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シリーズ:フルーツバスケット版権小説「僕から、僕を」(紫呉×はとり)
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フルーツバスケット版権小説「僕から、僕を」(紫呉×はとり)

作者:西崎宮都

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    花とゆめ、高屋奈月著の漫画がアニメ化されたアニメ版「フルーツバスケット」の前半+妄想設定で、2002年ごろに書いてWebサイトにUPしていた作品の再掲です。草摩紫呉と草摩はとりが、マブダチ以上、恋人未満の設定。誕生日を一人過ごすはとりの家に、透が大きな黒い犬を連れてやってくる。

    BL(ボーイズラブ)ものなので、苦手な人はご注意ください。


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    フルーツバスケット版権小説「僕から、僕を」(紫呉×はとり) 19418文字

     



    1.

     その日も、良く晴れていた。はとりは一日の仕事を終え、大きくのびをする。日暮れの空を見ながら、一日が特に何事もなく終わったことを思う。
     ただ、今日は普段と同じ日ではない。誕生日、というありがたいのかありがたくないのかよく分からない名称が付けられている日である。
    「別に、祝ってほしいわけではないが……」
     そう言えば綾女が、昼休みを見計らったようにやって来た。
    「僕の入れた茶ではないが、まぁぐいっと飲みたまえ!」
     彼のすすめるままに、喫茶店へ行き、彼のおごりで昼食をとった。相変わらず彼は目立つ。整った顔、それより、長い銀髪に、その辺では明らかに見ない形の衣装。お昼時の混んだ店で彼と共に食事をするのは、ちょっと問題だった。明らかに奇異の視線が何本も突き刺さってくる。まぁ、当の本人は何も気にしていないのだろうが。
     紫呉は……。
     紫呉は、まだ来ない。
    「ぐれさん? 誘おうとしたけど、留守だったよ」
     綾女は、彼に似合わない曖昧な笑顔を浮かべ、そんなことを言った。綾女は、三人のうち、自分を除く二人の関係が微妙に変わっていることを、実は気が付いているのかもしれない、とはとりに思わせるような笑みだった。
    「まぁ、あいつもそんなに暇ではないだろう」
     はとりは何気ないふりで笑い返した。
     そしてそれから数時間。紫呉は、来ない。
     今日はただの誕生日だ。普段の日とどう違う?
     そんな自問自答が無意味に感じられるほど、寂しいという感情に心が揺れる。妙に胸が騒ぐ。去年の誕生日はどうだったか、と考えているが、良く思い出せない。そんな自分が、一番寂しいのかもしれない……。
     だが、自分の誕生日を忘れられていることを思って嘆くなんて、女々しいにもほどがある。そう思い直し、はとりは姿勢を正し、雑務に手をつけてみた。紫呉が来るのではないか、と思うと、ちっともはかどらない。
    「はとり様、お客様です」
     女中に呼ばれ、はとりは玄関へ向かった。そこで待っていたのは、髪を細い二本のおさげにまとめた、見覚えのある女の子。本田透である。
    「は、はとりさん、こんにちは」
    「あぁ、こんにちは」
     彼女の口調は明らかにどこか焦っているようだが、とりあえず挨拶を返す。本家に一人で来るのはあまり好ましくないとは思われるのだが、彼女自身、それは分かっているはずだ。
    「どうしたんだ、突然?」
     まさか、彼女が自分の誕生日を祝いに来た、と思うほど、自分もお人好しではない。
    「あの、紫呉さんが……」
     透がそう言って後ろを向くと、彼女に呼ばれたかのように、門の陰から一匹の犬が出てきた。立った耳と、くるっとした目が印象的な、少し大きめの黒い犬。見覚えがある。紫呉か。
     犬はのそのそと歩いて、透を追い越し、はとりの足下まで歩いてきて、そのままうずくまる。心持ち疲れているようにも見受けられるが。
    「紫呉か?」
    「あ、いえ、何も聞かないでください。では、さよならなのです!」
     透は明らかに全力疾走だと分かる早さで、スカートの裾を気にすることもなく、門を走り抜けてしまった。つっかけで追いつける早さではないし、ここに紫呉がいるならば、彼から事情を聞けばいいだけの話だ。
     黒犬は、そんなはとりの意図を知ってか知らでか、のんびりと寝そべっている。
    「紫呉? お前、本田くんに何か変なことでもしたのではないだろうな? 彼女おびえていたようだが?」
     犬はかすかに顔を上げ、ゆっくりとした動作で立ち上がり、はとりの周りを一周する。
    「お前、何考えているんだ?」
     犬は一声、小さく吠えた。
     あいにくながら、はとりには犬の言葉を解す能力がない。
    「とりあえず、変身がとけるまで待つか」





