upppiは縦読みコミック(タテコミ)・イラスト・小説が無料で楽しめるサービスです!

ようこそ!ゲストさん
シリーズ:今日も君は泳いでいた
閲覧数の合計:312

作品を編集する

  • シリーズタイトル・ジャンルの修正
  • この章を改訂する
  • この章を削除する
  • シリーズに作品を追加する
  • 表紙画像の変更

今日も君は泳いでいた

作者:緑山 咲夜

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
    • タグ:
  • 編集協力者:

    恋は盲目といいます。蓼食う虫も好き好き。そんなお話です。


    登録ユーザー星:3 だれでも星:0 閲覧数:312

    今日も君は泳いでいた 5040文字

     

    僕の好きなあの子は、世間で言うところのツンデレって奴だ。
    その口から吐き出される言葉がとんでもなく辛らつな言葉や冷たい態度だから。

    それでも僕は、今日も水の中で人魚のように可憐に泳いでみせる君の姿に見惚れてしまうのだった。
    泳ぐことが好きな君。
    一度でいいから、そこから出てきて僕の隣に来てはくれないだろうか。そんな願いなど君は気付かずに、バチャッ・・と水音ひとつをあげ、身を翻して向こうに泳いで行ってしまう。

    ある日、勇気を出して僕は声をかけた。
    会社で上司に厭味を言われ、決してそれがハズレではないことが
    僕の心に辛く刺さってしまっていたから。
    君に何でもいいから言葉を掛けて欲しかったから。

    自分の無能さに腹が立ったんだ・・。
    そう言った僕に君は水に浸かったまま、ぼそりと呟いた。
    「成長は、自分の無能さに気がつくことからスタートするんじゃない?」

    冷たい視線を投げた君は、それきり口を噤んで向こうへと行ってしまった。
    僕の愚痴に返事を返してくれただけで、僕はもう嬉しかった。
    僕って、マゾっ気あるのかも・・・
    そのまま、冷たい視線全開で僕を踏んでくれないかな。
    そんな想像をしていたら、あらぬ妄想に発展してしまい、あんな事やこんな事も・・・と、とめども無い妄想の波に流されてしまい、一人の夜が更けてしまった。

    次の日、僕は君に会いに行った。
    君は相変わらず少し離れたところで泳いでいた。
    こっちに来てくれないかなぁ・・・としばらくじっと見ていたら、
    僕の視線に気付いたのか、近づいて来てくれる。
    「なんか用?」
    冷たい視線と共に冷たい言葉が投げかけられた。
    もうそれだけで僕は興奮してしまって、返事を返すことが出来ない。

    やっとの思いで僕は先日のお礼を言い、上司との相性で悩んでいることを言うと、
    「バカじゃないの?相性の悪い人とうまくやる方法を世界中の誰もが探してるわ。海外のベストセラー本を見てみなさいよ」
    鼻でふんっ!と笑った彼女の視線は相変わらず冷たいままだったが、僕の前に居続けてくれた。
    そんな僅かな優しさに、愛情を感じてしまったのは、僕の贔屓目だろうか・・・。
    それからの僕は、仕事が終ると君のところに行くのが習慣になってしまった。
    君は相変わらずの態度だったが、泳ぐ合間に僕の傍に来てくれることが多くなった・・・ような気がする。

    君から声をかけてくれることは稀だったし、
    冷たい視線と氷点下のような言葉は変わらなかったが。
    まぁ、たまに無視されて泳ぎに行ってしまうこともあるけど。
    いつか、その口から優しい言葉を聞けるかも知れない・・・。

    そんな淡い期待を持ったまま、月日だけが流れていった。
    僕はだんだんと君と居る時間が楽しくなり、同僚達との付き合いも学生時代の友人達との付き合いも疎遠になりつつあったが、一向に構わなかった。
    そんな僕の状態を学生時代の親友が心配し、飲みに誘ってきた。
    本当は行きたくない。
    彼女のところに少しでも早く行きたいのに・・・。

