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シリーズ:猿殺し
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猿殺し

作者:藤堂 貴之

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    猿が二十八匹殺された事件を描きました。


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    猿殺し 2150文字

     

     A動物園の猿二十八匹が殺された事件は、事件から一ヶ月経った今でも、テレビや雑誌で取り上げられ話題になっていた。
     通常に営業していたA動物園が一夜明けると、猿山にいる全ての猿が血まみれになって死んでいた。殺害された猿には、刃物のようなもので切り刻まれた跡があり、見るも無残な状態だった。また、猿以外の動物には、まったく被害がなかった。
     A動物園の監視カメラは猿山にも設置されていたが、夜は暗くなってしまいほとんど何も見えなかった。猿山でライトの明かりが深夜にチカチカと点滅したような気配もあったが、監視カメラの画質も粗いため、犯人は特定できなかったのだ。
     事件後、A動物園は安全のため一週間営業を休んだが、そのあとに再開された。
     猿山にはまだ猿がいない状態が続いているが、動物園への来場客は事件後にむしろ増えたとのことだ。話題の犯行現場を見てみたい人が多かったのだろう。猿山には、来場者が弔いのために持ってきた多くの花が置かれていた。
     また、後追いの事件を防ぐために、全国の動物園では監視体制が強化された。
     警察が総動員してもこの猿殺しの事件は解決できず、私立探偵の私にも、調査の依頼がやってきた。今まで私は数々の事件を扱ってきたが、このような奇妙な事件に関わるのはもちろん初めてだった。この事件に関する様々な仮説を、まずはまとめてみよう。
     
    (一)警備員犯行説
     犯行が行われたのは、A動物園の閉園時間の午後七時から、開園時間の午前九時までである。警備員は閉園してから、深夜十二時まで園内を見張っているが、そのあとは施錠をして帰ることになっている。施錠された動物園に侵入するには、三メートル以上ある柵を乗り越えなければならない。不可能ではないが、なかなか困難な作業である。その点、鍵を管理している警備員ならば、犯行は比較的楽に可能である。その日警備に当たっていたY氏は、警察から厳しい尋問を受けた。しかし、動機も証拠もなく、すぐに容疑者のリストから外れた。また、Y氏は事件を発見したショックで、その後精神に異常をきたしたという。

    (二)快楽殺害説
     施錠後に園内に侵入するのは困難だが、閉園時間前からあらかじめ園内のどこかに隠れて、警備員が帰ってから犯行を行ったということも充分に考えられる。日ごろ鬱憤が溜まっていた犯人が、ストレス解消のために猿を殺したのではないかという説を唱える人は多かった。ただし、捕まるリスクがあまりにも大きく、なぜわざわざ猿を殺さなければならないのかも分からず、特定の容疑者も見当たらなかった。

    (三)政治的声明説
     猿を殺すという行為が何らかの政治的なメッセージになっているのではいかという意見も出てきた。つまり、人間に進化できなかった猿を殺すということを通して、弱者は排除してもいいというアピールなのではないか、などという考えが飛び交ったのだ。ただ、その手のメッセージが犯人から事件後に表明されることはなかった。

     他にも沢山の仮説が、ワイドショーやネット上で話題になっていた。A動物園の近くにあるB水族館の関係者が、ライバル会社に損害を与えるための犯行だったという説や、A動物園の猿に人類に害を及ぼすウィルスが感染していることが分かり、それを隠蔽するために政府が猿を全て暗殺したという説など、荒唐無稽な噂も飛び交った。なかには猿を殺した犯人をヒーローのように扱う雑誌もあり、多くのコメンテーターや知識人がこの猿殺し事件の話題に触れて意見を表明した。
     私も調査を重ねたが、事件から一ヶ月経過しても、まったく解決の兆しはなかった。私は泣き言を言いたくなり、この事件から早く解放されたかった。しかし、事件を解決しなければ、依頼料金は半額になってしまうのだった。
     
     私は探偵事務所で眠い目をこすりながら、動物園に設置された監視カメラの映像を見ていた。もう既に何回も見てきて、何も発見はなかったのだが…。
     夜の映像になると暗くなってほとんど何も見えなくなってしまうので、昼の猿山の映像を事件の何日か前までさかのぼって見ていた。
     すると、あるシーンに目が釘付けになった。
     小学生ぐらいの男の子が猿山の前に立っている。子供は猿に自分の持っている双眼鏡を見せびらかして遊んでいる。それを一匹の猿が檻から手を伸ばして、さっと取ってしまった。
     子供はわんわんと泣いたあとに、ぎろっと猿をにらんでいたように見えた。映像が不鮮明で詳しくは見えないのだが、私にはそう見えた。監視カメラの映像からも、子供の大きな憎しみが私に伝わってきたのだ。そのあと、親がやってきて子供をなだめたのか、子供は親と一緒にその場を立ち去った。
     そのとき、私はA動物園を調査してきたときに、園内の柵に小さな切れ目があるのを思い出した。小さな子供ならば、なんとか通れるぐらいのスペースがあったのだ。
     この子供ならば、施錠されていても動物園に簡単に侵入できる…。
     まさかな‥。
     私は、ふと浮かんだあまりにも突飛な考えを、すぐに振り払った。
                                       (完)

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    コメント

    • こどもは案外頑固で、自分の持ち物への執着もすごいですからねぇ。良し悪しの基準がまだまだあいまいな幼児時に、時にはスゴイ恐ろしいことをしでかすのかもしれないと思いました。
      • 1 fav
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    • ルーカさん、コメントありがとうございます!

      子供は無邪気ですが、頑固だし残酷ですよね。
      自分にもし子供ができたら、襲われそうで怖いです…。
      • 0 fav

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    • オチは曖昧にして終わりたかったので、あんな感じのラストになりました…。
      3番の説だと、猿にとってはかなり迷惑な話ですよね…。
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