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シリーズ:冬の日
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冬の日

作者:三塚章

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    ホラー小説コンテスト参加作品。公園であった、ちょっとかわいい女の子。萌えホラー?


    登録ユーザー星:5 だれでも星:1 閲覧数:308

    冬の日 2510文字

     

     日が暮れかけた公園は、人影がまったくなかった。冬は日が短い。今日は特に寒いし、子供も早く家に帰ったのだろう。
     徹平(てっぺ」)はキョロキョロと公園の中を見渡した。
    「え〜と、どこだ俺のスマホ」
     自分がスマホをなくした事に気づいたのはついさっき。パソコンの位置情報を確認した所、ここにあるとの事だった。どうやら、帰りぎわここで友達とダベッていた時にうっかり置いてきてしまったようだ。中学生にもなってこんなミスをするなんてなさけない。
     まるで見えない子供が乗っかっているように風に揺れるブランコ。金属性のスベリ台には、葉の落ちたケヤキの影が落ち、まるで黒い血管が広がっているようだった。もちろん、この歳で遊具で遊んだりしていないから、この辺りに落ちている可能性は低い。だとしたら、ベンチ。
    「う……」
     ベンチに目をやって、徹平は思わずうめいた。ベンチに五歳位の女の子が座っていた。
     肩の高さに切りそろえられた黒い髪。色があせ、骨董品のようになった着物。目には白目がなく真っ黒で、焦点が定まっていない。
     頬の白がちょっとはげているのを見つけ、徹平はようやくそれが人間でないと気づいた。「に、人形かよ。日本人形がなんでこんな所に……あれ?」
     徹平は人形の膝に自分のスマートフォンが乗っているのに気づいた。
    「マジか……」
     恐る恐る、スマートフォンに手をのばす。今にも人形の木でできた硬い手が、自分の手首をつかみそうだった。
     だけど幸いそういう事はなく、スマートフォンは徹平の手に戻ってきた。
    「ん?」
     画面を確認して見ると、なぜかメモ帳が開かれている。
    『拾っておいてあげました』
    「なんだ? 気味わりい……」
     まるで目の前の人形がいたずらをしたよな画面に、徹平の鼓動が高鳴った。
     カタリ。かすかな音を聞いて、顔を上げた。カタン! 人形の下唇があごまで落ちた。まるで意思を持って笑っているように。
    「うわああああ!」
     思わずあとずさった所で足を滑らせる。慌てて噴水の池の縁に手をついて体を支える。触った石が冷たい。
    いつか見た、ホラー映画の場面が頭に浮かんだ。闇の中に浮かんだ呪いの人形が、すうっと追いかけて来る所。
     そして、本当に着物姿の体が宙に浮かんだ。カチャリと音を立ててベンチの上に立つ。
     地面に腰を落としたまま、徹平はその様子を見ていた。立とうとしても、膝が笑ってしまって力が入らない。
    『あ、あの大丈夫ですか』
     カタカタと、人形の口が動く。
     ベンチの背もたれの裏から、徹平と同じくらいの歳の女の子がひょこっと顔をのぞかせた。ベンチをつかんだ左手が半分隠れるほど長いトレーナーを着て、ジャンパーを羽織っている。右手は丁度人形の背の辺りで隠れて見えない。
     そこでようやく徹平は人形がその子に操られている事に気がついた。
    『あ、あの……驚かせてすみません』
     またしても、人形の口がカタカタ。
    「あの、それ、腹話術?」
     女の子の代わりに、人形がこくりとうなずいた。
     女の子は、手を人形から放すと、徹平に渡してくれた。どうやら本当にただの人形のようで、口を開け閉めする仕掛けの他に怪しい仕掛けはない。とても意思を持っているようには見えなかったし、まして呪いがかかっていそうには見えない。お礼を言って人形を返す。
     なんだか今まで恐がっていたのがバカらしい。持ち主の女の子だって、人形を抱えているのさえ気にしなければ、なかなか可愛いじゃないか。
    『このコは艶野(つやの)。私は美亜(みあ)』
     自分でも意地が悪いと思いながらも、つい彼女の口元に目が行ってしまう。その唇はほんの少しうっすらと開いているだけで、動いているようには見えなかった。これぞ名人芸、という奴だ。
    「あの、スマホ、拾ってくれたの、あんた?」
    『はい。地面に落ちていたので』
     人形・艶野ちゃんがまたこっくりとうなずいた。
    「なんで、人形通してしか話さないの?」
    『あの、私、恥ずかしがりなんです。も、もちろん普通に話せますけど、こうした方が緊張しないで他の人とお話ができるんです』
     艶野ちゃん使って話す方が、よっぽど目立つんじゃないかと思ったけれど、それは口に出さない事にする。
     チラチラと白い雪が降ってきた。
    「本当に? そんなにかわいいんだから恥ずかしがる事ないのに」
     美亜の頬にサッと赤みがさした。
    『それに私、腹話術師というか、手品師というか、そういうエンターテイメントみたいな仕事をしたくて。その練習もかねて』
    「ふーん。あ、そろそろ俺いかなきゃ」
     人形が少し残念そうにうつむいた。
    『また、会えるといいですね』
    「ああ」
    『じゃなかったら、私の方から会いに行きますよ』
     恥ずかしがりというわりには、大胆な冗談をいうコだ。
    「じゃあな」
     激しさを増す雪の中、人形がカチャカチャと手を振っていた。

    「……ていう事があったんだ」
     その夜、家に帰った徹平は電話で友人の田村に夕方あった事を話していた。
    「それにしても、うまい奴がやる腹話術ってすごいのな。本当に人形がしゃべっているみたいだったよ。小学校の時交通教室で見た婦警さんのとは違うな」
    『……』
     田村から反応がない。嫌な予感がして聞いてみる。
    「どうした?」
    『今、一人か? 今すぐ戸を閉めろ。それでお守りかお札持ってろ』
    「え? なんだよ一体?」
    『その人形に、テープが隠されてるとか、そんな仕掛けはなかったんだな?』
    「ああ。手に取って調べたから」
    『で、その女の腹話術、不自然じゃなかったんだろ? 唇を見ても本当に人形がしゃべってるみたいだったって?』
    「ああ、だからなんだって言うんだ?」
    『雪が降るほど寒かったのに、なんで唇から息が白く漏れないんだよ? 人間、いや、生きモンじゃねえよ、その女』

    『じゃなかったら、私の方から会いに行きますよ』

     誰かが、呼び鈴を押した。

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