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シリーズ:スイーツ文庫『金眼のグアルディア2』
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スイーツ文庫『金眼のグアルディア2』

作者:スイーツ文庫

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    親友ヴェルナを連れ戻すための旅が始まった。ランス達は隣国シュルッテ帝国へと潜入する。痛快アクションファンタジー第2弾!


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    スイーツ文庫『金眼のグアルディア2』 97345文字

     

    「ねえ」
     と、セシルは何かを考えるように細い指を唇に押し当てた。
    「ランスの親友のヴェルナって人、どうしてシュルッテ帝国の兵士になっていたの?」
    「そのことは」
     と、ランスはセシルとアイリーンに視線を送ると口を開いた。
    「歩きながら話すよ」


         *   *   *


     辺りは森に囲まれた一本道だ。シュルッテ帝国が侵攻して来るまでは、この道は商人達が行き交う、シュルッテ帝国とギュルムス王国の貿易を担う道だった。
     だが今は緊迫した状況の為、商人達の行き来は禁止されている。もちろん一般人もだ。
     すぐ近くには川が流れている。清涼な水がすぐ近くの緑深い山から湧き出ているのだ。
     水が豊富なギュルムス王国。こことは反対側のギュルムス王国南部では、錬金などに使う鉱石なども豊富にとれる。
     シュルッテ帝国はその豊富な資源を狙っているという噂もある。だがその前にガザ大陸の統一を目指すシュルッテ帝国にとって、大陸の中央に位置するギュルムス王国は、戦略上、まず最初に攻略しなければならない国でもあるのだ。
     だがそんなシュルッテ帝国の野望など、自分には関係ない。
     ──ただ僕は、平和なギュルムス王国でヴェルナとまた笑ってすごしたいだけ。
     ランスは川の水を手で掬い、それを口に含むと歩き始めた。セシルはランスの横に並び、アイリーンはランスの後ろを守るように黙って歩いている。
    「六年前。ヴェルナと僕はちょうどこの辺りで別れたんだ」
    「この辺りで?」
    「ああ。当時、政府軍と反政府軍の戦いが激しくなった頃だった。彼の妹、ローラは生まれながらに生命を脅かされる病に侵されていた。ヴェルナは内戦で碌な治療も受けられない妹の身を案じて、当時、医療分野で最先端の技術を誇っていた隣国、シュルッテ帝国へ避難することを決めたんだ」
     ランスは言葉を続けた。
    「内戦が終わると、彼がギュルムスへ戻ってくると思っていた。信じていた。だけど現実は違った。彼はシュルッテ帝国の兵士に。そしてローラは、降魔となって戻ってきた」
     ランスの後ろを歩いているアイリーンが口を開いた。
    「だけど、純粋な降魔じゃない」
     セシルは顎に手を置いて首を傾げた。
    「降魔? 純粋?」
     ランスが後ろを振り返った。
    「アイリーン。セシルは降魔の存在を知らないんだ」
    「じゃあ、説明が必要?」
     ランスはそれに無言で頷く。
    「フンっ」
     鼻を鳴らしたアイリーンは早歩きでセシルの横に並んだ。そして口を尖らせながら、
    「しょうがないから、教えてあげるね」
    「な、なによその言い方っ!」
     立ち止まり額をくっつけるように睨み合うセシルとアイリーン。
     また始まったと、ランスはため息をついた。
    「あーもう! セシルもアイリーンも、さっき僕が言ったこと、ちゃんと守ってよ!」
     ランスもこの長い道中の間、疲れたなどと弱音を吐かない代わりに、普段からよくケンカをする彼女達にも、この道中は少しケンカを控えて欲しいと訴えた。
     だがしばらくするとまた、ケンカが始まりそうになる。
     こんな調子で旅は進むのだろうか?
     そんな不安もあるが、とにかく今は前に進むことが大事だ。
    「さあ、歩いて」
     ふたりの背中を押しながら、ランスはため息をついていた。


