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シリーズ:暗黒の扉
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暗黒の扉

作者:怪奇伯爵

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    何かに憑依された娘アン。
    彼女を救う術はあるのか。

    『悪魔憑き』をダーク・ファンタジー風にアレンジしたような内容です。
    アメリカン・B級ホラーの雰囲気を感じてもらえると嬉しいのですが。


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    暗黒の扉 7624文字

     


     あの屋敷に行ってはいけないよ。

     アン・ホーゼーにとって、それは厳守しなければならない約束だった。
     父も母も、時には二人口を揃えて、その言葉を発する。
     両親がここまで言うならば。
     アンはその言いつけを重要と理解し、守るように心がけていた。
     
     そのような娘が、何ゆえヴィスコンシンの屋敷を訪れたのか。
     1967年10月初旬の出来事が、少女の運命を決定づけることになった。
     日が落ちても娘が帰らぬことに心配したホーゼー夫妻は、村人の協力のもとに捜索を開始。
     秋の山は著しく気温が低下しており、少女の身が案じられた。
     懸命の捜索の甲斐あって、同日深夜、アンはヴィスコンシンの屋敷で発見された。
     施錠されていたはずの鍵が壊され、アンは玄関から屋敷内に入ったようだった。
     発見時、アンは意識を喪失しており、体には極度の硬直が見られた。
     夫妻はアンを家に連れ帰り、手厚い看護を施した。
     その甲斐あって、アンは二日後に意識を取り戻す。
     少女は失踪時の記憶を欠いていたものの、それ以外は特に問題がないように見えた。
     数日後には庭で遊ぶことができるほどに回復し、両親をはじめ村の者たちを安心させた。
     
     年が明け、少女に小さな変化が現れる。
     最初にそのことに気付いたのは、母親だった。
     娘が一人でいるはずの部屋から、声が聞こえる。
     それは明らかにアンの声だったが、楽しげな笑い声が漏れていたのだ。
     今まで、そのような反応をする子ではなかった。
     それは、他の誰かが部屋にいて、談笑している様に思えた。

     父親も、同様の体験をしている。
     既に娘が寝ている時間にも限らず、誰かが階段を下りてくる気配があった。
     初めはアンが下りてきたのだろうと思って待っていると、一向に姿を現さない。
     気になって階段まで行ってみると、何かが素早く階段を上っていく様子が感じ取れた。
     それはアンの部屋に入っていったので、父親はその後を追った。
     いざ娘の部屋のドアを開けてみると、そこには寝息を立てているアンの姿がある。
     他に人の気配はなく、これは娘の悪戯かと思ったが、アンは深い眠りに就いていた。
     それを皮切りに、ホーゼー家には様々な超常現象が起きることになる。
     何かがアンの周囲に存在しているのではないか?
     両親が比較的早い段階で疑問を持ったのは、この地が様々な迷信を残す独特の風土だったことと、村では周知の存在だったヴィスコンシン家の過去が相乗した形になったからだ。
     インデバー地方には古くから呪術の文化が根を生やし、それは日常生活にも溶け込んでいた。冬の寂寥とした風景は獣の唸りのような寒風に晒され、そこに住む人々の心を滅入らせる。日照時間は極めて短く、月の出ない夜は七割にも達するのだ。
     痩せた土地は木々の生育を拒み、大地の恵を最小限に留めている。
     人々は僅かな資源を慎重に利用し、毎年の収穫の無事をただただ祈るしかなかった。
     呪術による占いは彼らにとって重要な道標となり、人々の日常生活に溶け込んでいたのである。
     しかし、超自然的な力は、忌まわしい結果を引き起こすこともあった。
     ヴィスコンシン家に起こった事件は、その尤もたるもので、その出来事は1945年と記録されている。
     
     村人たちはジュゼイ・ヴィスコンシンに一目置いていた。
     彼らの知るかつてのヴィスコンシン家は貧しく、特にジュゼイの父親カールの生活を知る者は蔑みの対象としていた。
     転機は、幼いジュゼイが呪術の才を見せ始めた頃だ。
     翌日の天気をぴたりと当てたり、時には大規模な竜巻の発生を呪術によって予知したのである。精度の高い予知は村では有益で、次第にジュゼイに頼る者が増えていった。

     ジュゼイは成長するにつれ、呪術の才を自身の利益のためにも使うようになった。
     呪術によって良き機会を探しあて、彼の財産は自ずと蓄えられていく。
     やがてジュゼイは村で一番の屋敷を手に入れ、外地の商人の娘と結婚した。
     1年後には長女キャシーを授かり、誰もが羨むような生活を手に入れたのである。
     
