upppiは縦読みコミック(タテコミ)・イラスト・小説が無料で楽しめるサービスです!

ようこそ!ゲストさん
シリーズ:妖恋伝
閲覧数の合計:313

作品を編集する

  • シリーズタイトル・ジャンルの修正
  • この章を改訂する
  • この章を削除する
  • シリーズに作品を追加する
  • 表紙画像の変更

妖恋伝

作者:水瀬薫子

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:


    出会ったあの幼い日から、俺の想いは定められていたに違いない…。

    もう何年になるのか…俺はお前を忘れない。命ある限り、永遠に。

    俺はお前の影を追い続ける

    遥か昔、妖(あやかし)と呼ばれた者達の恋。

    シリーズ第一作完結です。


    登録ユーザー星:1 だれでも星:2 閲覧数:313

    妖恋伝 9356文字

     

     俺が、あれに出会ったのはいつの頃だったのか…。
     あぁ、そうだ。俺がまだ、餓鬼の頃。廃屋のように朽ちた寺の、境内の隅で…。
    「おい、誰かいるのか!?」
     野太い声がして、餓鬼だった俺は竦み上がり、動けなくなったんだ。近付いてくる足音に、ただガタガタと身を震わせながら、俺は、妙な期待を感じていたんだ。
     もしかしたら、『仲間』かもしれない…と。

     黒い大きな影が目の前に現れ、俺は声すら出せずにいた。一歩、一歩、そいつは俺に向かってきて、俺の首を掴んだ。殺されるっ!覚悟を決めた時、
    「なんだ。妖狐の餓鬼か」
     拍子抜けするような声でそいつは言い、俺の首から手を離した。
     驚きと安堵感で体から力が抜けた。
     しかし、それも束の間だった。
     顔を上げてそいつを見る。
    「に、人間っ!」
     俺は初めて見る人間に、再び激しい恐怖を感じる。そいつは長い黒髪を結い、腰に刀を差していた。昔、絵で見た人間の、『武士』という者の姿だ、と俺は思った。とにかく、身を守らなくては…。
     俺は牙を剥き、必死で威嚇してみせた。そいつはクスッと笑った後、
    「そんなに怯えなくとも良い。第一、私は人間じゃない」
     と言い、俺の頬にそっと手で触れた。
    「私の正体を知りたいか?」
     そう言って、静かに微笑むそいつは、間近で見ると、引き込まれそうな程、整った顔立ちをしていた。
    「…うん」
     頷いた俺に、そいつはにこりと笑って告げる。
    「いいだろう。見せてやる」
     突然ゴオォという音と共に激しい突風が吹き、俺は体を伏せる。目の端で俺はそいつの体がフッと消えたのを見ていた。風が収まり、おそるおそる目を開ける。
    「どうだ。これが私の正体だ」
     滝のように流れる漆黒の髪。瞳は深い湖のような蒼に輝き、頭からは鬼の如き銀の角がニ本、突き出ている。顔以外の肌は所々鱗で被われ、尻の辺りから蛇や竜を思わせる長い尾が一本伸びていた。
    「我が名は鵺(ぬえ)。お前と同じ妖しの一族だ」
    「ぬ…鵺?」
    「そうだ。お前の名は?」
     名を問われ、俺は首を横に振った。自分の名など知らなかった。
    「わからぬのか。ならば私が付けてやろう。そうだな…不比等(ふひと)。不比等はどうだ?」
    「不比等?」
     俺が首を傾げると、鵺は微笑み
    「そうだ。この世に等しく比べなき者という意味だ。つまり、お前は特別な者という事だ」
     と言い、俺の髪を撫でた。
    「特別?俺が?」
    「そうだ。文献で読んだが妖狐族の中でも銀毛の妖狐は生まれる事自体が珍しく、凄まじい妖カを持つという。お前は見事な美しい銀毛だ」
    「…そう言われても、ぴんとこないんだ。俺、ずっと一人ぼっちだから」
     俺の言葉に、鵺は少しだけ憂いを帯びた表情を浮かべた後、
    「なら、私と一緒に暮らすか?私も一人身だ。お前のような同族がいれば心強い」
    と優しい笑みを浮かべた。
    「うん」
     断れる訳がなかった。それは今まで一人ぼっちで生きてきた俺に初めて差し伸べられた暖かく優しいものだったから。
    「決まりだな。なら、まずはお前、変化(へんげ)の術を覚えなくてはな」
    「へんげ?」
    「そうだ。私達妖しは普段は、村里で人間に成りを変えてひっそり暮らしている。祖先の妖しのように人を襲ったりしなくなったからな…人間に化ける必要が出てきたのだ。我々妖しはそうして人間世界に入り込み、人間との間に子を作る。人間の腹からは、完全な人間か完全な妖しかどちらかで生まれてくる。生まれた子が妖しだった場合は、数少ない妖しの子孫だから、妖しの一族で大切に育てる。そうして我々は血を繋いできたんだ。…まぁ、稀に妖し同士で夫婦となり子を成す事がある。そうして生まれた子は強い妖カを持つ。お前はたぶんそうだろうな」
     鵺の話は幼い俺には難しく半分も意味が分からなかったが、取り合えず人間に化ける必要があるという事だけ理解した。
    「でも、俺、変化の仕方分からない」不安になった俺に、鵺は
    「銀毛は黒髪に。耳と尾は引っ込める。鋭い爪と牙も隠す。術にはやり方があるが、取り合えず今日は私がお前に術をかけてやろう」
    と微笑み、俺の額に人差し指で触れると呪文を唱えた。
    「わぁっ!」
     瞬く間に、人間の姿になった俺の全身を眺めて、
    「可愛いではなか。よし、私も変化するとしよう」
     と鵺はクスリと笑い、身を翻す。会った時の武士の姿になった鵺は
    「これから私の暮らす村里に行く。お前は生き別れた弟って事にするからな。くれぐれも村の人間に、正体をバラしてはならぬぞ」
     と声を潜めて告げた。
    「さぁ、行くぞ」
     そうして俺の手を引くと、鵺は歩き出した。
    初めて繋いだ鵺の手は大きくて、暖かかった。

