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シリーズ:【書籍化感謝】ゼロコンマ外伝『狐と秘密と彼岸花』(終)
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【書籍化感謝】ゼロコンマ外伝『狐と秘密と彼岸花』(終)

作者:岡野 こみか

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    彼岸花は、花と葉が同時に存在しない。
    彼岸花は、実を結ばない。
    花言葉は「情熱」「あきらめ」「悲しい想い出」「また会う日を楽しみに」

    『ゼロコンマ』のサブキャラクター、コンと無量の外伝です。
    (彼らについては改訂版をご覧ください)
    電子書籍化の、感謝の気持ちを込めて。

    無量の真意や『秘密』については電子書籍版のおまけ『無量の想い』を是非ご覧ください(宣伝)!
    宣伝すみませんが…売れ行きによっては『ゼロコンマ2』に繋がるかもしれないので!
    そしたら、消えたにー兄や、零や壱郎やコンや無量をまた出すことができるかもしれないので。よろしくお願いします!


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    【書籍化感謝】ゼロコンマ外伝『狐と秘密と彼岸花』(終) 3692文字

     

    ゼロコンマ 外伝
    『狐と秘密と彼岸花』


     足音が聞こえ、耳を動かす。
     頭の上の三角耳は、確実にその音を捕えてくれた。
     いつもよりはるかに軽いその足音は、無量のもの。
     何を急いでいるんだろう。
     時々つまずきそうになりながら、足音は着実にこちらに近づいてきた。

    「コンー! 持ってきた!」
     嬉しさを隠しきれない様子で、呼ばれた。
     一体何事だろうと苦笑しながら姿を現すと、そこには何かの包みを手にした無量がいた。
    「何が、ですか?」
     本当は、分かっている。
     昨日約束した、あれだ。
     だけど、わざととぼけて答えてみせた。
     案の定、無量は唇を尖らせる。
    「忘れたのかよ!」
     昨日、無量は言ったのだ。
     いつも貰ってばかりだから、明日は俺がいいものを持って来てやる。
     ぐみの実よりもずっと、美味しいものだと。
     美味しいものよりもその時の無量の自慢げな顔が面白くて、それを楽しみに待っていた。
     仕方ないなぁと呟くと、無量は手に持った包みを差し出した。
    「ぐみの実よりもずっと、美味いものだよ!」
     その中には、拳よりやや小さめの黒い物体が入っていた。
    「これは?」
    「おはぎだ。甘いぞ」
    「ふうん」
     まるで我が事のように嬉しそうに、無量は口にする。
     ――どうせなら、お揚げのお寿司の方がいいのになぁ。
     そうは思ったが、やたら嬉しそうな無量の顔を見ているとさすがにそんな事は言えない。
     黙ってそのおはぎとやらを受け取り、じいっと眺めてみる。
     豆を潰したものが、米に塗りつけられている。
     そしてふと、こちらを見つめる熱い視線に気づく。
     無量のものだ。
     そういえば。
     無量はいつも、お腹を空かせていた。
     僕があげる木の実を喜んで食べていた。
     そして無量は、甘い物が大好きだ。
     なら、どうしてこれを僕に渡してくれるんだろう。
     無量の顔には、僕がこれを食べることへの期待と……僅かばかりの惜しさが滲んでいる。
     ……ふうん。
     手に取ったそれをもういちど眺めてから、いい事を思いついた。
     自然に唇の端が上がる。
    「……本当に、甘いんですかー?」
    「本当だってば!」
     僕の言葉に、無量はむきになって答える。
    「じゃあ、確かめてくださいよ」
     ずい、と。
     手に持ったおはぎを、無量に差し出した。
     顔のすぐ前。
     唇が触れるか触れないかほどの近さ。
    「え、確かめるって……」
     さすがに無量は困惑した様子で言葉を濁す。
    「俺は、食べたことがあるから知ってるんだってば」
    「ほら」
     耳を貸さず、強引に前に出す。
    「……あ、うん」
     これ以上は無駄だと思ったのか、それとも鼻先の誘惑に耐え切れなくなったのか。
     無量は、そのまま口を開けておはぎを口にする。
     小さく、一口。
    「……」
    「……!」
    「……!!」
     無量は目を瞑り、小さく打ち震える。
     どうやら、大変美味だったらしい。
     ……面白い。
     あまりにも面白いので、もう少しからかいたくなった。
     見ると、無量の口の端にわずかに黒いものがついている。
     隙だらけの無量に身を寄せた。
     ぺろ。
    「!」
    「ああ、本当に甘いですねえ」
     舌の上に感じる、豆の優しい甘さと付け加えられた甘味。
     そして無量の匂い。
    「じ、自分の……自分の手のやつを食べろ!」
    「ああ」
     声を裏返らせる無量に笑顔を向けてから、手に持ったままのおはぎを自分の方に向ける。
     小さく齧った跡があり、そこから真っ白なものが見える。
     その、白い部分に歯を当てた。
     ぱくり。
    「……おいしいです」
    「だろ!」
     僕の言葉に、無量は我が意を得たりとばかりに何度も頷く。
    「じゃあ、次です」
    「え」
     もう一度、今度は僕が食べた白い部分が見える方を無量に向ける。
    「何だよ、味見は終わったろ?」
    「ふたくち目はどんなだか、確かめてください」
    「えー……」
     そう言いながらも、無量の目はおはぎから離れない。
     ごくりと、唾を呑み込む音がした。
     ぱくり。
     ふたくち目を、口にする。
    「……」
    「……!」
    「……!!」
     頬を押え、再び震える。
     やっぱり、面白い。
     僕たちは交互に、おはぎを食べ進めた。

