upppiは縦読みコミック(タテコミ)・イラスト・小説が無料で楽しめるサービスです!

ようこそ!ゲストさん
シリーズ:
閲覧数の合計:451

作品を編集する

  • シリーズタイトル・ジャンルの修正
  • この章を改訂する
  • この章を削除する
  • シリーズに作品を追加する
  • 表紙画像の変更

作者:たき

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    日常を侵食していく雰囲氣の作品を目指しました。
    楽しんでいただけると嬉しいです♪


    登録ユーザー星:0 だれでも星:1 閲覧数:451

    35503文字

     

                   「嘘」
                             たき あきら

                    序

     「狼だ、狼だ!狼がきたぞ!!」
    夕暮れも近い公園に少年特有の甲高い声が響き渡る。
    家路をたどる女子高生、買い物帰りの主婦、砂場で遊ぶ幼児たち、皆、いっせいに声のした方を振り返った。
     幾人かはランドセルを揺らしながら公園を走り去る少年の後ろ姿をみたが、おおかたの人の目には、何も映ることもなく、人々は首をかしげながら各々の時間に戻っていく。
    人知れず少年をじっと見つめる、それのみをぞいては・・・

    ??????????〜清川小学校、4年2組、満園ちづるの日記より〜

    ????????????????????????????6月11日

     今日は、イソップ物語の「狼と少年」を道徳の教材に使ってみた。
    生徒達に感想を言ってもらったのはいいのだが、おざなりに、「嘘はいけないことだと思います」的な感想が多かったのは残念だ。もちろん、白沢まなみさんの「少年は現実と嘘の区別が付かなくなってしまっていたのではないでしょうか?」という意見や、川井優児くんの「少年は楽しいからだけで嘘を付いていたとは思えない。本当は寂しかったのではないでしょうか」という意見は見るべきものがあると思う。
    ・・・しかし、川井くんの発言を冷やかす声が上がったのはいただけない。
    いじめ、だろうか?だとしたら、よく気をつけなくては。
     家庭環境がいじめの原因になるのはよく聞く話だ。川井くんが母子家庭だというのが、関係があるかもしれない。むろん、別の原因、例えば、彼のいささか引っ込み思案な性格が原因かもしれないが。あるいは、彼の少女じみた容姿が?
    ・・・いけない。先走ってしまった。いじめがあると決まったわけでもないのに。
     そういえば、今日も男の子達がやっていた、あの遊び!おおげさに命令をしたりながら「ジェネラル」「カーネル」などと呼び合っていた。将軍、大佐という名称を使っているのだから、何かで階級を決めているのだろう。嫌らしい遊びだ。テレビか何かの影響だろうか?できれば禁止したいところだけれど・・・なにも起こっているわけではないのに、「先生」が提案したところで反発を浴びるだけだろう。
    ああ、もうこんな時間、明日また考えるとしよう。

                    1

     放課後のチャイムがなって、ここ数日、図書室に逃げ込むのが常になっている川井優児は、下校を促す放送の後、ゆっくりと学校の昇降口へ向かった。
    今日もクラスのほとんどの生徒と口も聞いていない。いつものことではあるが、今は事情が違う。その理由の源が、目の前の靴箱に入っていることを思うと、軽い金属の扉を引く手も重くなる。うつむいたまま、右手を靴箱の中に差し入れた。
    ───そこに当然あるはずの手応えはなく、金属の底板の冷たい感触だけが手に触れた。
    はっと顔を上げると、四角い空白が目に入る。靴箱の中にあるはずの靴は消え失せていた。呆然とする優児の耳に、癇に障る笑い声が響いてくる。
    ゆっくりと声の方に視線を向けると、傘立てに腰掛けている加藤修二の姿が目に入った。
     加藤は、その猿に似た顔に、ニヤニヤ笑いを浮かべて、その手にぶら下げた靴を胸の前まで持ち上げ振ってみせる。それで優児は完全に状況を理解した。
    きつく睨み付ける優児にひるむこともなく、加藤が口を開いた。
    「で、MA−1spはどこだよ?」
     悪意に満ちた声に、明らかにひるむ優児の後ろから、合いの手を入れるように声が響く。
    「あれから一週間だぜ?まさか、まだ買ってもらってないとか言うなよな」
    びくりと振り向く優児に、不機嫌そうに声をかけたのは伊藤康宏。体格も成績もいいクラスのリーダー格だ。
    その向かいから現れたのは、伊藤の腰ぎんちゃく、田中昌史。伊藤の不機嫌な表情をまねするようにアゴをそらして高圧的に口を開く。
    「あれだけ言ったんだ、見せてもらおうじゃんか。そのために待っててやったんだからよ!」
    「・・・・・・」
    黙り込んだ優児をあざけるように、加藤が手に持った靴を振りかざす。
    「なんか知らねえけど、玄関にこんなボロ靴が落ちてたんだよな、まあ、ロンバーズのMAー1spをはいてる川井様には関係ねえ話だけどな」
     ぐっと歯を食いしばる優児を見ながら田中が合いの手を入れる。
    「そのボロ靴、どこのメーカーだよ?」
    問いに答えて、加藤がわざとらしく靴を鑑定するように見回す。
    「なになに?アレッポックス?だっせー!アルフォックスのニセ物だよ!信じらんねー、こんな靴履いて歩けるやついるんだ?」
    加藤の引き笑いに伊藤と田中の笑い声が唱和する。
    羞恥に顔を赤くしながら、優児は怒りに身を震わせた。
    「返せよ・・・」
    絞り出すような声は、爆発寸前の雰囲気を漂わせていたが、加藤はふんと鼻を鳴らすと、歯をむき出して蔑むように優児を見た。
    「何か言ったか?MAー1spを履いてる川井様が、まさかこんな靴履いてる訳ないから、空耳だよな?俺のMAー2なんか目グチャグチャにしてくれるんだろ!?」
    加藤の語尾にどうにも抑えきれないいらだちが混じっている。
     不当な扱いを受けたのだから、当然それなりの報いをくれてやらなければならない!
    そう、優児を睨み付ける加藤の目が語っていた。
    「・・・・・・」
    明らかにひるんだ優児は絶句する。一週間前の昼休み、教室の情景が脳裏に蘇る。

