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シリーズ:彼は語る
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彼は語る

作者:三塚章

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    イケメン童話作家にインタビューです。彼は、いったいどういった経緯で童話作家になったのでしょうか。どこかが狂った純愛話。最初はインタビュー形式になっているため、お手数ながら縦読み推奨。ようやく規定枚数に達する作品が書けたよ! ※6/6誤字脱字修正。履歴書き忘れた


    登録ユーザー星:15 だれでも星:6 閲覧数:459

    彼は語る 3886文字

     

    アデリーヌの談話室
     毎回、特定のジャンルで活躍なさる方をお招きし、その輝く秘訣をうかがおうというアデリーヌの談話室。今回のお客様は、イケメン童話作家のレオンスさんです。
     ※レオンス=ルースロ ××大学卒業。××年、△童話賞受賞。大学卒業前から童話作家として活躍。どこか悲哀を含みつつも、ほのぼのと温かいストーリーは、子供のみならず大人からも支持を得ている。
    ※アデリーヌ インタビュアーでありラジオのパーソナリティも務める。

    アデリーヌ(以下ア)「初めまして。この度は百話目になる童話『希望の龍の塔』出版おめでとうございます」
    レオンス(以下レ)「ありがとうございます。これも応援してくれるちびっこのおかげです。あ、もちろん、そのご両親も」
    ア「レオンスさんの場合、お母様方からの応援もたくさんもらえるのではないですか(笑)レオンスさんといえば、速筆で有名ですが、なにか早く書くコツでもあるのでしょうか」
    レ「う〜ん、コツというか、僕の場合必要に迫られていましたからね」
    ア「といいますと?」
    レ「貧乏でしたから。駆け出しの頃は、早く作品を書かないと飢え死にしちゃうところだった(笑)」
    ア「なるほど、そんな苦労がベースになっているのですね」
    レ「それに、速筆といっても、お話を作るのにはいつも苦労していますよ。いっつも物置でうんうんうなってます」
    ア「物置? なんでまたそんな所で」
    レ「なんなんですかね。そこが一番落ち着くんですよ。あの埃っぽさや薄暗さが。なんだか、バンパイアみたい(笑)」
    ア「棺の中で執筆するよりましじゃないですか(笑)やっぱり、たくさん作っても没になったりする事もあるんですか?」
    レ「それはもちろんありますよ。最近も、一つ物語を作ったんですが、ダメって言われてしまいました」
    ア「それは興味深いですね。どんな内容なんですか? こっそり教えてください」
    レ「ある少年が、丸いチョコのたくさん入ったビンが棚に乗っているのに気付くんです。子供の手の届かないその棚に、お父さんはいつも大事な物を置いておく。だから、男の子はそのチョコもきっと特別な物に違いないと思うのです。今まで食べたこともないような、甘くておいしい物なのだろうと」
    ア「子供は、そういうのを見たら食べたくて仕方なくなりますよね」
    レ「そうなんです。父親の予想より賢く成長していた少年は、踏み台代わりのイスを持って来て棚からチョコをとってきた」
    ア「分かった! それが魔法のチョコだったんですね!」
    レ「(苦笑して)そういう話だったら没にはなりませんよ。おいしそうなチョコを手に入れた少年は、それを大好きな初恋の女の子と一緒に食べようと思った。誰にも見つからない所で、二人で並んで、しゃがみこんで、こっそりと」
    ア「優しい子ですね。微笑ましい」
    レ「(微笑)少年からチョコをもらった少女は、ためらう事なくそれを食べた。そして、そのまま苦しんで死んでしまった。少年は、知らなかったけど、それはチョコではなく、猫いらずの団子だった。そう、ネズミ退治の薬だったんだよ」
    ア「それは……没になるでしょうねえ」
    レ「無知と、悪気のない好意が時に取り返しのつかないことになるってことを伝えたかったんだけどね(苦笑)さすがにやりすぎたかと反省しました」
    ア「それでは、最後にお決まりの質問を。毎回、その職業に必要だと思う物を、皆様に聞いているのですが、童話作家になるために一番大切な事はなんですか」
    レ「う〜ん、月並な話になってしまいますが、やっぱり大切な誰かに聞かせてあげるつもりでお話をつくる事でしょうか」
    ア「へえ、レオンスさんはどなたに聞かせるつもりでお話しを書いているんですか?」
    レ「自分の娘に、とか言えたら恰好いいんですけどね。残念ながら僕は未婚だし、当然娘もいないので。しかたないので知り合いの女の子が喜びそうなお話を作っています。実際、よくお話をせがまれるのですよ」
    ア「レオンスさんにお話しを作ってもらえるなんてうらやましいですね。さしずめルイス・キャロルとアリスちゃんと言った所でしょうか?」
    レ「いえ、どちらかと言えば千夜一夜物語のシェーラザードでしょうか」
    ア「ははあ、次々にお話しをせがまれるわけですね」
    レ「即興で作る時もあるから、大変ですよ。これも速筆になった理由かも。というわけで、これから童話作家を目指す人は、大切な人に書くつもりで執筆するといいと思います。本当にいい童話は大人だっておもしろいから、愛する恋人にむけて書くのもいいかも知れない」
    ア「童話作家志望の人はメモメモ! それでは今日はお話ありがとうございました。それではこれからもご健筆をお祈りしております」

