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シリーズ:悪夢
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悪夢

作者:黒木露火

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    こんな記憶はないはずなのに。夢の中で繰り返される名前も知らぬ友人の死。


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    悪夢 1196文字

     

     そこはいつも夕暮れの教室で。
     さっきまで聞こえていた野球部の気持ちよい打球の音や、ランニングのかけ声はいつしか聞こえなくなっている。
     廊下はまだ床の木目が見えるほど明るいけれど、落ちかけの太陽が赤くあかく、閉ざされた教室の入り口の窓ガラスに反射している。
     行かなければ。
     行きたくない。
     西日の禍々しいまでの眩しさに目を細めながら、私は教室に踏み込んだ。
     とたんに窓越しの太陽に眼を灼かれめまいを起こし、しゃがみこむ。閉じた瞼の内側が悪夢に似た色に彩られる。
     ゆっくりと目を開くと、うずくまった足元には意外なほど影が濃い。
     もうすぐ夜がやってくるのだ。
     そのまま薄暗い机の脚を見つめて、少し目を慣らすと私は立ち上がった。
     教室は赤く染まり、柱と窓の作る黒い十字模様の影で、まるで墓地のように見えた。
     実際、ここは墓地なのかもしれない。毎日、心の中の何かが殺されて埋められていくのだ。

     気が付くと、窓辺に誰かが立っていた。
     それは一人の女の子だった。
     制服を着ている。この学校の。薄手の長袖のブラウスにベスト。中間服というやつだ。
     そうすると今は秋? もしかしたら初夏なのかもしれない。
     窓に背を向けて、窓枠にもたれかかるように腰をかけ、こちらを見ている。逆光で顔は見えない。
    「来てくれたんだ。うれしい」
     微笑んだ気配がした。
     声は聞き覚えがある。なのに、私には彼女が誰なのか思い出せない。
     背の高さは高くもなく低くもなく、髪は肩くらいで、そんな女の子、この学校には何百人いることか。
     知り合いなら、今のクラスメイト? 去年の? それとも部活?
     顔さえはっきり見えたら思い出せるはずなのに。
     私は曖昧な笑みを浮かべ、黙ったまま彼女に近づいていった。
     三メートルほどの距離になったとき、彼女はそっと左手を胸の前に延ばし、手のひらを立てた。
     止まれということだろうか。近づくなということだろうか。その二つは似ているが、異なる。
     私は怪訝に思い、彼女をじっと見た。やはり彼女の肩ごしに差し込む斜陽のせいで顔はわからない。髪が軽く風に揺れていた。
    「では、はじめましょうか」
     再び微笑んだ気配がした。
     そのとき、私は何のためにここに来たのかを思い出した。
    「………!」
     声にならない叫びをあげ、手を伸ばし、机を押しのけながら私は彼女に飛びつこうとした。飛びついて止めようとした。
     その私の目の前を彼女はゆっくりと後ろ向きに落ちていった。
     私の手は、彼女に触れることさえ出来なかった。
     私は救うことができなかったのだ。
     彼女を。
     そして私を。


     次は、私の番なのだ。


    〈了〉

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    • 黒木露火
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