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シリーズ:デザイン部
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デザイン部

作者:黒田銀河

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    雲の上に部長がいた。


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    デザイン部 1536文字

     

    有名服飾デザイナーのA氏は、重度のスランプだった。
     自分は才能が無く、仕事を辞めたいと思っていた。
     そんな時、運悪く車にはねられた。
     意識がなくなった。
     気がつくと、天井からベッドに寝ている自分を見ていた。
    「これが幽体離脱かぁ…」
     突然、雲の上に吸い寄せられた。
     自分の思っている天国とは違う。
     雲の上にスーツ姿の人間がたくさんいた。
    「なんだここは…」
     現実味がありすぎて、まるで通勤街の交差点。
     突然、声をかけられた。

    「君、ここで何をしているんだね」
    「は?」
     声をかけてきたのはスーツ姿のメガネをかけた見知らぬオヤジ。
     「何をしているんだね」は、こっちが訊きたいセリフだよ。
     一体、なんなんだよここは…。
     そのオヤジは内ポケットから名刺を出した。
     『デザイン総務部長』と書かれていた。
     部長は言った。
    「早速、仕事をしてもらおうか」
    「ちょっ!ちょっと待って!」
    「何だね?」
    「僕は、死んだのですか…?」
    「死んだからここにいるんじゃないのかね」
    「いや…あの…ここって、天国ですよね」
    「?」
    「天国って、もっと、何て言うか…死んでからも働くんですか?」
     話は聞いてもらえず、部長は腕時計を見てイライラしていた。
     始業のベルが鳴り響いた。
     流されて、自分はいつのまにかデスクにいた。
     部長が言った。
    「ここの課の事は、山本くんに訊けばいいから」
     山本くんは、メガネをかけた、お堅そうな女性。
     まるで、ミシン作業でもするようなエプロン姿…。
     A氏はため息をついた。
     山本くんが言う。
    「ここは、『デザイン部』よ。うさぎの色をぬるの」
     目の前の画用紙を見ると、うさぎの形だけが描かれていた。
    「これに、好きな色をぬるのよ」
    「僕、スランプでペンを握れないんです…」
    「でも、ここに配属されたんでしょう?知らないけど…」
    「はぁ…」
     嫌々ペンを握った。
     何も描けない。
    「さぁさぁ!回収するぞ!」
     部長に絵を取り上げられた。
    「何も描いていないんですが…」
     山本くんが言った。
    「大丈夫!あれは、白うさぎになるのよ」
     生まれる…ここから生まれるってわけか…。
     少し見えてきた。

     しかし全く描けないA氏は、部長に怒られ、『造形』の課にまわされた。
     ここは、生き物の形を作っているところだ。
     みなパン工場のような作業着にマスクで、粘土をこねる機会の音と、コンベアーがあった。
     たくさんの人がコンベアーを囲んでいる。
     井上くんと言う、若いさわやかな青年が、作業手順など細かく教えてくれた。
      

     ある老人が作業の途中で、何を思ったか、捨てる予定の粘土クズを、いきなり『出荷の箱』に投げ入れた。
     みんなで取り押さえ、課は大騒ぎになった。
     井上くんが言った。
    「あ〜あ!」
     A氏が訊いた。
    「あれ、どうなるの…?」
    「大丈夫。あの粘土クズは、ヒルやナメクジになるだけだから…あのじいさん、昔はすごい仕事できる人だったんだけどなぁ…」
    「君は、どれくらいここにいるの?」
    「僕?…四十年くらいかなぁ…」
     自分より年上だ…。

     それから三カ月が過ぎた。
     A氏はのってきた。誰も下手くそなんて言わない。
     デザイン部に戻してもらい、こだわらない絵を描き続けた。
     形も色も、どうでもいいところが気に入った。
     とにかく描く事が楽しかった。
     下界で体験できないワクワクした感覚。新鮮な感覚だった。
     いきなり部長に肩をたたかれた。
     振り返ると、部長が時計を見ながら言った。
    「時間だ」
     目を覚ますと、病院のベッドにいた。
     事故から、三〜四時間と経っていない。
     家族が泣いて喜んでいた。
     手を見ると、ペンダコができていた。
     事故のショックで変な夢を見ていただけだろう…。
     でも…。

     A氏は外の木々を見た。
     誰が…デザインしたのだろう…?
     そう、考えていた…。

     この世は全て、デザインだ。

     いつか、自分のデザインした生き物に会えるのだろうか?
     A氏は密かに、楽しみにしている。


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    コメント

    作者紹介

    • 黒田銀河
    • 作品投稿数:18  累計獲得星数:29

    • 幼い発想で書いていきます。ふとした非、日常が好きです。









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