         *   *   *


     王都ミクスンベルグにある、国王アスカ・ラン・ローリンギルムの居城。
     ここの大会議室では今、国王アスカを議長とした緊急防衛会議が行われていた。
     参加者は防衛指揮官であるミュール・クライ。ルーギック軍事訓練校の教官長、シチリア・アイルハーゲン。そして各領地を治める貴族達が集まっていた。
     前回の侵攻で発覚したシュルッテ帝国軍の魔導兵器。
     その威力を戦場で体感したミュールやシチリアは危機感を募らせていた。
     結果、その対抗策として、ギュルムス王国でも四霊術をベースとした兵器の開発を急ぐことになった。
     だが、シュルッテ帝国の脅威は魔導兵器だけではない。
     降魔。
     古くから大陸に伝わる降魔という存在。現実に存在するかもわからない言い伝えの生物を、彼等は人工的に誕生させることに成功したらしい。
     ──人工的に造られた降魔がここにいる。
     そんな噂が宮殿中に広まったのは昨日のことだった。
     会議中、ミュールはそのことで貴族達から質問を受けた。
    「ミュール卿。今我々のもとには、シュルッテ帝国で人工的に降魔となった少女がいるとの噂があるが、本当なのかね?」
     ギュルムス南部を統治するハングヴェル公爵がミュールに訊いた。
    「ええ。ただ今はもう、降魔ではありません。普通の、十一歳の少女です」
     他の貴族からも声が上がった。
    「戦使様の活躍があったからだろう。だが本当に大丈夫なのかね、ミュール卿。そんな危ない存在を、この宮殿のなかに置いても。突然、また降魔に姿を変えるようなことはないだろうな」
    「大丈夫です」
    「アスカ様に、もしものことがあったらどうするんだね」
    「それは──」
     ミュールが答えようとしたとき、
    「彼女が安全な人間だということは、わたしが保証しよう」
    「アスカ様!?」
     貴族達から声が上がる。
    「それに、わたしは友人からも彼女のことを託されている。今後、彼女はわたしの大切な客人だ。無礼な真似は決して許さん。いいか?」
    「は」
     国王アスカのひと言で、それまで騒いでいた貴族達が大人しくなった。
     傲慢でどこか陰険な貴族達を相手に、十七歳の若き国王は日に日にその統率力を発揮させている。
    (いいことだ)
     ミュールの頬が緩んだ。頼もしく育っていくアスカを見て、とても嬉しかった。
    「どうかしました?」
    「あ、ああ……なんでもない」
     隣に座るシチリアの言葉に慌てたミュール。
     だがシチリアもすぐに察したのか、アスカのほうを見ていた。
    「アスカ様のことですね?」
    (まいったな)
     ミュールは小さくため息をつくと頬を緩ませたまま答えた。
    「そうだ。アスカ様がこうして日々頼もしく成長していくのを見ていると、なんだか嬉しくなってな」
    「そうですね」
     幼いアスカが今日まで歩んできた日々。その過程をミュールはずっと見守ってきた。
     だから表情の変化ひとつで、アスカが今どんな気持ちなのかがミュールにはわかる。
    「ただ、今日はふとした瞬間に寂しそうな表情をするときがある。まあ、その原因はアイツのことだと思うが」
    「ランスですか」
    「ああ」
     ──ランスが旅に出るから、出入国証明書を発行してほしい。
     昨日、わざわざそのことを伝えに自分を訪ねてきたアスカ。
     ランスが向かう先──それは先日、交戦したばかりのシュルッテ帝国だという。
     ランスがシュルッテ帝国へと向かう理由をアスカの口から聞いた。
     それはこの国にとっても、そしてランス自身にも危険な旅だとミュールは感じた。
    『危険ですぞ、アスカ様。本当に彼を行かせてもいいのですか?』
    『いいんだ。彼は必ず生きて、わたしのもとに戻ってきてくれると、信じているから』
     ──ランスは必ず戻ってくる。
     アスカの瞳は揺らぐことのない確信に満ちていた。
     そんなアスカの気持ちに少しでも応えてあげよう。
     ミュールは出入国証明書を発行することを決め、それとは別に、アスカには内緒で旅立つランスとその仲間達に、ある物を贈ることに決めた。
     ギュルムス王国の研究施設、四霊術研究所で開発したばかりの試作品。
     国境地帯には、シュルッテ帝国軍の監視がある。その監視の目を潜り抜けることが出来なければ、ランスが目的を果たすことは難しくなるだろう。
     贈り物が役立つといいが──。
     ミュールは隣に座るシチリアを見た。
    「アイツは、無事に戻ってくるだろうか」
     美しく整った顔に赤い眼帯をしたシチリアが頬を緩めた。
    「ランスのことが、心配ですか?」
     ミュールは鼻で笑いながら、
    「ふっ、アスカ様が悲しむのを、見たくはないだけだよ」
    「ランスは戻ってきますよ。わたしも、そう信じて待っていますから」
    「それは訓練校の教官長としての見解か?」
    「それもありますが、アイツの捻(ひね)くれ具合が、どうも死んだ弟を思い出させることがあって……だからかもしれませんが、信じて待つことにしたんです」

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    コメント

    • 二巻目開始、思ったより早くて嬉しいです。そして、アスカさまのご登場。

      次回も楽しみにしています。
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    作者紹介

    • スイーツ文庫
    • 作品投稿数:17  累計獲得星数:256
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    • 関連URL
      スイーツ文庫:http://sweetsbunko.jp/

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