     レオンスは子供用の本を抱え、物置にむかった。軋んだ木の扉をあけると、カビ臭い空気が体を包む。窓から斜めに差し込む黄金色の夕日に照らされ、宙を舞う埃が魔法の粉のようにきらめいていた。
     赤いレンガ造りの物置には、作り付けの棚があり、その上ではもうとっくに使われなくなった庭いじりの道具や、中に何を入れたか忘れてしまった木箱が埃をかぶっていた。そして、床に積み上げられた古い本。隅には原稿用紙とペンを置いた小さな机。
    「レオンス!」
     呼ばれて、レオンスは顔を上げる。
     湯気が立つように、窓の下の空間がゆがんだ。その歪みは、金髪を腰まで垂らした、六歳ほどのかわいらしい少女の姿となる。半透明の少女は、光の粉で彩られ神々しさすら感じられた。
    「レオンス、お話の続きを読んでよ、早く早く!」
     少女は、レオンスにまとわりついた。
    「そんなにせかさないで、コレット」
     困ったようにレオンスは笑いながら、壁に背をもたれて床に座り込む。少女もその隣にふわりと腰をおろした。とても嬉しそうに。
     彼女の微笑みもしぐさも、まったく変わっていない。レオンスが六歳の時、間違ってチョコそっくりの殺鼠剤(さっそざい)をプレゼントして、殺してしまった時から。
     倒れたコレットにびっくりして、レオンスは慌てて父親を呼びに行った。物置の様子を見た父親は、レオンスに自分がした事を絶対に他人に告げるなと言い聞かせた。
    そして……それだけだった。それから、何も起きなかった。コレットは行方不明という事になって、葬式もなく、レオンスが殺人犯として捕まる事も、父がレオンスの罪をかぶって縛り首になる事もなかった。
     父親は、どこにコレットの死体を隠したのだろう? ひょっとしたら、この物置のどこかかも知れない。
     レオンスは持って来た『ユーンの冒険』を開いた。小さい時から、この本がレオンスもコレットも大好きだ。表紙も綴(と)じ糸もボロボロになってしまった今でも。
    「レオンス! 前読んだ所はねえ、ユーンがお船で海に出た所までだよ!」
     コレットは、無邪気な笑顔を向けてくる。
     事件の数日後、物置でコレットの幽霊に出会ったとき、彼女はなぜ自分が死んだのかをまったく覚えていなかった。そして、泣きべそをかきながらこう言った。
    「あたし、『ユーンの冒険』を最後まで読んでないの。お父さんが買ってくれたご本……ユーンがどうなったか知りたいけど、なんでだろう。ページがめくれないの」
     それから、レオンスは毎日物置小屋に来てはコレットの幽霊に『ユーンの冒険』を読んであげている。レオンスが大人になった今でも。
     もちろん、それほど長い物語ではない。読み始めてから数日後、最後のページが近づくにつれ、レオンスは恐怖を感じるようになった。もし、この物語を読み終わってしまったら、彼女は心残りがなくなって天に召されてしまうのではないか。そうしたら、もう二度と会えなくなる……
     だから、レオンスはお話をでっちあげることにした。話の続きが気になって、コレットが遠くへ行けなくなるように。ずっと、自分のそばで微笑んでくれるように。
     本来だったら、ユーンに倒されるはずだった獣の王は何とか逃げ切り、今も悪巧みに夢中だ。
    そうやってコレットにほとんど即興で物語を作っていくうち、いつのまにか童話作家になっていた。
     自分は、罪深い人間だ。レオンスはかすかな罪悪感とともにそう思った。本来なら、きちんと本を読み終え、コレットを行くべき所に送ってあげるべきなのだろう。けれど、二人で過ごすこの時間が穏やかすぎ、暖かすぎて、どうしても手放す気にはなれなかった。

