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シリーズ:残火―ZANKA―
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残火―ZANKA―

作者:瀬木 尚史

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
  • 編集協力者:

    告げられぬ想いを抱えたまま、一緒に海を見ている内に俺は――

    【残り火】本編に出てきたキャラのスピンオフ作品です。
    これ単体でもお楽しみいただけます。

    (完結作品)


    登録ユーザー星:1 だれでも星:1 閲覧数:487

    残火―ZANKA― 7988文字

     

    【すべてはそこから始まった】


     告げる勇気など全然なかった。――ただ、一緒に海を見たかっただけ……


    「あっ、小林さん。お疲れ様です」


     先に来ていた後輩は顔だけで振り向いて、嬉しそうに微笑んだ。

     もうすぐ日没を迎えようとしている、国道沿いにある某浜辺。デートスポットにもなっている場所なので、平日ながらカップルがぽつぽつといらっしゃる。


    「おー、お疲れ。外回りは順調だったか?」

    「それなりに、まあ。……てか、どうしてここを待ち合わせ場所にしたんですか? 男同士で来てるの俺たちだけって、ちょっと――」

    「どうしても、海を見ながら煙草を吸いたくてな。ひとりぼっちは寂しいから、お前を呼んだだけ」


     眉をひそめ、辺りをキョロキョロする挙動不審な後輩に、笑いながら理由を告げてやった。


    「げーっ、それだけのために呼ばれたなんて……」


     他にも何か文句を言い続けるのをしっかり無視して、上着のポケットから煙草を取り出し、口に咥えた。


    「……はい」


     隣から火の点いたライターが、そっと差し出される。海風に消えそうなそれを手で包み込み、顔を寄せて煙草に火を点けた。


    「いつも気が利くな、ありがとよ」

    「別に、……小林さんには世話になってるから」


     目の前で沈む夕日を浴びているせいか、後輩の頬を赤く染めているのを横目で見た。短く切り揃えられた前髪が、時折吹き抜ける風で舞い上がり、端正な輪郭を更に格好良くみせていて。

    (どーして世の中、こんなにカッコいい男を振るヤツがいるんだろうか)