     そして二時間後。日はとっくに暮れてしまったが、紫呉はまだ犬のままだった。
     そのうち人間に戻るだろう、とはとりは自分の服を上下準備して、縁側に座って待っていた。だが、いっこうに白煙が上がる気配がない。普通ならば、変身してもせいぜい数分で、元の姿に戻るはずなのだが……。
    「おい、紫呉?」
     呼びかけると、返事はする。目の前で足をぶらつかさせると、鬱陶しい、と言うかのように前足を上げる。考えてみると、紫呉が変身した姿をじっくりと眺めたことがない気がする。通常、異性に抱きつかないと変身はしないし、そんな現場にはとりが居合わせることはないだろう。ふせっているときは、とりあえず様態を見るのに必死だから、姿をのんびり眺めたりはしない。
     こうしてみると、可愛いものだ、とも思う。どこからどう見ても、ただの犬だ。首あたりの毛には、首輪の跡がない。飼い犬なら少し跡が残っているし、野良犬がこんなにのんびりしているはずがない。
    「それにしても。お前、何で戻らないんだ?」
     軽く抱き上げ、縁側に乗せる。場所が変わってもあまり関心がないようで、犬はまたのんびりと寝そべった。はとりに警戒心を抱く様子はない。毛に手を乗せると、一瞬だけぴくっと震えたが、そのまま体をあずけてきた。
     実際問題、そんなにのんびり構えていられないのかもしれない。
     どう見ても病気には見えないが、実は病気なのだろうか。それ以外で、こんなに長い間犬のままで居続けるのは、おかしい。透は、紫呉が病気だから、自分の所に連れてきたのだろう。それにしても、なぜ彼女はあんなにも慌てて立ち去ったのだろうか。
     はとりは立ち上がり、紫呉の家に電話をかけた。
     電話に出たのは、夾だった。
    「紫呉? いないぜ。透は買い物だ」
     どうやら、お目当ての人物はいないらしい。紫呉はここにいるから、まぁいいとして。
    「あ、そういや、紫呉の書き置きがあった。しばらく留守にするから探さないでくれ、だとよ」
     例によって例のごとく、担当いじめでもするつもりだろう。
     もしかして、この犬は紫呉ではないかもしれない、と思ったのだが……。
     彼が家にいないのは事実だ。そしてここに、一匹の黒犬がいる。
     はとりは縁側に戻り、犬の隣に座り直した。すっかり日は落ちてしまった、この犬が縁側を離れると、きっとどこにいるのか分からないだろう、と思う。
    「紫呉……」
     はとりがぼそっとつぶやくと、黒犬はそっと顔を上げて、はとりを見つめた。
    「おまえ、一体……?」
     犬はのんびりと立ち上がり、はとりの膝に足をかけた。そして、はとりの頬をなめる。
     感触が何とも言えず、はとりは慌てて犬を引き剥がした。
    「まったく。せめて、足くらい洗ってほしいところだが」
     スーツのズボンには、くっきりと足形がついてしまった。





     はとりが夕食をとる時間帯になっても、やはり黒犬は黒犬のままだった。
     今夜はわりと冷える。結局はとりは犬の体を濡れタオルで拭い、部屋に入れた。
     紫呉かもしれない犬を、外で一晩過ごさせるのはあまりにも酷だ。犬小屋もない。もしあったとしても、人間に戻ったとき、小屋を壊しかねない。壊すだけならまだましだが、壊す際に肌を傷つけかねない。元に戻った紫呉が、閉ざされた窓を裸で叩く姿など、想像して楽しいものではない。
     部屋に夕食を運ばせる際、ご飯とみそ汁は二杯分持ってこさせた。普段は食べる量が少なく、時には出されたものを半分も残すことがあるはとりがそんな注文をしたので、女中は少し不振げな顔をしたが、何も言わずに下がった。
    「猫ではないというのに、猫まんまにしていいのだろうか……」
     ご飯単品では食べないようなので、結局汁茶碗にご飯を移し、簡単に箸で混ぜてやる。暖かいにおいにひかれたのか、犬は口先だけで器用に食べはじめた。汚すかと思い、換えのタオルを敷いていたのだが、その心配はなかったようだ。
     それにしても。変身をしたまま食事をする場合、どんな感じなのだろうか。人の姿のままで四つん這いになり、皿に口を突っ込んで猫まんまを食べる紫呉を想像し、似合わないな、とはとりは鼻で笑った。
    「これも食べるか?」
     おかずの肉じゃがを、少し皿に移してやる。犬は一口だけ食べて、すぐにやめた。





    「はとり様」
     こつこつ、というノックの音と共に、女中の自分を呼ぶ声が聞こえた。はとりは「黙ってろよ」と犬に目配せしてから立ち上がりドアを少しだけ開け、廊下に出るとすぐにドアを閉めた。

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    作者紹介

    • 西崎宮都
    • 作品投稿数:13  累計獲得星数:28
    • 西崎宮都(にしざきみやと)。ボーイフレンド(仮)など版権小説中心に書いています。特に西園寺生徒会長(西園寺蓮)×赤主人公のR-18(官能小説)。読みたいシチュエーション、読みたいカップリングなどコメントで募集。

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