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ボイススタイル

作者:春野なお

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    新人声優・坂上拓真は初めてBLCDのオーディションを受ける事になった。緊張して訪れたスタジオで無情な宣告を受けるが、演技を見込まれて役を与えられる。そして拓真を視線した人気声優である神崎に突然告白され……。


    登録ユーザー星:9 だれでも星:44 閲覧数:2479

    ボイススタイル 34727文字

     

    「オーディション?」
     事務所に入った途端、拓真(たくま)は社長に呼ばれる。応接室へ入るといきなり新しいオーディションの話を始めてしまった。
    いきなり貰った資料に目を通す。このジャンルの仕事が入ってくる事は覚悟を決めていたのが実際に来ると抵抗がある。
    「三ヶ月連続発売のドラマCDの主役よ。 拓真にとっては美味しい仕事になると思うの」
     満面の笑みで身を乗り出す稲本社長は拓真の所属している稲本芸能事務所を業界大手にまで成長させたやり手の女性だった。
    所属声優は二百人を超え、拓真を始めとする二十代の若手声優だけでも三十人を超えている。
    まだまだ勉強中の拓真に主役級のオーディションが回ってくる事はなく、今日も先輩声優に発生を教えてもらう為に事務所兼養成所を訪れていたのだ。
    「そんな俺に主役ですか。しかもこれってBLのドラマCDですよね?」
     ボーイズラブ略してBLとは男同士の恋愛が描かれている作品のドラマCDという事だ。最近ではBLの需要が高まり男性声優がよく出演するジャンルになっている。
    拓真は声優の道を目指すようになった時から認識していていつか出るかもしれないと思っていたのだが、この事務所に所属して五年目にオーディションが来た事が早いか遅いかは分からない。
    しかも主役だ。ここで断る理由など無かった。
    「オーディションはいつですか? ぜひ受けさせて下さい」
     即答すると大判の封筒を渡され、中を見るように指示される。拓真は丁寧に封を開け、束になっている資料を取り出した。
    「恋愛模様シリーズ?」
     タイトルらしき文字が上に書かれ、それから下は役名やキャラ設定、あらすじなどがびっしりと書かれており短い時間で読める物ではない。
    「そう恋愛模様シリーズ。全三部の超大作で書籍の売り上げは三百万部を超え、ドラマCD化も期待されていた作品よ。その主人公をオーディションで決めるの」
     力説する社長に若干は引いてしまった。そんなに期待されている作品に声優歴五年の新人が出られる訳ない。拓真が知っている声優の中にも適任者が何人か思い当たる。
    「社長。もしかして経験を積ませようとしてくれているんですか?」
     冷静に考えれば拓真が選ばれる事など有り得ない。それなのに薦めるという事は現場の雰囲気を味わう為のオーディションだと思った方が納得行く。
    「何言っているの。受けるからには本気で行ってもらわないと。私は拓真が適任だと思うから推薦したの」
    「そうなんですか」
     社長はやる気満々の様だが、まだまだ新米の拓真が選ばれる確率は少ない。最初から経験を積む機会だと思っていれば落ちてもショックはないだろう。
    「社長。一応頑張ってみます」
     社長の手前やる気を見せる為に力強く頷き、オーディションに向けて資料を読み込んでおく事にした。

     
     オーディション当日、拓真は会場であるスタジオへと入る。何度かドラマCDの脇役として参加した収録スタジオであり、迷う事なく待合室へと到着した。
     ドアを開けて目に飛び込んできたのは拓真でも見知った若手から中堅と呼ばれる声優十数人が待機し、明らかに名の売れた者も居て若干及び腰になる。
     一番に目に飛び込んできたのはBL業界でも大人気である木原透(きはらとおる)の姿だった。某ロボットアニメに声優歴三年目に大抜擢され、演技力も抜群で一躍有名になる。  
    BL業界でも引っ張りだこで拓真は木原透を見た時点でこのオーディションは終わったと由輝は思う。
    「無意味だよな、このオーディション」
     愚痴っぽい台詞が耳に入り、拓真も同感だと頷きそうになる。だからと言って力を抜こうとは思っておらず、この緊張感を何度も味わっておきたかった。
    「あれ、君って坂上拓真君? 社長さん元気かな」
    「は、はい!」
     オーディションが始まるまであと五分という所で尊敬の眼差しで見ていた木原に声を掛けられ、慌てて返事をするが声が裏返ってしまう。周りからクスクスと笑われる声に顔が赤くなる。
    「同じ年なんだから緊張しないで。それより稲本社長は元気? 俺がこの業界に入った時お世話になったからさ」
    「そう、なんですか」
     同じ年だと知っていたが、芸歴では先輩で緊張するなと言われても出来るものではなかった。
    「仕方ないか。まぁ出来レースだし気楽にやったらいいと思うよ」
    「……え?」
     軽く肩を叩かれながら言われた内容に拓真だけでなく、周りにいた者も固まり雑談していた声も止まる。
    「知らなかった? 主人公は俺って決まっているんだよね。でもオーディションはしっかり受けた方がいいよ」
     木原の笑顔の裏側に何かかるのか探ってみるが、どう考えても親切心で言ったとしか思えない。それと共にここにいる者のやる気を一気に削ぎ落とした。
    「あ、始まるみたい」
     緊迫した空気の中、木原は時計を見てちょうど入ってきたスタッフに駆け寄る。全員の視線を浴びても物怖じしない姿に拓真は尊敬すら覚えた。
    「お待たせしました。順番に呼びますのでそれまでここで待機していて下さい。一番は木原透」
    「じゃあ、また」
     木原は拓真に手を振りながら待合室を出て行く。そしてドアが閉じた瞬間、静かだった室内が途端に騒々しくなる。
     内容はがっかりした声と怒りの声が半々。由輝はそんな中で有り得る事だったとふっ切り、自分の声を監督に聞いて貰えるチャンスを活かそうと気合いを入れた。


