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シリーズ:恋煩い
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恋煩い

作者:蒼衣梅

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    風邪を引いてしまった高校生の恋の始まり。
    シンプルな告白シーンを書きました。可愛いなぁと思って頂けたら嬉しいです。


    登録ユーザー星:2 だれでも星:11 閲覧数:912

    恋煩い 2747文字

     

     思わずキャラじゃないのに、ホームルームで元気に手を挙げてしまった。
     日直が持って行くはずだった敦也(あつや)のプリント、咄嗟に「俺が持って行きます」なんて手を挙げていた。別に不自然じゃないだろ、幼馴染なんだし、家だって向かいなんだし。若干必死な感じにはなったけどさ。

    「あら、恭(きょう)ちゃん」
    「おばさん、こんちは。敦也のプリント……まだ寝てる?」
    「起きてると思うわよ〜熱は微熱なんだけど、なんだかボーッとしてて」

     心配そうなおばさんに「平気だよ」って言葉しか掛けられなかった。だって風邪なんかじゃないかもしれない。熱だって俺のせいかもしれない。
     俺が……昨日、キスなんてしたから、かもしれない。
     優しいおばさんに促されて、もう何百回上がったかわからない階段を、生まれて初めての感覚で上っていた。
     部屋に入った瞬間怒鳴られるかも。怒鳴られるならいい、完全に無視される事だってありえる。ドアノブを持つ手が震えた。

    「……入るぞ」

     返事はなくて、そっと開けた扉に何の反応も示さないから寝ているのかと思った。

    「……恭介?」

     だから布団の中からそう呼ばれて、そっと机にプリントを置いておこうと思った姿勢のまま固まってしまった。
     返事がないのを俺だと判断した敦也がのそっと起き上がろうとして、ふらついたから慌てて駆け寄った。倒れないよう肩に触れて、ビクンと身体を揺らした敦也に思わず手を引っ込めてしまう。

    「あ、ごめん、まだフラフラして……」
    「風邪ひどいのか?」
    「ん」
    「プリント、今日の」
    「ん、ありがと」

     目を合わせようとしない。そりゃそうだろ。いきなり「ずっと好きだったんだ」って言われて、混乱しているのも関係なしに抱き締められてさ。それだけならまだしも、キスまでいきなりされたら、熱だって出るし、目を合わせたくもない。

    「ホントは風邪じゃないんだろ?」
    「え?」
    「それ、俺のせいなんだろ」
    「……」

     ごめん、あんな事して。もうしないし、諦めるから――その言葉がひとつも出てきてくれない。昨日、あんな顔してスマホをひとり教室で眺めていた敦也の初めて見た表情に動揺した俺はそこから先、何も考えられなかった。

    “何見てたの?”
    “別に……何でもない”

     何でもないってさ、あんな嬉しそうに華やかな笑顔、俺は見た事がない。その何でもないものがきっと俺にはとてつもないものなんだ。俺が向けられない眼差しをその画面の向こうは見ることが出来る。きっと敦也が隣にいたいと思う存在が画面の向こうにいるんだ。俺が一番近くにいたと思っていたから蓋をしていられた想いが、慌てて溢れ出てその場所を占領しようとしてしまった。

    「ご……め、ん」

     それを搾り出すのがやっとだった。
     だって諦めたくないんだ。ずっとずっと好きだった。だからこの想いを消すにはそれと同じくらいの時間が必要だと思う。

    「きょ、恭介は……」
    「え?」
    「俺の事好きって……」
    「……うん」

     熱のせいなのかな。言葉の終わりが掠れてて、昨日あんなふうに無理やりキスしたことを反省しているくせに、拳を力一杯握っていないと、また襲い掛かりそうだ。

    「じゃ、なんで謝るの?」
    「え?」
    「いつもそうだ。恭介はいつだって勝手にさ」
    「ごめん」
    「わかってないのに謝るし」

     ブツブツ文句を言われて、でも心底嫌われていなそうな雰囲気にひどく安心する。

    「逃げ出すし」
    「ごめん」
    「そういうのやり逃げって言うんだよ」
    「え?」

     慌てて訂正しようと思った。やり逃げっていうのはキスじゃなくて、その……もっと濃厚な事をして逃げた場合で、と慌てている俺をじっと敦也が見つめていた。

    「これっ!」
    「え?」
    「これ、見てた」

     その手の中のスマホにはこのあいだ行ったバーベキューではしゃぐ俺が映っている。

    「バレたらどうしようって、これ盗撮だし。犯罪だし。慌てて隠したら、恭介が何か怒った顔して、驚いているうちに告白してキスして逃げるし」
    「……」
    「俺もって一言も言えないし」
    「…………え?」