    どうしても、と言う強い口調に押し切られ、僕は親友と居酒屋に座っていた。
    「お前どうしたんだよ。顔色も悪いし、俺の誘いにも全然乗らないし」
    「なんでもないよ。仕事が忙しいだけだ」
    そんな僕に親友は、むっとした表情を浮かべた。
    「嘘つくなよ。仕事にも支障が出ているらしいじゃないか。先日、会社に電話したら
    お前の上司から逆に色々聞かれたぞ?そわそわしてて仕事もミスも多いって」
    「そりゃあちょっと、ミスが続いたけど、締め切りはきちんと守っている」
    「そういう問題じゃないだろ?悩み事があるなら聞くから」
    「悩みなんて・・・」
    口を噤む僕に親友は大きなため息をついた。
    「俺にも言えないことか?」
    親友の暖かい言葉が心に沁みる。
    僕は、この恋心を言うべきだろうか。
    彼女さえ居てくれたら、他は何も要らない。とまで思っている僕の想いを。

    「お前の事が心配なんだ」
    親友の真っ直ぐな瞳が、僕の口を開かせた。
    「・・・・・好きな子が居るんだ」
    小さく呟いた僕の顔をマジマジ見つめていた親友が
    安堵した表情を浮かべた直後、嬉しそうな笑い声を響かせた。

    「なんだ。恋わずらいか!良かった!俺、もっとヘビーな事、想像してたよ!!」
    「なんだよ。ヘビーな事って」
    「いや、ヤバい所で多額の借金してるとか、セクハラされているとか?」
    「なんだよ、それ・・・」
    「だから、それ位様子が変だったって事だよ。仕事も手につかないほどの恋か。
    で?どこの誰なんだ?」
    「・・・それは・・・」
    「なんだよ。俺に言えない子か?まさか、人妻?」
    「違うよ!」

    僕の慌てぶりに、多少の疑惑の目で親友が押し黙ったまま僕を見る。
    「本当に人妻じゃない。ただちょっとツンデレなだけで・・・」
    「ツンデレ?お前がそんなになるような?それって脈はあるのか?」
    どうやら親友は、僕が盛大な片思いをしていると思っているようだった。
    当たっているけど・・・。
    確かに彼女から優しい言葉はいまだ聞けていないし、相変わらず無視される事も多い。
    でも、話しかければそれなりに返事してくれる。
    僕が彼女から離れるまでは居てくれる。
    だから、僕は時間の許す限りは彼女を見つめていたいんだ。
    そんな事をぽつりぽつりと話す僕に親友の表情が曇る。
    「ちゃんと好きだって言ったのか?」
    親友の問いに僕は小さく頷いた。

    「で?」
    告白の答えを聞きたいらしい。
    「・・・・気の迷いじゃない?って」
    「お前〜。それ見込み無いって言わないか?」
    盛大に天井を見上げた親友は、今度はテーブルに突っ伏すと頭を抱えてしまった。
    「止めとけ、そんな子。」
    くぐもった声で言う親友を眺めながら、僕は小さく首を振った。

    「ごめん。僕はその子以外、何も要らないんだ」
    僕の決心が固いと思ったのか、ゆるゆると起き上がった親友はじっと僕をみた。
    僕は、少しの申し訳なさで視線を逸らす。
    そんな重苦しい空気がしばらく続いた後、親友が静かに笑った。

    「しかたねぇ。もう少し黙って《見てて》やるよ。だが、仕事だけはちゃんとしろよ?」
    「・・・・うん」

    飲み代を奢ってくれた親友は、僕の肩をパンパンと叩いて、
    辛かったら連絡くれ。と言うと、軽く手を上げて雑踏の中に消えて行った。
    本当にいい奴だ。ありがとう。

