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シリーズ:続・羅生門
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続・羅生門

作者:カール

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    芥川龍之介「羅生門」の続編です。高校時代に授業の一環で書きました。
    今ある作品の中で一番古いです(汗


    登録ユーザー星:8 だれでも星:3 閲覧数:4398

    続・羅生門 2393文字

     

     下人は走った。暗闇の中をあてどもなく…。見えない怪物から逃げるように、一目散に走った。やがて、羅生門が見えなくなると、立ち止まり、肩を上下にせわしなく動かした。そして、何の気なしに後ろを振り返った。
     追ってくる者はない。当然であろう。その時の状況を知っているのは、下人と老婆の二人だけであるし、その老婆もかなり年をくっている。とても、若い彼に追いつけるはずがない。
     下人は滅茶苦茶に走ってきたので、ついには自分が今どこにいるのかすら、分からなくなってしまっていた。
     しばらく行った所を右に曲がると、見覚えのある景色が目を突いた。この路には、今まで仕えていた主人の家がある。しかし、そこへ行ってもどうしようもないのだ。下人は西寺へ向かった。とりあえずは、そこを塒(ねぐら)にしようというわけである。
     西寺は荒れ果てて廃寺となっていた。下人は足音を忍ばせて中へ入った。誰も来ないから安心するのではなく、誰も来ないから用心するのである。どんな悪党共がいるか分からない。しかし、そこには狸が一匹いただけであった。下人はごろりと横になると目を閉じた。少しうとうととした頃、ふと、外で妙な物音がした。はっとして身を起こしたが、それきりどうという事もない。再び横になった。
     外では風が出ているようだった。しばらくして、また物音がした。下人はそれを風のせいにしてじっとしていたが、その内がりがりと壁を引っ掻くような音が聞こえてくると、うるさくて仕方がないといった体で立ち上がった。
     その時である。壁を引っ掻くような音と共に、老婆の声が聞こえてきたのである。その時はただ呻くだけだったが、下人は、
    「着物を返せ、盗っ人め」
     と解釈した。
    「おのれ、執拗(しゅうね)い婆め」
     下人はそう言って抜刀すると、外へ飛び出した。が、しかし、外には先程の狸がいただけであった。狸は下人の姿に驚いて逃げていった。
     下人は呆気にとられて、暫時そこから動けなかった。そして、ほくそ笑みながら中へ戻った。

                      *

     東の空が白々と明けてきた。引剥ぎをした下人の上にも太陽が昇り、雀がさえずった。
     下人は、にきびを右の手で気にしながら外へ出た。
     あいにくと、顔を洗う場所がなかった。下人は石段の上に座りながら、朝飯をどう調達するか悩んでいた。老婆から奪った着物はところどころ汚れていて、簡単には売れそうにない。下人はそれを近頃都にできた古着屋で売ることにした。買わぬなら無理にでも買わそうと、どうしてもだめなら、また盗みをすればいい、と甘い考えでいたのである。
     老婆の着物は予想通りあまりいい値にはならなかったが、下人の腹を満たすには十分だった。
     下人は、あまり活気のない一件の蕎麦屋へ入った。店の中には、ガラの悪い連中がでかい声を張り上げながら、朝っぱらから酒を飲んでいた。
     下人はそれをちらと横目で見やりながら奥に座り、蕎麦を頼んだ。
    「なあ、世の中みんな銭よのう」
    「銭さえあれば、何も怖いことはないて」
     男達はすっかり泥酔してしまっていて、何を言っているのかほとんど分からなかったが、ぽつりとはっきりそんなことを言った。それは下人の心をときめかせた。
     男達は、戸口のところに座っている。下人はすばやく金目になりそうなものを目で探した。しかし、そんなものはほとんどなく、下人を失望させた。仕方なく、金だけを取ることにする。
     下女が蕎麦を持ってきた。下人はそれを無造作に腹に詰め込むと、金を払い、戸口へと歩いていった。そして、傍らに置いてあった布袋をひっつかむと、わき目もふらず店を飛び出した。
    「あっ、こやつ」
     男達の誰かが叫ぶのが聞こえた。手には、ずっしりと金の入った布袋がある。
    「待て、待たぬか」
    「おのれ、たたき斬ってくれようぞ」
     下人はやっと賑わい出した京の街中を、するりするりと巧みに人をかわしながら走っていく。
     突如、前にいた市女笠をかぶった二人の男が抜刀した。そして、気合と共に斬りこんできた。下人は、あっと叫び目を閉じた。
    「ぐわぁっ!」
    「血迷うな、そやつが盗人だぞよ。何を……うぁ!」
     振り返ると、今まで追ってきていた男達が、道に重なるようにして倒れていた。
    「何を世迷い事を……」
     その時下人は、ははあ、こやつら俺が盗人に追われてると思うたのだな、と思い、市女笠の男達に礼を言った。
    「いやいや、たいした事ではない。それよりも、うぬに用をことづかっておる。…歩きながら話そうではないか」
     市女笠の男は周囲を見回して言った。成る程、彼らの周りは興味本位で集まってきた人々が大勢いた。検非違使庁の役人も気づいて来たらしい。
     彼らは、逃げるようにしてその場を離れた。役人に見つかると何かと面倒なのだ。
     やがて鴻臚館前に来ると、市女笠の男はこう言った。
    「さて、うぬはここで死ぬ運にあるのだが、誰かに言伝などないか」
     下人ははっとした。ここまで来てやっと気づいたのである。この二人があの男達を斬ったのは、単に金を取るのに邪魔だったからなのだ。そして、下人を油断させておいて……。
     下人は、金を懐へ納めると抜刀した。相手は二人。勝てる確率はほとんどない。が、ここでむざむざと負けることはできないのだ。
     市女笠の二人も抜刀し、じりじりと下人のスキをうかがっている。
     しかし、斬りあいをするには下人は若すぎたのである。時間が一分一秒進むたびに、焦りが体中を駆け巡るのだ。
     下人はとうとう、自分から斬りかかった。その瞬間、下人は胴をずばっと抜かれ、もんどりうって倒れた。
    「たあいもない奴」
     男は下人の懐を探り、布袋を出そうとした。下人はその男の腕をつかみ、呻いた。
    「な……何故……」
    「えい、うるさい奴め。騙されるうぬが悪いのだぞよ」
     男は下人の腕をはらい、金の重さを手で楽しんだ。
    「世の中を生きてゆくためには、いちいちと、きれいごとなぞ言ってはおられぬのだ」
     男がそう言った時、下人の心臓は既にこと切れていた。


