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ゼロコンマ発売、ありがとうございました!
ゼロコンマのゆるーい番外編です。
表紙は、Elementさんから頂きました。感謝!
漫画の詳細は、http://blog-imgs-55.fc2.com/c/o/m/comorebinomichi/201310152016346e3.jpgをご覧ください。小説との関連はありません。
全員で流しそうめんを食べてだらだらとメタにゲームの話などしているだけです。
えろくもありません。
今までとイメージ違ってすみません。
公開編集終了の御礼に、見てくださったすべての方に捧げます。
お付き合いいただき、どうもありがとうございました。
ゼロコンマ番外編
『流しそうめん』
1 準備
ずるずるずる。
「ん?」
聞き慣れない音に我に返ると、俺は、縁側に座っていた。
暦の上ではとうに秋になったにも拘らず、昼間の日差しは暑い。
だが、真夏であっても庭に面したこの場所では涼しい風が吹き抜ける。
ずるずるずる。
妙な違和感があった。
ずっと耳に響いているこの音のせいなのか、それとも何か別の事象なのか――
音のする方を確認しようとすると、こちらに向かって何かが走ってくるのが見えた。
犬だ。
どこかで――どこかで、すごく見た事のある犬。
犬は俺の視線を感じたのか、一度立ち止まって尻尾を盛大に振る。
そして後ろを振り返った。
そこには、兎がいた。
犬は真っ白なその兎を、ほら行こうとばかりに鼻先でつつく。
兎はそれに反抗するように足を踏ん張る。
やがて兎は、弾けるように走り出した。
俺に背を向けて。
ずるずると、音のする方向に。
曲がり角に消えた瞬間、現れたのは兄貴だった。
「あに……」
かけようとした声を思わず呑み込む。
音の原因が分かったから。
竹。
何故か兄貴は、右手に鉈、左肩に数メートルはある竹を乗せて引きずっていた。
竹は、枝と節が丁寧に取られ、半分に割られている。
ひょい、と、その竹のもう一端が持ち上げられた。
持っているのは短髪の元気そうな青年と、俺と同じ年くらいの少年。
それぞれ、犬と兎の耳を持った……
「……ラッキー!? と、ゼロ……?」
言葉を失っている俺の前を竹を持った一群は通過する。
と思いきや、兄貴はふいに立ち止まる。
そして、持っていた竹を縁側から家の中に突っ込んだ。
「え、な、何やってんの兄貴?」
「流しそうめんだ」
「は?」
よく見ると、竹は綺麗に枝が取られ半分に割られ、節もとってある。
竹を丁度いい角度にすると、ほら流しそうめん……って。
「どういうこと!?」
意味が……意味が分からない。
「来客が多い日には丁度いい」
「は?」
謎はますます謎を呼ぶ。
竹。
流しそうめん。
そして、あの二人。
混乱している俺を余所に、兄貴たちは黙々と準備を進めていく。
竹を洗い、支えを設置し、終点にはタライを置く。
先端は家の中、台所まで届いているのだろうか。
水が流れ始めた。
竹の中を、涼やかに流れていく。
ころころころ……
水の中に、何かが転がった。
「え……」
俺は目を見開いた。
ころころころ。
ころころころ。
2個、3個と転がっていく、それは、ドングリ。
「コ……」
「竹に木の実を流すな」
俺が言う前に、兄貴の不機嫌な声が響いた。
……やっぱり、おかしい。
突っ込む所が、違う。
「大丈夫ですよー」
膨らむ違和感に立ち尽くす俺の耳に、竹の先端の方から声が聞こえた。
家の中なので、姿は見えない。
だけど懐かしい、のんびりした声が。
「今のは、チョコレートですから」
「……ならいい」
「いいの!?」
最早そこを突っ込むべきじゃないだろうと思う俺の言葉に構わず、悠然と声は続ける。
「でしたら、このキノコ型のとタケノコ型のチョコも……」
「「それは駄目だ!」」
クッキーは水に流しちゃ駄目だ。
俺と兄貴の声が揃った。
2 ゲームとツッコミ
「いや! いやいやいやいやいや!」
たまらず、叫んだ。
「ちょっといい加減はっきりさせよう。このカオスな状況を」
この違和感ありまくりな牧歌的な状況を打ち破るような大声を出す。
すると、各方面から声が返ってきた。
「もうですかー」
「零はいつも通りもっと流されていればいい。俺が一時期帰宅していた時のように」
「零さまは、流されやすいですね!」
「……フン」
「ええ何この一斉攻撃!?」
とんだ集中砲火。
そりゃ、確かに俺は流されやすいかもしれない。
多少、自覚はある。
「ええ。零はすごく流されやすいですよー。特に状況と快楽には」
「何だよ快楽って」
「まあ、それは僕が仕込んであげたんですけどねー」
「煩い!」
ほくそ笑む声に、怒鳴り声を返す。
そう。
だからといって問題をうやむやにしたくはない訳で……
「いるんだろ、コン! あとそこにはラッキーにゼロ」
こいつらは、消えた筈。
俺が力を受け継いだり、兄貴に食われたりして。
なんで、いるんだ?
正直……嬉しい!
だけど何故いるのか分からないから、手放しで喜べないじゃないか!
