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シリーズ:■彼女と失くしたハッピーエンド
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■彼女と失くしたハッピーエンド

作者:Hiro

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    余命三ヶ月の美人な彼女と、つき合いだして数ヶ月しかたっていない彼氏の、ほんのり悲しげなお話です……たぶん。
    喜んでいただければ幸いです。
    ご感想・ご指摘などはお気軽にどうぞ。

    ※読者様には自由な想像をしてもらいたいため、一部ご回答できない質問もありますが、ご了承ください。


    登録ユーザー星:3 だれでも星:0 閲覧数:200

    ■彼女と失くしたハッピーエンド 7896文字

     

    「お兄ちゃん、体調悪いって本当!?」
     取り乱した亜矢が、一足飛びに近づき僕の額に小さいな額を当て熱を測る。手は脈をはかるように右手を抑え、真剣に時計と一緒に数を数えていう。
     妹の動揺から自らの過ちに気づく。
     ゾンビに噛まれれば100%ゾンビウィルスに感染する。だが感染ルートはそれだけに特定されていない。
     現に美咲もゾンビと遭遇してないのに感染している。感染源と一緒に暮らしているのだから、他の者よりお移りやすいと思われるのも仕方ない。
     だからこそ、美咲と一緒に僕も検査を受けていたのだ。それを体調不良のためサボったと言えば、亜矢がこれほどまでに取り乱すのも当然だ。
    「大丈夫だよ、栄養あるもの食べて静かにしてればなおるて」
    「もうお兄ちゃんはこんなとこにいちゃダメ! いまなら間に合うかもしれないから」
     人の話を聞かず、亜矢は強引に僕を連れ出そうとする。必死の力は疲れた僕の力を凌駕した
     それをピンチと思ったのか、美咲が、妹の身体をはじきとばした。幸いにも手加減されてはいたが、それでも身体の小さな妹は壁まで突き飛ばされる。そして、その額から一筋の血が流れた。
     頭を強く打た様子はない。多分どこかでこすっただけだろう。だが自分の流血に気づいた妹はすかさず大声をあげた。
    「誰か110番通報してください。ここに人を傷つけた危険なゾンビがいます!」
    「やめろっ」
     最初から企んでいたのか、それともいま思いついたのか、亜矢は僕から美咲を奪う好機を逃さなかった。それも最悪の手で。
     その叫びは静夜を崩し、あたりをザワつかせはじめた。
    「なんてことを……」 
     身内とはいえ人に怪我を負わせれたゾンビに情状酌量の余地があるとは思えない。
    「お兄ちゃんこそ、いいかげん目を覚まして。その人はもう死んでるんだよ。ゾンビなんだよ!」
    「ちがう、美咲は僕の彼女で、余命だってちゃんと残ってる」
     涙目で訴える彼女に必死に抗弁するが、亜矢はそれを聞き入れてはくれない。
    「それだって来月までの話じゃない。美咲さんがいなくなることはもう決まってることなんだよ。お兄ちゃんは彼女がいなくなってからどうするつもりなの? まさか心中するつもりじゃないよね?」
     口早に糾弾する言葉はどれも的確で、僕は言葉も返せない。
    「だからね帰ろ、あたしと一緒に。それでさ、来月のクリスマスは盛大に楽しもうよ。嫌なこと全部全部忘れちゃうくらいに」
     一瞬、その暖かみのある光景が脳裏を走る。日に日に元の姿を失っていく美咲を見続けるのに、苦しみがないといったら嘘になる。それでも僕は彼女を失いたくなかったが。例え心中同然の結末を迎えるとしても、可能な限り彼女と一緒にいたい。
     だがら、僕は短い言葉を絞りだす。
    「ごめん」と。
     そして、わずかな荷物を手に美咲にしがみつくと、それまで彼女と暮らしていたアパートから逃走した。

     一晩電車を乗り継いでたどり着いたのは山に近い温泉宿だった。終点の駅近くにはしっかりとした宿があり、不自然ながらもマフラーで口元を隠した美咲とそこに泊まった。
     認知度は高くても発生件数が少ないゾンビ病に旅館の人は気づかなかった。
     そして翌朝からは、僕と美咲はいくつかの道具を買いあさると、なるべく人に迷惑をかけないよう山奥に居住可能な空間をもとめた。
     美咲の怪力はとても頼もしく、道具も持たずに鳥を捕まえてくる。
     それに両手を合わせてからナイフで捌く。つたないナイフ裁きは、食べられる箇所を余分に減らしてしまい、自分の為に死んでもらった鳥に悪く思う。
     これなら、そのまま丸焼きのほうがよかったのかもしれない。いや、やはり内臓くらいはちゃんと外さないとダメだろうか。しっかりした知識がないと、何をするにも落ち着かない。
     GPS機能のついたスマホは、逃走の途中でトラックの荷台に無断で置かせてもらった。追跡しにくるだろう人たちを混乱させてくれることを期待している。
     情報を得られなくなったんは不便だけど、同時に開放感も味わっていた。