    親友の一応の理解が背中を押してくれた事にますます僕は彼女にのめり込んだ。
    会社の仕事は、なるべく定時で終るように働いた。
    ちょっとでも余裕があると、すぐに彼女を思い出して、
    上の空になるのは変わらずだっだが、ミスをする事はずっと減った。
    ミスや段取りの効率が悪くなると、時間を食って残業になりかねないからだ。
    仕事が終ると、まっすぐ彼女のところに行く。
    もちろん、休日は彼女を見つめるだけの生活だ。
    ひと時でも目を離す事が嫌で、平日の晩御飯は食べないようになり、休日も、ほとんど食事をしない。
    当然、体重は減り、顔色はますます悪くなった。睡眠時間もかなり減っているようだった。

    居酒屋から2ヶ月経ったある日。
    今日も定時で仕事を終らせた僕は、そそくさと退社して彼女の元へと急いでいた。
    ふと視線を感じ、振り向いた僕の視線の遠くに僕をじっと見つめる親友の姿を見つけた。
    え?
    少し驚いた僕の視線を受けたのに何故か、親友は踵を返して雑踏の中に姿を消していった。
    確かに視線はぶつかった。
    僕だと認識していたのに、声もかけずに消えていった親友の態度に違和感を覚えたが、
    それよりも急いで彼女の元へと駆け出した。
    そう、この1分足らずの時間さえ、僕にはロスと思ってしまっていた。

    一日中彼女を見つめていられる休日の朝が来た。
    のろのろと起きて開けたカーテンを握った手がギクリと止まった。
    窓のすぐ下に親友が黙ってじっと僕を見つめて立っていたからだ。

    僕が起きた事を確認できた親友がものすごい勢いで部屋の前まで走ってくると、ドアーを激しく叩き出した。
    インターホンも激しく鳴らされる。
    何?
    驚く僕は、カーテンを握り締めたまま、鳴らされるインターホンと
    叩かれる事で揺れるドアーを見つめていた。

    「おい。開けろ!開けるんだ!」
    親友の切羽詰った声が響く。
    その声に弾かれたように僕は、慌てて玄関の鍵を開けた。
    その途端、勢い良く開かれた向こうに息を切らせた親友が眉間に皺を寄せて立っていた。

    ←前のページ 現在 1/2 ページ 次のページ→

    1ページ目に戻る
    ▤ 目次ページに戻る


    お気に入りリストに追加 この作品を応援する

    応援ボタンを押す事で作品の★が増え、作者に「イイね!」を伝える事ができます。

    コメント

    • 不要に序~中盤が長いな~と、読み流していたのですが……終盤で盛り上がって、最後に不意をつかれたので、しぶしぶと★を落としていきます。
      次はこうはいかないんだかんね!
      • 0 fav
      • Re 返信

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    • Hiro様
      ありがとうございます!(笑)
      ご意見有難く参考にさせて頂きます~~。
      次は無いんですね?分かりました(笑)
      • 0 fav

      を押す事で、投稿者に「イイね!」を伝える事ができます。


    作者紹介

    • 緑山 咲夜
    • 作品投稿数:73  累計獲得星数:107
    • 雑食化が酷くなりつつ・・・。
    • 関連URL
      :

    この作者の人気作品

    • お題「ハニー」
      お題「ハニー」

      └1時間でお題を描くというイベントですが、 1時間はとっても無理なので2時間で描いたものです。

    • エルリログ
      エルリログ

      └お題を1時間で描くルールだったり妄想漫画だったりアイコン用だったりと雑多にツイでUPしたものです

    • エルド誕
      エルド誕

      └1月30日はエルドの誕生日でした。 大遅刻な上、ここにUPする事が出来ずもう6月。 今回

    • 小6になったリヴァイさん
      小6になったリヴァイさん

      └別サイトでチマチマ描いているものです。 設定 転生して10歳で過去世を突然思い出す。エレ

    • アルミンハピバ!!
      アルミンハピバ!!

      └アルミン誕生日おめでとうーー!! と言う事でお祝いサイト投稿絵です。水彩画っぽくラフに書きまし

    小説 恋愛の人気作品

    続きを見る