「問題ありませんよー」
そんな俺に答える様に家の中から出てきた、狐の耳をもつ人物。
「コン!」
「これは、夢オチですから」
「初っ端からそんな身も蓋もない事言うなよ!」
コンの解答に愕然とする。
「既になんか悲しくなってきたじゃないか!」
あ、駄目だ。
涙腺が緩んでくる。
一瞬ぬか喜びをしたから、特に。
そんな俺の頭に、手が乗せられた。
誰だかなんて見なくても分かる。
兄貴のだ。
「……心配するな」
その手は、俺の頭上を数度往復する。
「俺は、いるから」
「当たり前だ」
不機嫌そうな声を返す。
この上兄貴までいなくなってたまるかってんだ。
「あんまり気にしちゃいけませんよー」
何をどう気にするなと言うのか、コンが俺の前に立つ。
よく見たら、なんでこいつエプロンなんかしてやがるんだ?
「僕らは、零の中にいますから。零に吸収されたり、いち兄さん経由で零に入ったりして」
「……ああ、まあ、そうだろうな」
「だから、今見ているのも夢とはいえそれぞれの意志が反映されているものです。ある意味、本物と話しているのと同じだと思っていいですよ」
「本物と……」
「まあ、夢の中の僕のこの台詞こそが、零の願望から生まれたものだってゆう可能性もありますけどねー」
「止めろよまた突き落とすの」
どこか楽しそうに、菜箸を弄びながらコンが言う。
「どちらにしても、気にせずこの一時を楽しむのが正解なんじゃないでしょうか? いち兄さんも、多少のことは目を瞑ってくれるそうですよ」
ああ、だから兄貴の反応はあんなに薄かったわけだ。
「零様! 楽しんでいただけるよう準備しますので、そんな顔しないで、さあ!」
ラッキーが盛り上げる様に繋ぐと、流しそうめんの準備を進める。
だから何故流しそうめん。
そちらを見ると、同じく準備をしているゼロと目が合い、ぷいと逸らされる。
そのまま、座って準備中の兄貴の懐に潜り込み、膝に座る。
こっちを見てふん、と笑ってみせる。
……てめえ少し馴れ馴れしい。
少し苛ついてそちらを睨むと、兄貴が俺の視線に気が付いて、手を広げる。
ちょうどスペース一人分。
「零も……」
「いかねぇよ!」
右膝にゼロ、左膝に俺って何その兄貴的両手に華!?
俺のいらつきを察したのか、兄貴は懐から財布を取り出した。
「ゼロ」
「はい!」
「これで、飲み物を買って来い」
「……」
ゼロの耳が垂れる。
ちょっと待てそんなあからさまな厄介払いはないだろ。
「お釣りで、好きな物買ってきていいから」
「……」
「じゃあきい! 壱郎様、じゃあきいを買ってきてもよろしいでしょうか!」
「あ……ああ。あまり塩分取りすぎるなよ」
そこに割って入ったのは、ラッキー。
すげえ、見事に空気を呼んでいない。
「ありがとうございます! それではウサギさん、行きましょう!」
「ちょっと待て誰も行くなんて言って……わっ」
「それでは行って参ります!」
「この犬っ、わあぁぁぁ……」
ゼロを引きずり、行ってしまった。
「……」
「……」
「……」
そして俺と兄貴とコン、3人が残された。
「じゃあ、改めて」
兄貴が再度、俺を膝に呼ぶ。
「い・か・ね・ぇってば!」
「あはは」
コンの笑い声で、ふと気づく。
俺と、兄貴とコン。
この3人て、めちゃめちゃ気まずくないか?
和やかに流しそうめんて、無茶ぶりだろ?
殺した側と殺された側、そして殺されそうになって陥れた俺が、見合う。
と、コンが笑顔のまま俺の方にやってくる。
「それじゃあ、いち兄さんはウサギに任せて零は僕の方に」
「い、いや……」
「大丈夫ですよー。今日の所はそうめんを食べてますから」
「今日の所はって……それで代わりになるの!?」
微妙に不穏な台詞を呑気な調子で吐かれる。
2013/11/12 13:40:00
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2013/10/25 10:24:14
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2013/10/25 04:36:15
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2013/10/25 04:42:17
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└※グロ表現あります。神父と少年の悲恋。彼らは幸せだったのだろうか。
└ここは花のお江戸の芳町。陰間茶屋でお職を張っている月夜(つきや)。彼には叶わない初恋の相手がいた。幼き日の懐かしい夢を見た月夜は自分の身にあった出来事を思い出し…
└落ちてたまるかの水野刑事、受け目線でお話が進みます。一目惚れした高校生の翼を落とすため、隙を窺うミッションを遂行する水野刑事の心情は如何に!?甘甘モード時々刑事…
└BL年下攻・性描写あり。恋愛なんてゲームと思ってた・・・。浮気性のワガママ男、千早は興味本位で同性である正樹と付き合うことにした。全力で甘やかす男に心地よさを感…
└騎士受けです。 姫君を護る為、騎士は敵国の王達に・・・。。それを知った姫君は、ある決心をする。 王+第一王子+第二王子+宰相×騎士。BLです。