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シリーズ:ぷちほら ~掌中恐怖~
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ぷちほら ~掌中恐怖~

作者:能上成之

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    掌編ホラー集。ぷちほらⅠⅡⅢ、佇む人をまとめました。新作も時々更新します。*グロ描写あり
    Special Thanks ぷちほらⅠ・宇本様、カール様(コメント順) ぷちほらⅡ・宇本様、ひせみん様、カール様  ぷちほらⅢ・宇本様、カール様 佇む人・宇本様、狂言巡様


    登録ユーザー星:11 だれでも星:0 閲覧数:246

    ぷちほら ~掌中恐怖~ 9368文字

     


     ※※※約束
     
     けんいちくんおぼえてますか。ぼくです。きみんちがひっこししてからぼくはとてもさびしいです。でも、きみとのやくそくをまもってしあわせにしているよ。まえにぼくがじぶんのふこうをかなしんでいたとき、けんいちくんはおもいついていってくれたね。いつもにこにこして、どんなことでもしあわせだとおもえばいいんだよって。ぼくはそうすることをやくそくし、そしてまもっている。だから、きっとしあわせなんだよ。
     そうそう、このあいだね、おとうさんがあいじんをころしました。あいじんっておとうさんのこいびとのこと。おかあさんがいるのにこいびとなんてつくっていいのかな? おとながすることなんだから、きっといいんだよね。それで、そのひとにあかちゃんができておとうさんにけっこんをせまってきたんだって。ぼくすごくうれしかったよ。だって、おとうとか、いもうとができるんだもの。こんなしあわせなことはないよ。だけどおかあさんにばれておおさわぎになったんだ。ほんっとにすごいおおさわぎ。で、おとうさんはぱにくっちゃって、そのひとをころしてしまったんだ。きっとおかあさんがこわかったんだね。ぼくだっておかあさんがおこるとおもらしするくらいこわいもの。だから、もうきょうだいはいなくなってしまったよ。でもそれはそれでぼくはしあわせだよ。だっておとうさんはぼくひとりのものってことだもの。
     ほら、どんなことでもしあわせだとおもえているでしょ。
     けいじさんたちがきておとうさんはぱとかーにのっていったよ。うらやましかったな。おとうさんはかなしいような、こわいようなかおをしていたけれど、ほんとうはうれしかったんだとおもう。だってぱとかーにのれたんだもの。けんいちくんはのったことある? ぼくものりたいなあ。
     ねえ、けんいちくん。ぼくはあいかわらずおかあさんにぎゃくたいをうけているよ。おとうさんがいなくなってからもっとひどくなった。いまはきみとのやくそくをまもっているけれど、あのやくそくってさ、じつをいうとぼくにはあてはまらないよね。ほんとうのつらいことをしらないひとがうかぶかんがえだとおもう。あのときもそうおもってはらがたったんだ。けんいちくん。ごめんよ。いたかっただろ。ゆくえふめいのけんいちくん。きみんちはどこかにひっこしていったよ。でも、きみはまだあのだれもこないすごくふるいいえのくさりおちたゆかのしたにいるんだね。やさしいおかあさんのところにかえりたいよね。だからぼくはけいさつにこくはくしようとおもう。
     そう、ぼくもぱとかーにのるんだ!
     
     
     
