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シリーズ:友食
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友食

作者:Hiro

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    今日は、私たち四年四組の『友食』(ゆうしょく)についてみなさんにお話しようと思います。

    『短編小説』『ゆるいホラー』『ホラー小説コンテスト応募作』

    ご感想お待ちしております。
    また、作品へのご意見などもお聞かせください。
    よろしくお願いいたします。


    登録ユーザー星:29 だれでも星:35 閲覧数:8323

    友食 9057文字

     

    「私、雪雄くんみたくお話上手になりたいな」
     みんなも、より優秀な子供に成りたいので、そんな話がよくされるようになりました。
     ふふ、私もだけど、みんな『友食』が好きなんだなって思いました。

     でも一人だけちょっと違う子がいます。
     それは赤いほっぺたの林檎くんです。
     彼は学年で一番背が低く、みんなよりずっと小食です。クラスのみんなともあまり仲が良くありません。彼がどうして四年四組に選ばれたのか少し不思議です。
     それに彼もみんなと一緒に四人の友だちを食べたはずなのに、あまり成績が上がらないのは小食なせいでしょうか。
     でも私たちは優秀な生徒なので、彼のことを差別することもありません。イジメなんてもってのほかです。むしろ私は彼のことを助けてあげたいと思いました。
     でも、どうすれば林檎くんを助けてあげられるんでしょう。
    「そうだ良いことを思いついた」
     来月の『友食』で私を食べて貰えばいいのです。そうすれば、きっと彼も良い子になれるにちがいありません。
     先生に頼んで、私を九月の『友食』にしてもらおう。
     私は成績だってあがったし運動もできるようになりました。
     自分で言うのもなんだけれど、みんなからの人気だってあります。先生の言いつけもちゃんと守る、とっても良い生徒です。
     林檎くんも私を食べれば、きっと良い子になれ、みんなとも仲良くなるにちがいありません。

     でも九月は私ではなく別の子が『友食』に選ばれました。
     とても残念です。
     先生は「これはクラスのみんなで決めることだから」と言って、私のお願いを聞いてくれませんでした。
     九月の『友食』は音楽の才能がある子でした。
     最初にも言いましたけれど『友食』はクラスの子たちの投票で決まります。だから私一人の希望で決めることはできないと先生に言われました。
     先生の言うことはもっともです。物事には規則があるのだから、それを破ってはいけません。
     なのでみんなに、私を次の『友食』に選んでもらえるように頼むことにしました。
     林檎くん、きみをちゃんと良い子にしてあげるから待っててね。

     私は十月までの間に一生懸命勉強し、そして運動もがんばりました。女の子たちだけでなく、男の子たちにもちゃんと投票してもらえるようにお願いしました。
     でも『友食』に選ばれたのは、また他の子でした。
     十月の『友食』は料理の上手い子でした。
    「なんで!」
     先生は「クラスのみんなで決めた事だから」って言ったのに!
     クラスのみんなは「私を選んでくれる」って言ったのに!
     どうしてどうしてどうして!
     どうして、みんな私を『友食』に選んでくれないの!
     どうして投票したって嘘をつくの!
     私はみんなに食べてもらうために、とっても頑張ったのに!
     勉強だってできるし、運動だってもちろん、美術や音楽の成績だって良くなったのに!
     私が一番可愛いのになんで選んでくれないの!

     十一月の『友食』もまた違う子が選ばれました。
     ダメだ、私は頑張っても食べてもらえないんだ。
     私はとうとう『友食』に選んでもらうことを諦めました。
    「林檎くんごめんね。勉強できるようにしてあげられなくて、みんなと仲良くできるようにしてあげられなくて」
     ポロポロと涙をこぼす私に、彼は「気にしないで」と、優しく言ってくれました。
     それまでみんなを避けていた林檎くんが初めて私に喋ってくれました。
     やっぱり林檎くんにも、みんなの優しさが引き継がれているのです。そのことを確認できただけでも、私はとてもうれしかったです。
     そこで、今までの自分の行動を振り返ってみます。
     いままでは、自分の考えばかり押し出しすぎていたのかもしれません。
     落ち着いて考えると、すぐにそのことに思い当たりました。
     これは林檎くんのおかげだ、ありがとう。

     そして十二月。ようやく、私の番になりました。
     いつものようにみんなが机を合わせ準備をはじめます。
     準備が終わると、私は自分で服を脱いで、テーブルクロスの上に横になります。
     みんなに見られてるのは恥ずかしいけれど、大丈夫です。すぐに私はみんなと同じになるんだから、気にすることはないんです。
     今までの子たちと同じように、先生が私に注射を打ちます。
     左腕がチクッとしただけで、怖いことなんてなにもありませんでした。
     すぐに意識がゆらゆらとして、なんだかとても楽しい気分です。
     そして二本目の注射を打ってもらうと、カラダからどんどん力が抜けていきます。
     少しだけ息が苦しかったけれど、三本目の注射を打ってもらうと、そのまま視界が暗くなっていきます。
     ぜんぜん怖いことなんてありません。
     ただその日、熱をだして早退した林檎くんのことだけが心残りでした。