     夜になると、山は安アパートとは比べものにならないほど冷え込んだ。
     ふたりで毛布にくるまり朝が来るのを待つ。低いハズの美咲から温もりを感じたような気がした。
     だが、その時間は長くは続かなかった。
     僕らは出会ってしまったからだ。
     人間の血肉を望んで食らう、本物の怪物に……。

    「うーうー!」
     不意に美咲がうめきに、浅い眠りについていた僕は瞼をあける。
     意識は鮮明。だが、太陽はまだ昇っていない。
     あたりを警戒するけど、人の気配は感じない。美咲は何をしたいのか。だが、彼女の先にある闇をじっと見つめていると、何かが動いている事に気づいた。
     一見すると、スーツ姿で遭難し、疲労した男性にみえる。でもそんな人間が無言で僕らに近づいてくるわけがない。

     それは間違いなくゾンビだった。
     それも拘束具がつけられていない、人を襲えるタイプの。

     こういう事態が起こる可能性は以前より示唆されていた。
     しかし、年間10名と発症しない奇病の検査を全国民に徹底させることはできなかった。それもゾンビウイルスは3ヶ月で発症してしまうのだ。年に4度もやって、ほとんど見つかる可能性がないのなら、政府もそれを義務化できないだろう。
     だが、その何万分の一かの不幸が、こうして僕の目の前に現れた。
     うつろな目は微かな月明かりすら反射していない。にも関わらず、その目と鼻は僕をしっかりとらえていた。
     僕と野良ゾンビその間に、まだ人間である美咲が割って入る。だが戦いになれば体格適にも半ゾンビ的も美咲が不利になる。
    ――戦わせちゃダメだ。
     そう思った僕は野良ゾンビを刺激しないよう、小さく彼女につぶやいた。
    「美咲、お願いがある」
     今にも挑みそうな彼女を抑え、よっつに畳んだ紙をわたす。
    「キミにしかできない事だ。これを妹に……亜矢に渡して欲しい」
     僕の言葉に美咲は明らかな困惑を示した。
     野良ゾンビである男のねらいは人間である僕にちがいない。美咲がこの場を去れば、追ったりはしないハズだ。
     それにもし僕だけで満足しなかったら……そんな不安が無謀とも呼べる勇気を奮い起こさせた。
    「頼む……」
     繰り返す言葉に、彼女は折り畳んだだけの紙をうけとった。そして毛布を僕にかけると背を向け、山を急いで下った。
     野良ゾンビはうつろな視線で美咲の後ろ姿を追ったが、すぐに僕へと戻す。
     僕は手にしたナイフを構え、生まれて初めての殺し合いに唾を呑んでいた。

     あらためて、野良ゾンビの様子を見る。
     朽ちかけたスーツに、これまでずっと山で過ごしていたのだろうか、その顔や手足は泥に汚れている。
     そしてそのゾンビは、美咲と違って、その顔の下半分をマスクで覆っていない。
     ウイルスに感染しながらも、それを自覚しないまま過ごした結果、気づいたときには手遅れで、医者にもかからず逃亡するケースがあるという。
     おそらく、この男がそうなんだろう。
     この男は山でひとりでいて何をしていたのか。それとも誰かと一緒にいたのか。だとしたらその人は……。
     疑問に答えはでず、ゾンビは僕との距離を縮めはじめる。

    ――美咲ごめんな。
     僕にできるのは、時間稼ぎくらい。こいつが僕を喰らい尽くすのにどれだけ時間がかかるかわからない。その間に美咲にいってくれるのを祈る。
     手紙を渡してくれと願いはしたが、いまの彼女でアパートまでの帰還は難ししハズだ。
     あるいは、逆に警察に追われることになるかもしれないが、いまゾンビと戦うよりはマシだろう。

     目の前のゾンビが薄暗闇の中ゆっくりと、僕に近づいてくる。痛覚の鈍いゾンビにナイフによる攻撃は効果が薄い。されど代謝が低い事を考えれば、受けた傷は早々に回復しないハズだ。それでも生存力は非常に高く、指令機関である頭部を破壊もしくは切除しなければその動きを止めることはない。
     無頭ガエルならば、頭部なしでも脊髄反射で動くこともあるが、人間をベースとしたゾンビの神経機関はそこまでシンプルではない。
     そこに勝機を見いだした僕だったが、ゾンビとの争いは戦いと呼べなかった。圧倒的な速度で翻弄され殴り飛ばされる僕。

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    コメント

    • 2~3万文字案件だったかなぁと反省中。
      推敲不足は、時間不足です(涙
      あとは、ラストバトルが本当に必要だったのか、作者的に判断できません(汗
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