     ※※※穴覗き
     
     通勤途中の道路。左は民家の塀が続き、右は駐車場なのか空き地なのかわからない雑草の生えた広っぱ。きょうも工事で左片側がふさがっている。下水管工事だの、水道管工事だのお役所が決めた工事をだらだらと長期間やっている。通行人や通行車両のことなどお構いなしだ。いや、お構いなしではない。きちんとガードマンがいる。正確にはガードマンの制服を着たむさい男だ。ただ着て立っているだけ。たまに手を動かし誘導しているかと思えば、左右どちらからも車が入ってきて立ち往生。自転車を押して歩いている老女が来てもヘルメットの下から鈍い光を放つ目をじっと見据えて傍観しているだけ。わたしが車で通るときは朝も夕方も、作業人が掘った穴をじっと上から見下ろしている。自分の本来の仕事をせずに何を見ているのだろう。短いスカートの女子中学生を見つめる下卑た目で、その穴の奥を見つめているのだろうか。
     晩秋の夕刻。太陽は早くも隠れ、冷たく降りてくる夕闇が当たりを染める頃、わたしはいつもより遅い家路についていた。工事現場を示す赤い光が点滅している。作業人たちはもういなかったが、あのガードマンは寒そうに突っ立っていた。通行にはまるで関係ない場所で。もう仕事は終わったのだろうか。工事中の片側車線を注意しながら徐行する。点滅する赤い光が車内に満ちる。車線が元に戻ったところで、ひらひらとした短いスカートをはいた少女が携帯電話で話をしながら通り過ぎる。見えない電話の相手を見ているような不注意な眼差しをしていた。眼にまぶしい、若々しく、細く、長い足。狭い場所で対峙しなくて良かったわと、運転の苦手なわたしは安堵の息を吐く。頭の中で赤い明滅が起こる。それから、路肩にそっと車を止めて、わたしは音もなく外へ出た。赤い点滅に向かって忍び足で、だがすばやく、今来た道を戻る。少女は携帯電話に夢中で、自分に危険信号が明滅しているのに気がつかない。横長の穴が広がるその右横を少女は何の注意もせずに歩いている。背後からその右肩をぐっとつかんで穴に向かって押した。なんて軽いの。まるで小鳥みたい。バリケード用のコーンを倒しながら、「きゃっ」という小さな悲鳴を上げて少女は穴の中に倒れる。瞬間の出来事。少女自身も何が起こったかわからないくらいの刹那。わたしは赤の明滅を逃れて闇に隠れる。なんて好都合。きょうは黒い服を着ていて良かった。ガードマンの制服を着ただけの何の役にも立たない男が悲鳴を聞きつけて近寄ってくる。ぼうっとしているくせに、女の声は聞き逃さないのね。繰り返される赤と黒の穴の中、少女のスカートは捲れ、細く長い足とその付け根が丸見えになっている。男はじっと下卑た眼で穴を覗いている。いつものように。わたしはするりと闇を抜け、男の背中を軽く押す。ほら、もっと覗いてらっしゃい。男は押されたのではなく、自らの意志でそうしたかのように横たわる少女の真上に重なって落ちる。汚い男がのしかかってきたことで少女は身をよじり、悲鳴を上げる。男は自分の身に何が起こったのか驚くことも理解することもせず、職務すら忘れ、もっと穴を覗くべく柔らかい少女に襲いかかる。男の口から赤い光に輝く筋が垂れていた。
     わたしはそっとその場を離れ、車に戻る。少女のけたたましい悲鳴に、先ほどまで途絶えていた通行人が近寄ってきた。男性通行人たちの怒号。女性通行人たちの悲鳴と金切り声。しばらくしてからパトカーのサイレンが聞こえ始める。わたしは車を発進させる。本当の穴を覗くことが出来たのかしら。だったらいいのにね。あんなに穴が好きなんだもの。でも、明日からはもう見られないわね。残念だこと。



     ※※※散策
     
     寺院の散策が趣味。門を入り、すぐ脇の花々の溢れる庭園を楽しみながら歩こうとすると、後ろから「がぐわぁぁ」と吼える子供のような声がした。何なのか気になって振り向こうとしたが、門から入ってすぐ後ろを振りかえると異界に引きずり込まれるというようなことを昔、婆から聞いたことを思い出した。謂れのない迷信だとわかりつつも我慢する。なぜなら絶えず走っているはずの、門前の県道を行く車の音がまったく聞こえなくなっていたからだ。先ほどからしていたせわしないバイクの音も油の切れた自転車のブレーキ音もまったくしない。静寂。
     ばかばかしい、単なる迷信。そう思い、再び振り向きたい衝動に駆られたが、やはりできなかった。門柱の陰に何かが潜んでこちらを窺っているイメージが脳に流れ込んでくる。目を閉じ、背中にまとわり付こうとする触手のようないやな空気を追い払うというイメージを無理に浮かべる。迷信は迷信、そこには誰もいない、そう、いない。
     大きなクラクションが鳴り、はっとする。外の喧騒が戻り、車やバイクの埃くさい走行音、自転車が側溝のふたをはねる音、下校途中の子供たちの笑い声が耳に届く。握り締めていた手のひらが風を受けひんやりと感じる。溜めていた禍々しい息を吐き、清浄な空気を肺に送り込む。花々の華やかな香りが鼻腔で舞う。きらめく太陽の光、目に染む空の青、風に揺れる花の赤や黄色、それを彩る葉の緑。ぐるりと見渡し、それらを堪能する。
     迷信は迷信。門を振り返って異界に引きずり込まれるなどそんなことありえない。ありえないのだ。
     しかし、私は帰ることができない。重厚な瓦を設えた白壁の塀の向こうには青い空が見える。県道を挟んだ民家の並びも見える。路線バスやトラックの屋根が左右に走り去るのも見える。車の行きかう音、人々の声も確かにする。だが、私はそこに帰ることができない。

