upppiは縦読みコミック(タテコミ)・イラスト・小説が無料で楽しめるサービスです!

ようこそ!ゲストさん
シリーズ:似たような怖い話
閲覧数の合計:291

作品を編集する

  • シリーズタイトル・ジャンルの修正
  • この章を改訂する
  • この章を削除する
  • シリーズに作品を追加する
  • 表紙画像の変更

似たような怖い話

作者:古来

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    建物にまつわる二つの怪異を、ひとつにまとめてみました。多少なりとも気配を感じていただければ幸いです。


    登録ユーザー星:0 だれでも星:0 閲覧数:291

    似たような怖い話 4076文字

     

     怖い系の話を二つしたいと思う。どうして二つかというと、二つの話は時も場所も違っているが、どこか似ていて、つながっているような気がしてならないからだ。双子みたいというか、コインの表裏みたいというか、顔の左右というか、二つでひとつになっているようなものを感じている。それに、どうしてこの二つの話を書こうと思ったりしたのか、僕自身よくわかっていない。とにかく記しておいたほうがいいという気持ちばかりが先行している。いまのうちに伝えておかなければいけない、話しておかなければいけない、そんな気持ちであることをご了承願いたい。
     ひとつめの話だ。大学を卒業して四年目のころだった。北九州市の友人から電話があった。この友人とは大学の時からのつきあいで、卒業後も互いに連絡を取り合っていた仲だったので、電話をもらってもなんの違和感もなかった。
    「バイトする気ないか」
     彼は受話器の向こうから言ってきた。
    「バイト――?」
    「一晩だけのバイトでさ。おまえ向きなんだ」
     彼によると、仕事上で知り合った不動産屋が管理する貸家の一つに、幽霊が出るらしかった。その家に誰か一晩泊まってくれないだろうか、謝礼はする。そんな内容だった。
     学生時代から、僕の怪異好きは友人たちの間に知れ渡っていた。お化けや幽霊の話になると、目の色が変わると言われていた。それで彼も、わざわざ僕のところに電話してくれたわけだった。
     場所は下関で、山の近くらしい。丘みたいなところに、並ぶようにして三つ同じ造りの平屋があり、その真ん中の家が問題の家だ。三軒とも貸家なのだが、その家に幽霊が出るせいで、あとの二軒にも借り手がつかなくて困っている。誰かが一夜そこですごしてくれれば、それが緩和されるというわけだった。
    「な、おまえにぴったりの話だろう。一人がいやなら、三人や四人のグループでもかまわないらしいんだよ。飲み会でオーケーというわけさ。だから、誰か誘ってやってみたら。あ、俺は遠慮させてもらうからな」
    「その不動産屋が自分たちで泊まり込めばすむことじゃないか」
    「噂だけなら、最初からそうしているって。だぶん、マジに出るんだよ」
     僕は肝心なことを聞いた。
    「それで、なにが出るんだ」
     ちょっと間があった。
     乾いた唇を舌で湿らせたような音がし、息をひとつついて彼の声が言った。
    「深夜の零時をすぎたころに――、壁に浮き出てくるらしい」
     それ以上はなにも聞いてないとのことだった。
     少し考えさせてくれと返事して、僕は電話を切った。
     妙にリアルな話だという印象がした。不動産屋の事情といい、三軒の並んだ平屋といい、ガセでなくモノホンの話のようだった。聞いているそばから、皮膚にぞくぞくするものを感じていた。壁に浮き出てくるとは、うす気味悪いことこのうえない。
     どうしようかと悩んだ。怪異趣味の輩として興味はある。これを逃せば、幽霊を見ることのできる機会など二度とないかもしれない。その一方で、それがかなり危険な行為であることも知っていた。実体験というのは洒落ですませられるようなものではない。
     けっきょく様子を見ることにした。再度向こうから言ってきたら、もう一度考えてみようということにした。
     その後もその友人から電話はあったが、その家の話が出ることはなかった。僕のほうも、こちらから聞くことは控え、自然とその件はうやむやになってしまった。記憶だけが残った。
     数年が経ち、いまでもその友人との交際は続いている。昨年結婚し、式には招待されていた。そしてつい最近のことだが、大学時代の友人たちとの飲み会があった。当然、彼も来ていた。
     その席で僕は彼に聞いてみた。あの家の話はどうなったのかと。もう聞いても大丈夫だろうと思っていた。
     尋ねられた彼は困惑したような表情を浮かべた。
    「俺、そんな電話したっけ」
     一瞬、得体の知れないものにぎゅっとつかまれた感じがした。不動産屋、三軒の並んだ家、壁に浮き出る幽霊と、僕は彼から聞いた話をそのまま彼に話して聞かせた。
     彼は胸の前で腕を組み、俯き、考え考えてから言った。
    「悪いが、まったく記憶にない。初めて聞く話だ」
     飲みごとの席でもあり、僕もそれ以上聞くことはしなかった。とぼけているような素振りは、友人にはぜんぜんなかった。長年のつきあいだ、それぐらいはわかる。
     しかし僕は確かに彼から電話をもらったのだ。家と、壁に浮き出る話を聞いたのだ。