     順調に思えたヴィスコンシン家に翳りが見えたのは、娘のキャシーが七つの誕生日を迎えた頃からだ。
     キャシーは体調を崩し、異常とも思える速度で痩せていった。
     ヴィスコンシン夫妻に病の心当たりはなく、外地からも医者が呼ばれたりしたが、誰も適切な治療を施せずにいた。
     この時ばかりはジュゼイの呪術も効果を発揮できず、やがて娘は命を落としたのだった。
     ジュゼイとその妻は酷く落胆し、娘の葬儀から丁度1ヶ月後に心中を図った。

     もっとも、これには諸説あって、キャシーの病気がジュゼイの呪術の失敗だとするものや、母親の黒魔術が問題だったという噂もある。
     いずれにしても、娘の幸福を願って使われたであろう術が成功しなかった。ジュゼイの呪術にも限界があったのだ。
     原因不明の病は、やがて呪術によって召喚された魔物のせいではないかとする説も現れた。
     そのような不吉な噂の絶たぬ屋敷に、近づかないほうが良いとする見識は至極当然のことだったと思える。
     しかし、アンはその言いつけを破り、屋敷内に侵入している。
     何か尋常ならざることが起きたことは間違いなく、そのことをあれこれ想像せざるを得ないホーゼー夫妻には心理的負担が重くのしかかっていた。

     雪が地面を覆うようになったある日。
     違和感は次第に膨張を果たし、深遠なる闇をホーゼー家に降り注いだ。
     アンの頬肉は削ぎ落とされ、胸はあばら骨が浮き彫りとなった。
     目の焦点が合わないことも多く、時折、目に見えぬ相手と話をしているようだった。
     日中、ほとんど食事を摂らない。
     かと思うと、夜中に保存してあった鴨肉をそのまま食べ散らかしたり、時には部屋に迷い込んできた昆虫を食べたりすることもあった。
     
     快活だった娘が、身体的・精神的に異常をきたしている。 
     このままでは、娘の命が危ない。
     不吉な未来を感じ取ったトーマスは、その原因が娘の失踪時にあると推測、村長のカールストンらと共に再びヴィスコンシンの屋敷を探索した。

     そこで発見した幾つかの物証は、キャシーに起きた事象を推測するに足るものであった。
     羊皮で包まれた分厚い本は、遥か南方の島マホンバで発行されたもので、トーマスらには解読できぬ文字が使われていた。
     不気味な挿絵が点在し、文字を読まずともそれが不吉な内容であることが分かる。
     粉砕された壷の欠片付近には鹿などの動物の骨が散乱しており、何らかの儀式が行なわれた可能性を示唆していた。
     他に、屋根裏に隠された不気味な絵画群も、何らかの関連性を感じさせた。
     異形の怪物達がまるで神々のようの奉られている構図で、そのおぞましさは人智を超えたものといっても過言ではなかった。
     地下室に目を向ければ黒く乾いた液体の痕跡があり、それが人血だった可能性も高い。
     これらの物的証拠は、ジュゼイかその妻が禁断の魔術を使用し、何らかの儀式を行なっていたと想像させる。
     その目的が、直接的に娘キャシーのためだったのか。
     あるいは他の目的、例えばヴィスコンシン家の利益拡大のためで、思わぬ失敗によってキャシーが被害をこうむったのか。
     それ以上の事実を掘り出すことはできないが、想定外の影響がキャシーに生じたことは明らかだった。
     
     屋敷の探索を終えたものの、トーマス・ホーゼーはアンに対する解決策を見出せなかった。
     疲弊した様子で家に帰ったが、その手には屋敷から持ってきた羊皮の本が握られていた。
     トーマスは、文字が読めずとも全てのページに目を通すつもりでいたのだ。
     帰ってきた父親の手にある本を見るや、アンは高らかな笑い声をあげた。
     耳をつくような甲高い笑い声が響き、次第にそれは低い声に変わっていく。
     最後には、明らかに少女の声は、野太い男の笑いに変化していた。
     
     トーマスは不気味な気配におののいたものの、娘を救うことを諦めなかった。
     湿った匂いのする羊皮の本をめくり、娘の身に起きたことを知る手がかりを探した。
     興味深い記述を見つけたのは、六番目に書かれた章であった。
     相変わらず文字は読めなかったが、挿絵が多く掲載されている。

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