                                             終

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    コメント

    • いつもありがとうございます。自分は下手くそというか苦手で★ばかりで非礼をお詫びします。今回、カール先生の初期作品から公開という事で個人的に芥川好きの私に嬉しい作品!取材の更に奥にある(韓非八姦法)芥川作品は表層的な利知ばかりスポットされ、晩年は私小説を貼られた気がして憤慨する事しばしばでした。カールさんのこの作品は若き日の作品との事ですが、故にストレートに作品のみを受けて発露された印象があります!小賢しさ(皮肉にも芥川先生が多く謂われた評価)を、無視して推し通る勢いは、気持ち良さに、山本周五郎先生の活力を垣間見る気持ちでした。相応しいと私個人が思った印象は、迷いても迷わず。かっこいいです!
      • 4 fav
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    • ヒイィィィ!!!!(゜ロ゜ノ)ノ
      先生なんてヤメテくださーい!恥ずかしすぎて出てこられなくなりますううう(汗
      (確かに別の仕事では先生やってますがww)

      ☆だけだって嬉しいですよーw
      私は細かいことを気にしない方ですが、他の人も非礼とは思わないかとw 

      これは古典の授業で書いたものなんですが、当時高校生でしたから純文学なんてほぼ読まず(中学ではけっこう読んだ)ちょっと中二病のような・・・世を斜に見てるというかw そんな状況でしたから、下人は殺すしかないな、とww 自業自得を書こうと思いつつ、天網恢恢という気持ちもあったのかなぁ・・・。

      ただ、これは読書感想文と同じ手法で書かれていますww
      • 3 fav

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    • 当時もう趣味で小説を書いてましたから、文章は書きなれていたんですが、さすがに純文学ですからw
      書き方を真似して本来の羅生門と似たような文体にし、それっぽく感じさせるために本文中の建物名や役人も登場させましたw
      セリフは時代劇っぽく、昔風に。

      と、今思えば本当に小手先で書いたんだなぁと・・・( ̄▽ ̄;
      もし芥川本人が続きを書いたなら、こんな下人にはしなかっただろうな、と今は思います・・・w

      コメントありがとうございましたw
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    • すごいですね!!私は文章の才能からきしなので・・
      時代物も大好きです!剣客商売が特に好きで、何度読み返したか・・
      ところで、イラストダメでしたでしょうか?
      ダメでしたらすぐに削除しますので教えて頂けると幸いです。
      勝手に描いて申し訳ありませんでした。
      • 3 fav
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    • えっ イラスト??気づいてない!!!何か書いてくださったんですか!?
      今、ホラコンのタグからいろいろ読んでるのでトップ・マイページ見てないから・・・このコメントも今気づきましたし・・・(遅
      早速見に行きますよ~~ヽ(´∀`*)ノ

      剣客商売、私も好きですよ~w
      藤田まことさんも大好きです!
      昔の仕事人がまた見たい・・・w
      小説でも新撰組関係とか人斬り以蔵とかも読んだし、作家では司馬遼太郎が多いかも・・・w
      翔ぶが如くを読んでみたいんですが、長いから躊躇しちゃってるんですよね・・・( ̄▽ ̄;

      あ、お礼が最後になっちゃいました。
      コメントありがとうございます!w
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    • にくきゅう指圧店という名前で描かせてもらったのですが、ご迷惑なら引き上げます。
      気分を害されたら申し訳ありません。
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    • ありえなーい!
      喜びこそすれ、迷惑だなんて思う人は絶対にいません!(断言
      気分を悪くする人も絶対にいません!(キッパリ

