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シリーズ:視線の先
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視線の先

作者:高山おみ

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    高校生の二人のお話。青春恋愛。短編です。


    登録ユーザー星:2 だれでも星:1 閲覧数:324

    視線の先 6089文字

     

    桜並木の下、同じ制服を着た者たちがそれぞれに坂道を登っている。

    温暖化のせいか色づくのも早ければ、散るのも早い桜は、もう半分ほどが葉桜となっていた。

    情緒がないなあ、と桜を仰ぎ見ながら坂道を歩く真之の横を、元気な学生が自転車を立ち漕ぎしながら通り過ぎる。

    「元気だなぁ……」


    そう呟くと、後頭部をバシっと叩かれた。

    「何すんだよ、忍っ!」

    横を歩く友人を睨みつけながら叫ぶ。


    「ジジ臭いこと言ってんなよ」

    余裕の笑みを浮かべた忍が、やり返されまいと数歩先に進む。

    「ジジ臭いっていうな!」


    忍の肩に提げられた鞄を思い切り引っ張る。

    「うわっ」

    その途端危うく後ろに倒れそうになった忍が体勢を立て直して真之を睨む。


    「あっぶねーな、お前」


    「ふん。ざまーみろ」


    してやったりと微笑んだ真之が、また坂道を歩き出す。

    そんな真之に「ちっ」と舌打ちをした忍は、友人の後をついて歩く。


    「なあ」


    しばらくして忍が前を歩く真之に声をかける。

    「んー?」


    「あのさ……」



    「なんだよ?」


    前を向いたまま聞き返す真之の後頭部を見つめながら、忍は言い淀む。


    「どうした? 忍」


    そんな忍が気になったのか、真之が立ち止まって振り返った。


    「うん……あのさ、昨日の放課後のあれ、どうなった?」


    「あれ?」


    忍の問いにしばし考え込んだ真之が、ああ、と頷く。


    「あの女子な」


    忍は小さく頷いた。


    昨日の放課後、二人で帰ろうと下駄箱の前で靴を履き替えているところを、忍が見たことのない女子に呼び止められ、真之はその女子と一緒にどこかへ消えたのだ。


    それは珍しい光景でもなかった。


    真之は身長も百八十近くあり、短髪で厳つい躰つきをしているが、その顔は精悍さもあるがその表情はいつも穏やかで、みんなに優しい。



    そんな真之がもてないはずはなく、月に一度は女子に呼ばれてどこかへ消えていく。



    昨日もそんな見慣れた日常の一コマだったのだ。



    「断ったよ」


    そんな事かと真之が笑い、再び忍に背を向けて歩き出す。



    「なんで?」


    忍はそんな友人の数歩後をついていきながら、疑問を投げかけた。


    「なんでってーー」



    真之は前を向いたまま首をかしげる。



    「なんでだろうなあ」



    それはこっちが聞きたいんだと頭の隅で考えながら、忍は思ってもいないことを口にした。


    「けっこう可愛かったよな。一年?」


    「そうらしいよ。名前は……忘れた。可愛かったかな? あの子」


    桜の花びらがはらはらと真之の頭に降りかかる。


    散り際の桜はフラワーシャワーの如く風に舞うのだ。


    先月あった姉の結婚式で見たフラワーシャワーというものを思い出しながら、忍は桜と真之の後頭部を見つめる。



    「たぶんね」



    「なんだよ、それ」



    笑いながら真之が校門をくぐる。それについて行きながら、忍は周囲に気付かれないようにほっと息をついた。



    「何? 忍、気に入ってたの? あの子」



    何とは無しに真之が忍にそう聞いてくるので、忍は見えてもいないのに首を横に振った。


    「違う。そんなんじゃない」



    「ふーん」



    三段の階段を上がり、校舎の中へと入る。一番右端から三番目の下駄箱の前にいくと、屈み込んで脱いだ靴を手に持った。



    横目で真之が上靴を取り出すのを見ながら、忍も同じように上靴を出して履いた。



    「そういえば昨日のドラマ見た?」



    さっきまでの話など無かったかのように、真之が横を歩く忍に話しかけてくる。


    忍はそれに適当に相槌をうち、話を合わせながら一緒に教室へ向かった。



    桜の花びらが、廊下にまで舞いこんでいた。














    がやがやと騒がしいのはもちろん休み時間だからだった。


    窓際の席で机に肘をつきその手に片頬をのせてだらしなく足を伸ばして座っているのは真之だ。


    後ろも前も横も空席になっていて、真之の話し相手はいなかった。別にそれが寂しいわけでもなんでもない。