     村里に着くと、鵺は一軒の大きな屋敷の前で立ち止まった。
    「ここが私の屋敷だ」
    「こんな大きな屋敷に一人で住んでたのか?」
     俺は鵺を見上げる。鵺はフッと笑って
    「元は一族共に住んでいたのだがな…今は私だけになってしまった」
    と言った。何処か遠くを見るような目に、俺は胸がチクリと痛んだ。
    「で、でもこれからは二人だ」
     照れ臭かったけど、俺は鵺の手をギュッと強く握ってみた。鵺は
    「そうだな。これからは二人だ」
     と柔らかく微笑し、
    「さ、中に入るぞ」
     と引き戸を開ける。俺は辺りを眺めまわし、庭先の花にくぎ付けになった。
    「紅い花…たくさん」
    「あれは彼岸花だ。緋色が美しいだろ?」
    「うん…好きなのか?彼岸花」
     俺が訊ねると、鵺は俺をひょいっと抱き抱えて、庭に向かった。
    「この彼岸花は美しいが根に毒があるんだ。…妖しはこの毒のある根を食す。人間の魂の代わりだ」
     鵺は、彼岸花を手折ると鼻を寄せる。その姿はまがまがしい程美しくて、俺はゾクリとした。
    「人間の魂の代わりに毒を食べるのか?」
    「人間にとっては毒だが、我々妖しにとっては甘い馳走だ。人間の魂を食すのが禁忌(タブー)になってからは、これが主食だ。人間の魂よりは美味くないがな」
    「人間の魂を食らった事があるのか?」
    「…一度だけ…な」
     肩をすくめて誤魔化すように笑った鵺を見つめながら、俺は鵺がいったい何歳なのかふと考える。見た目は二十四、五歳にしか見えないが、妖しである以上、人間より遥かに長い時間を生きてきたに違いない。
    「鵺はどのくらい生きてきたんだ?」
    「先程から質問ばかりだな…」
     苦笑すると、鵺は空を見上げ、考えるような顔をした。
    「かれこれ、五百年程、生きてきたかもな」
    「五百年!?」
    「妖しの世界では驚くような事でもない。千年を超える寿命を持つ者も中にはいる…不老不死ではないが、覚えるべき術を全て習得し変幻自在に使いこなせるようになった時点で肉体の老いは止まる。まぁ、大概は人間でいう二十から三十代の見た目辺りで止まるが、中には老人のような姿になるまで一人前になれない者も、逆に覚えが早く十代のような若い姿で老いが止まる妖しもいる。だが、見た目は老いる事はなくても、確実に歳はとる」
    「へぇ。俺はじじいになるまで術を使いこなせないなんて御免だな」
     俺がフンと鼻を鳴らすと、鵺は俺を見つめて
    「不比等は頭の回転が速いから、きっとすぐにでも術を操れるようになるだろうな」
     と笑った。
    「…鵺は二十四くらいにしか見えないな。俺もそのくらいで一人前になりたいな」
    「若く見えるという事か?お前ならもっと早くにでも一人前になれるさ」
    「そうかな?」
     俺は首を傾げる。
    「日が落ちてきたな。さ、屋敷の中に入ろう」
     鵺は 俺を再び抱き上げる。優しく逞しい鵺を見つめながら、俺は鵺のような妖しになりたいと思った。