       ◆ ◆ ◆

     どうして他の子たちは、同級生を食べることに抵抗がないのだろう。それどころか自ら進んで食べられようとする子までいる。信じられない。
     「これが当たり前のことですよ」と、大人(せんせい)たちから言われたことに疑いなく従っている。
     そして、それを指摘するべきはずの大人(ほごしゃ)たちも「先生が言うのなら間違いない」と、子供たちと同じように従っているのだ。
     クラスメイトを食べるなんて絶対変な事なのに。
     この学校の人間たちは、大人も子供も、自分で考えることをしようとしない。まるでそれをすることが世界の規則(るーる)を破ることだと恐れるように。
     確かに規則を破るのはいけないことかもしれない。けど、人から言われたことを考えもせずに「規則だから」の一言で受け入れてしまうのは絶対におかしい。でも、子供の僕がそれを指摘したところで誰も相手にはしてくれない。
     だから僕は口を閉ざすことにした。
     誰にも何も気づかれないように。この一年間をやり過ごすことで、自分の命だけを守ることにした。
     例えそれが他のクラスメイトを見殺しにすることになっても。
     そこに罪悪感がないわけじゃない。でも、それを正しいと信じている人たちを小学生の僕が説得するのは難しい。
     それに彼らが『友食』(それ)が間違っていると認めるには、彼らが殺人と人食いという禁忌を犯したことを認めることにもなる。だから疑う心があったとしても認める訳がない。そして誰にも止められないまま『友食』は続けられる。
     四年四組に入れられて生き残りたいのなら、自らの優秀さは決してさらしてはならない。生き延びるために僕はそう考えた。
     僕は誰とも親しくせず、テストの結果もださずにダメな子のフリをするだけでいい。そうすれば誰にも僕を食べたいとは思わないハズだ。
     いや、問題なのはクラスメイトではない。先生に目を付けられることこそ危険だ。
     なぜなら、あの人はウソをついている。
     『友食』で選ばれる生徒が投票で決めたというウソを。
     みんなで決めた事だからと、僕たちに納得させるため投票という形式をとりながらも、その結果すり替えているのだ。
     試食と称して一緒に『友食』に参加する、自分の希望を通すために。
     そのことに気がつかせてくれたのは聖夜さんだった。
     彼女は自分だけ生き残ろうとした僕にまで優しくしてくれた。
     僕が目立たぬよう、聞き耳をたて確認したところ、もっと早い段階でクラスの過半数の票を集めていた。なのに実際に彼女が選ばれたのはずっと後のことだった。
     投票結果は先生の手の内に隠されるため、不正をしている証拠はない。
     やはり、僕は生き残るために口をつぐむしかない。
     生き残りたいなら肝に銘じておかなければならない。このクラスで先生の目にとまってはいけないのだから。

       ◆ ◆ ◆

    「なんで、一月(こんげつ)の『友食』は林檎だったのかな?」
    「なんでだろうね。誰か林檎くんに投票した?」
    「いれてないよ」
     四年四組のみんなが口々に言葉を交わします。
     でも、みんな疑問に思いながらも、深くは考えず『友食』の準備を進めていきます。そんな従順な生徒たちを先生は満足そうにみつめていました。彼女を疑った生徒はすでに薬を注射し終え、あとはテーブルに載せ解体するだけとなっていました。
    「みんな林檎を食べたいなんて思ってなかったのにね」
    「そうだね」

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    コメント

    • 自分もYouTubeの朗読を聞いて知りました(^_^;)
      語り手の男の人が、かなり重要な部分をかんで
      せっかく世界に入り込んでたのに
      アサリの砂利を噛んだ気分になりました。

      読んだ方が良いですね(^_^;)
      • 1 fav
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    • 遅くなりましたが、ご感想ありがとうございます。

      朗読バージョンは、できれば女性の方にやってもらいたいと思い、自分で声優さんを探して制作中だったのですが……いろいろあって頓挫しました(涙
      もう少ししたら時間ができるので、そのときは改稿版でリベンジしたいところです。
      っていうか、昔の作品(and文体)を見返すのは黒歴史をみてるようで、ちょっと苦しいです(爆
      • 0 fav

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    • 大賞作品とは知らず、拝読しました。
      身の毛もよだつとはこういう事なんですね、最後のどんでん返しで暑さで体は熱くても、気持うっすら寒いです@@;
      • 2 fav
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    • ご感想ありがとうございます!

