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シリーズ:繰り返しの理 22
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繰り返しの理 22

作者:緑山 咲夜

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    インカという国の中で巫女の存在は現代でもよく紹介されますが、色々な立場の巫女がいました。王の側近としての巫女もいましたし、捧げ物のみの目的で育てられた幼い巫女もいます。大切に育てられ、食べるものにも不自由せず世話はすべて女官という生活は見た目に幸せそうですが、本当の所はどうなんでしょうか。ほとんどの者は短命だったようですし。隔離された場所で余計な知識を与えられず、一つの事だけを教えられ遂行していく姿に人は神聖さを感じるものなのだと思いますが・・・。  


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    繰り返しの理 22 8080文字

     

    私とアタピルパを交互に見たサテロはフイっと顔を逸らし、
    判った・・・と短く答えた。

    視線を感じて目を向けた私とドーロの目が合った。
    何も言わず、複雑に入り組んだ気の流れが
    真っ直ぐに私に向ってくるのを受け止めながら
    心配も苦労もかけてしまうことに申し訳なく思う。



    (あとは頼みます)


    唇の動きだけで、ドーロに言葉を伝える。
    正確に読み取ったドーロは眉を寄せ、気持ちを振り切るように
    視線を外すと大げさに荷物を片付け始めた。


    「アタピルパ様。風が出てまいりました。
    ラウラ様をお部屋にお連れするほうがよろしいかと・・・」


    ドーロの言葉に、サテロも賛成する。


    「動いて大丈夫か?」

    アタピルパが腕の中の私に囁く。

    「歩けます」

    笑う私にアタピルパは少しだけ笑うと、腕から私を解放してくれた。









    「俺が運ぼう」

    立とうとしていた私を別の腕が抱え上げる。


    「サテロ、歩けるぞ」

    私の言葉を無視し、私を抱き上げたサテロはアタピルパに顔を向けた。



    「周りの目があります。あれだけの傷を負っていたのに、
    スタスタと歩いていたら不自然ですから、このまま私が運びます」


    今までと違う外向けの言葉使いと態度の中に
    静かに怒りにも似た感情が見える。
    きっと策を見つけ出せなかった自分に腹を立てているのだろう。
    それはアタピルパも判っているようで、
    何も言わず黙って頷く事で了承する。





    先をドーロが歩き、アタピルパが続く。
    そのすぐ後に私を抱きかかえたサテロがついていく。



    「ラウラ、なるべくぐったりしたフリをしろ。元気ではおかしい」

    前のアタピルパに聞こえるような声でサテロが言う。
    実際、アタピルパへのアピールだったようで、
    直後に私の耳元に口を寄せてきた。



    「お前、ドーロと何を話した? 後を頼む、とはどういう意味だ?」


    見られたのか・・・。苦笑が漏れる。

    「目聡いな。私が消えた後の支えを頼む。と言う意味で言っただけだ」

    サテロの胸に頭を預けて、目を閉じると小さく囁き返した。

    「ドーロには言っていたのか」

    「ああ。アタピルパ様の心の傷はかなり深い」

    「・・・・町娘か」

    「そうだ。毒蛇と顔を串刺しだ」

    「・・・・惨いな」

    「ああ・・」


    時々、振り返って私の確認をするアタピルパに話している事が
    気付かれないようにサテロの腕が私を隠すように抱きかかえ直す。
    その仕草で、サテロの意図に気づき、目を閉じている私も
    唇をサテロの胸に押し付けるように隠しながら短く答えていた。


    「お前を使う事に納得した訳ではないからな。覚えておけ」

    「サテロらしい・・」

    思わず笑みが零れた。



    それ以後は押し黙ったまま、自室まで私は運ばれていく。
    目を閉じていたから正確にはわからないが、
    大勢の者達が自分を注視していた事は、
    視線の痛さと気配で容易に気付いた。
    ・・・まるで見世物のようだ。


    実際、見世物のようにアピールしていたのだろうから致し方無い。
    部屋の寝床に下ろされるとすぐに私は半身を起こした。

    本当は歩いても問題ないのだが、
    と言う申告は3人に軽く却下された。

    作戦上、必要だ。と言われ、
    不本意だが大人しく部屋の中だけ歩く事にする。



    アタピルパとドーロは注進の一件もあり、
    話もそこそこに引き上げる事になるが、
    用心の為、サテロが一晩付き添う事となりパルジャが
    動けない事になっている私の為に
    食事を2人分運んでくる手筈を確認し合った。


    去り難いアタピルパが戸近くまで見送る私を抱きしめると、
    首筋に唇を落した。
    ピリッとした痛みと共に所有の印が付くのを
    唇を離して満足げに眺めてから、
    一瞬だけサテロに視線を送り、部屋を出て行った。






