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シリーズ:グリーン・アイ vol.7
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グリーン・アイ vol.7

作者:織リ子4

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    神保町で書店を営む南由汰のところへ行方不明の少年たちを探して刑事が訪ねてきた。
    織部と名乗った刑事は、少年たちの失踪に由汰が関与しているのではと疑いの眼差しを向けてくる。織部は同性愛者に対しても偏見を持っており、由汰は侮蔑な態度をとる織部に嫌気がさしながらも、一方でそんな織部を意識している自分に戸惑う。ある夜、不可解なメールが由汰のもとに届き、この事件が自分の過去の出来事となにか関係があるのではと思い始める。それを決定づけるように宅配便で不気味なビスクドールが届いて……。


    登録ユーザー星:3 だれでも星:3 閲覧数:90

    グリーン・アイ vol.7 12922文字

     

    「平気だから、もう本当に」
    「本当に?」
    耳元で問いかけられて小さく頷く。
    「頼むから、手を離してくれ」
    何度目かの懇願に、だが相手はなかなか承服してくれない。
    「南さん。こうされてるの、嫌ですか」
    「嫌って言うか……分かるだろ」
    いい加減。
    「俺は別に気にならないですよ」
    だから、馬鹿なのか?
    「気になるんだよ、僕がっ」
    なんの押し問答なのだと、半ば呆れ顔で隣の男を仰のけば、ふらつく由汰の肩を支えてくれていた吉武がなおも気にしなくていいのにと言いたげに形のいい両眉をくいっとあげて首を僅かに傾げてみせてから、けれど、ようやく納得したふうにひょいっと一つ両肩を上下してみせた。
    「そしたら、俺、そこのメイクルームで待ってますね。……本当に平気ですか?」
    平気もなにも、トイレに用を足しにきて、酔ってふらついているからと言ってイチモツから全てを放尿し切るまで横で、あるいは後ろで支えていてもらうことなど到底論外で、仮に立っていられない程であれば早々に個室のトイレを使用するまでだ。「いいから、ありがとう」早くあっちに行けと抗議めいた口調で言ってみせれば、
    「分かりましたよ。退散します。その代り、なにかあったら叫んでくださいね」
    大きな声でね! と両手をあげて降参のポーズをとりながらけろりと笑んであとずさるようにトイレ出口横のメイクルーム兼フィッティングルームへ消えていった。
    山田と別れたあとすぐに声をかけてきた吉武と自己紹介も含めながらカウンターで案外に楽しい時間を過ごした由汰は、吉武がフィッティングルームへ消えたのを確認すると、酩酊した意識に足を取られないよう慎重にズボンのチャックを下ろす。気を抜くと後頭部を見えない磁石で後ろへと引っ張られかねない。
    織部よりも、もしかすると上背がありそうな眦の少し下がったハーフ顔にはおよそそぐわない吉武と言う名。
    吉武とだけ名乗った男に、尋ねれば母親がデンマーク人で父親が日本人だと告げられた。髪色と同じくグレーがかった目が、どこか一面銀世界の雪に覆われた静謐な森の中で、群れを率いる高貴な狼のそれのようで凄く魅力的だった。
    それなのに名前を聞けば吉武だ。なんとなしに気が緩んだ。
    こう言った刹那的な場所では互いにフルネームを名乗らないものなのかもしれないと、由汰も南とだけ名乗っておいた。
    一杯おごるからとカウンターに着くなり過去にバーテンダーのバイトをしていたと言う吉武は、知り合いとおぼしきカウンター越しのバーテンダーに二言三言いうと、慣れた手つきで自らカウンターに入り由汰の希望するお酒を作ってくれたものだから、なんとなしに優越感に浸って多分少し浮き足立ちながらペースも考えずに久しぶりのアルコールを堪能したのが良くなかったのかもしれない。
    勿論、初めての場所で初めての相手に緊張していたとこもある。
    糖質制限を考えると、飲めるお酒はどうしたってアルコール度数の高い蒸留酒になってしまう。
    お酒はわりと好きだった。病気になる前はウィスキー好きの三千雄ともよく飲んだものだ。
    由汰は一杯目にギムレットを。ライムの酸味が効いたパンチのある味は景気付けにはもってこいだった。二杯目にはマティーニを。立て続けにジンベースのカクテルを二杯あおり、しかも飲酒約一年ぶりとあって二杯目のマティーニは見事に由汰の酔いにぐっと拍車をかけた。これはまずいと頭の隅っこで警鐘を鳴らす理性にかろうじて従って、三杯目はジンリッキーをお願いした。
