upppiは縦読みコミック(タテコミ)・イラスト・小説が無料で楽しめるサービスです!

ようこそ!ゲストさん
シリーズ:残り火番外編 ハートに火をつけて
閲覧数の合計:624

作品を編集する

  • シリーズタイトル・ジャンルの修正
  • この章を改訂する
  • この章を削除する
  • シリーズに作品を追加する
  • 表紙画像の変更

残り火番外編 ハートに火をつけて

作者:瀬木 尚史

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    リーマン兼元ホスト×流され受けの大学生のお話。
    はじめて過ごすふたりきりのバレンタインのお話。
    【残り火】本編はコチラ
    http://www.ebookjapan.jp/ebj/373885/volume1/


    登録ユーザー星:1 だれでも星:1 閲覧数:624

    残り火番外編 ハートに火をつけて 19502文字

     

    【渡せないバレンタイン】千秋のひとりきりで過ごした、昨年のバレンタインのお話。本編では一度、ふたりは諸事情で別れております。(トロけるようなキスをして)にも話が絡んでます。




     1月も中旬が過ぎるとあちこちのお店のディスプレィが、バレンタイン仕様に変わる。勿論、働いているコンビニも同じくレジ前の棚にお客さまの目を惹くように、バレンタイン用のチョコを配置していった。


    「どうか、売れ残りませんようにっと。時期が過ぎて残った物が、安値で叩き売りされてる姿は、あまり見たくはないからね」


     置いてきぼりにされた、俺のようになってほしくはないから――

     結局、クリスマスもバレンタインも一緒にいられなかった俺たち……。その前に、別れてしまった。

     俺の心をまるごと包み込むような優しいウソをついて、泣きながら去って行った大きな背中が、今でも目に浮かんでしまうんだ。

     キレイにラッピングされた箱をひとつひとつ丁寧に並べながら、別れるちょっと前に、一緒に食べた美味しいチョコの事を、つい思い出してしまった。

     コーヒーが飲めない俺のために、わざわざ甘いカフェオレを作ってくれたよね。たったそれだけ事なのに、すっごく嬉しかった。

     ――俺だけの特別って。

     他にもホストの仕事が忙しくて逢えなかった分、傍にいたいっていうワガママを口に出せず、ぐっと飲み込んでガマンしたのに。


    『……そんな顔しないで。すぐに、傍に行くよ千秋』


     俺の顔色ひとつで見事に心情を読み取り、包み込むような笑顔をくれたっけ。

     そんな事を思い出しながら棚にすべての商品を詰め終え、不備がないか最終チェックしてからレジに戻った。

     あの日食べたホワイトチョコの味、まだしっかりと覚えてますよ、穂高さん。

     胸の奥深くで静かに燃えている残り火を感じながら、貴方の事を想う。いつか叶う事が出来るのなら、一緒に過ごしたい。だから俺は頑張ります。

     ――穂高さんを追いかける為に――





    【荷物の行方――】
    ※残火―ZANKA―の登場人物、畑中竜馬がこのお話の主人公になります。



    「竜馬くん、悪いんだけど受け持ちの集荷が終わったら、そのまま国道を上って、通りに面してるコンビニ3店舗の荷物の集荷、頼めないかな?」


     帽子を被り直して会社を出ようとする俺の背中にかけられた声に、首を傾げながら振り返ってあげた。声の主は電話受付のパートのおばさん。集荷を終えて会社に戻ってきたら、いつも笑顔で出迎えてくれる上に、お菓子を戴いたりと結構お世話になっている人なんだ。


    「国道沿いのコンビニ?」


     言いながらおばさんのデスクに赴くと、ここなんだけどと説明するのに、地図を見せてくれる。どこだろうとしっかり確認してみたら、以前働いていたコンビニも、指定されたものの中に入っていた。


    「竜馬、無理ならいいんだぜ。俺が行くし」


     直属の上司小林さんが、気さくに声をかけてきたので顔を上げる。この人に面接をされ、どうして大学を辞めたのかと訊ねられたとき、人間関係のいざこざがあり、疲れきって辞めたのだと説明してあった。

