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シリーズ:風鈴
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風鈴

作者:チャチャ丸

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    あの風鈴は、俺たちの友情の証。そうだろ?

    インターネット電話で、いつもと同じように会話を楽しんでいた俺たち。いつもと違ったのは、鳴りやまない風鈴の音だった。


    登録ユーザー星:0 だれでも星:0 閲覧数:804

    風鈴 2481文字

     

    「実は気になっとったんやけど」

     大学二年の夏休み。
     遠く離れた地元に住む小学校時代からの友人である壮介と、俺は最近Skyleというインターネット電話で会話を楽しんでいる。

     大学に入ってからなかなか地元へ帰る機会が減っていたため、壮介とのやりとりの中で友人や地元の近況を聞き出していた。いずれ俺も地元に帰るのだ。その時、取り残されでもしたら寂しいじゃないか。
     本当は今年の夏こそ帰ろうと思っていたのだが、バイトが忙し過ぎてそんな余裕すらなくなってしまった。せっかく、地元の友人たちを集めて俺の誕生日を祝ってもらおうと思っていたのに。

     そんな愚痴も織り交ぜつつ今夜もたわいもない話をしていたが、ふつりと話が途切れたのだ。カメラを覗きこむようにして、壮介が唐突に切り出してきた。
    「和明の後ろにある窓にさ、風鈴吊っとるやろ。それって……」
    「ああ。昔おまえと一緒に買ったやつやで」
     やっぱり、と壮介は屈託なく笑った。そんな壮介の部屋の窓にも、同じ風鈴が吊ってあることに俺は気が付いている。

     小学校最後の夏祭りの日。俺と壮介は縁日に来ていた風鈴屋台に目を奪われていた。色鮮やかに描かれた金魚や花火。耳に沁みる涼やかな音色。男が風鈴なんて……と思ったが、二人で買ってしまえば恥ずかしさも若干減るというものだ。

     そんな友情の証とも言える風鈴が、壮介の後ろで風に揺れていた。りんりんと涼やかな音を奏でている。だが。
    「そっち、今日風強いん? なんかやけに風鈴うるさいな」
     俺は時々、壮介の声が聞き取れないほどに鳴り響く風鈴が気になっていた。それともう一つ。それを確かめるために壮介に振り向かせたのだ。
    「うん? 風なんか吹いてないけど……でも確かにうるさいなぁ。なんでやろ?」
     言いつつ窓の方へと首を捻る壮介。特に変わった様子は見られない。
    「……なぁ、覚えとるか」
     俺はなるべく壮介の背後を見ないよう気をつけながら、声音を一段落として続けた。自然と姿勢を正す。
    「あの時も、屋台の風鈴がそんな風によう鳴っとったよな。風、そんなに強くなかったのにな」
    「あの時って……なんの話?」
    「おまえ、忘れたわけないやろ? 二人で秘密にしようって。それで証として、その風鈴買ったんやないか」
     ふと。脳裏に浮かんだのは、小学生最後の夏祭りの風景。
     耳には賑やかな音や声が。鼻には醤油の焦げる香ばしい匂いがよみがえる。
     そして、初めて見た、どろりとした赤。
    「忘れたとは、言わせんぞ。おまえが言うたんやろ。秘密にしようって。俺、今でも後悔しとるんやからな」
    「……悪い。ほんま、俺覚えてない」
     ずっと胸の内にしまいこんでいた秘密。絶対に誰にも言うなと釘を刺した当人が、こんな風に言い逃れをするとは思ってもみなかった。壮介が、そんな奴だとは思いたくない。
    「そう、かぁ。小学校の頃の話やもんな。無理、ないわな……」
     壮介は思い出したくないのかもしれない。それなのに、俺が変に食い下がるのも悪い気がしてきた。
    「誰かと間違えとるとか? まぁ、その秘密が何なのかは気にはなるけど」
     にやりと笑ってみせる壮介の顔を見て、俺は本当に記憶違いをしているのではという気になってきた。いや、だけど。じゃあなんで俺と壮介が同じ風鈴を買うことになったんだ?

    「そーいや和明、もうすぐ誕生日だっけ?」
    「あ、あぁ。盆明けてすぐやけど」
    「一日でも帰って来れんの? なんか中学の時の同窓会しようとかゆってたよ。盆休み中に」
    「そうか……」
     笑いながら話題を変えた壮介は、手元に置いてあったペットボトルを口へと運ぶ。その姿を見て、俺は覚悟を決めた。
     今まさに、俺には見えているのだ。壮介にだって、同じように見えるはずだ。そうでなければおかしいじゃないか。

    「なぁ……俺も気になっとったんやけど」

     無意識に、俺はごくりと唾を飲み込んだ。口を拭いつつ壮介がまた、俺を見てどうしたと屈託なく笑う。
    「その……風鈴の下にさ、何か変なもん見えんか?」
    「何かって……和明、また怖いこと言うなー」
    「いや、もしかしたらSkyleの不具合かもな。おまえの方で自分の画像見れるか?」
     しばらくじっと、自身のパソコンを眺めていた壮介は、「よくわからん」と呟いた。
     俺はその間も、極力壮介の背後を見ないよう努めた。