      今日は午前中から癒された~~~♪
      あさってのお絵かき教室、25人来るけどがんばれそうですww
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    • お絵かき教室25人!?
      それは大変ですね!頑張って下さい!!!
      よかったーにくきゅう友の会(仮)の第1号のカールさんも今後一緒に描かせて頂きますね!
      • 3 fav

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    • あっ・・・うっかりSNSの感覚で・・・(汗
      友の会、こちらからお願いしたいくらいですw
      よろしくお願いしますw
      ヽ(´∀`*)ノワーィヽ(*´∀`)ノワーィ
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    • こ、高校時代……すごい才能。
      高校時代、文芸本はめったに読まなかったな。書きもせんかったし。差が出るはずですね。もっと精進せねば。
      といいつつ、読んで感じたことをどんな言葉にしたらいいか悩んでいます。語彙力のなさ……。
      本家羅生門の流れをそのまま受け継がれているなと思いました。
      • 3 fav
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    • コメントありがとうございます!

      小中学時代が暇だったので、図書室にあるものを片っ端から読んでました( ̄▽ ̄;
      けど、今となっちゃ何も頭に残ってないですよww
      島崎藤村なんかかなり読んだはずなのに、1つも覚えてないって・・・(汗

      確かこれを書いた時は、なるべく本物に近い文章や雰囲気に近づけようとしてましたね。要は真似してたんですww

      周りの友達が苦戦している中、私は元々何かかんか書いてましたからこんなんは楽勝で、確か5分くらいで書き上げて提出。びっくりしてる先生を尻目に残りの時間は内職してた気がww
      ↑本来はマン研ww
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    • これを5分って……(◎_◎;)
      この時代のセリフだけでも考えるの大変だと思うんですけど。いくら真似だといっても、丸写しではないんですから。
      私は今でも現代のセリフを悩みながら書いてます。いえ、セリフだけでなく全部ですけど。有り余る考えの中での悩みではなく、まるっきりゼロからの悩みです。悩んでも答えが出ないからどうしようもないんですけどね。
      稚拙さが思いきり出ているので恥ずかしいです。開き直って、誰でも読める、読みやすい小説ってことを売りにしようと思っていますWWW(T_T)
      本来マン研ってことは絵が描けるんですね?ニヤリ。
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    • そこはあれですねw 時代劇好きが功をなしたとww
      今でも平日はつい暴れん坊将軍を・・・ヾ(≧▽≦)ノ

      元々絵描きと物書き、同時進行してたんですが、もうマンガ面倒くさくなっちゃってww
      実力的に、どうせマンガじゃ食っていけないと思ってましたし、すぱっと完全に物書きになりましたw

      ただ…私は右右脳タイプ(インプットもアウトプットも右脳)らしいのですが、なぜ文章の仕事をしてるのか、自分でもたまに疑問に思いますww
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    • ちょっ、ちょっと待ってください。
      文章のお仕事されているんですか? 
      すごい。いいなー。うらやましいです。
      でも、それはカールさんの才能と努力の賜物で、当然の結果なんですよね。
      私も小説家になりたいと思ってからもう十数年、何の努力もせず、才能もないし、これも当然の結果です。
      ははは……(T_T)るー。
      ろくなもん書いてませんが、もし拙作を読む機会あれば、ご教授お願いします。感想ではなく、意見あればどんなことでも言ってくださったら嬉しいなと。
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    • 文章の仕事は、選ばなければたくさんありますよw 全くの素人でもwebライターとかやってる人いますしw それは私には無理でしたが・・・( ̄▽ ̄;

      でも実際、食っていける人は一握りでしょうねぇ。私は専業主婦で体力的に外で仕事できないからやってるだけで、パートやってる人の方が稼いでますよww
      これしかできない、ってのが本当のところです・・・(汗

      努力・・・耳が痛いですww
      なぜ私の作品が古いものばかりなのか、もう言わずともわかりますねww
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    作者紹介

    • カール
    • 作品投稿数:18  累計獲得星数:131
    • ☆コメント・フォローありがとうございます!
      忙しく、自分の新作はなかなか難しいかもしれません。皆さんの作品は時間作って少しずつ読ませていただきます(*´∀`)

      ※フォローされてもしばらく気づかないことがあります(汗
       あんまり面白い作品だと、☆を付け忘れてコメントに行ってしまうことがあります。どちらも気長に見守ってくださるか、「フォロー返しないよ!」とか教えてくださると助かります( ̄▽ ̄;
       あります、と言うより「多い」です。ゴメンナサイ(汗


      『時計』は、ある出版社で賞を頂いたもので、百円文庫→eブックランドと掲載させてもらっていました。フォーマットの関係で今は読めないのでこちらに載せます。
      著作権はもちろん私にあります。
      今後は無料で掲載します。
      以前100円で買っていただいた方には大変申し訳ありません。

      時計はシリーズ物になる予定です。2014/06/19現在パート2を執筆中です。

      2016年夏、忙しくて投稿はできていませんが、たまに覗いていますw
      ちゃんと動いていますのでご安心くださいw
    • 関連URL
      クランチマガジン:https://i.crunchers.jp/
      なんちゃって作家の青息吐息:http://ameblo.jp/itpo21/

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