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シリーズ:スイーツ文庫『金眼のグアルディア2』
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スイーツ文庫『金眼のグアルディア2』

作者:スイーツ文庫

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    親友ヴェルナを連れ戻すための旅が始まった。ランス達は隣国シュルッテ帝国へと潜入する。痛快アクションファンタジー第2弾!


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    スイーツ文庫『金眼のグアルディア2』 97345文字

     

    「あ、あぁ痛いぃ」
     頬を押さえながら後ろを振り返る。
     そこには握った拳をプルプルと震わせているセシルがいた。
    「いったい誰が原因でこうなっていると思ってんのよ、このバカッ!」
    「ひぃ!」
     ──やばいッ!
     ランスは鼻水を垂らしながら匍匐前進でアイリーンの足元に隠れようとしたが、
    「たしかに今後のことも考えたら、少しくらい厳しくしたほうがいいのかもしれないね」
     そう言ったアイリーンはひょいっと、身体を横にずらした。
     そんなぁ! と言わんばかりの顔をしたランス。
     セシルが近づき、彼を上から見下ろす。普段は出さない声のトーンで、
    「そういうことよ、ランス。この旅でお互い、いろいろと成長出来たらいいわね」
     にやりと不気味な笑みをランスに向けた。
     まずは君のその凶暴性を何とかしたいよね? とランスは内心で思いながらも、
    「は、はは、そ、そうだね。君の言う通りだよ」
     そう、当たり障りのない言葉で返すしかなかった。


