくれ。」
    「あの制服、あなたの会社の子でしょ?あなたが次期社長だって知ってるのかしら。」
     どうやら由布子はこの話題をやめる気はないようだった。
    「俺の知らないうちに社内報にでかでかと写真が載っていたから、俺のことを知らない社員なんていないだろう。」
    「あら、やっとあきらめがついたの。」
    「まあな、」
    「わたしとのことも?」
     菱也は由布子の目を見た。微かに揺れている。
    「・・・待たせて悪かった。」
    「菱也・・・。」
    「結婚しよう。」
     言葉に出すと踏切りがついて軽くなると思った。
    「うれしいわ・・・。わたし・・・、ずっと待っていたの・・・。」
     涙で滲んだ由布子の瞳を見つめたら、軽くなるどころか、心が急速に重くなっていくのを菱也は感じた。

     せっかく会えたのに、また助けてもらったのに、お金を返しそびれるなんてお馬鹿にもほどがある・・・。
    春日は自分のデスクに突っ伏してへこんでいた。それにしてもまるで映画のワンシーンのような二人だった。
    恋人かな、そうだろうなあ。いや、夫婦かも。
    「こんな安っぽいハンカチなんていらないよね・・・。」
     春日は封筒とハンカチを引き出しにしまった。
    「尾山くん、暇そうだね。」
     ため息をつきかけたとき、課長に声をかけられた。思わず口を手で塞ぐ。
    「この資料を試験場に届けてくれ。急ぎみたいだから、頼んだよ。」
    「はーい。」
     もう、会うことはないだろうし。たぶんあの人もお金を返してほしいなんて思ってないはず。
    考えるのはやめよう。春日は資料を手に立ち上がった。
     製薬試験場は本社から五駅離れた片田舎にある。
    「いらっしゃい、春日ちゃん。」
     顔なじみの研究医、広末映一が声をかけてきた。
    「お久しぶりです、広末先生。資料、お持ちしました。」
    「おぉ、ありがとう、バイク便でも良かったのに。」
    「いえ、暇だったんで。」
    「まぁ、お茶でも飲んでゆっくりしていって。」
     広末は自販機で紅茶を買って春日に渡す。
    「と、いっても僕はもう行かなきゃいけないんだ。社長が、あ、次期社長か。突然来てね。もう大騒ぎ。」
    「あ、だから、受付の方がいなかったんですね。気にしないでください、わたし、もう、帰りますから。」
    「ごめんね、また今度ゆっくり、」
     広末は、本当に残念そうに、顔の前で両手を合わせる。
    「はい、また。」
     慌しい様子の広末の後姿を見送り、春日は紅茶をすすった。
    目を閉じると思い浮かぶのはあの人の面影。
    春日は頭を横に振り、面影を消した。
    「さ、会社に帰ろう、」
     ベンチから立ち上がり、春日は歩き出した。

    「おい、岩本よ。来るなら電話の一本でも寄越せよ。いきなり秘書と来たら、うちの研究員たちがびびるだろ。
    人見知りの集まりなんだから。」
     広末は親しげに菱也の肩をたたく。
    「おまえの顔を見に来ただけだ。元気だったか。」
     菱也も広末の肩を大げさにたたいた。
    「痛いって。ああ、元気さ。研究は進まないけどな。」
    「おいおい、」
     二人は笑いあう。
    「ほんと、昔から仲いいですね。お二人。」
     富山は半ば呆れながら言う。
    「まあ、高校からの腐れ縁だからな。富山はどうだ?女できたか?」
    「これから作ります。」
     きっぱりと言い放つ富山に広末は豪快に笑う。
    「なんだ、二人とも中国の女とは肌が会わなかったのか。」
    「そういうおまえこそどうなんだ。俺が北京にいた間、結婚したっていう知らせはなかったが?」
    「まあね、結婚したら恋愛ができなくなるからなあ。今だって、狙ってる子と逢引してたのに、
    おまえに邪魔されたんだよ。」
    「ふっ、そりゃ悪かった。ほどほどにしとけよ、いつか刺されるぞ。」
    「はは、・・・ん?」
     笑っていた広末がテレビのニュース速報に目をやった。
    「**線、踏み切り事故で列車運休?」
     菱也もテレビを見る。
    「すぐ近くだな。」
    「春日ちゃん、大丈夫かな?」
    「かすが?」
     どこかで聞いた名だ。
    「本社の子だよ。ちょっと前に資料を届けに来てて、もうそろそろ駅に着く頃じゃないかな・・・、」
     思い出した。カフェであの子が呼ばれていた名だ。
    「迎えに行こう。どうせ目的地は同じだ。」
     春日の姿を思い浮かべた途端、菱也の体は勝手に動き出していた。
    「え、おい、岩本、」
    「また来る。」
     菱也は早足で車に向かった。
    「急いでくれ。」
     運転する富山に注文をつける。
    「急ぎますけど、どうしたんですか?昨日から変ですよ。」
     変なのは自分でもよくわかっている。菱也は窓を開け、外に目をやった。なぜかわからないけど、
    考えるより先に体が動いている。
    「黄砂が目に入りますよ。」
     富山の言葉を無視し、外を眺めた。


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