    だが、アルコール度数が低いカクテルとは言えベースはジンだ。ジンライムに炭酸をまぜただけの、グラスの底に沈んだライムをマドラーで潰しながら味を変えつつ飲むだけの。されど――である。
    三杯目に入ってからコップの中のライムをマドラーで潰す作業が徐々におろそかになり、どうも視界が狭まってきて見えない磁石に上体が引き寄せられるように前へ後ろへと揺れ始めた。意識して焦点を合わせようとしても否応なしに四方から壁が迫ってくるように視界を縮小する。
    加えて、心なしか体の奥底がわずかに火照るような感覚も――。
    気持ち悪いと言うものではなく、どちらかと言えば、いや、むしろ心地が良かった。ウォーターベッドの上で柔らかな毛布に包まれながら身を委ねているような。今日日まれにみる心地良さ。自然と表情も綻ぶ。
    フワフワしながらも吉武との会話は楽しく中断するのを惜しんだせいで、自己の体調管理がおろそかになったのは反省すべき点だ。
    織部が知ったなら、何と言うか……。
    自己管理がなっていないと、いつかの夜みたいにちゃぶ台を拳で叩いて怒ってくれるだろうか。
    意識はかろうじて保っていたものの、血中には完全に酔いが回ってしまいライムを潰すマドラーをグラスに放ってカウンターに頬杖ならぬ額杖をついて左右に揺れ始めたものだから、これではいかんと眠気覚ましにトイレに立ったものの心地よい酩酊感に平衡感覚を奪われ足取りは覚束無い。
    嫌な顔一つせずに補助を申し出てくれた吉武にありがたく甘えてトイレまで来たのが今だ。
     なんとか用を足し終えて洗面台に凭れるようにして手を洗い、壁伝えに出口手前のフィッティングルームまでくると、一段上がった縁に足を取られたところで「おっと」と長い腕に支えられた。
     恥ずかしいと思う理性はとうに遠くへ去っていた。ありがたく腕にしがみついてゆったりとした大きなソファーに腰を下ろす。
     正面に鏡台が幾つか並んだ六畳ほどの空間は二人を除いては無人だ。
     両膝に肘をおいて項垂れるようにして座っていると余計に酔いの渦に飲み込まれそうで由汰は上体を深く背もたれに預けて足を投げ出した。
    「……なんだか、お楽しみの前に寝ちゃいそうですよね」
     一瞬、隣でほとんど消え入りそうなほど小さな声で吉武が苦笑まじりに呟くのを聞いて内心で眉を上げた。――お楽しみ? 多分、そんなような言葉を。
    この後なにかクラブ内で催しものの予定でもあるのだろうか。
    うっすらと目を開け間接照明に照らされた天井と壁をぼんやり眺めながら、由汰は無意識にシャツの襟首に指を入れて引っ張った。
     体が……熱い。
    「熱いですか?」
    「え」
     熱にうかされたような虚ろな眼差しで隣の吉武に横目だけを向ける。
    「もしかして、火照ってる感じ?」
    「そう」
     まさに火照ってる感じだった。
     低血糖や高血糖の時のそれとはまた違う。
    熱いと言うのが正しいのか、息が上がりそうな――実際は上がってはいないが――何とも言えない体の芯のあたりからじわじわとくるような火照りに頭がぼーっとなってくる。
     怠くはないが、お酒特有の体の重さとフワフワした眠気があった。
    「一応……測ってみるかな」
     ソファーの背もたれに後頭部を預けルーズに腰掛けたまま由汰は腹の上にワンショルダーバッグを置くと手を突っ込んで測定器をもぞもぞと探し始めた。
    「南さんてお酒弱いんですか?」
     と、頭上から振ってくる吉武の声にバッグの中で手を忙しなく動かしながら目だけを上げた。斜め上、後頭部を背もたれに押し付けてルーズに座っているせいか、隣できちんと腰を下ろす吉武を斜めに見上げることになる。
    「あー、うん。多分、久しぶり過ぎたから」
     飴玉やブドウ糖などが散乱しているバッグの中を日ごろからもっと整理整頓するべきだなと反省しながら答える。
    「一年ぶりくらい……あ、あった」
     ようやく探し出した測定器を片手に「アルコールへの免疫が下がったのかも」とぼそぼそ呟きながら指にあてがる。
     おや? と覗き込んでくる吉武に「測定器だよ」と教えてやる。
    「血糖値を測るためのね」
     なんて言ったところで今時の若人にどこまで分かるか。
    「糖尿病ですか」
    「そう」
     指にちくっと僅かばかりの慣れた鈍痛を感じながら軽く頷く。
     とは言え、糖尿病くらいはさすがに知っていて当然か。
    「一型の」
     と言ったら話はまた別だろうけれど。
     黙って測定器のディスプレイに数値が表示されるのを待っていると、隣で吉武も半身を由汰に向けながら背もたれに片腕を乗せて測定器を覗き込んでくる。
     ピピっと機械音をたてて数値が表示される。それを見てほっと胸を撫で下ろす由汰より先に、