      別に大賞作品だからといって、そんなにヨイショしなくてもいいんですからね?<褒められなれていない
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    • いえいえ、面白いと思って感想書こうとして開けたら大賞おめでとうございます↓という言葉が下に見え
      て、ああ!と思ったんですw
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    • 大賞おめでとうございます!

      今までにない独特の世界観に引き込まれる作品でした。最近短編ホラーを書き始めたのですがスゴく参考になりました。Hiroさんの作品、楽しみにしています。次回も大賞めざして頑張ってください。
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    • ありがとうございます!

      でも、残念ながら『俺の嫁』創作コンテストでは最終で破れてしまいました(涙
      これに懲りずにがんばっていこうとおもいます。
      冒頭でものべましたが、ありがとうございます!
      • 2 fav

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    • 以前から気になっていた作品で、ようやく拝読させて頂きました。
      「友食」に疑問を感じながらも、ストーリーにリードされ、え?え?っと二転三転と、ものの見事に思考が転がってしまいました。
      こわ面白かったです!
      • 2 fav
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    • お読みいただきありがとうございます♪
      最初★3個しかなかった拙作もとうとう10倍にまでこぎつけました。
      みなさまの応援ありがたく受けさせていただきます。
      • 1 fav

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    • 大賞受賞おめでとうございます。
      グロテスクな描写に走らないまま、シチュエーションと心情の異常性を描き切った作品に、素晴らしい恐怖を感じました。
      けれど何だか、「美しい、綺麗」という印象を受けました。
      私は、この作品のラストは今のままの形がいいと思っております。
      先生の一人称にしてしまえば、そこに生々しさが生じる気がします。先生の理不尽に気づきながら、この世界の理不尽には一言も文句を言わぬ、子どもの恐ろしさを味わわされました。そしてまた、私が印象に残った美しさ、綺麗さが、消されず際立つとも思えます。
       この度は、素晴らしい作品を読ませていただきありがとうございました。
      • 1 fav
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    • コメント&お祝いのお言葉ありがとうございます♪

      あまりほめられなれてないので、テレてしまいます(赤面
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    • 受賞後、かなり時間がたってからようやく読みましたが……なるほど、これは面白い作品でした。
      発想、展開、文章力、どれをとっても素晴らしかったです。
      そして何より、この話は「怖い」です。
      幽霊や妖怪といった題材や、一人の異常者を描くより、集団に蔓延した狂気という怖さは、一線を画していました。
      技量、アイデア、ともに見習いたいことばかりです。
      • 1 fav
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    • ご感想いただきありがとうございました♪

      怖がっていただければ何よりです。
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    • やっていることは恐ろしいことなのに、登場人物のほとんどが、崇高で美しいものだとまったく信じて疑わないことがとても怖かったです。
      (以下ネタバレ含む)




      しかも、一番まともな反応だった人がこれを進めてきた人というのが・・・

      背筋がぞくぞくしました。
      • 1 fav
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    • ご感想ありがとうございました♪
      疑わないって本当に怖いことですよねぇ(ボソ
      • 0 fav

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    • 大賞おめでとうございます^^

      確かに、唸るほどに発想が素晴らしく、内容も濃いものでした。
      読後の後味が何ともいえず気持ち悪く、そして恐ろしかったです。これはたまりません(笑)

      今後もがんばってくださいね^^
      • 1 fav
      • Re 返信

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    • コメント&お祝いのお言葉ありがとうございます♪
      今後も大賞受賞者として恥ずかしくないよう、努力していく所存であります。
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    • 確かに受賞するだけの作品ですね。なぜ☆がこんなに少なかったのかと不思議なくらい、ぞくっとくる恐怖小説でした。個人的にもこういう狂った世界の話は好きです。審査員の先生の言う通り、最後の部分を教師の独白で閉めたら、完璧だと自分も思いました。これはぜひ電子書籍化のさいは、ラストを改稿するべきです。ただその部分を除いても、作品としては良いホラーで、面白く、怖く読めました。受賞おめでとうございます。
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    • コメント&お祝いのお言葉ありがとうございます♪

      本作は子供の醸す、独特な雰囲気で統一したいと考え、大人の思考(視点)は排除してみました。
      でも、誰が語っているのか不明な文章は、不評なのでもう一ひねりできないか考えてみます。
      • 0 fav

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    • 面白い作品だと思いました。読者に「食わせる」作品ですね。
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    • お褒めにあずかり光栄です♪
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    • 現実的にどうとかではなく、発想とオチが秀逸だと思いました。
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    • お褒めのお言葉ありがとうございます♪
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