     そして、ふと僕は思った。あのバイトを受けなくてよかったんじゃないかと。
     ふたつめの話に移りたい。
     差し障りがあるので詳しいことは書けない。H町があり、Nという四つ角がある。信号機が設置されているが、道路幅は車二台分ほどしかなく、交差点、十字路というより、四つ角といったほうがふさわしい。私鉄の駅と商店街が近くにあるが、町はずれといった、淋しい雰囲気が漂っているのが目に映る。
     そこの一角に、そのビルは建っていた。三階建ての小さなビルだ。くすんだ色合いをし、あるのに気づかないほど、目立たず、ひっそりとしている。一階部分にシャッターがあり、閉じられたそこに『貸店舗』の紙が貼られていた。出入り口みたいなものは見当たらないので、そこから入って、上の階に続く階段も中にあるものと思われた。これといったビルではない。荒れているというわけでもなく、老朽化が進んでいるわけでもない。ただ、人に言われないと気づかないほどに、ひっそりとしたビルなのだった。僕が知ったのも、独立しようかと店舗を探していたからだった。
     そのビルが、間違っても、足を踏み入れてはならない場所であることを僕は確信している。身の毛のよだつことがそこで生じ、それが綿々といまも続いている。人には、近づいてはいけない場所というものがある。わりと身近なところにも、それはある。どんなに光を当てても、いっこうに明るくならないところだ。死者が死者を引き寄せ、災いが災いを呼び、黒い渦となって、誰かがやってくるのをひっそりと待っている。そのビルに救いがないことを、僕は知っていた。
     ただここに問題があった。どうして僕がそんなことを知っているのかがわからないのだ。前の話の友人のように、そのへんの記憶が僕にはすっぱりとないのだ。まるでその部分だけ断ち切られたかのようにだ。しかし僕は確かに知っている。聞いたおぼえがある。そして、ぞっとし震え上がったおぼえもある。怖い話だった。二度と聞けないと思った。それなのに、それをいつ、どうやって知ったのかは、まったく記憶にない。あのビルが禍々しいものであることは、いやになるほどわかっているのに、実際なにが起こったのかを僕はなにひとつ思い出せないのだ。ただただ怖ろしかった感覚だけが、僕の記憶の奥に刻まれていた。
     僕が存在に気づいた年の翌年に、『貸店舗』の貼り紙は『売家』に変わり、いまではその貼り紙もなくなっている。人が住んでいるような様子は依然としてなく、一階のシャッターは閉ざされたままだ。あのビルでなにがあったのか調べてみようかと思った時もあったが、しないでいる。そのほうがいいことを、僕は十分わかっていた。
     この話には続きがある。
     ひとつめの話とはべつな友人が、僕のアパートに遊びに来た時のことだ。この友人はホラー好きで、僕とはうまが合った。その夜も、怪異話を交わしているうちに、僕はNのビルの話をした。
     友人は興味を持った。そんなビルがあるなら見てみたいと言う。僕が嫌がると、外から見るだけなら大丈夫さと誘う。ま、いいかと、僕は彼と出かけることにした。
     深夜になっていた。友人の車で行った。Nはかなり狭い四つ角なので、十メートルほど離れた路上に車を止め、そこからは二人で歩いた。
     静かだった。あたりは静まり返っている。
     向かい側の角から、僕と友人はビルを眺めた。夜更けに見るのは僕も初めてだった。信号機が赤と黄色の点滅を繰り返し、僕と彼のほか誰もおらず、通る車もない。ビルは昼と同じように、ひっそりとしていた。もちろん窓に明りはない。気のせいだと思うが、ビルのまわりの闇だけが濃く見える。が、それ以外に変わったところはない。
     二分ほど眺めて、僕と友人は踵を返した。

    ←前のページ 現在 1/2 ページ 次のページ→

    1ページ目に戻る
    ▤ 目次ページに戻る


    お気に入りリストに追加 この作品を応援する

    応援ボタンを押す事で作品の★が増え、作者に「イイね!」を伝える事ができます。

    コメント

    • 個人的に、一つ目の話が好きです。ネタバレ防止のために詳しいことは書けませんが、予想を(いい意味で)裏切るオチで不意打ちをくらった感じでした。
      • 1 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • 三塚さん、読んでいただき、また、ご感想どうもありがとうございます。
      ショートショートとは、ちょっと違ったオチをと考えていましたので、不意打ちというお言葉は、嬉しい限りです。
      今後もよろしくお願いいたします。

      • 0 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    作者紹介

    • 古来
    • 作品投稿数:3  累計獲得星数:9
    • 関連URL
      :

    この作者の人気作品

    • 幽霊づくり
      幽霊づくり

      └サイコものと幽霊ネタを組み合わせた内容です。 あと味――悪いと思います。お許しのほどを。

    • 想い出の記
      想い出の記

      └むかしの、いじめっ子といじめられっ子のお話です。

    小説 ホラーの人気作品

    続きを見る