     熱のせいじゃない。真っ赤な顔でブツブツ文句を言っているけど、それが具合が悪いせいじゃないってわかる。そしてそんな敦也が呟いた一言が俺の欲しい一言で、妄想と現実の区別がついにつかなくなったのかと思った。

    「嬉すぎて熱出した」
    「え? 敦也?」
    「まさか両想いだとか思わないじゃん! だから驚いて熱出た!」

     そんな熱の出し方聞いたことがない。でも目の前でブツブツ文句を言っている敦也は昨日見掛けた、スマホの画面を眺めて微笑んでいた顔と一緒だ。

    「驚いてフツー熱出ないだろ」
    「出るね。っていうか嬉しすぎると熱って出るんだよ」

     出ねーよ、って思うけど、もう何でもいい。敦也が俺を好きで、俺も敦也が好きって、この妄想が現実になってどうしたらいいのか困るくらいに嬉しいから。そう思ったら、何か確かに熱出るかもなってくらいに身体が熱くなる。

    「風邪だって」
    「違うよ! 風邪じゃないって!」
    「風邪って事にしとけよ」
    「?」
    「んで、俺に移して」

     さすがに大胆すぎたかなと心配になったけど、シャツの半袖をくいっと引いて、そっと瞼を閉じた敦也に自然と唇が重なった。昨日みたいに押し付けるものじゃなく触れる唇は熱くて、本当に熱があるように感じられる。
     少しだけ啄ばむと、喉の奥で息を呑むみたいに小さく鳴いて、それがやたらと可愛くて、唇をずっと離す事が出来ずにいた。

    「両想いって……フワフワする」

     そう呟く敦也の睫が震えていて、ハッとするくらいに色っぽい。

    「敦也……」
    「ん?」
    「今度からはさ、本物見て、昨日みたいに笑ってよ」

     すぐそこにある長くて綺麗な睫を上げて、視線が合うと、吐息も感じられる距離で昨日見た笑顔を向けてくれた。確かに……両想いってフワフワするなって思いながら、また引き寄せられるみたい唇を重ねた。




    「あらぁ、あんたも風邪?」

     昨日からフワフワしっぱなしの俺に呆れたように母さんが呟いている。

    「お向かいの敦也君も風邪だっていうし、流行ってんのかしら」

     あいつ、今日も休みか……っつうかやっぱ風邪だったんじゃん。

    「敦也君はともかく……馬鹿は風邪引かないのにねぇ」

     わざとらしく大きな溜息を頭上から落とされて、敦也んとこのおばさんと正反対だなって抗議したいけど、そんな力も残っていない。体が熱いし、頭はボーっとするし、指先が痺れるし、なんか節々が痛い。
     氷枕がやたらと気持ちが良くて少しだけ意識がはっきりした。「休んでなさい」って母さんの一言を無視して、向かいの家で同じように寝ているだろう敦也にメールをすると、待っていたかのようにすぐに返信が返って来た。

    “ねぇ、これって恋煩い?”

     やり逃げって言葉もそうだけど、恋煩いも意味違うから。そしたら両想いじゃねーじゃんって思いながら、とりあえず“バーカ、好きだよ”ってまた返信をしておいた。





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    コメント

    作者紹介

    • 蒼衣梅
    • 作品投稿数:19  累計獲得星数:287



    • 只今、電子書籍「君を守ってあげましょう。」上下巻が配信されています。イケメン(全裸登場)に溺愛される可愛い男の子(高校生)の話になっております。パピレスさんからも配信されていますので、是非宜しくお願いしますm(__)m
      こちらではムーンライトノベルズさんにUPした過去作品を手直しして、できるだけまとめて上げようと考えていますので、更新はかなり遅くなるかと思いますm(__)m
      腐女子歴長すぎて、気が付いたら書くようになってしまった蒼衣梅です(笑)








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