    戸が締まり、静寂が戻る。
    私は足の具合を見る為に寝床に腰掛けると足の曲げ伸ばしを始めてみた。
    伸ばすのはいいが、曲げる時に傷が引きつれるようで痛みが走る。
    剣を振るう場合は少し不自由を感じるが、さほどの問題も無いだろう。
    そんなことを考えながら、ふと傍らに立って私の行動を
    静かに見つめているサテロに視線を向けた。
    少ししかめ面をしているサテロの視線は私の首筋に向けられていて、
    先ほどのアタピルパの行動でも思い返しているようだった。



    「気になるか?」

    私の問いに小さく鼻を鳴らして、サテロの視線が外れる。



    「当たり前だ。目の前でやりやがって。さっきの仕返しだなありゃ・・」

    腕組みをしたまま、不貞腐れたような表情を浮かべたサテロに
    私は首をかしげた。


    「さっき?」

    「お前の感覚を戻すのに目の前で濃厚なヤツをやった」


    僅かに口角を上げて笑う。
    あれは私情も入っていたのか・・・・。



    サテロの感情の一部が見えるようで、
    やや呆れ顔で彼の顔を見上げていた。






    唐突だが、サテロの顔を見ていて思い出した事があった。
    少し前、アタピルパとの会話の中で気付いたことだった。

    そうだ。言えるときに言っておこう。





    「サテロ、話がある。少しいいか?」

    「なんだ?」

    ふと思い出して、声をかけた私の横に腰を下ろすと、
    いつものサテロが私を見下ろしていた。


    「私が精霊達と居る所を初めて見られた時の事を覚えているか?」

    「ああ、あれか。驚いたのでよく覚えている」

    「あの時、お前らしくていいんじゃないか?って言ってくれた。
    あの時私は、指揮官である立場として便利だからいいんじゃないか?
    と言ったのだと、ずっと思っていた」

    「・・・・」

    「私は間違っていたのだな。
    サテロは精霊使いのままの私ごと認めてくれていたのだな。
    今まで気付かずに申し訳なかった」










    「遅せぇよ・・・」
    頭を下げた私の頭上に降った言葉に顔を上げると
    酷く優しい表情をしたサテロが笑っていた。


    「俺はお前のすべてに惚れているんだ。ずっと前から」


    ゆっくりと回されてきた腕が私の腰を捉え、抱き寄せられる。

    「俺の女になれ、と言った言葉に他意はない。
    戦いから遠ざけ、剣しか知らないお前に女の幸せを与えたかった。
    精霊使いはそれでなくても人より辛い思いをするから・・・・」


    サテロの指がゆっくりと頬から顎をなぞり、
    首筋にある他の男に付けられた印を
    指で隠すように覆った後、そっと顎を持ち上げると軽く唇に口付ける。
    間近でみるサテロの心が真っ直ぐに流れてくる。


    「あまり心を向けるな。内側の心が流れてきてしまう」

    「かまわん。お前の前で隠すものなど無い」


    啄ばむような軽い口付けが再度落ちる。

    「精霊使いに慣れているのだな」

    「ああ・・・。俺の心を読んでみろよ」





    悪戯っぽく笑ったサテロが今度は深く口付けてきた。
    過去の記憶が心と共に流れてくる。







    15の時に好きになった娘が巫女だった事。
    私とよく似た力を持っていた事。
    命を削り、人を治し死んでいった事。
    その時のサテロの感情が時系列を無視して流れ込んでくる。



    苦しい。悲しい。悔しい。・・・・愛しい。




    こんな思いをしてきたのだ。
    思いはずっと心の底で玉のように丸く光りながら沈んでいた。
    そっと手を伸ばして持ち上げて、後ろを振り返る。
    サテロが苦笑して立っていた。


    (後悔の念か?)

    サテロの声が小さく響く。
    手の中の玉をそっと差し出しながら、私は首を横に振った。

    (違う。これは・・・・)


    差し出した手の中でホロホロと玉の形が崩れていき、
    小さな小さな光の粒子に変わっていくと、
    まっすぐにサテロに向かっていった。
    一つ一つの粒子がサテロの中へと吸い込まれる度、
    小さな優しい声が響く。



    ‘サテロ様‘ 

    ‘サテロ様‘ 

    ‘私は幸せでございました‘ 

    ‘お泣きにならないで‘ 

    ‘心より愛しておりました‘




    サテロの恋した巫女はイリスと名乗った。
    イリスの姿が目の前に映し出される。
    これは、サテロの目を通しての彼女の姿だ・・・。
    黒くて長い髪はややクセ毛のようで、軽いウェーブがかかっていて、
    それを軽く束ねたところに綺麗な羽飾りと玉飾りが付けられていた。
    巫女の服なのだろう、私には馴染みの無い柄の入った
    足先さえも隠すほどの裾を持った服の上から
    ケープのようなものを肩に掛けた姿は、神秘的な雰囲気を持っていた。
    たおやかな仕草で、少し首をかしげてサテロを見るクセがあったようだ。







    「・・・・イリス」

    サテロの瞳から一筋の涙が落ちる。



    サテロの唇が離れていくのに合わせて目を開く。

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    • 緑山 咲夜
    • 作品投稿数:73  累計獲得星数:107
    • 雑食化が酷くなりつつ・・・。
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