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シリーズ:pink motor pool
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pink motor pool

作者:江ロ

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    pink motor poolはギター&ボーカルの木田悠とベースの前島弘介の2人からなるロックユニットである。
    これは木田に関する悩みから始まり、様々な受難に前島が苛まれる悲劇の日常を綴った物語である。(BLです)(大体ギャグです)(前島はノンケ)(犯人はヤス)


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    pink motor pool 7971文字

     

     pink motor poolはギター&ボーカルの木田悠とベースの前島弘介の2人からなるロックユニットである。
    メディア掲載の際はpmpの略表記が試用されることが多く本人たちも自称する際は「ピーエムピー」と呼ぶことが多いが、しばしば木田は「ピーエム」の長さにまで略する。

     結成の経緯はあるものの結成日は明確でない。
    2人が大学時代に軽音サークルでバンド参加するためにメンバーも名前も急ごしらえで登録したバンドが、そのまま木田と前島の二名で活動が進んだ形になる。現在は従業員規模約50名で10〜15程度のアーティストが登録アーティストとして出入りする音楽事務所に入って3年目になる。

     ここまで音源のリリースと主要都市を回るツアーを定期的に行い単発ライブも繰り返し、音楽フェスティバルへの参加も増えてきた。
    2人も最近やっとアルバイトをやめて音楽活動に集中できるようになり、順風満帆とも思えた。

     しかし、ベースの前島は現在悩みを抱えていた。
    その悩みが厄介なのは内容がユニットの相方である木田に関することであり前島の方では手の付けようがないこと、また手を付けられたとして、平穏無事であった頃の環境を取り戻すことが前島本人の倫理に反することと一致してしまうことにあった。

     その悩みは今日も事務所に向かう車中の前島にため息を付かせた。

    「そんなに憂鬱か」

     運転席でハンドルを握るpmpのマネージャー、櫻井がため息に対応する。しかしバックミラーで後部座席を確認するでも無かった。

    「もうそろそろ慣れろ、あいつだって何が変わったわけじゃないし、悪いこともしちゃいないんだから」
    「そりゃそーだけどね……」

     前島は窓の外の景色から人のいない隣の席に一瞬目を移した。少し前までその席で豪快に響いていた木田の鼾を思い出した。

    「あっちは着いたか」

     櫻井が何の前置きもなく独り言のように呟いた。
    大方マナーモードの携帯電話が震えたのを感じて、連絡内容も察知したのだろう。
    前島は既に木田のいる事務所に向かうのが憂鬱だった。
    順調に車を走らせる櫻井の背に非情すら感じている。

     そして櫻井から予定で伝えられた時刻の5分前に車は事務所の駐車場に停まる。
    前島は櫻井の後に付きながら木田がいるであろう喫煙室に向かうまでに、ため息をもう一度吐き出しておいた。

    「おっす」

     喫煙室の扉を開け、すぐに木田から挨拶をされる。前島はまた喉元にたまりかけた息をぐっと飲みこんで、少し笑顔を作った。

    「おう……健嗣さんもおはようございます」
    「おはようこーちゃん」

     木田の隣、それも肩が触れ合うほどに近づいて座るその男は、事務所の先輩アーティストであり、現在木田と交際中の室井健嗣である。

     前島の悩み。それはユニットの相方が男と付き合い始めたことであった。 

     二か月前まで、木田と前島はシェアルーム用の安いアパートに2人で暮らしていた。
    仕事に出るのもいつも2人一緒、事務所でもスタジオでも一緒、家に帰っても曲作りが煮詰まっているときは製作や言い合いが続く日々だった。

     そのくらい一緒にいるとお互いうんざりして、家に帰ってからのことはあまり干渉しなかった。
    まして木田は浮き沈みの激しい人間であるため、同居人の前島は辛抱たまらず仕事が終わるとそのまま外で飲み明かして朝までやり過ごすこともあった。
    木田の気性がひどく荒い日であっても、前島が夜に出歩いて帰ると必ず木田は先に床に就いていて起きてくると落ち着いていた。
    根は寂しがりやであるために放っておかれるとしおらしくなる、木田にこちらの意図で制御できる点があるからこそ、前島は金がない中での共同生活もどうにかやってこられた。

