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シリーズ:I fell in love with the blunder
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アナタに恋はじめました番外編―出逢いの季節―

作者:尚史

  • 無料作品 有料作品:¥0(税込) R18
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    ノンケ同士の恋物語。

    いつものようにオフィスを歩いていたら、すれ違う新人研修生の中にいた、有坂に目が留まった兵藤。

    はじめに抱いた気持ちは、恋とはほど遠いもので!?


    登録ユーザー星:1 だれでも星:7 閲覧数:719

    アナタに恋はじめました番外編―出逢いの季節― 33336文字

     



     メンタルがブルー色に染まってるせいで、しなくていい争いをこのアホと繰り広げるだけムダだって分かっているのに、どうにも腹の虫の居所が悪い。


    「俺なんかよりも見てくれのええヤツ、新人の中におったやろ?」


     イライラついでだろうか。言わなくていいであろう言葉が、自然と口をついて出てしまい、唇に挟んでいるタバコを、きゅっと噛みしめた。


    「はあぁ? そんな絶世の美形がいたっけか!? 可愛いコしか目に入らなかったからさ」

     
     美味しそうにタバコを吸い終え、備え付けの灰皿に押し付けてから腰を上げる飯島。ヤツの視線をやり過ごすべく、そっぽを向くしかない。


    「……もしかして、惚れちまったとか?」

    「惚れっ、そんなんあるワケないやろ!」


     絶対にありもしないことを言われたせいで、ちょっとしか吸ってなかったタバコを、勢いに任せて灰皿に押し付けてしまった。

     幸いなことに、俺たちふたりしかいなかったから良かったものの、こんな会話を他の社員が聞いたら、あっという間に尾ひれがついた挙句に、兵藤ホモ語録のひとつとして噂されるであろう。


    「そうなのか? だってよ、珍しいって思ったんだ。普段俺の容姿をこき下ろすお前の口から、見てくれのええヤツなんて単語が、出てくるなんてさ」

    「そこまで、見てくれのええヤツでもないけどな。普通よりちょっとだけええ感じっていうか」


     飯島の抱いた疑問は確実に、俺の心を揺さぶるものだった。今までこんな風に、誰かの容姿を褒めるなんてしなかったから尚更。


    「兵藤は、外見だけがイケメンだからな。お前が褒めたソイツ、きっと中身もイケメンなんだろうよ。こりゃ春が楽しみだねぇ」


     実に可笑しいと言わんばかりに高笑いして出て行った飯島に、反論出来る余裕なんてなかった。


    「否定せんわ。俺はお前の言う通り、外面だけの男だから」


     誰だって人に、嫌われたくはないものだろう。

     だから優しく接しているだけなのにそれが許せないと、今まで付き合ってきた彼女に言われた。それを踏まえて、距離を置いた態度をとったら、それは思わせぶりだと言われる始末。だったらどないな態度をすればええんや!?


    「もう恋なんてせぇへん。仕事だけに生きる……」


     ままならない恋愛をして神経をムダにすり減らすよりも、仕事でストレス抱えている方が数倍マシだ。

     仕事だけに情熱を傾けてやると決めた俺の目の前に、例の爽やか系の新人が現れた時は、心がざわざわと波立ってしまった。

     同じ職場かよ、ショックや――表面上は穏やかな顔をしていた半面、普通に接することが出来るだろうかと不安を抱いていたら、大平課長の命令で指導員に抜擢されてしまい……

     AOグループに入社してから、一番最悪の出来事だと思ったのも束の間、何故か同性の有坂を好きになるなんて驚きである。

     詳しくは本編を読めばわかるのだが、とにかく俺は有坂が苦手だった。嫌いという感情を悟られぬよう、必死こいて有坂に尽くしてみたのに、近づいてくんなというオーラを漂わせてくれたんだ。

     だけど毎回、そのオーラが発動されるワケじゃなく、たまに近づいてもいいぞっていう時もあり、何やコイツ!?って疑問に思ったり見事に翻弄されて。

     そんな態度のハッキリしない有坂を攻略すべくワナを仕掛けたら、俺自身がどっぷりとハマってしまった。ホンマにアホとしか言えない。

     だけどひとつだけ言えるのは、昔の自分より今の自分が好きだってこと。そんな俺を好きでいてくれる有坂に、感謝しなければならないな。



    【恋心の爆ぜた瞬間――】


     俺が持っていない癒し系の雰囲気を漂わせた有坂。そんな後輩に嫉妬する俺が、何故だか指導員になり、面倒を見なければならなくなった。

     微妙な心情を悟られぬよう、細心の注意を払いながら接しとるっちゅうのに。どこかふてぶてしさを醸しつつも、俺にビビりながら距離をおいてくれる姿は、何でやろという感情を抱いた。