     などと、しんみり思いながら煙草の煙をふーっと吐き出した。


    「お前、海が嫌いか?」

    「えっ!?」

    「やっ、何か、つまらなそうにしてるからさ。カップルだらけの中で野郎といるのが嫌とか、要因はたくさんあるだろうけど」


     俺は一緒に、海が見たかったんだけどな――


    「元奥さんと来た場所ですか?」


     ワガママを発動して連れてきた俺に復讐すべく、さらりと酷い事を言ってくれる。


    「どうだったかな。大昔の話過ぎて、覚えちゃいない」

    「ウソだぁ! 記憶力が社内で一番の小林さんが、覚えちゃいないなんて言葉、信じられませんって」


     可笑しそうにくちゃっと破顔してから、夕日が沈みかける海原に、そっと視線を移した後輩。

     絶好なロケーションのハズなのに、それを見つめる瞳は、どこかやるせなさを含んだもので。……見覚えのあるそれに、どうしても視線が外せなかった。


    『こんなに愛しているのに、どうして分かってくれないの?』


     この言葉を投げつけながら俺を見たカミさんの瞳と、後輩の瞳が重なって見えるんだ。


    「お前、どうして……」

    「はい?」


     煙草を吸いきり、持ってきていた携帯灰皿に吸殻を突っ込む。


    「どうしてそんな顔して、海を見てるのかって」


     多分、触れちゃいけない領域だと分かっていたのだが、同じ瞳を宿す後輩を何とかしたくて、思いきって訊ねてみた。

     妙な間で告げた俺の言葉に後輩は一瞬息を飲み、ひどく沈んだ顔をしてから、小さなため息をつく。

     出合い頭の表情との違いに、やってしまったなと後悔し、海に吸い込まれる夕日を眺める事にした。

     さっきよりも小さくなった夕日に反比例して、空の色が深い藍色なっていく。


    「……繋がってるから。好きな人が住んでいる場所に」

    「え――!?」


     それは、波の音でかき消されそうな声だった。


    「海を見ると思い出すんです。その人を好きだった時の胸の痛みや、いろんな事を」


     少しだけ口元を尖らせ、足先を使って砂を蹴り上げる。日没を知らせる夕日が、蹴り上げた砂を、ちょっとだけ煌かせた。


    「後悔……、しているのか?」

    「ええ。俺が好きになったせいで、相手を酷くキズつけましたから」

    「今、その相手はどうしてる? キズついたままなのか?」


     カミさんと泥沼の離婚劇をした俺が、聞くべきじゃないだろうな。


    「愛する恋人と一緒に、幸せに暮らしていると思います」


     その言葉に、後輩の頭をこれでもかと撫でまくってやった。


    「わっ、わっ、小林さんっ!?」

    「結果オーライじゃないか。お前のお陰で、幸せになったのかもしれないだろ」

    「でもっ!」

    「それに海だけじゃないだろ、相手とつながっているモノ」


     頭を撫でていた手で、星が瞬きはじめた空を指差してやる。


    「……確かに」

    「案外、同じ星空を眺めていたりしてな」


     呆然とする後輩の顔がおかしくて、クスクス笑いながら、もう1本煙草を吸おうと、上着のポケットに手を忍ばせた時に。


    「小林さん、ありがとうございます。何だか心が軽くなりました!」


     薄暗がりでも分かるくらい、後輩の顔はさっぱりした表情に変わっていた。ツキモノが落ちたと言うべきか……


    「良かったな、そりゃ」

    「あの何か困った事があったら俺、力になるんで遠慮せずに言ってくださいね」

    「だったら、俺と付き合え」


     ぽろっと本音が口から飛び出してしまい、身体をぴきんとこわばらせた。諸事情で火照った頬を、海風が冷やすように撫でていく。


    「付き合うって……。えっと、こうやって一緒に海を見るっていう?」

    「そ、そうだ。ひとりで見るのは、やっぱり寂しいからな」

     取り出した煙草を手のひらで握り潰してしまうくらい、自分の一言に衝撃を受けてしまった。

     募った想いを告げるには、まだまだ早すぎるだろう。後輩の心のキズは、想像以上に深いものだと感じたし、それに俺みたいなオッサンと付き合ってくれるかどうか……

     まずはこうして接点を持って、距離を近づけてから――


    「いいですよ。俺、小林さんの事が好きだし」


     あっけらかんとして告げられた言葉に、今度は俺が呆然としてしまった。


    「すっ、すすすす、すきぃ!?」


     素っ頓狂な声を出した俺を、指を差してゲラゲラ笑いだす後輩。


    「小林さんが俺の事を気にしていたの、分かっていましたよ。何だかんだ構ってくれるし、目がよく合っていましたから」

    「あ、はい……」

    「自分から、きっかけを作ろうと思えば作れたけど、それじゃあ面白くないし。だから待っていたんです。小林さんからのアクション」


    (なんてこった!)


    「だから嬉しかったですよ、こうして海に誘ってくださって。なのに本人、色気のない話ばかりしてくれるし、かなり困っちゃいました」


     身体を寄せたと思ったら強引に抱きつかれてしまい、あたふたとムダに戸惑う自分。いい年して情けない……


    「だ、だってよ、お前――」

    「俺の事をずっと見ていたアナタだから、分かってくれると思いました。キズついた心を優しく包み込むような言葉で、癒してくれてありがとうございます」


     上着の襟を引っ張られ、重ねられた唇。俺は目を見開いたまま、それを受け続けた。

    (信じられん、何が一体どうなってしまったんだ!?)

     唇が離されても呆然としたまま、目の前にいるキレイな後輩を見下ろすしか出来ない。


    「もう二度と灯る事がないと思った俺の心に、火を灯してくれたアナタをずっと愛していきます」


     畳みかけらるような告白の数々に、頭がグラグラしてしまった。

     コイツって、こんなに情熱的なヤツだったんだな――


    「え、っとぉ、俺はバツイチだしオッサンだし。……大丈夫なのか、竜馬?」


     告白に答える勇気がなく、つい自分の置かれている立場なんかを口にしてしまった。若い竜馬を自分のモノにするには、いろいろと考えてしまう。


    「まったく色気がなさすぎです。俺の事、嫌いですか?」


     端正な顔で睨まれて、うっと顎を引いてしまったのだが。――ここは腹をくくって、言わなければならないだろう。


    「嫌いじゃない。す、好き、だ!」


     思いきって告げた途端、心の奥底で小さな火が、ぽっと灯った気がした。

    (ああ、竜馬が言っていたのは、この事だったのか)

     さっき見た沈みかけた夕日の光に似たそれを、目の前にいる竜馬に重ねて、ぎゅっと抱きしめた。


    「俺も大好きです、小林さん」


     俺の身体に腕を回し、そっと告げてくれた告白に答えるべく、自分から唇を重ねてやる。

     互いに灯した炎を消さないように、しっかりと想いを確かめ合ったのだった。

    【了】




    【それらすべて愛しき日々】※竜馬目線です


    (……面白くない)

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