     だが定期的にその波が平時より激しくなって、誰の手にも負えなくなる時期が来る。
    大学時代は前島も「木田が生理だ」とサークル仲間共々からかっていたが、これが共同生活となると笑ってもいられなくなる。
    現在前島は独り身であるが、彼女がいる時期は大抵木田の生理が来ると彼女の家に逃げた。
    そうでないときでも酒場や、ときには櫻井の家に逃げ込むこともあった。
    ある程度自分の心に余裕がある時は、一晩中怒ったり泣いたり笑ったりしながら酒を飲み明かす木田に付き合った。
    家の中を引っかき回すのを無理やり押さえつけて怒鳴り散らすこともあった。
    絶対に情緒不安定な女とは付き合わない、木田との共同生活を始めてから前島はそう心に誓った。

     半年ほど前、お互い収入が安定してきて引越しの話し合いも始めた頃、その生理が木田に訪れた。
    前島も櫻井もいつものことと思って挙動不審になる木田をなだめていたが、その時は前島にとっても予想だにしないことが起こった。
    普段であれば数日は続くその生理が、一晩で治まってしまったのだ。

     前島はその理由をもう一つの変化からある程度推測していた。
    その日の晩は仕事が終わると木田は櫻井の車にも乗らずどこかへフラフラと行ってしまった。
    木田の生理周期には珍しくない行動だったし、それほど寒い時期でないから野たれ死ぬこともないだろうと踏んで特に引きとめもせず前島はまっすぐ帰った。
    前島が寝るまでに木田は帰ってこなかったが、朝起きると木田はすっきりした顔で自分の分だけ目玉焼きトーストを作って食べていた。
    一晩で安定して帰ってきたことに前島は面くらったが、木田の左腕を見て感じた違和感がそのまま言葉に出た。

    「お前腕時計どうした?」
    「部屋」

    口をもごもごとさせながら木田は一言だけしれっと答えたので、前島もそれ以上何も言わなかった。
    木田が腕時計を外すのは、惚れた相手ができたときであった。
    本人曰く「好きな相手より腕時計ばかり見るのも失礼だから」ということだ。
    学生時代から仲間内の中でもいかついナリをしていたにも関わらず女々しい部分が多いところも、木田がからかわれやすい要因だった。

     こうなると前島は不安だった。
    大抵の人間がそうであるように、色恋沙汰が始まると木田はいつにも増して不安定になる。
    急に安定するというのももはや不安定の一種だ。
    お互いの精神衛生のためにも、相手方と懇ろになれりゃいいもんだが。
    前島はそう思いながらも、木田の方から何も話してこないので自分から詮索するような真似はしなかった、櫻井も同様である。
     しかし三ヶ月後、前島は自分がその問題に首を突っ込んでおかなかったことを痛く後悔するのであった。



    「タマさんから連絡が来たんだが、今晩話し合いたいことがあるらしい」

     スタジオで木田がギターを録音しているとき、待機中だった前島は櫻井にそう告げられ思わず「タマさん?」と聞き返した。
    タマさんが誰かは知っている、室井健嗣のマネージャーの玉谷遼一だ。

     室井健嗣は事務所の先輩であるシンガーソングライターで、年はそれほど変わらないが19の時から事務所に入っていたので芸歴はpmpよりずっと長い。
    ずば抜けた人気はないが一定層のファンが定着し知名度もそこそこある、いわば「音楽を好きな若者の中では人気がある」というような位置で活動を続けているが、本人は自分のファン層について深い関心はないようで、ただ聞いてもらえる人がたくさんいるのが嬉しいということを率直に言っていた。
    pmpが事務所に入ってすぐからよく面倒を見てもらっていて、飲みに行くことも多いため芸歴や年の差の分よりずっと気さくに話せる人だった。

     2人は室井にそれぞれ「こーちゃん」「ギダユー」と呼ばれている。
    「ギダユー」とは初めての顔合わせの時、木田が名乗って挨拶すると「ギダユーっているよね?」と唐突に室井の方から言われたことがきっかけである。
    確かに木田悠と音の響きは似るがどの義太夫なのか、ただ義太夫という言葉を知ってるから言っただけなのか、前島も木田も迷った様子であった。
    しかし大先輩への初めてのあいさつで、しかもなぜか爛々と瞳を輝かせながら言うのだから、2人とも頷くしかできなかった。
    普段は無愛想ではないが呆けたような無表情で、口調もゆっくりとしていて、大概不思議な人だと前島は思っていたし、ファンからも天然キャラであることは認められている。

     木田のギター録りが終わると櫻井は木田の方にも話しに行った。前島は遠目にそれを見ていたが、木田はどうもあまり驚いていないようだ。

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    • 江ロ
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    • バンド好きの腐女子です、お察しください。
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