     囲炉裏の側に座り、鵺は言う。
    「明日から、早速妖術の修行を開始しよう。それに、田畑を耕したり、猟にも行かねばならない。忙しくなるぞ」
     パチパチと音をたてて燃える囲炉裏の炎を見つめながら俺は訊ねた。
    「農作業もするのか?」
    「そうだ。我々妖しは彼岸花の根さえあれば他の作物は食べずとも生きていける。だが、人間はそうはいかない。少しでも人間の生活を助ける為に、作物を作り還元する。私の祖父も父もそうしてきた」
    「ふーん。俺、頑張る」
     笑ってみせると、鵺は
    「おう」
     と答えた。


     俺は鵺から多くの事を学んだ。変化の仕方、雲を呼び、雨を降らす術、雷を起こし雲に乗り.空を駆けたり人心を操る術まで…。鵺は自身の術の全てを俺に伝授した。田畑を耕し、猟に出かけ、人と触れ合い、順応し…鵺との生活は日々穏やかに、楽しく過ぎていった。

    ←前のページ 現在 1/3 ページ 次のページ→

    1ページ目に戻る
    ▤ 目次ページに戻る


    お気に入りリストに追加 この作品を応援する

    応援ボタンを押す事で作品の★が増え、作者に「イイね!」を伝える事ができます。

    コメント

    作者紹介

    • 水瀬薫子
    • 作品投稿数:34  累計獲得星数:99
    •  upppiが初めてのBL作品投稿になります。
       今まで他サイトにてNL小説連載していたのでそちらにかかりきりだった分、upppiにあまりイン出来てませんでしたが、8月下旬より本格的にこちらでの活動も頑張りたいと思います(^-^)

      *upppiではイラストメインで活動予定

      *和風、スーツ、けも耳、黒髪、美しい物大好き(´∇`)

      皆様とたくさん交流したいので気軽にコメント下さると嬉しいです

      泣いて喜びます

      只今、イラストリクエスト受付中なのでこちらもよろしくお願いいたします(^-^)/










    • 関連URL
      :

    この作者の人気作品

    • HAPPY VALENTINE′S DAY
      HAPPY VALENTINE′S DAY

      └バレンタインデーですね(*^^*) 記念 関東ではホワイトバレンタインデーになりまし

    • ためしがき
      ためしがき

      └いずれ描こうと思っている物語のキャラの試し描きです もっと柔らかさを出したい… ※お

    • 1ページ目描き直し
      1ページ目描き直し

      └「K×K」の冒頭部分1ページだけ描き直ししてみました。 やっぱり描き直しした方がいいかも…

    • K×K描き直し検討中
      K×K描き直し検討中

      └「K×K」を自分で読み返した所、絵のあまりの稚拙さに恥ずかしさを覚え、また、最近の絵柄と初期の頃

    • K×K(小説版)
      K×K(小説版)

      └マンガ「K×K」の小説版です。 個人的に、人物の心情をもっと深く掘り下げたかったのと、ただ単に

    小説 ボーイズラブの人気作品

    続きを見る