     その直後。一瞬だけ画面が黒くなった。回線が切れたようだ。それはすぐに元通りになり、画面には先ほどと変わらぬ様子で壮介がこちらを覗いている。

    「今、一瞬落ちたよな?」
    「え? そうでもないけど……あれ?」
     眉間にしわを寄せ、真顔になる壮介と同時に。
     りんりん。りんりん。
     風鈴が音を奏で出した。それは紛れもなく、俺のすぐ後ろで。
    「……和明、風鈴鳴ってるな」
     言われて、俺は背筋がひやりとした。あんなにうるさく鳴っていた壮介の風鈴は今、全く微動だにしない。そうして、見えていたあの顔も見当たらない。
     俺は左下に小さく映し出されている自身の画像を見た。だが、よく見えない。だからといって画像を大きくする勇気も出ない。
    「……なぁ、壮介。俺の後ろに今……何か見えるか?」

     あの時、あの夏祭りの夜。二人で見たのだ。
     風鈴屋台の近く、外灯にも見放された暗い闇の中に、ぽつりと立つ古ぼけた神社。その茂みの影に人が横たわっていた。動かないが、小さく呻いていた。
     雲に隠れていた月が顔を覗かせた時、その人が血だらけで、しかも裸の女の人だということがわかった。
     怖かった。俺たちはとにかく怖かったのだ。だから俺たちは――

     画面に大きく映し出されている壮介の顔は、紛れもなく蒼白になっていた。だが、壮介は「なんも」と言って一方的に電話を切ってしまった。
     俺の後ろで、風鈴が次第に大きく鳴り響き出した。


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    コメント

    • 幽霊や呪い的なものの怖さって、具体的に、何がどう作用しているのか分からないところ……ということを再確認。怖いです、この話し。終わり方がホラー。音が鳴ってるだけなのが。次の行動を起こせば勇気とバトルに写ってしまうから、恐怖で終わらせたところがいい。
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    • ありがとうございます^^
      個人的に、ホラーは読むのも書くのも苦手でして…(笑)
      特に細やかな描写が怖くて怖くて濁す癖があったりします^^;←
      でも、行間で想像させる恐怖もまた怖いんですよね~(笑)

      終わりは何度も書き直したので、そう言っていただけたことが嬉しいのです♪ありがとうございます^^
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    •  風鈴の音という“聴覚”にはたらきかける要素で恐怖を引き立てるというのは、文字作品でありながら五感にはたらきかけるという点で参考にしたいと思いました。
      面白かったです。
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    • ありがとうございます^^
      風鈴って、あの音色だけで涼しくなりますよね。なので、違った意味でも涼しく…と考えたのがはじまりだったり(笑)

      まだまだ描写は下手っぴですが、面白いと言っていただけたことはとっても嬉しいのです♪やったー^^
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    • まず、文章が上手いです!そして最後まで読者をグイグイ引っ張るミステリアスな展開もよかったです!
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    • ありがとうございます♪
      なんだか褒めちぎっていただくと、全身こそばゆくてムズムズしちゃいますが(笑)

      ショートのお話って、結局アレは何だったんだろう?的な謎が多いものですから、今回はきちっと答えを書き込んでみました。
      見過ごしは良くないのです!むん! ←
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    • 風鈴とホラーの組合せが斬新ですね!
      現代のツールもうまく取り入れてあって、上手いと思いました~☆
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    • ありがとうございます^^
      昔からある風鈴と、現代技術のインターネット電話を使ってみました。
      上手いだなんて!なんて!!←悶えている(笑)
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    • こ、これは怖い…… 腕のいい監督さんが映像化したら、日本的な、上品なホラー作品になりそうです。
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    • なんと!是非とも、腕のいい監督さんに映像化してもらわなきゃ!(いそいそ…笑
      ありがとうございます^^
      なかなか「うわーっ!」とビックリするようなホラーが書けなくて…困ったさんな私には嬉しいお言葉でした♪
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    • ヽ(´;ω;ゞ=ヾ;ω;`)ノ あぁ、もぅ。なんで風鈴買ったの。なんで風鈴、ずっと吊るしてるの(汗)

      そんな風にあわあわしながら読んでました。風鈴の音聞くたびに思い出しちゃいそうです。
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    • コメントありがとうございます☆
      本当、さっさと外してしまえば良かったものの…(笑)
      あわあわ嬉しいのです^^
      是非とも、風鈴の音色と共に思い出してくださいませ…ぐふふ。←
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    作者紹介

    • チャチャ丸
    • 作品投稿数:3  累計獲得星数:20
    • 書くことよりも読むことの方がスキです。

      気ままに漂ってますが、どうぞよろしくお願いします♪
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