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    コメント

    • 皆さんすみません。ご心配おかけしました。
      私自身はたいした怪我もなく、サイボーグかゾンビかというくらい、打ったところも何の変化もなかったです。
      ただ、あとの処理が面倒というか。警察に行ったりね。なんで警察って被害を受けたものも不愉快な気分にされちゃうのかなとストレス満杯。
      まだまだ現在進行形でごたごたしているのですが、このストレスを書くことへのパワーに変えねばとぼちぼち動き始めようと思いました。って、また止まっちゃうかもしれませんが。
      今年もよろしくお願いします。
      • 2 fav
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    • 紅梅さま
      ありがとうございます。
      今日また、いろんな手続き上の書類が届き、途方に暮れ、情けない思いをしていたところだったので、紅梅さんのお言葉をとても嬉しく思いました。
      うぎゃあああって叫び出したい衝動を抑えることができました(T▽T)
      どんな日々でもちゃんと過ぎていくのですよね。あの時は大変だったな、と言える時が来ると思いながら、今は笑っとこう。
      ほんと、ありがとう。
      こちらこそ、今年もよろしくお願いします。
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    • あけましておめでとうございます。
      誰も気にしていないと思うけど(笑)年末は仕事が忙しく、ここに来れなくて、正月になったら来るぞーと思っていたのですが、新年早々事故にあいまして、今その対処に追われています。
      当分来れないと思いますが、私のこと忘れないでください。
      誰も気にしていないと思いますが(笑・しつこい!!)近況報告だけしに来ました。
      • 3 fav
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    • あっ、皆さんの新作は落ち着いたら見に行きます。それを楽しみに、今の状況を乗り切るぞー!!
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    • 和緒さま
      ご心配おかけしました。
      同乗していた家族が一人負傷しまして、今入院中です。命に係わるケガではなかったので、不幸中の幸いと言いますか。
      うちは車が大破しました。いきなりのお別れです。
      今は走っている車全部信用できない状態です。こっちに飛び込んでくるんじゃないかって(^▽^;)
      まだ完ぺきに元の生活に戻っていませんが、ぼちぼち活動しようと思っていますので、またよろしくお願いします。
      • 1 fav

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    • 誰か読んでくれた人いるのでしょうか?閲覧数が増えているので。
      すみません、ちょっと訳ありで一部削除しました。
      すみません。
      またなんか書いたら投稿します。
      • 1 fav
      • Re 返信

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    • すみません。もう一つ。
      イラストのほうも削除してます。
      コメント頂いたこと感謝しています。
      友達に撤退を言われまして。
      (文字作品のほうも友達が関与しているもの(キャラ造形など)に撤退命令が出ました。ごめんなさい)
      • 1 fav

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    • 狂言巡さま
      「佇む人」へのコメントありがとうございます。また読んでくれるような作品を目指して精進していきます。よろしくね。

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    作者紹介

    • 能上成之
    • 作品投稿数:42  累計獲得星数:464
    • 読むのも書くのも、年がら年中、ホラーです。ホラー馬鹿です。
      脳みそがすぐ忘却の彼方に行ってしまうので、いつでも読めるように気になる作家さんをすぐフォローしてしまいますが、フォロー返しに気を遣わないでくださいね。なぜなら、ホラーしか読まないから。
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