    教室の反対側の席では何が楽しいのか随分と盛り上がっていた。男ばかりのその中心にいるのは忍だ。


    一人だけ椅子に座り、その周りを囲うように男子生徒が三人立っていた。


    時折聞こえてくる忍の笑い声に、真之は何となく面白くないものを感じていた。


    ガキでもあるまいし、独占欲かよと自分で突っ込んでみるが、もちろん答えはでない。



    そこばかり見ているのも癪な気がして窓の外を眺めてみる。


    今日は快晴で雲ひとつない。


    眼下に広がる運動場ではちらほらと体操服を着た生徒が動いていた。


    開けた窓から入ってくる風は心地よく、眠気を誘う。


    思わず机に突っ伏した真之の耳に、聞き慣れた声が途切れ途切れに聞こえてくる。



    そう言えば朝、忍はなぜあんな事を聞いてきたのか。


    今までだって女子に呼び出されたことはあったが、あんな風にその後のことを聞かれたのは初めてだったのだ。


    あの忍もとうとう彼女が欲しくなったのだろうか。


    忍は真之ほどではないが、身長もそこそこある。躰つきは細いが手足が長く、ゆるく癖のある明るめの髪と肌の白さから、一部の女子からは王子様と呼ばれている事を真之は知っていた。


    榛色の瞳と切れ長の眦、すっと筋の通ったような鼻梁とうっすらとした淡い色の唇。


    どこからどう見ても忍の方がハンサムなのだが、なぜか忍は女子に告白されたことがないらしい。



    その理由を考えてみると、自分より綺麗な顔の彼氏は嫌だとか、高嶺の花だとか、そんなところなのだろうと真之は勝手に決めつけた。



    「授業はじめるぞー」



    いつの間にやら教師が教壇に立っている。顔を上げた真之が教室内を見回すと、ほとんどの生徒がもう席についていた。



    真之は机の中から教科書とノートを取り出しながら、ちらりと廊下側の席を盗み見た。



    そこには忍の端正な横顔があり、その向こう側には桜の木の上の方が見えていた。


















    カクっと手から顔が落ちる。

    はっとして周りを見ると、自分の部屋だった。


    寝ちまったか、と忍は指で目を擦った。


    机の端に置いた電子時計を見ると、11:47の文字。


    「やばっ」


    とうに就寝時間を過ぎている。同室の嵯峨野はすでにベッドの中らしく、部屋の電気は消され、机のスタンドライトだけが煌々と点いていた。



    はーっと息を吐き、忍はスタンドの明かりを消すと、二段ベッドの上に静かに上った。


    布団に横になるとギジリと音がなり、下から「うーん」と寝返りを打つ声がする。


    思わず息を潜めた忍は、じっと動きを止めた。


    しばらくすると気持ちよさそうな寝息が聞こえてきたので、やっと忍は身動きして布団の上のベストポジションをとる。


    枕元にスマートフォンを置き、枕に頭を沈めた。


    目を瞑るが、さっきまで寝ていたせいかなかなか眠くならない。それでも律儀に目を瞑っていると、枕元でぶるぶると震える音が。


    ぱちりと目を開けた忍は、暗闇の中で光るものを手に取った。


    スマートフォンがメールの着信を報せたのだ。


    タップしてメールを開くと、忍は微笑した。



    《もう寝たか?
    眠れない。相手しろよ。》



    忍はすぐに指でタップとスワイプを繰り返しながらメールを打ち、送信した。


    するとすぐに返信が来る。


    《良かった。こういう時二人部屋って不便だよな。電気つけてマンガ読むわけにもいかないしな。》


    真之と忍がいるのは学校の寮だった。男子生徒の二割が寮生で、だいたい毎年三十人ほどがこの寮に入ってくる。全室二人部屋で忍と真之は三年が入る三階にいた。一年の時同室だった二人はそれがきっかけで仲良くなったのだ。


    忍はしばらく他愛ない話で真之とメールのやり取りをしていた。


    すると真之から変なメールがくる。


    《おまえ、彼女欲しいのか?》


    いきなり何の話だろうかと忍は返信した。


    《だって何かこの間俺が告白された時、お前変だったじゃん》


    忍はどきりとした。


    何か変な言動をとっただろうか?

    そんなことを考えてみるが、何も思いつかず、忍は真之に聞くことにした。


    《変って、何が?》


    《お前結果聞いたのはじめてじゃん。とうとう女子に興味もちはじめたのかと》


    その真之のメールに、忍は憤慨して返信する。


    《ちげーよ!》


    《だったら、なんだったんだ
    よ》


    忍は暗闇の中で液晶の明かりを見つめた。


    なんでって……。

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    作者紹介

    • 高山おみ
    • 作品投稿数:15  累計獲得星数:14



    • 主に短編をアップしていこうと思っています。
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