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    コメント

    • 一次通過おめでとうございます。
      大好きなお話なので、嬉しいです。
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    • ありがとうございます&ゆうさんも一時通過おめでとうございます!そして大好きなお話と言っていただいてホントに嬉しいです!!
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    • 「俺の嫁創作コンテスト」はこれが本命だったのですね!
      気がつかずにスルーしていましたw

      途中で大きく文体が変動しますが、物語の進行上必然性をもっているので違和感なく読めました。
      たくさんお書きになってるだけあって、お上手ですね。
      • 0 fav
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    • 実は密かに出していましたv 文体変えたのは苦肉の策
      (できる限りさりげなくレオンスの過去の伏線はりたい+できるだけ枚数稼ぎたい=対話形式)
      でした……うまくいったようでよかったです。それでは感想&褒めていただきありがとうございました!
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    • 初めまして。
      私も動画を見て読みに来たのですが、罪深いのに優しい空気の流れる素敵なお話でした。
      最後まで読んでみると、レオンスが本当に書きたかったのは没にされたあの話のような気がしました。もちろん、そうなるまでには様々な心の変化や葛藤を経てきたのでしょうが。
      しかし、読者にそう気づかせず「いや、そりゃ没になるよ」と思わせておきながら最後に明かされる真実。お見事!と言う言葉しか出ません!!
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    • 初めまして。感想ありがとうございます。
      >最後まで読んでみると、レオンスが本当に書きたかったのは没にされたあの話のような気がしました。
       おそらく、どんな形でも真実をどこかで告白したかったのだと思います。(自分のキャラに「だと思う」と仮定で言うのもおかしい気がしますが……)
      >お見事!と言う言葉しか出ません!!
      がんばって書いたかいがありました! 
      わざわざ動画から読みに来てくれてありがとうございました!
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    • 漫画のようなのはお嫌いということですが、少女の頃に読んだ少女マンガの一シーンをふっと思い出しました。

      語りすぎることなく、かつしっかりと語られた素敵なお話だと思います。
      主人公はちゃんと葛藤してるので、責める気持ちにはならないんじゃないでしょうか。


      http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/subtop/features/ebooktv/
      ここで紹介されていたのを拝見してから読んだんですが、コメント忘れちゃいました。
      動画の1時間ちょっとあたりのとこです。

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    • 感想ありがとうございました。

      >少女の頃に読んだ少女マンガの一シーンをふっと思い出しました。
       物置というか、書庫みたいなところで小さい女の子が本読んでもらうって、たしかにレトロな世界観の少女漫画にありそうですね。

      >主人公はちゃんと葛藤してるので、責める気持ちにはならないんじゃないでしょうか。
      よかったです。ホッとしました

      わざわざURLはってくれてすみませんでした。というかあわわわ、紹介されてたんですね!! 自分のHN呼ばれたときは心臓止まるかと思いました……
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    • そこに不運な罪はあったけど、「童話」を使われた事によって、物凄く優しく少女と作家さんを受け入れる事が出来ました。
      文章ならではの、面白さがあって、素晴らしい作品だと思いました。
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      • Re 返信

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    • 感想ありがとうございます
      >物凄く優しく少女と作家さんを受け入れる事が出来ました。
      ありがとうございます。冷静に考えると作家さんは結構酷い奴なので、反感買うかも?と思っていたのですが、受け入れる事が出来たとの事でとても嬉しいです。素晴らしい作品との言葉までいただいて嬉しい限りです!
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