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シリーズ:CHIGIRI (須永朝彦 「契」 Remix) その1
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CHIGIRI (須永朝彦 「契」 Remix) その1

作者:らしき

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    須永朝彦先生の短編集『天使』の冒頭の作品である「契」。
    大好きな作品なので練習がてらリミックスしてみようと書き始めたのですが、途中で筆が止まりました……。

    「その1」と書いたからには「その2」も書かねばならないという義務を己に課すためのアップです。
    リアクションを見て今後の方向性を決めるという他力本願もありますがw

    完成作品ではありませんが何かコメントいただけると嬉しいです。
    よろしくお願いします。


    登録ユーザー星:2 だれでも星:0 閲覧数:250

    CHIGIRI (須永朝彦 「契」 Remix) その1 1093文字

     

       1


     その年の春は早く、雅彦が美園高校の入学式へ新入生として出席した時節にはもう、校舎は新緑と薄桃の混じった葉桜で彩られていた。
     美園高校は人口の減少しつつある地方都市のはずれに位置する地味な伝統校であり、特に目立つところのない高校だが、数年に一度、海外の芸術大学への留学生を輩出して噂になることがある。雅彦には、もし許されるならばピアノを本格的に学びたいという秘めた想いがあり、いろいろと理由を並べて両親に美園高校への入学を認めさせたのには、その噂への憧れがあった。
     雅彦がピアノを習い始めたのは母親からの強制で、幼い頃は男なのにスポーツをしていない自分が恥ずかしくてしかたなく、何度やめようと心に決めたかわからない。しかし、いつの頃からかピアノの音色や音楽というものの奥深さに魅入られ、自らの意志で鍵盤に向かうようになっていた。自分でも細く長く綺麗だと感じる指が、白と黒の鍵の上を流れるのを見るのも好きだった。
     美園高校には秘蔵のグランドピアノがある――。高校合格を報告に行った時、音楽の先生がそう教えてくれて、雅彦は興奮で胸が熱くなったのを覚えている。
     選ばれた者にしか弾けない隠されたピアノ、そして、それを弾いたピアニストは海外の音楽大学へ留学する……。そんなことを雅彦は夢想した。我が指よ、我が耳よ、我にその栄誉を……。

    「新入生諸君、美園高校へようこそ」

     入学式の式場である体育館に響く中性的な美声が、雅彦の意識を新入生に与えられたパイプ椅子の上へと連れ戻した。

    「これから君たちが三年間を過ごすことになるこの高校は……」

     演壇に立ち在校生代表の挨拶をする生徒会長は、一見して日本人離れしていた。背が高く、手足もすらりとして長く、髪の毛も光の具合によって金色に輝く。
     雅彦は息をのんだ。生まれて初めて、男性を見て美しいと感じた。
     それほどの美貌であったが、なによりも目を引いたのは肌の白さで、この生徒会長は太陽の光を一度も浴びたことがないのではないかと思わせるほどだった。

     陽光を厭う生徒会長の下、青白き生徒会役員達は月の光射す教室で夜の会合を執り行う。
     窓から入る涼しい風とかすかな葉擦れの音。当然のように電灯は用いられず、あえて弱めたランプの明かりは、学生服と闇との境界を曖昧にする役にしか立たない。
     どこからかベートーベンの『月光』第一楽章が流れて……。

     雅彦の入学式の思い出は、現実の体育館の光景ではなく、生徒会長に見惚れながら思い描いた夜のイメージとなった。

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    コメント

    作者紹介

    • らしき
    • 作品投稿数:10  累計獲得星数:76
    • エログロと文学的表現を融合させてゴシック調の作品が書ければ……などと、高原英理先生の『リテラリーゴシック・イン・ジャパン』(ちくま文庫)の影響を受けて妄想しております。

      現在読んでいる本
      『売女の人殺し』(ロベルト.ボラーニョ)
      『天使エスメラルダ』(ドン・デリーロ)


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      ツイッター:http://twitter.com/lashiky665

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