    「……どうだった?」
    「どうせお米を包むなら、つぶした豆よりお揚げの方がいいですねえ」
    「ええ……」
     落胆の色を隠せない無量に、笑いながら訂正する。
    「冗談ですよ。こんな甘い物、初めて食べました」
    「だろだろ!」
     一転、ぱっと顔を明るくして無量は続ける。
    「俺も、これ大好きなんだよ! 年に2回しか食べられないんだけど、この餡子の甘さが――!」
    「それなら、まだ食べますか」
    「へ?」
     目を丸くする無量の前に、手を差し出した。
     おはぎを持っていた、まだ餡子がついている指を。
    「ほら」
     ぴと、と指を唇につける。
    「……」
     黙って見ていた無量は、やがて唇を開く。
     ゆっくりと、舌が指に向かう。
     それが触れた瞬間、舌の上を這う様に指を唇の間に滑り込ませる。
    「……」
    「……!」
    「……!!」
     暫くの間、無量は無言で僕の指を、いや、餡子を舐めていた。

     舐め終わってから、無量はしばらく無言で僕の指を眺めていた。
    「どうしました?」
    「……いや、その……」
     言葉を濁してから、ぽつりと無量は口にする。
    「コンの手は、綺麗だなぁと思って」
     そう言いながら、そっと自分の指を隠す。
     無量の手は、傷だらけだった。
     社の中のお仕事をしているからだろうか。
     夏でも治らないあかぎれがずっと手に染みついている。
    「見せてください」
    「いや」
     手を取ろうとしたら、慌てて隠された。
    「どうしてですか」
    「その……俺の手は、汚いから……」
    「そんな事ありませんよ。えらい手じゃないですか。それに」
     油断した所で手を掴み、引く。
    「わっ」
    「治してあげますよ」
     体の吊り合いを失って、崩れた無量の前に跪く。
     恭しく手を取って、それを唇に当てた。
    「え……」
    「甘いのの、お礼ですよ」
     傷口に唇を当てる。
     舌を這わす。
     そして、口に含む。
    「あ……くすぐった」
    「少しの間、じっとしててください」
     傷口から、力を送り込む。
     次第に無量の傷が塞がってくる。
     あかぎれの方もあと少しで治るから、今は丁度痒い所だろう。
     傷口から目を上げると、じっと堪えている無量の顔が目に入った。
     その顔は、真っ赤になっている。
     れろり。
     面白くて、わざと手の平を舌で刺激した。
    「……っ!」
    「どうしました? 別に元気になるのを待って、とって食ったりしませんよ?」
     からかう様に声をかけるが、無量は目を逸らすだけ。
     その、無量の胸元に何かを見つけた。
    「これは、何ですか?」
    「あっ」
     隠そうとする袂を掴み、両手で開く。
     傷……赤く腫れたそれは、火傷の跡だった。
    「その、薪が、跳ねて……わっ」
     言い訳する無量の胸元に、顔を埋めるようにして近づいた。
     そして、火傷を舐める。
    「……んっ」
     まだ新しい赤い跡は、触れただけで多分、痛む。
    「やりづらいですねえ。ちょっと、こうしててください」
    「え、ちょ、わっ」
     無量の手を掴むと、押し倒す。
     少しの抵抗を見せたが、されるがままの無量を仰向けに寝かすとその上に馬乗りになり、胸元を開く。
     ぱきりと、寝かせた所にあった赤い彼岸花が折れた。
     胸の赤い跡に、その周囲に優しく唇を当てた。
     直接触れることなく、その周りをゆっくりゆっくりと舌でなぞる。
     その度に、無量の身体が僅かに震える。
     その反応をもっと見たくて、ついつい余計な所まで舌が侵略する。
    「ふぁ……っ」
     小さく漏れる声。
     しかしすぐそれを恥じたのか、歯を食いしばる気配。
    「余計な力入れちゃ駄目ですよー」
    「ひゃ……っ」
     脇腹をつつくと、びくりと身体を弓なりに反らす。
     次第に声は聞こえなくなり、小さな吐息が漏れるだけになった。
     ああ、やっぱり無量で遊ぶのは、楽しい。
     大人しくしていればご褒美のように、動けば折檻のように刺激を与えながら、舌を動かした。