    「次、坂上拓真」
     木原が居なくなってから五人目、名前を呼ばれた拓真は収録スタジオに入るとすぐに台本である二枚の用紙を渡された。
    「今から五分与えるので読んで下さい。自分なりに解釈して演技するように」
     ブースに入るとスピーカーから声が聴こえ、拓真は外にいる音響室を覗く。そこには監督らしき男性がマイクに向かって喋っている。 そして隣には三十歳ほどの男性が腕を組んで椅子に座り、睨みつけるかのようにこちらを見ていた。
     二人がオーディションをするのだろうかと思ったのだが、もう木原に決まっているのだから偉い人がいる意味はない。
     しかし視線を浴び、拓真は目が離せなくなる。それと共にどこかで感じた眼光だと感じ思い出そうとしたが時間が無い事に気付く。
     慌てて貰った台本に目を通し、一先ず自分の世界に入る。
     台本には一人の少年が落ち込んでいる青年を慰めるというシーンが書かれていた。拓真が演じるのは少年の役だ。少年が元気なのか大人しいのは一切無い。どんな風に演じてもいいのだろうと五分間真剣に悩んだ。
     簡単なシーンなのに前後の状況が分からないというのは難しい。必死に考え、自分なりの少年を演じようとマイクの前に立った瞬間、五分経ったのか合図がある。
     拓真は書かれていた台詞を思った通りの感情で演じ、無事にオーディションは終わった。
     結果は案の定、木原透が選ばれる。少し残念に思うが、大好きな演技を見てもらえただけで満足だった。
    荷物を纏め、待合室を出ようとした所で監督に声を掛けられる。
    「君、ちょっといい?」
     その隣にはさきほども居た男性が居る。立ち上がると思っていたよりも背が高い。百八十センチあるように見える。
    「こっちの会議室」
    「あ、はい」
     そのまま近くにあった部屋に連れていかれた。個人的に使われるのか四人が座れる机があるだけの部屋だ。
    「座って」
     そのまま監督、男性と向かい合う形で座り、何を言われるのかとドキドキしながら言葉を待った。
    「まずはオーディションお疲れ。出来レースだと知ってがっかりした?」
     監督の第一声に木原の発言は仕組まれた物だと理解する。それでも敢えて開かれたオーディションに何の意味があったのか知りたい。
    「がっかりはしましたけど監督に声を聞いて貰えるチャンスだと思ったので」
     拓真は正直な気持ちを伝えた。
    「だよね。今回君だけが真剣に取り組んでいたから。稲本君と神崎(かんざき)君に推薦されたからどんな子だろうと思っていたけど思った以上にいいね」
    「神崎さん?」
     監督の口から社長の名前が出てくるのは不思議では無かったが、神崎という名に覚えがない。
    「神崎俊哉(としや)知らない訳ないよね」
     フルネームで言われ、思い当たる人物を知っていたが、面識は無かったはず。他に同姓同名がいるか考えるが、思い当たらない。

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    コメント

    •  初めまして。読ませていただきました。
       起承転結でわかりやすいですが、心理描写というか、キャラクターの心の動きというかがネックになっていると思いました。台詞がどうも棒読みのように感じられます。設定は声優という題材がおもしろいですが、何というか……キャラクター配置が普通というか……。主人公がいて、想いを寄せてくれる人がいて、でも三角関係。という人物配置は使いやすいですが、逆に言うと誰もが使うからよほどうまく独自アレンジをしないとうまく生きません。
       BLもですが、恋愛を扱う物語はやはり心理描写が重要ですね。
      • 0 fav
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    • 読んでいただき有難うございます。
      まだまだ勉強不足な点が多く、特に心理描写が足りないと思っています。
      誰もが使う設定で面白い作品が書けるように勉強していきたいです。
      • 0 fav

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    • 声優ものというのが、読者の心を掴むポイントになっているような気がしました。
      キャラの心理描写がもう少しあるともっと良かったかもしれません。
      面白かったです。
      • 1 fav
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    • 心理描写は苦手で今でも勉強しながら書いています。
      読んでいただき有難うございました。
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    •  最後まで一気に読めました。
       神埼の言葉が少ないのが男気のある人物を想像できて良かったです。
       勉強になりました。
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    • 読んでいただいて有難うございます。
      読みやすさを重点にして書いています。
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    • すごい読みやすい文章で、一気に読めました。声優と言う題材もおもしろいなぁと思いました。
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    • コメントありがとうございます。
      声優が大好きだったのでいつか書きたいと思っていた題材です。
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