         *   *   *


     山間の一本道を再び歩き始めた三人は、一路、国境近くにある検問所を目指していた。
     ガザ大陸の季節は夏から秋に移り変わろうとしていたが、一向に涼しくなる気配がない。
     空から降り注ぐ太陽の陽射しは、容赦なく三人の身体を炙り続けていた。
     だがランス達に暑がるようすはない。
     セシルが言った。
    「この外套、とても涼しい感じがする」
     ランスも頷きながら、
    「うん、そうだね。アスカの話だと、これには特殊な四霊術が施されているらしい」
    「そうなんだ。とっても素晴らしいわね。ん?」
     そう言ったセシルがアイリーンを睨みつけた。
    「アンタ、ランスに何をしようと企んでるの?」
     ランスから片時も離れないようにと、彼の後ろをぴったりとマークしているアイリーン。
     外套の隙間から雪のような白い腕が伸びた。
     その腕がランスの首に絡みつく。
    「アイリーン!?」
     ──背中にとても柔らかいものが当たっているッ。
    「ふふんっ」
     額に汗をかき始めたランスなど気にしないそぶりでアイリーンが言った。
    「鼓動が早くなった。幼女の姿より、こっちの姿のほうがランスはいいみたいだね。それに、これみよがしにセシルはランスとたくさん接触しようとするから、警戒しないといけないし、正解かも」
    「こ、これみよがしにって……いつあたしがそんなことをしたわけ!?」
    「いつもランスに触ろうとしていたでしょ。幼女の姿のとき、下から毎回見上げてたからよくわかるもん」
    「それはアンタの勘違いよアイリーン。あたしはただランスのことが心配だったり、さぼろうとしているのを阻止する為にランスに触れているのよ? そこんとこ、勘違いしないでよねっ」
     アイリーンはランスの首に白い腕を回したまま、セシルに意地悪な視線を送る。
    「そんなこと言ってるけど、セシルはランスのことが好きなんだよね?」
    「ちょ、ちょっとっ!」
    「セシルはランスのことが好きなんだよね? ここ、大事なところだから二回言ったんだよ」
    「うぅぅぅ……もうっ!」
     セシルは恥ずかしいのか、ブンブンと両手を振り始めた。だが、
    「い、痛いッ」
     なぜかそれはランスの頭を何回もポカポカと叩くことになり、
    「痛い、痛いよセシル! そりゃあんまりだぁー」
     と、今にも泣きそうになっていた。
     そんなランスの首から白い腕を解いたアイリーンが、彼の背中越しに声をかける。
    「だけど、わたしもランスのことが大好きなんだよ」
    「んあぁぁぁ、えっ?」
     ランスは涙目で振り返る。そして──。
    「ア──」
     ふんわりと包み込むような甘い香りに、彼は言葉を失った。
     彼女の雪原のように白く美しい手がランスの顔を優しく包み込んでいた。
     アイリーンは長身痩躯のいまいち覇気(はき)のない寝癖男に優しい笑みを送り、そっと囁く。
    「ランスとわたしは特別な存在なんだよ。これからもずっと一緒だもんねっ」
    「と、特別な存在って……」
     急に距離を縮め始めた金髪金眼の美少女に戸惑うランス。
    (いったい、どうしちゃったんだよ)
     旅に出てから、急に以前よりも増して身体への接触が多いような気がするのだが……。
     何か意図があるのか?
     それに今日はいつもより増して、ふたりがケンカをする回数が多い。騒がしいというか、どこか、無言になることを避けているというか……。
     まあ、それにしても。
    「ゴ、ゴホンっ」
     彼はわざとらしく咳払いをした。
    「わ、わかったよアイリーン。で、でもちょっと顔が近すぎだと思う。離れようよ」
     そう促す。だが──。
     ──ブチッ。
    『ギュルムスの暴女』と訓練生の間で囁かれているセシルは、猛獣のようにやえ歯をむき出しにしながら、
    「ちょ、ちょっと! アンタ達なにしてんのよもうっ! 離れなさいってばっ!」
     さっ、とふたりの間に割って入る。
    「ランス! なーに鼻の下なんか伸ばしてんのよ、このバカッ!」
     そしてアイリーンのほうを向き、
    「アンタもよ! これから国境を越えようとしているのに、ちょっとは考えて行動しなさいよねっ!」
     そんなセシルの言葉にアイリーンは腰に手を置きフン、と鼻を鳴らした。
    「わたしはランスを守護する存在。ちゃんと考えて行動しているんだよ。ベーだ」
     最後に舌を出した金髪金眼の美少女。
     ピクピクッ、とセシルの眉が動いた。
     喉を唸らせてアイリーンにビシッ、と指を差す。
    「そ、そんな抱きつくような行動は打ち合わせ……じゃないや、どこが考えて行動しているっていうのよ!」
    「こうしてたくさん触れ合うことで、ふたりの絆を深めていくんだよ。セシルには関係ないことだよ」
    「関係あるでしょ!」
    「まあまあ」
     と、争いの根源であるランスが背中に汗をかきながら仲裁に入る。
    「さ、さっきも言ったけど、こ、ここでケンカしても先に進めないと思うから……まあ、どうやら原因は僕のことらしいから、何とも言えないけどね。だけど──」
     と、ランスは真剣な表情で言葉を続けた。
    「一刻も早くヴェルナを見つけたいんだ。彼のことが心配なんだ。これから先、僕もグダグダと弱音を吐いたりしないから、君達も、なるべくケンカをしないでいて欲しいな」
    「ランス」
     彼の真剣な表情にセシルは頷いた。
     一方のアイリーンはその豊かな胸に手を置いて、
    「セシルが絡んでこなかったらね」
    「絡んでないわよ」
     ちょっとしたひと言ですぐケンカを始めてしまうふたり。
     そんなふたりに気をつかいながらも、とにかく今はギュルムス王国を抜け、シュルッテ帝国へと入国しなければならない。
    「これから検問所へと向かうよ。夜のうちに国境地帯を抜けたいからね」
     セシルが訝しげな表情でランスを見上げた。
    「ねえ。国境地帯にシュルッテ兵はいるのかな?」
    「たぶん、ね。だけど、もうじき夜になる。夜だったら日中よりも行動しやすい。隠密行動には最適だ」
    「そうね。でも、もしも敵兵に見つかったらどうするの? 戦うの?」
     ランスは首を横に振る。
    「逃げる。今は両国ともピリピリしている状態だからね。仮にこちらが反撃をしてしまえば、ギュルムス侵攻の口実を与えてしまうことになるかもしれない。そうなってしまうと、僕達の行動でアスカに迷惑をかけてしまう。だから、出来れば今は、戦闘は避けたいと思っている。でも──」
     とランスは一度言葉を切って、
    「もし、どうしても戦闘になるのであれば、敵兵を皆殺しにするしかない。逃走されて本営に連絡されては、後々面倒なことになるから」
     セシルが一瞬、身体を震わせた。
    「皆殺しって──なんか、その言葉だけで背筋がザワザワする。嫌な感じ」
    「ああ。僕だって本当は戦いなんかしたくはないよ。人を殺すのはもう、嫌だから──だけど、そうもいかない──」
     戦いたくはない。人が傷つき、倒れていく姿など、もう見たくはない。だけど戦わなければならない。さらわれたヴェルナを救う為に。そして、サマエールを倒す為に。
    「僕はサマエールの息の根を止める。絶対に奴を逃がさない。そしてヴェルナを助け出すんだ。必ず」
     ヴェルナを連れ去ったサマエールは黒い霧の降魔となった。どこかで彼の息の根を止めなければ、これから先、ギュルムス王国に明るい未来はないような気がしていた。

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    コメント

    • 二巻目開始、思ったより早くて嬉しいです。そして、アスカさまのご登場。

      次回も楽しみにしています。
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    作者紹介

    • スイーツ文庫
    • 作品投稿数:17  累計獲得星数:240
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    • 関連URL
      スイーツ文庫:http://sweetsbunko.jp/

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