     くたりと動かなくなった無量を解放し、立ち上がる。
     目を瞑ったままの無量は、意識があるのかどうかも定かではない。
     ……少し、やりすぎたでしょうか?
     しばらくその様子を見ていたが、やがて目を瞑ると小さく首を振る。
     いいえ。
     これでいいんです。

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    コメント

    • おおお、コンと無量のお話なのでてっきりしっとり切ない感じかと思ってましたが、
      ほのぼのバカップルっぽい雰囲気ですねー!
      無量さん可愛い…やっぱり好きです無量さん…!
      ちょ、気になるところで終わってるので続きが気になって仕方ないです(笑)
      ゼロコンマ本編の改稿が次回で終了ということなので毎週の楽しみが終わってしまうなぁとちょっぴり寂しい思いがしてましたが
      改稿の次はこの話の続きをワクワクしながら待つ日々になりそうです…!
      続き楽しみにしてますー!
      • 1 fav
      • Re 返信

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    • ご覧いただき、ありがとうございました。
      待つ日々とおっしゃってくださるそばから終わってしまってすいません……!
      短くてすいません……
      電子書籍のおまけの方を、お待ちください……(汗)

      また、この後ももう1本くらいはゼロコンマのおまけを書くつもりでいます。メタなのを。
      よろしくお付き合いしていただければと……お願いします。

      バカップルですかー。そう感じてくださったのなら幸いです。
      一応この時点で二人は何でもない関係で、キスすらしてないのです。
      ここから後も(ゼロコンマの回想シーンまでは)。
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    • 毎週の楽しみと思ってたら完結してたという見事なオチがww
      くっ…!でも次の外伝と電子書籍の本編ともしかしたら叶うかもしれないゼロコンマ2を楽しみにしてるからいいんです…!私は強く生きる(キリッ)

      ということで全部読ませていただきましたー!
      「もっとずうっと前に会ってたら」の台詞に、本編のコンと零くんの過去のエピはそんな思いが反映されてたのかなぁとか思ったり(ああ切ない)
      コンと無量はプラトニックラブなんですねーb
      外伝のお陰で可愛いバカップルなイメージがついたので会う時はこうやってキャッキャウフフしてればいいと思います!(でも後のことを考えると切ない。)
      • 1 fav

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    • も、もうしわけないです……(汗)<毎週の楽しみ
      私も、もうしばらくゼロコンマと付き合っていければいいと思うのですが、こちらに書く軽い番外編の他は、あとはもう読者さん次第なので……
      電子書籍のおまけはしっかりありますので、是非ご覧になってください。
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    • そしてご感想、ありがとうございます。
      コンと無量はどうにも不幸な存在だったので、せめてもう少し幸せな時間をあげたいと思って、外伝を書きました。
      むしろ後の辛さ倍増な気もするのですが……!
      ゼロコンマ2があれば、もう少し昇華させてあげたいと、切に切に思います。
      あれでプラトニックかどうかと言うとつい目を逸らしてしまいますし、ラブかどうかもまだ……なのではあるのですが(汗)。
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    • 公開制限は全公開にしたつもりですが「自分のみ閲覧化」になってるようで……見えるのでしょうか、こちら。


      二人の間には、何もありません。
      時々会うだけの関係です。
      • 0 fav
      • Re 返信

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    • ああ、あと、彼岸花は普通に実をつけるそうです。が、気にしないでください……
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    作者紹介

    • 岡野 こみか
    • 作品投稿数:26  累計獲得星数:240
    • 『ゼロコンマ』シリーズが4巻までRentaさん、パピレスさんから配信中!
      デスゲーム×BL小説『ビースト・ゲーム』も配信中です。
      これらが形になったのは、全て皆さんのおかげです!
      心から感謝させていただきます。
      これからも、もっと、色々書いていきたいなと思います。
      よろしくお願いします。

      文章書き、の端っこの端っこです。
      BLもラノベも、まだまだ初心者です。
      現在、クリエイティブRPG「三千世界のアバター」(http://s-avatar.jp/)にてゲームマスター(ライター)をやってます。←皆様のキャラの活躍を小説にしています。
    • 関連URL
      twitter:https://twitter.com/komi70241055

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