     「──  今日はやるんだろうな?」 ???????????????????????????????????????????
    給食を終えて、教室を出ようとする優児の前に田中が立ちはだかった。
    何を、とは問えない。(倒魔戦線 豪レンジャー)遊びに決まっているからだ。

     ・・・三ヶ月前から始まったヒーロー番組、豪レンジャーは開始以来、小学生や主婦層、マニアにまで幅広い指示を受け、人気の絶頂を極めつつあるホットな番組だ。
    五人の美青(少)年が変身し、悪の組織と戦う、勧善懲悪の子供向け番組。その主人公達の特徴の一つに、靴のグレードによって階級が分かるというものがある。
    レッドジェネラル(将軍)、ブルーカーネル(大佐)、ホワイトカピタン(大尉)、イエロールテナン(中尉)、グリーンサージェント(軍曹)、の名前を与えられた五人は、仲間ではあるが、全員一歳ずつ年が違い、明確な階級がもうけられている。
    そしておそらくはスポンサーの意向であろう。階級があがるたびに靴のグレードが上がって行き、とりわけ、ジェネラルの履くMA-1spは超高級志向の靴で、海外の高級ブランド並みの値段と品格が評判だが、採算度外視という作りのため、限定品として百足が作られたに過ぎない。普及版のMA-1ですら子供の履く靴としては高級に過ぎる値段
    であった為に、MA-1spはまさに垂涎の的であった ──  ?????????????????????????

     優児は、豪レンジャー遊びに参加させられたときのことを思い出す。MAシリーズを履いた子供が主人公達の役をやり、その他の者は怪人及び戦闘員役、あるいは人質役。
    MAシリーズを履いている子の中に友人がいる者は主人公グループに入ることも出来るが、クラスにもろくに友達のいない優児は端役から逃れるすべはない。だから逃げ回っていたのだが、今日とうとう捕まってしまったのだった。
     嫌々ながら田中と共に校庭に出た優児に、加藤が高圧的に宣言した。
    「やっと来たかよ、じゃ、お前は先週捕まった人質の女役な」
    「・・・!」
    先週の人質役といえば、ゲストの二流アイドルが、怪人に捕まり、縛られ叫んでいただけ。誰がやろうが、何の問題も関係もないはず。
    つまり、優児をさらし者にするためだけに呼び出したのだ。
    優児は、そのまま校庭に固定されているサッカーゴールに縄とびのひもで縛られた。
    そこに、MA−1を履いて、いつも通りジェネラルの役をやる伊藤の声が響く。
    「大丈夫か!?助けにきたぞ!」
    「・・・・・・」
    何も言わない優児の腕に、怪人役の少年の裏拳が腹に飛ぶ。
    「助けてとか言えよ・・・!」
    痛みに顔をしかめながら、しかたなく優児はたすけて、と声をあげた。
    危機感もなく弱々しく響く優児の声に、少年達のアトラクションが幕を開ける。
    元気よくはね回る伊藤の近くで、MA−2を履いた加藤がちょろちょろ動き回っている。
    それを見ながら、優児は、クラスでこんな遊びが始まったきっかけを思い出していた。

    ←前のページ 現在 1/11 ページ 次のページ→

    1ページ目に戻る
    ▤ 目次ページに戻る


    お気に入りリストに追加 この作品を応援する

    応援ボタンを押す事で作品の★が増え、作者に「イイね!」を伝える事ができます。

    コメント

    • おもしろかったです!

      ただ、おじいさんの瞳が具体的にはどんな瞳かわからないのが残念でした
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    作者紹介

    • たき
    • 作品投稿数:1  累計獲得星数:1
    • よろしくお願いします。
    • 関連URL
      :

    この作者の人気作品

    小説 ホラーの人気作品

    続きを見る