     そういういきさつがあるので、わざわざ気を遣ってくれたんだろうな。


    「大丈夫ですよ。今日はいつもより集荷の数が少ないし、コンビニ3店舗回るだけなんで、あっという間でしょう」

    「助かるわ、ヨロシクね」


     おばさんがコッソリ、俺の手に何かを握らせてくれた。薄くて細長いモノは、間違いなく板ガムだろうな。


    「ありがとな、いってらっしゃい竜馬」


     こうして爽やかに見送られ元気に会社を出発し、受け持ちの集荷を終わらせて、国道に面したコンビニをハシゴした。一番最後の集荷は、バイトしていたコンビニ。

     スムーズに駐車場に停車して、トラックから降りる。外から店の中を覗いてみたら、見知らぬ人がレジに立っていた。


    「……昼間は大学があるから顔を合わせるハズがないって、頭では分かっているのにな。変に期待した俺って、やっぱりバカだ――」


     逢わせる顔がないのに、逢いたいと願ってしまう。こんな事を考えるだけでも、ダメだというのに。

     奥歯をぎゅっと噛みしめ、被っていた帽子を目深に被り直してから、コンビ二のドアを開けた。


    「いらっしゃいませ!」


     元気な店員の声に、しっかりと頭を下げる。


    「お疲れ様です。白猫運輸ですが、集荷に来ました!」


     店内のお客様の邪魔にならないレジの端っこに向かい、集荷する荷物を無事に受け取った。さっきのコンビニよりも数が少ないので、そのまま両手で持ち帰れそうだ。


    「一番下にあるダンボールは、壊れ物注意になってますので、ヨロシクお願いします」


     指定されたダンボールの上に、小さな紙袋の荷物が2つ載せられている状態で受け取り、外に止めてあるトラックに急いで戻った。


    「あとは戻るだけだし、このまま助手席に載せてやるか。よいしょっと」


     ダンボールもそこまで大きなものじゃなかったので、座席に載せてから、紙袋の荷物も荷崩れが起きないよう、ダンボールの横に丁寧に並べてやった。

     そのとき目に飛び込んできた、ダンボールの送り状の名前――


    「!!」


     心臓が一気に駆け出していく。クラクラと眩暈を起こしそうになり、慌てて運転席に乗り込んだ。ぎゅっと目を閉じて、ドキドキをやり過ごす。だけど一向に動悸が治まらない。

     頭の中に送り状の名前、『井上 穂高』という文字が、ずっとチラついてしまい、消え去ってくれなかった。

     乱れた呼吸のまま、震える手でダンボールを引き寄せ、差出人の名前を見てみる。


    「うっ……、アキさん――」


     そこには逢いたくて堪らない、愛しい人の名前が書いてあった。

     誰かの事を思い出し、少しだけ口元に笑みを湛えながら遠くを見る横顔が、マブタの裏に写り込む。そんな横顔でも見ていられるだけで幸せで。素直に愛おしいと思えたし、とても好きだったんだ――

    『紺野 千秋』と書いてある部分を、ゆっくり人差し指でなぞってみる。角をきっちりとって丁寧に書かれている文字に、アキさんの性格が表れていた。


    「箱の中身は、お菓子と衣類か。時期的にバレンタインだし、チョコが入っているんだろうな」


     ワレモノ注意のラベルが荷物の大切さを示していて、余計に胸がシクシクと痛む。たかがチョコなのに、こんな風に厳重にしなくたっていいじゃないか。

     ……俺から見たら、ただのチョコになるけど、アキさんは違うんだよな。遠く離れた恋人のために買った、大事なチョコなんだから。しかも北海道という寒い所に住んでいるから、衣類を付けたに違いない。


    「優しいからな、アキさんは。こんな俺に対しても、最後まで優しく……してくれたし」


     小さなダンボールを両腕で、ぎゅっと抱きしめてみた。

     俺の出来る事、それは――アキさんの気持ちが込められた荷物を、無事に井上さんへ届けるという事だ。

     俺自身が直接、井上さんに届けるワケじゃないけど、関わった以上は丁寧に荷物を扱って、きちんと取次店に届けたい。


    「それがアキさんの喜びに、きっと繋がるから」


     嬉しそうな顔は見られないけど想像出来る。罪滅ぼしには程遠いけど、それでも――

     抱きしめていたダンボールを助手席にそっと置き、シートベルトをかけてあげる。エンジンを始動し、サイドミラーを見て安全を確認後、アクセルを踏み込んだ。

     バレンタインのチョコレート、アキさんから貰う事も俺からあげる事も、絶対にないけど。こうやってアナタが作った荷物に携わる事が出来て、すっごく嬉しいです。

     アキさんの思い遣る気持ちが勝手に伝わったお陰で、心がポカポカした気分になれました。


    「そんな風に大切に想う事が出来る相手に、俺もめぐり逢いたいな」


     晴れ晴れとした気分で右ウインカーを出し、車と歩行者がいない事を確認してから、勢い良く曲がる。いつもは車通りの多い国道なのに、スムーズに右折出来るなんて珍しい。


    「少しでも早く荷物を届けたいっていう気持ちが、道路事情を何とかしていたりして」


     なんていう冗談が言えるくらい、不思議と心が軽やかだった。最初の混乱が、ウソのように晴れやかだ――

     そんな気持ちにさせてくれた井上さんとアキさんに、もっともっと幸せになって欲しいから、真心を込めて荷物を贈ります。

    ←前のページ 現在 1/6 ページ 次のページ→

    1ページ目に戻る
    ▤ 目次ページに戻る


    お気に入りリストに追加 この作品を応援する

    応援ボタンを押す事で作品の★が増え、作者に「イイね!」を伝える事ができます。

    コメント

    作者紹介

    この作者の人気作品

    小説 ボーイズラブの人気作品

    続きを見る