     もしかして関西弁が怖いんだろうか。前の彼女に言われたことやから、当てはまる可能性はあるな。


     他に当てはまるモノが思いつかず、どうやったら仲良くなれるだろうかと悩みながら、お昼休みに会社の最上階にある食堂に足を運んだら、新人同士仲良く食事しとる所を発見した。

     何かきっかけを作るチャンスだと考え、喜び勇んで顔を出し、有坂に声をかけたら、瞬く間に笑顔が消え失せていく。

     ……もしかして小林さんと仲良くなるために、頑張っとる最中やったんだろうか? 俺って、おじゃま虫か?

     やってしもうたと思っても後の祭り。テーブルに置いてしまったトレーを、今更引っ込めるワケにもいかなかったので、何事もなかったかのように振舞ってみた。

     社食の唐揚げを一口食べながら、横目で隣を窺う。見えへんバリアーが有坂から、ひしひしと出とる気がした。


    「お疲れ様です。兵藤さんの選んだ社食って、ここで人気ナンバーワンの物ですか?」


     目の前にいた小林さんがハキハキとした口調で訊ねてきたので、愛想良く返事をしてあげる。


    「そうそう、唐揚げデラックス弁当な。1コだけどお裾分けどうぞ」


     先輩の江口さんが新人の俺にしてくれたことを咄嗟に思い出し、それをマネして唐揚げを箸で摘み、小林さんの小皿の上に置いてみた。ここから会話が弾むことに繋がるし。


    「わぁ、ありがとうございますぅ」

    「有坂にも、分けてあげるな。どうぞ」

    「……どうも」


     小林さんと対照的に表情の暗いままの有坂。その姿に眉根を寄せるしかない。またしても、やってしもうた感じ?

     これ以上、声がかけにくいなぁと思っとったら俺の視線に気が付き、こっちを向いてくれた有坂に、心の中にあったものを口にしてみる。


    「……唐揚げ、苦手だったんか?」


     俺自身コイツに対抗意識はあれど、一緒に仕事をせなあかん間柄やし、少しでもええから仲良くしたかった。


    「や、苦手じゃないです。すみません、あのちょっとしか残ってないのですが、ここから何かひとつ取ってください!」


     泡食った顔をした有坂が目の前に自分のトレーを差し出し、社食のお裾分けをしてきたのだが――残り少ない飯と焼き魚が一口分に、漬物とサラダの付け合わせのミニトマトが一つ。ほんで味噌汁とか……

     残された選択に悩みつつ、過去の自分のことを考えてみる。新人やった俺は有坂のように、お裾分けをせんと江口さんとの会話を楽しんだっけ。

     こないな気遣いは女が喜びそうだよなぁ。なんて――

     俺が超絶大嫌いな飯島の言う通り、外面だけやなく中身もイケメンかよと思いながら、素手でミニトマトを摘まんで、そのまま口に放り込んでやった。

     そんな俺の行動を見て、有坂はタレ目を少しだけ細めながら、食い入るように俺を見つめてくる。またしても微妙な表情をしてくれることについて、訝しく思うしかない。


    「もしかして好きなものだったから、とっておいた物だったりするのか?」

    「へっ!?」

    「だって何や、物ほしそうな顔をしとるから……」


      三度(みたび)やってしもたと思わずにはいられない。どうも俺の行動は、有坂の神経を逆なでするものばかりのような気がした。


    「違っ、そんなんじゃなくってですね。トマトが苦手だったので、食べてもらえてラッキーなんて考えてしまっただけでして、けっして変な意味はなく!」

    「変な意味?」


     頬を真っ赤に染め上げ、必死に言い訳らしきことをしてくれる有坂は、さっきまでの様子とはまったく違い、妙に可愛らしいトコがあるんだなと見つめてしまった。

     ふてぶてしい顔してるよりも、ええやないか――

     そんな珍しい有坂ともっと会話がしたかったのに、小林さんが割って入ってきてしもたので、残念ながら終わってしまったのやけど。

     ふたりきりになるチャンスが、ラッキーなことに訪れたのである。

     とは言っても会計課に戻る、ちょっとの間だけ。食堂を出て何かを話しかけたかったのに、上手いこと言葉が出てこなくて、お互い黙ったままエレベーターに乗り込んだ。

    (……あー俺ってば先輩としてちゃんと、有坂の指導が出来るんだろうか)

     そんなことを考えとったら、急にエレベーターが停まった。


    「何や、故障か!?」

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