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    コメント

    • 大丈夫です、いつまでも待ってます(^_^)v
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    • 久しぶりにupppiを見に来たら、新作が‼️狂喜乱舞しました(笑)
      勝手にfujossyもフォローしてしまいました。
      続き楽しみにしてます😃
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    • のーとさん!
      お久しぶりです。fujossyさんの方で同名の方がフォローして下さっていて、\(°Д° )/ハッ!! もしや!と思っていたんです。やはりのーとさんだったんですね(;´༎ຶٹ༎ຶ`)長いこと時間があいてしまったにも関わらず覚えていてくれて…。心底嬉しくて本当に感謝です。upppiさんにグリーンアイを試験的にアップしたんですが、申し訳ないです😣読んで頂いたのに、もしかしたらそこそこ全体の内容が変更になる可能性が大なんです。キャラ設定は変更しませんが。そのためfujossyもエブリスタも今しばらくグリーンアイはクローズしているんですが、upppiをクローズし忘れました💦
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    • 踊り子4さん‼️ありがとうございます😆✨ウッピーさんで グリーンアイ最後まで書いていただけるとの事、めちゃくちゃ嬉しいです❗️楽しみに読ませていただきますね😄💕
      fujossyさんの方 さっそく観に行かせてもらいましたが、まだよく使い方が分からなくて💦 私が観に行ったの 気がついてもらえたのですね😊名前 同じで登録させてもらったからかな?
      fujossyさんの方でも ご活躍応援させていただきますね😆✨
      早く使い方慣れないと…💧
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    • chiru♪さん、こんなわたしの道端にでも捨てられたって文句の言えないような文章を根気強く応援して下さってこちらこそ本当にありがとうございます。
      fujossyさんですが、実はわたしもまだよく使い方を網羅できていません:( ;˙꒳˙;):
      upppiさんには無いような評価の付け方などが導入されている模様で💦
      それでも、chiruさんが来てくださったのは分かりましたので、フォローさせていただきました。ご迷惑だったらすみません。今後もどうか気長にお付き合いください(*ˊᵕˋ*)
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    • 踊り子4さん‼︎。゚(゚´Д`゚)゚。 もうウッピーさんから居なくなったのかと心配しました(´;ω;`)
      別のサイトで続けておられたんですね!
      ぜひ そちらにも行かせていただきます!
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    • chiruさんお久しぶりです!
      お元気ですか?
      覚えていてくれたなんて感激でここだけの話、少し泣きそうでした。
      一年あいてしまったし、続きを投稿したところでもう忘れ去られてしまって誰も見ないだろうと、半ば落ち込んでいたところです。それと、さっそくfujossyさんのところにも来てくださってありがとうございます( ᵒ̴̶̷᷄௰ᵒ̴̶̷᷅ )今日日、最高に士気が上がりました。
      fujossyさんのところは先月から利用させてもらっています。一年ぶりに再起すべく新天地開拓しようと思いまして。upppiさんの方でもグリーンアイが完結するまでアップするつもりです☆
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    • 今月中にfujossyさんのほうでグリーンアイの最新章を投稿する予定です。今回upppiさんにアップしたものプラスその続きの織部とのやり取りを書き足したものになるかと思います。
      もしよろしければまた是非お暇な時にでも覗いてみてあげてください。
      コメントくださり、本当にありがとうございました*¨*•.¸¸♪
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    • https://fujossy.jp/users/oriko_4/mine

      ちなみにこちらにはまだ最新章はアップしていません。
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    • お久しぶりです。織リ子4です。
      約一年ぶりのグリーンアイ最新章の投稿ですが、upppiさんですとシリーズ追加が不具合でもあるのか出来ないことと、どうしても段落が消えてしまうなどがあり、今後の投稿はfujossyさんのサイトをメインでやっていこうと思っております。
      気が向きましたら覗いて見てください。
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    作者紹介

    • 織リ子4
    • 作品投稿数:24  累計獲得星数:179

    • 織リ子4です。

      ファンタジー、BL小説など。
      頑張ってコンスタントにupしていけたらと思ってます。

      多少の誤字脱字、改行のずれはご勘弁ください。
















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